女神たちのブライダル(1)

 こんにちは。

 こちら、はるか昔にお約束いたしました、6千拍手のお礼です。
 薪さんが雪子さんにプロポーズするお話です。<ちがう。

 
 書いたのがなんと、2009年の1月でした。
 そうです、青木さんと雪子さんの婚約発表の直後です。 
 もう、頭の中わやくちゃだったんですね~。 それでこんなしょーもないことを書いたんですね。

 かなり初期に書いたものなので、文章も、ひゃー、拙すぎ。(^^;
 最近のものに比べると読みづらいと思いますが、てか、読み直すの大変だった。 下手な文章は読むの疲れる。
 そんなものを人に読ませるのかと、お叱りもありましょうが、すみません、カンベンしてください。 書き直せない、てか、今のわたしにはこの話は書けません。 
 時間と共に萌えも変わりまして、今はジャイアントキリングする薪さんを書いてます。 やっぱり男は仕事ですよ。


 そんなこんなで、(どんな?)よろしくお願いします。


 このお話の時期は、付き合い始めて4年目です。
 すっかり落ち着いてるかと思えば、相変わらずだったりして。(笑)






女神たちのブライダル(1)






 純白のドレスを身にまとった美しい花嫁と、白いタキシードに身を固めた凛々しい花婿が、祭壇の前に並んで立っている。
 教会のステンドグラスから注ぐ七色の光は、彼らを祝福するかのようにやさしい。
 厳かな神父の声が響き、誰もが知っている誓いの言葉を参列者たちは耳にする。

『病めるときも、健やかなる時も――――』



*****




 1年に3回くらい、昼にとてもお腹が空くことがある。
 部下に強引に誘われない限り、売店のおむすびくらいで昼食を済ませてしまう薪だが、こういうときには職員食堂を利用する。ごった返している食事処は苦手だが、今日は是非ともここの焼き魚定食が食べたい。

「久しぶりね、剛くん」
 自販機で食券を買ってからカウンターの列に並ぶと、調理場の方から声を掛けられた。昔は親友とよく食べに来ていたから、食堂のおばさんも顔を覚えてくれていたらしい。
「こんにちは。Bランチお願いします」
「今日は剛くんの好きなカマスよ」
 自分の好みを覚えてくれていた彼女に、薪はにこりと微笑んでみせる。大勢の職員が訪れるカフェテリアなのに、プロというのは大したものだ。

「ごはん、大盛りにする?」
「いえ。普通で結構です」
 普通盛りでも、ここのご飯はかなりのボリュームだ。残ったご飯を引き受けてくれる親友はいなくなってしまったから、薪がここで大盛りのご飯を頼むことは、もう永久にないかもしれない。

「はい、お待ちどおさま」
 プラスチックの四角いトレーに載ってきたのは、ご飯と味噌汁、カマスの塩焼きにほうれん草のおひたし。働き盛りの男性の昼食にしてはあっさりしたものだが、どんなにお腹が空いていても、薪の食欲はこの程度だ。
「それと、はい」
「あれ? 僕、コーヒーは頼んでませんけど」
「おばさんの奢り。剛くん、コーヒー大好きだったでしょ。ここでお昼にコーヒーだけ飲んでたのは、あなたくらいのものよ」

 彼女は少し、薪の好みについて誤解をしている。コーヒーが大好きだったわけではなく、食事を摂りたくなかっただけなのだ。
 捜査に夢中になっているときには、何も食べたくない。ところが、薪の親友は食べることが大好きで、いついかなる時も薪を無理やり食堂まで引っ張ってくる。推理が佳境に入っているときに食事をすると、気分がダレる。四方八方から手繰り寄せた糸が、バラバラになってしまう。そんなときには、薪はコーヒーだけを飲んでいた。その様子を彼女は見ていたのだろう。
 コーヒーは、第九に戻ってからバリスタに淹れてもらおうと思っていたのだが、せっかくの好意だ。ありがたく受け取っておこう。
「ありがとうございます」
 にっこり笑って礼を言う。好意には好意で返すのが、薪の主義である。何故か周りにいた職員たちが一斉に身を引いたようだったが、多分気のせいだ。

 混み合った食堂で空席を探す。部下の誰かがいればベストなのだが、ざっと見た限りでは見つからない。
 その代わり、白衣姿の黒髪の美女を見つけた。
 彼女の前には、豚肉のしょうが焼き定食と酢豚の皿が置かれている。ご飯はもちろん大盛りである。それを、わき目も振らずに一所懸命食べている。薪の食欲など足元にも及ばない。
 食べているときの雪子は、本当にかわいい。鈴木が大好きだった雪子の姿だ。

 今日は雪子もひとりのようだ。いつも一緒にいる助手の女の子は、別行動らしい。
「雪子さ……」
 声を掛けようとして、薪は雪子の手が止まっていることに気がついた。

 何かを見ている。雪子の視線を追って、薪はそこに自分の部下の姿を発見した。
 第九で一番若くて、背の高い捜査官。黒髪に黒い瞳、チタンフレームの眼鏡を掛けている。隣には、薪の大嫌いな捜査一課のエースの姿がある。あいつとは付き合うな、と薪がいくら忠告してもきかない。大人しいくせに頑固な部下の名前は、青木一行という。

 薪は声を呑んだまま、動けなくなった。
 あの雪子が、食事の箸を止めて誰かを見るなんて―――――。

「薪くん。ここ、空いてるわよ」
 立ち竦む薪に、雪子が気付いて声を掛けてくる。薪は笑顔を作って、雪子のほうへ足を進めた。
「お邪魔します」
「どうぞどうぞ。ひとりでつまんなかったの。今日、スガちゃん研修で」
 明るい笑顔を薪に向けてくるが、雪子はどこかしら淋しそうに見える。

 鈴木を失ってからの彼女は、仕事一筋で生きてきた。その努力の甲斐あって、女だてらに今は法一の副室長という役職に身を置いている。未だに男社会の風潮が強い警察内部で法一の副室長を務める雪子の実力は、かなり高いということだ。
 しかし、果たしてそれは、雪子の望んだ人生だったのだろうか。
 鈴木は雪子に家庭に入って欲しがっていたが、雪子は結婚後も監察医の仕事を続けると宣言していた。専業主婦なんてまっぴらごめんだわ、と言いながらも、雪子は薪にちらりと洩らしたことがある。
『子供が出来たら、考えるかもね』
 鈴木がこの世を去ってから6年。あの事件がなかったら、雪子は育児に追われていたかもしれない。監察医の仕事のほうが楽だわ、とぼやきながらも楽しそうに、鈴木との愛の結晶を慈しみ育てていたに違いない。

「薪くん。もう食べないの?」
 1年に数回しか起きない薪の旺盛な食欲は、いつの間にか失せていた。かろうじて空になったのはほうれん草のおひたしだけで、焼き魚もご飯も半分以上残っている。
「残すんならちょうだい」
 トレーを引寄せて、雪子は薪の食べかけのご飯を頬張る。なんだかどこかで見たような光景だ。
「やっぱり秋は秋刀魚よね」
「雪子さん。それ、カマスですけど」
 そうなの? と無邪気に聞き返して、美味しければなんでもいいわ、と雪子は笑った。
 
 その笑顔の裏側に。
 このひとは、どれほどの涙を流してきたのだろう。眠れない夜を過ごしてきたのだろう。たったひとりで恋人も作らずに、鈴木だけを想ってここまで来たのだろうか。

 2人前の食事をぺろりと平らげて、雪子は席を立った。
「あとはデザートね。おばさん、マロンパフェちょうだい」
 大声で追加のオーダーを入れる雪子は快活そのもので、悩みなど何も無いように見える。しかし、それは見せかけの明るさだ。自分には分かる。
 大きな口でパフェを食べる雪子を見ながら、薪はさきほどの雪子の切なそうな瞳を思い出す。あれは―――― 恋をする女性の瞳だった。

「雪子さん。いま、好きな男性とか、います?」
「なに。藪から棒に」
 鼻の頭にクリームがついている。くすっと笑って、薪は雪子にティッシュを差し出した。
「なんか最近、雪子さんきれいになったから。誰か気になる人でもできたのかな、と思って」
 お世辞ではない。雪子はこのところ化粧の仕方を変えたらしく、昔のような派手なメイクはしていない。口紅の色も昔は真っ赤だったが、この頃はピンク系のものが多いようだ。

「まあね。ちょっとだけ、気になってるっていうか」
「誰ですか?」
「薪くんには言えないわよ。怒られちゃうもの」
「なんで僕が怒るんです? 誰にも言いませんから、教えてくださいよ」
「いやよ。薪くんと喧嘩したくないもの」
 薪の心臓が、ぞくりと冷たくなった。
 僕には言えない。僕と喧嘩になる。……そんな相手は、ひとりしかいない。

「んんん~、このパフェ、おいしー! 生クリーム万歳!」
 顔には出さないつもりだったが、雪子は薪の動揺を悟ったらしかった。ことさら明るい調子で、残りのパフェを平らげる。
「まあ、そのうちね。ちゃんと報告するから」
 空になったパフェの容器を持って、雪子は立ち上がった。薪に軽く手を振って、食堂から出て行く。

 いつものように白衣を翻して颯爽と歩く後姿を、薪は見えなくなるまで見送っていた。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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