トライアングル(13)

 こんにちはっ。

 昨日、拍手が9000を超えました!
 ありがとうございます!!
 ちゃんとしたお礼は後ほど述べさせていただきますが、とにかく、
 みなさまのご期待とご厚情に報いることができるような、幸せなあおまきさんを! って、なんでこんなに白々しく聞こえるのかしら(笑)



 でもって、この章は~、
 薪さんが女性とお付き合いするのは絶対にイヤー!! という方は、ご遠慮ください。←もう早速裏切ってる。
 
 それにしても、いくつ目の避難勧告かしら? 自分でも分からなくなってきました。(笑)






トライアングル(13)







 ティーラウンジは、8割方の席が埋まっていた。研究室への来訪客で、ここはいつも混み合っているのだ。

 窓辺の席に雪子の姿を見つけ、薪はそちらへ足を進めた。
 雪子の向かいには60過ぎの婦人が端然と座していて、それが薪への来訪者だった。

「はじめまして。薪です」
 一礼とともに挨拶をした薪を、彼女は感慨深い目で見た。それからふっと微笑んで、薪に席を勧めた。
「お仕事中にごめんなさい。どうしても一目、お会いしたかったものだから」
「いえ。僕の方こそ麻子さんの葬儀に参列できず、申し訳ありませんでした」
「いいのよ。雪子ちゃんが声を掛けてくれたとは言っても、10年以上も昔の友人の葬儀ですもの。お仕事を優先させるのは当たり前のことだわ」
 薪は黙って頭を下げた。

 土曜日の昼、この女性の一人娘の葬儀が行なわれた。彼女は雪子の大学時代の友人で、薪に好意を寄せていた。
 鈴木と別れてから半年くらいの間に、薪は何人かの女性と関係を持っていた。
 宮内麻子は、その中のひとりだった。
 彼女は癌に侵され、38歳の若さで亡くなった。目の前の女性は、彼女の母親だ。

「本当に、きれいな人なのねえ」
 薪の顔をじっと見て、彼女はため息混じりに言った。
「麻子が言ったことは、嘘じゃなかったのね。その辺のモデルなんか束になっても敵わないくらい、きれいな人だったって。男の人なのに、女の自分よりもきれいだったって」
 麻子は、結婚をしなかった。
 彼女の癌が見つかったのは7年も前で、それからずっと闘病生活に明け暮れていた。病床の彼女が唯一楽しそうに母親に語ったのは、薪のことだったらしい。

『薪くんは天才だったの。その上、誰よりもきれいで素敵で、みんなが憧れてたの』
 彼の恋人になれたことがわたしの自慢だ。短い間だったが、とても幸せだった、と麻子は笑った―――――。

「だから、あなたの顔が見てみたくて。迷惑だとは思ったんだけど、雪子ちゃんに無理にお願いしたの」
 彼女の話を聞かされて、薪は恥じ入るような気持ちになった。
 自分が麻子と付き合ったのは、彼女を愛したからではない。鈴木がいなくなった淋しさを埋めるための道具のように、彼女の気持ちに応える気などなかったのに、彼女の愛情を利用するだけ利用して……自分の行動がどんなに残酷なものだったか、あの頃の薪には分からなかった。

 雪子から、彼女が死んだと聞かされたときは驚いた。彼女に対する謝意も込めて、葬儀に出席すると約束した。
 しかし、よんどころない事情から、それは果たせなかった。
 自業自得だ、と薪は思った。
 彼女の気持ちを踏みにじったから、こんなしっぺ返しを受けたのだ。

 3人の間に沈黙が落ちたとき、雪子の白衣が震えて、彼女は携帯を取った。助手の女の子からだ、と言って雪子は席を立った。
 白衣の背中を見送って、麻子の母親は亡くした娘の姿をそこに重ねるように、切ない目をして言った。
「雪子ちゃんは本当にいい娘ね。大学の頃から、とても面倒見が良かったの。麻子も何かと雪子ちゃんを頼ってたわ」
「僕もです。世話になりすぎて、雪子さんには未だに頭が上がらないんです」
 薪の言葉を冗談だと思って、母親はくすくすと笑った。

「すぐに戻るから」と言った雪子は、なかなか帰ってこなかった。どうやら彼女も忙しいようだ。
「まだ独り身だって聞いたけど。どうしてかしら。あんなに美人なのに」
 それは雪子の男勝りの性格と、柔道4段の強さのせいだ。怖がって男が寄ってこないのだ。
「縁がなかったのね。誰かいい人を紹介してあげようかしら」
 それは今の雪子には迷惑だ。薪は慌てて婦人のお節介を防ごうとした。

「雪子さんは、もうすぐ結婚するんですよ」
「あら。本人はそんなこと言ってなかったけど」
「彼女は照れ屋ですから」
「でも、結婚相談所への申し込みを真剣に考えてるって、さっき言ってたわよ?」
「そんなはずは……」
 おかしい。
 青木のプロポーズを、受けてくれたのではなかったのか。
 そういえば先刻、モニタールームで曽我がそんなことを言っていたが、まさか。

 チャイムが鳴って、昼の時間を報せた。
 それを合図に、麻子の母親は席を立った。葬儀の片付けのため、自宅へ戻らなくてはならないと中座の失礼を詫び、自分のために時間を割いてくれた薪に丁寧に礼を言った。雪子によろしく、と薪に頭を下げて、エントランスへ歩いて行く。肩を落とした後姿が、薪の哀愁を誘った。

 今度の休みには彼女の墓参りに行こう、と薪は心に決めた。




*****



 
 ラウンジから帰った薪を待っていたのは、第九を辞める決心をした捜査官だった。
「室長。これを」
 僅かな迷いも見せずに、封筒を差し出す。表書きには『異動願』の文字。
 先刻ふたりが姿を消したとき、てっきり青木からの謝罪があったものと信じ込んでいた第九の職員たちは、思いがけない展開に慌てふためいた。

「ちょっ、ちょっと待てよ、青木!」
「なにを意地になってんだよ」
「謝っちまえってば。まだ間に合うから」
 他の職員たちの動揺をよそに、青木は毅然とした態度を崩さなかった。
「その書類は、一時的な感情で書いたんじゃありません。オレなりに、よく考えた結果です」
 穏やかに、青木は言った。
 その落ち着き払った態度は、彼の揺ぎない決意を顕しているようだった

「わかった。今日中に所長に提出しておく」
 周りのパニックとは反対に、当のふたりは冷静だった。
 どちらかというと気の弱い新人は、何故か妙にきっぱりと薪の目を見て、よろしくお願いします、と頭を下げた。
「希望の部署も明記しておきました」
「捜一か」
「見てもらえば分かります」
 薪が黙り込んだので、青木は一礼して自分の席に戻った。

 異動願いを出したからといって、すぐに転属が決まるわけではない。転属先の部署にもよるが、1週間から10日は現在の職場で残務整理をするのが普通だ。ましてや今の第九には、進行中の事件もある。おそらくは、この事件が解決してからの転属となるだろう。
 だが、それは時間の問題だ。青木が第九を去ることに変わりはない。

「薪さん。青木のやつ、テンパッてるんですよ。ちょっと待ってやってください」
 今井が止めるのも聞かず、薪は室長室に入っていった。バン! と乱暴にドアが閉まる。怒りに満ちた音の余韻に、研究室に居心地の悪い空気が流れた。

 険悪な雰囲気を感じ取ったかのように、俄かに空が暗くなった。暗雲が立ち込め、程なく夏特有の激しい雨が地面を叩き始めた。
 ザーッという雑音にも似た響きに、職員たちは暗い未来を予感していた。




テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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史上最大の夫婦喧嘩ですか?!

ああ‥喧嘩でしたか、よかった‥ってよくないっ!!!
でもしづさん、大丈夫でしたよ。
もっと酷いの‥あおまきすとらしからぬモノ今、書いてますから私も‥
楽しくって仕方がありません(笑)

ええ、平気です。
こちらに来れない苦痛に比べたら、
青木くんが第九をやめようが、
お互いに女性と付き合おうが‥楽なもんです!
‥ほんとか‥??

それを言ってはお終いですが
喧嘩するほど仲がいいんですから‥結局ここを乗り越えて‥
真のパートナーとなりうるのですから。

暗闇に光はきっと‥射します。
射させますっ!
私のテレパシーで、念力でっ(笑)

だけど‥
青木のすかたん!!!
薪さんのイケズ!!!

でも‥あなたたちは‥最高ですねっ!
やっぱり、何があっても‥大好きです。(*^∀^*)

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No title

しづ様

人間には言葉があるのに、なんで話さないんだ~。
雪だるま式に誤解が大きくなるじゃないですか。

青木は何回逃げる気ですかね。
初夜に、鈴木と呼ばれた日に、レイプした日に。そして異動願いですか。
2年間、薪さんの何を見てきたのでしょうか。鈴木さんの脳まで見て、どれほど強固な結びつきなのかわかっているはずなのに。

実は、レイプして我に返って、きちんと話し合うのかなあ、と思っていたんですよ。
きゃ~っ、ユリの花粉は落ちないんだぞ~。ああ、ちゃんとした花屋さんだから、雄しべの処理をしてくれてあるかも。
でもクリーニングとか必要だろうし、青木は今日の戒めのために引き取って新しいのを弁償するっていうのもいいよな、なんて考えていたんですよ。(ゲロジャケットに続くコレクション?)
甘かったです。(笑)

こんな青木、捜査一課にいりません! とんだ見かけ倒しだったと、竹内さんが迷惑します。とっとと福岡へ帰るなりなさい!

少々鼻息の荒いサンショウウオでした。二人に翻弄されている雪子さん、フォローしてあげてくださいね。
そろそろ、雪だるまを溶かす太陽が現れるでしょうか。

ruruさんへ

こんにちは~、ruruさん。お久しぶりです~。
お祝い、ありがとうございました!!
どうかお気になさらず。 あおまきすとさんには鬼門の話を書いてるわたしが悪いんですから~~。


> ああ‥喧嘩でしたか、よかった‥ってよくないっ!!!

ど、どっちなんでしょう?  あ、やっぱりダメなんですね(^^;


> でもしづさん、大丈夫でしたよ。

そうですか?
激甘主義者のruruさんが大丈夫なら、もっと飛ばしてもOKですね<こらこら。


> もっと酷いの‥あおまきすとらしからぬモノ今、書いてますから私も‥
> 楽しくって仕方がありません(笑)

あらら?
ruruさんがSに目覚めたとか(笑) そんなことあるわけないですね。 
えー、じゃあ何だろう? あおまきさん以外のカップリングがruruさんとこにあるとは思えませんが。
あ、もしかして、こないだの岡部さんとの続編ですか?
何にせよ、公開を待ってますね(^^


> ええ、平気です。
> こちらに来れない苦痛に比べたら、
> 青木くんが第九をやめようが、
> お互いに女性と付き合おうが‥楽なもんです!
> ‥ほんとか‥??

そうですか?
じゃあ、薪さんの結婚話も大丈夫ですねっ! (←イジワル)

まあ、所詮は二次創作ですから。 ゆるーくかるーく、読んでください(^^


> それを言ってはお終いですが
> 喧嘩するほど仲がいいんですから‥結局ここを乗り越えて‥
> 真のパートナーとなりうるのですから。

うちの場合はねー、本当にみなさまのところのあおまきさん(=真のパートナー)の位置に到達するまでが長くって~~、
だってふたりとも、すっごく未熟なんだもん。 (ちがう、しづがSだから)


> 暗闇に光はきっと‥射します。
> 射させますっ!
> 私のテレパシーで、念力でっ(笑)

はい☆
もちろんですよっ、わたしだってあおまきすとですもの♪


> だけど‥
> 青木のすかたん!!!
> 薪さんのイケズ!!!

きゃあ、ruruさんが怒ったー(^^;
言われても仕方ないので、ええ、ガンガンどうぞ。
てか、すかたんって(笑)


> でも‥あなたたちは‥最高ですねっ!
> やっぱり、何があっても‥大好きです。(*^∀^*)


ありがとうございます。
最後はそう言っていただけるように頑張ります。
・・・・・・何年後かしら(笑)

サンショウウオさんへ

こんにちは、サンショウウオさん。
コメントありがとうございます~。


> 人間には言葉があるのに、なんで話さないんだ~。
> 雪だるま式に誤解が大きくなるじゃないですか。

そうですよね。
ちゃんと話し合えばいいのにね。 困ったもんだ。(←自分で書いといて、この無責任な答えは・・・・・)


> 青木は何回逃げる気ですかね。
> 初夜に、鈴木と呼ばれた日に、レイプした日に。そして異動願いですか。

ホントだ、逃げてばっかりですね。
いくら身体を鍛えても、精神面がこれじゃあね。(・・・・・すみません、わたしが書きました)


> 2年間、薪さんの何を見てきたのでしょうか。鈴木さんの脳まで見て、どれほど強固な結びつきなのかわかっているはずなのに。

まったくですよ!
鈴木さんあっての薪さんなんです、それを許容できない青木くんなんて、薪さんの恋人の資格ないですよね!
(・・・・・・ごめんなさい・・・・・・)


> 実は、レイプして我に返って、きちんと話し合うのかなあ、と思っていたんですよ。
> きゃ~っ、ユリの花粉は落ちないんだぞ~。ああ、ちゃんとした花屋さんだから、雄しべの処理をしてくれてあるかも。
> でもクリーニングとか必要だろうし、青木は今日の戒めのために引き取って新しいのを弁償するっていうのもいいよな、なんて考えていたんですよ。(ゲロジャケットに続くコレクション?)
> 甘かったです。(笑)

あのまま別れちゃいましたね。(サイテーですみません)
喪服も破れちゃいました。

サンショウウオさんの考えられた展開、愛がありますね。
やさしい方なんでしょうね(^^
・・・・・・・・(自分の非道さをヒシヒシと感じている)


> こんな青木、捜査一課にいりません! とんだ見かけ倒しだったと、竹内さんが迷惑します。とっとと福岡へ帰るなりなさい!

きゃー、サンショウウオさんも怒ってるーー!!(も、って(笑))
違うんですよ、異動願いは~、
ああ、次の章を読まれたら余計怒られそう、てか、呆れられそうだ・・・・・。


> 少々鼻息の荒いサンショウウオでした。二人に翻弄されている雪子さん、フォローしてあげてくださいね。
> そろそろ、雪だるまを溶かす太陽が現れるでしょうか。

ええ、そろそろ出番ですね。
止まない雨はないので~、もう少しお待ちください(^^

Mさまへ

こんにちは、Mさま。
いつもおやさしい言葉をありがとうございます(T∇T) (←あんまりな展開に我ながら泣きが入っている)


麻子さん、羨ましいですか?(笑)
そうですね、わたしも恐れ多くて並んで歩けないと思います。 
わたしは無欲な人間なので、見てるだけでいいんです。 原作の薪さんが青木さんと手をつないで歩いているところを。 (←めっちゃ贅沢やん) 


青木くんは~、行くとこまで行っちゃったので、あとはブーメランのように帰ってきてもらいます。(^^
地獄の底まで行ったみたいだから、ブーメランじゃなくてバンジーかな(笑)


Mさま、最後は丸く収まる、そう信じてくれているんですねっ(;∇;)
はい、がんばります!
てか、がんばれ青木くん!


ありがとうございました♪



プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

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