女神たちのブライダル(11)

 こちらは以前お目汚ししました、『幸せな薪さん』のコピーです。
 もともとあのSSは、この話のエピローグだったので。


 最終章です。
 読んでいただいてありがとうございました。(^^






女神たちのブライダル(11)











 その夜。
「薪さん、集中してくださいよ。なに考えてるんですか?」
 薪の自宅のベッドの上。
 青木の上になって彼を受け入れながら、どこかしらうわの空の薪の頬を両手で挟んで、自分の方を向けさせる。
 亜麻色の瞳の焦点が青木の目に合って、薪はふわりと微笑んだ。

「いまごろ雪子さん、どうしてるかなって」
「きっと、オレたちと同じことしてるんじゃないですか?」
 薪は、ムッとくちびるを尖らせて、眉間に縦皺を刻む。面白くなさそうな顔で、横を向く。
 この期に及んで嫉妬とは。いい加減、あのふたりのことは諦めてほしい。

「いいお式でしたよね」
 薪のからだをゆっくりと揺すぶりながら、背中を指先でつうっと撫ぜる。感じやすいウエストの周辺は爪を使って、丹念に。
「三好先生、とってもきれいでした。すごく幸せそうに笑ってましたよね」
 薪の腰がビクビクとうごめく。青木の言葉に、何か反論しようとしているらしいが、言葉が出ないようだ。
「きっと今ごろは、楽しい夜を過ごしてると思いますよ。今の薪さんみたいに」
 切なげに腰を捩って動き出す恋人の歓びを、もっとも色濃く映すその部分に手を伸ばし、青木はかれをさらなる高みに導く。
 細い腰に手を添えて、下から強く突き上げてやると、薪はいつものように乱れ始めた。

「んああっ! や、ひゃんんっ!!」
 悲鳴みたいな喘ぎ声。
 もうすっかり慣れてしまって、セックスのときにこの声が聞けないと、物足りないくらいだ。
 その声はどんどん高くなり、かれの愉悦を滲ませ。かれ自身を快楽の色に染め替える。
 つながった部分から青木へと流れてくる、想いや情熱や、言葉にできない色々なもの。雄弁に、声なき声を語る亜麻色の瞳が長い睫毛に隠されていても、青木はこうして薪の心を知ることができるようになった。

 薪の最後が近いのを感じて、青木は上体を起こし、薪を抱きしめた。薪はこの格好で、フィニッシュを迎えるのが好きなのだ。
 細い指が、青木の背中に食い込んでくる。小さな歯が、肩に噛み付いてくる。
 けっこう痛いが、その分、青木は興奮を保つことができる。もしかして、これは計算のうちなのだろうか。
 
「あっ、あっ、あああっ!!」
 耳がキーンとするような声で叫ばれて、思い切り背中に爪を立てられて。
 そんな痛みさえ快楽に変える、薪の技巧に我を忘れて。青木は息もできないくらいの奔流に押し流される。
 無我夢中で抱きしめあい、溺れるものが酸素を求めるように、互いの呼吸を吸い合い。
 二人を押しあげる激流が、まばゆい光の粒子に姿を変える瞬間に、二つの心で叫ぶ言葉は、一字一句たがわぬ約束の言葉。

 きっと、雪子たちも同じだ。
 胸のうちで、くちびるで、神さまの前で誓った誓いを何度も繰り返す。
 病める時も健やかなる時も。
 死がふたりを分かつまで。


「雪子さんも、こんな気持ちなのかな」
 喋るのも辛そうな息の絶え間に、薪がぽつりと呟いた。
「なんですか? 薪さんの、今の気持ちって」
「……もう一回、したい」

 乱れた呼吸も整わぬ間に、吐き出した欲望を互いの身体に残したまま、くちづけを求めてきた恋人に、驚きながらも舌で応えて。
 口中をくまなく探っていく薪の舌を、追いかけて捕まえて、また逆に捕らえられて。
交じり合った唾液が薪のくちびるからこぼれて、青木の刻印を残した首筋に、銀の雨のように流れ落ちる。
「薪さん」
「うん?」
「たぶん三好先生がいま考えてるのは、そういうことじゃないと思うんですけど」
 亜麻色の瞳を半分にすがめ、他人を見下した意地悪そうな目になると、薪は自分の中の青木をぎゅっと締め付けた。



*****




 再び、薪は青木のリズムに乗って、そのからだを踊らせる。
 青木の肩に膝をかけ、踝を耳元に置く青木のお気に入りの型。この型がいちばん奥深い薪を味わうことができる、と青木は言う。

「青木、青木。大好きだ」
「どうしたんですか?急に」
「急じゃないだろ。僕たち、付き合い始めて4年目だぞ」
「だって、これまでは言ってくれなかったじゃないですか」
「そうだっけ?」
「そうですよ」
「じゃあ、これからはちゃんと言うから」

 くん、と膝を起点に、薪は自分のからだを揺する。
 何かに耐えるように、青木が眉根を寄せた。
 その顔が、とてもセクシーで。薪の胸は張り裂けそうに高鳴る。

「愛してる」
「……気持ち悪いです、素直な薪さんなんて」
「言ったな、こいつ!」
「あ、ちょっ、ちょっと、もうダメです!」
 ぐりっと腰を回して、最高に深いところに青木を感じる。

 締め付け、緩め、うねらせて。
 愛しい男にこの世で最高の快楽を与えてやりたいと望むのは、それが自分の幸せだから。

「薪さんっ!」
「あ、あああっ!」
 堰を切ったような激しい青木の攻撃に、薪は受けるのが精一杯になる。
 強い腰から打ち出される灼熱のリズムに、身も世もなく焼かれて焦がされて。
 二度目の絶頂に繰り返された約束は、最初のときと一言も変わらず。それはたったひとつの、かれらの間にある真実。


 雪子たちのように、親や友人に祝ってもらえることもなく。
 未来の保証もなく、新しい命を作り出すこともできない。
 そんな彼らを結びつけるのは、互いの胸に抱く双子のようなこの想いだけ。
 たったそれだけの、だけどこの世でいちばん大事なシンパシィ。


 病める時も健やかなる時も
 死がふたりを分かつまで
 愛することを誓いますか?


 ―了―




(2009.1)


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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非公開コメント

薪さんの失恋物語(;;)

あ・・・花婿が完全に無視されている(@@;

竹内はどこにいったんだ~っっっ  
たけうちーっ!

女神「たち」って、薪さんだったんですか!? そ、そーですね、神様に誓っちゃったし・・・。それにしても、「いまごろ雪子さん、どうしてるかなって」って、失恋したんでしょ、あなた、もう、諦めなさいっ! 

小さい人はだめと言われてぐうの音も出ない薪さんがべらぼうに可愛かったです。
これが、以前、タキシード着て申し込みする薪さんだったんですね。

だって雪子さんと薪さんがダメな理由が、、「アタシは彼氏より大きくてもかまわないわ」とか「僕のほうが小さくてもいいです」というカップルになるのが無理しちゃってかっこいいと言われるわけですが、こだわりが「そんなことで!?」っていう理由がとっても素直で、がっくりきている薪さんがすごく可愛いんです(^^)

後は、がんばって、赤ちゃんをうんでください、雪子さん。原作よりハードル高くなってますよ!! 産んでしまえば、あとは竹内に任せれば大丈夫ですから(?)

連載お疲れ様でした。とっても面白かったです。


ところで、話は変わりますが、庁舎のトイレの改修工事は、しづさんとこの会社が受注されたんですか? (^▽^)
内部資料を横流ししてくださいっ!

ふふふふふ…

竹内が全然出てこなかった…orz

ちょっと青木がまた憎らしくなってきたんですけど(笑)
また苛められているところを読み返すか。
ああ、でもなあ、そうすると可哀想な薪さんも付いてきちゃうんですよねえ。
くー。

イプさまへ

イプさま、こんにちは。
お返事遅くなりまして、すみません。


> 薪さんの失恋物語(;;)

違います(笑)
いや、違わないか?


> あ・・・花婿が完全に無視されている(@@;

> 竹内はどこにいったんだ~っっっ  
> たけうちーっ!

だって!
書こうとすると、男爵がモノスゴイ眼で睨むんだもん!(笑)←薪さん以外は書く気がしないだけ。


> 女神「たち」って、薪さんだったんですか!? そ、そーですね、神様に誓っちゃったし・・・。それにしても、「いまごろ雪子さん、どうしてるかなって」って、失恋したんでしょ、あなた、もう、諦めなさいっ!

『相手が竹内でさえなかったら、僕だって反対なんかしませんよ!』とうちの男爵が申しておりますが、本当のところ、どうなんでしょう。(^^;

 
> 小さい人はだめと言われてぐうの音も出ない薪さんがべらぼうに可愛かったです。
> これが、以前、タキシード着て申し込みする薪さんだったんですね。

べらぼうに(笑)
シチュだけ見れば、ちゃんとプロポーズしてるでしょ?
実際は単なる嫌がらせになっちゃってますけど☆


> だって雪子さんと薪さんがダメな理由が、、「アタシは彼氏より大きくてもかまわないわ」とか「僕のほうが小さくてもいいです」というカップルになるのが無理しちゃってかっこいいと言われるわけですが、こだわりが「そんなことで!?」っていう理由がとっても素直で、がっくりきている薪さんがすごく可愛いんです(^^)

きゃらきゃら☆
おまえら『ラブ☆こん』読んで出直してこい、ってカンジですね(笑)

きっとこの理由で断るのが一番効果的に薪さんを黙らせることができると、雪子さんは知っていたのデス!


> 後は、がんばって、赤ちゃんをうんでください、雪子さん。原作よりハードル高くなってますよ!! 産んでしまえば、あとは竹内に任せれば大丈夫ですから(?)

はい~、
次のお話では子供が生まれてます。
今回の花婿と同じで、出てきませんけど(笑)←薪さん以外は・・・・以下略。


> 連載お疲れ様でした。とっても面白かったです。

ありがとうございます。
たくさんコメいただいて、嬉しかったです♪


> ところで、話は変わりますが、庁舎のトイレの改修工事は、しづさんとこの会社が受注されたんですか? (^▽^)
> 内部資料を横流ししてくださいっ!

はい、あれは2060年8月の工事でした。
トイレの個室だけでなく、入口の扉にも鍵を付けて欲しいという顧客側の変わった要望が・・・・・げらげら。

めぐみさんへ

めぐみさん、いらっしゃいませ。


> 竹内が全然出てこなかった…orz

あああ、こちらにも!
ごめんなさい、わたしって本当に薪さん以外はどうでもよくて(←ひどい)
ていうかね、正直に言っちゃうと、
この話を書いたのは、雪子さんと竹内の馴れ初めや何やらを妄想する前のことなので、彼の様子が思い浮かばなかったんですよ。『帰郷』のすぐ後くらいに書いてますからね。 まだ、薪さんを好きな竹内しか想像できませんでした☆


> ちょっと青木がまた憎らしくなってきたんですけど(笑)
> また苛められているところを読み返すか。

うひゃひゃひゃひゃ!!
めぐみさんったら!!!


> ああ、でもなあ、そうすると可哀想な薪さんも付いてきちゃうんですよねえ。
> くー。

そんなめぐみさんのために!
次のお話は、男爵シリーズです。
『恋人のセオリー』の系列なので、ふたりの関係は『おとぼけ薪さん&カワイソウな青木くん』になっております☆
楽しんでいただけたら幸いです(^^

No title

しず様、おはこんばんは。
ワタクシ、「秘密」12巻の最終イラストを見て、しず様の「女神たちのブライダル」を思い出しました。私は別に雪子さんは嫌いでは無いのであのイラスト自体はよかったって感じです。薪さんがブーケを持っているから、次の花嫁?なんて期待してしまいます。勝手に加筆分やメロディのふれこみに期待しすぎて、あれ〜って感じなんですよね。また、レビューを書かれたあとお邪魔させて頂きます。

うたたんさまへ

うたたんさん、こんにちは。

12巻の描きおろしイラスト、よかったですよねっ!
薪さんが固まってて、吹きました。(>m<) 
ブーケ持たされて雪子さんにハグされて、もう何が起きてるんだか分からない状態になってたんでしょうね。 可愛すぎです☆


>「女神たちのブライダル」を思い出しました

きゃー、恐れ多いです、うちの与太話なんか、でも、
思い出してくださって光栄ですー。(〃▽〃)
薪さんと雪子さんがわだかまりなく笑い合えて(=薪さんの雪子さんに対する罪悪感が消えて)、二人の後ろにはそれぞれの伴侶が。 まさに理想の光景ですよね。 
長い間望んできたことが叶ったみたいで、嬉しかったです。(^^


> 薪さんがブーケを持っているから、次の花嫁?

あはははは!!
薪さん、もう青木さんと結婚するしかないですね!(>▽<)


>勝手に加筆分やメロディのふれこみに期待しすぎて

もしかして、あおまきさんのツーショットを期待してらっしゃいました?(笑)
加筆は、主に事件の事でしたね。 
12巻の40~44P、今井さんが青木さんに事件のことを説明する場面。 同じく12巻の88~90P、青木さんの心境を薪さんが思いやる場面。(ここ、泣いた)
どちらも青木さんの人間性を際立たせるエピソードだったと思います。
薪さんへの脅迫の為に姉夫婦は殺された。 でも彼は、薪さんを恨むでもなくチメンザール軍を憎むでもなく。 誰かが悪いとしたら、それは自分だと。 そう思った方が楽なんです、とまで言い切って、さらには微笑んだ。
わたしはとても彼のようにはなれない、そう思いますが、その分、強烈な憧れを感じました。 
薪さんが惚れるだけのことはありますよね。(^^
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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