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トライアングル(15)

 この章は、とっても短いんですけど~、
 わたしが一番書きたかった場面なんです。 
 このシーンが書きたくて、薪さんにこれをやらせたくて、そしたらこんなお話になっちゃったんです。
 なんでかなあ?







トライアングル(15)







 ランチタイムの会社員で賑わう通りを、薪は全力で走っていた。
 亜麻色の髪から水滴が飛び散る。きれいな額には汗が浮かんでいる。
 すれ違う人々が、びっくりした顔でこちらを見る。上から下までずぶ濡れで、何かに追われるように走っているのだから、ヘンな目で見られても当たり前だ。不審者通報されないことを祈るしかない。

 研究所から15分の全力疾走。めちゃめちゃ暑い。通り雨が去って、夏の日差しが戻ってきている。
 ひとにこんなしんどい思いをさせやがって。やっぱり2,3発殴ってやらないと気が済まない。

 人ごみの中に彼を見つけるのは容易い。周囲の人間より、頭ひとつ分高いシルエット。

 ――――― いた!

「あっ……」

 声が出ない。
 息が乱れすぎて、心臓が痛い。
 足を止めて、薪は空を仰いだ。太陽がとても眩しい。

「あおきっ!!」

 大きく息を吸い、空に向かって部下の名前を叫ぶ。
 両手を膝について下を向き、薪は呼吸を整える。歩道の水溜りに、空が映っている。

 水面に映った空に人影が差し、薪は顔を上げた。
 薪をここまで走らせた部下が立っている。右手に雪子と同じビニール袋を持ち、左手には水滴がついたジャンプ傘を持っている。
 薪を見て、にこりと笑う。ずい分濡れちゃいましたね、とハンカチを差し出した。

「異動願い、見てもらえました?」
「見た」
「受理してもらえますか?」
「そのつもりだ。認め印を押しに来た」
「はい?」

 薪は青木の手から、傘を奪い取った。
 バン! と勢いよく青いジャンプ傘が開く。
 傘の内側で、華奢な手が青木の襟元を掴み、強い力で引き寄せた。
 どさりと音がして、ビニール袋が地面に落ちた。目隠し代わりの傘から覗く二人分の足が、その距離を縮めた。

 強制的な短い沈黙の後、薪は厳しい声で言った。
「確認印を押したからには、取り消しはきかないぞ。覚悟はいいんだな」
「はい」

 黒い瞳が、情熱を帯びて薪の顔を見つめている。たしかに感じる、自分への想い。
 人目さえなければ、このまま抱きしめてしまいたい。
 大きな手が、薪の方に伸びてくる。ここではまずいと思うが、その誘惑に負けそうだ。青木の右手が頬に触れようとした時、薪の携帯が震えた。

「なに? 見つかった!?」
 瞬間、薪は捜査官の顔になった。薪を包む雰囲気がガラリと変わって、青木の右手は行き先を失う。
「青木、現場の画が出た。第九に帰るぞ!」
 間抜け面の部下を残して走り出す。すでに薪の頭の中は、事件のことでいっぱいだ。

「薪さん……切り替え早すぎです……」
 地面に落ちたビニール袋を取り上げて、青木はため息を吐いた。





テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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ぎゃははははは!

良いです、良いです、良いです~!!
ああ、絵になるわ^^
薪さんの切り替えの早さが好き♪

もうすぐこのお話、終わりですか?

めぐみさんへ

こんにちは、めぐみさん!
笑っていただけて本望です! どんな話にもギャグは入れないとね(^^



> 良いです、良いです、良いです~!!
> ああ、絵になるわ^^

画像を浮かべてくださって、嬉しいです~!!
うふふ、傘の中のキス、いいでしょう? うちのふたりにしてはドラマティックですよね!


> 薪さんの切り替えの早さが好き♪

もう、この辺は男爵、と言いたいところですが。
原作薪さんもこうですよね、きっと。 どんなに感情に溺れてても、仕事になったらキリリと!


> もうすぐこのお話、終わりですか?

はい、あと3回です。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです(^^

実は、メロディの発売日に合わせて、ちょっと調整しちゃいました。 8月号の展開が怖くって~、ええ、久々に発売日が恐怖です(^^;

ありがとうございました!!
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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