サインα(1)

 こんにちはっ!

 みなさまにいただいた『がんばれコール』が10000を超えました! 
 どんどんぱんぱん!! (←脳内で花火が上がった音)

 本当に、本当に、本当にありがとうございます!!!
 このブログに足をお運びいただき、拙作を読んでくださるみなさまに、ありったけの感謝を捧げます!!

 こんなありきたりの言葉じゃなくて、もっと気の利いたお礼を申し上げたいのですけど、すみません、ボキャ貧で。
 せめて作品でお礼を。


 1万拍手のお礼は、
『ハプニング』というお話にしたいと思います。
 以前、コハルさんからリクエストいただいたお話で、あおまきさん入れ替わりのドタバタコメディです。ただ、長いんですよね、これが。(^^;) 64Pだから20章くらいかな。
 なので、推敲に少し時間をくださいね。



 そんなわけで、先にこちらのお話を。

 このお話は新しいです。 
 2010年の3月に書きました、って5ヶ月も経ってるじゃん!
 いやー、年を取ると月日の流れが速いこと。(笑)


 時系列で行くと、『運命のひと』の後に入ります。
『運命のひと』でKさんに「ふたりのすれ違いが悲しい」って泣かれちゃったので、ちょっとその辺を掘り下げてみました。
 泣き止んでくれるかな~、余計に泣かしちゃうかな~、書きあがってみるまで作者にも分かりません☆


 どうか広いお心でお願いします。





サインα(1)


 







 2年目の恋人同士というのは、微妙な時期だ。
 相手以外なにも見えない蜜月を過ぎて、のぼせ上がった頭も冷えてきて。相手とのふれあいにも日常性を見出すようになり、余裕と同時に我が出てくる。そんな頃合だ。
 自分の腕を枕にして仰向けになり、くーくーと寝息を立てている恋人の顔を見て、青木はそんなことを思う。

 青木の場合は相手が相手だったから、最初の頃の緊張たるや心臓が止まるかと思ったほどだった。
 エリート集団第九の頂点に立つ男、薪剛警視正。
 だれよりも美しくて、だれよりも気高くて。まごうことなき天才で、周囲の憧憬を一身に集めてしまう魅力的なひと。大学生の頃から憧れ続けて、その人を追って警察機構に身を投じた。薪は青木にとって、高嶺の花どころか雲の上の人だった。

 彼が、自分を受け入れると言ってくれた時の感激。あの時のことを思い出すと、今でも背筋に震えが走る。
 薪の言葉に嘘はなく、青木のために恥らいながらも身体を開いてくれて。大の男が泣き叫ぶような苦痛にも健気に耐えてくれて。
 長いブランクのためにすっかり硬くなってしまった薪の身体をほぐすのは存外時間がかかり、ようやく結ばれたのは付き合いだしてから3ヶ月も経ってからだった。たった一度の成功でも、青木はすごくうれしかった。翌日薪が「うれしかった」と言ってくれたことが、青木に自信をくれた。
 薪は徐々に、自分のことを好きになってくれている。そう信じていた。

 相手の好意を信じられれば、ベッドの中でも大胆になれる。そのときの薪は、とてもかわいくて。
 普段は凛々しい捜査官の顔つきで次々と難事件を解決する薪が、自分の愛撫に震えて追い詰められて、シーツをぎゅうっと握り締め、欲望を迸らせる。いつもは強気で意地悪そうな亜麻色の瞳が、切なげな色を湛えて青木を見る。そのギャップがたまらなかった。
 
 他人に劣ることなど何一つない薪だが、これだけは苦手らしく、最初のうちはマグロどころか冷凍マグロ状態だった。それらしい雰囲気も反応もロクになく、感度は低いわ持ちは悪いわ、ベッドの相手としては今までで一番未熟だった。しかも青木を受け入れてくれるはずの場所は、信じられないほど狭くてきつくて。指をほんの少し入れただけでも痛みを感じるほどの固さだった。
 こんな状態では、いつになったらまともなセックスができるかわからない。青木はネットや雑誌やアドバイザーから情報を得て、薪の性感を開発すべく懸命に努力を重ねた。その成果が少しずつ現れて、次第に薪はかわいらしい声で青木の愛撫に応えてくれるようになった。
 
 外見からは想像もつかないが、薪の喘ぎ声は悲鳴系だ。最初のうちはずっと声を殺していたから、てっきり吐息系だと思っていた。しかし本気で感じてくると、たまらなく色っぽい声で叫び始める。
 初めてこの声を聞いたのは、まだ付き合い始める前だった。薪が誤って催淫剤を飲んでしまって、解毒剤がないことから仕方なく青木が手伝った。そのときの薪は体裁を取り繕う余裕もなく、辛そうで可哀相で。と思いつつも、そこは男の哀しい本能で、青木の方もめちゃめちゃ辛かった。よく我慢したものだと自分でも思う。
 
 子供のように両の手のひらを顔の脇に置き、取り澄ました顔で目を閉じている恋人にそのときのことを重ねて、青木は苦笑する。本当に薪とは、こうなる前から色々あったのだ。ドラックでラリッたこともあったし、悪夢にうなされて、夢と現実がわからなくなってしまったこともある。その他にも、あれやこれやそれや……重なるごとに青木は、我慢の限界値を広げてきた。忍耐強くなかったら、薪とは付き合えない。

 記憶の糸を手繰っていた青木は、やがて自分の中に残って疼き続ける傷跡に辿り着く。
 付き合いだしてから、初めて薪がそんな風に我を失ったのは、蒸し暑い夏の夜。今も耳に残っている、この腕に抱かれながら自分以外の男の名を呼んだ恋人の声。
 どんなに理不尽な振る舞いでも、薪がすることなら何でも許せてしまう青木だが、正直あれだけは二度としないで欲しい。ベッドの中でお互いの興奮が高まって夢中で相手を求め合っているときに、恋人が別の男の名前を呼ぶというシチュエーションは、もの凄くきつい。『鈴木、愛してる!』と叫ばれて射精されたときには、本気で殴ってやろうかと思った。

 でも、できなかった。
 そのときの薪は、青木が見たこともないくらい幸せそうで。彼の幸せを奪いたくなかった。
 
 自分の卑屈な行動にそんな理由をつけ、しかしすぐその偽善性に気付いて、否、と青木は思い直す。彼が幸せならそれでよかったなどと、決してキレイな気持ちばかりではなかった。そんな惨めな立場に立たされてさえ、薪と別れたくなかった。だから何も言えなかったのだ。

 理性を失くした自分が取り返しのつかない失敗をしたことを知って、薪はそれからしばらくの間、ベッドの中で自分の快感を抑えるようになった。それは何ヶ月も続いた。だから、一番濃密になるはずのこの1年に薪と身体をつなげた回数は、実は10回にも満たないのだ。
 あの当時、青木自身もこのままではいけないと思い悩む日々が続いていたが、何ヶ月かしてから、突然薪は自分のことを恋人だと認めてくれて、その日を境に再び薪と愛し合えるようになった。あの時の薪の心理は、未だにわからない。解らなくとも青木としては、『僕の恋人はおまえだけだ』と言ってくれた薪の言葉を信じるしかない。

 そう言ってはくれたものの、薪はまだ鈴木のことを忘れていない。行為の最中に鈴木とダブることがあるのか、たまに間違われる。
 鈴木の名を口走ったのはあの一回だけだが、こういうことは何となく分かるものだ。もちろん、薪もわざとやっているわけではない。意識的に、始めから終わりまで彼を重ねているわけではなく、身体に与えられる刺激や感覚に触発され、ふとしたはずみに彼のことを思い出してしまうらしい。
 それを青木は肌で感じ取る。そして薪は、そんな青木を鋭く見抜く。
 自然とお互い動きがぎこちなくなって、結果、薪は痛み以外のものを感じることができず、行為を中断する羽目になる。

 セックスしている最中に、恋人に他の男を重ねるなんてものすごく不誠実だ。もともと不実な行為が許せない薪は、当然自分のことも許せない。身勝手なくせに自分を責めるのが得意な薪の落ち込み方は、端で見ているのが辛くなるくらいだ。薪を責めることはできない。青木にできるのは、薪の気持ちの整理がつくのを待つことだけだ。
 しかし、本音ではかなり辛い。

『オレは鈴木さんじゃありません!』と叫びたくなるのを堪えるのがどれだけの忍耐力を要するか、言葉ではとても言い表せない。でも、薪に泣かれるのはもっとつらい。だからと言って慰めるのもおかしな話だ。仕方がないので、青木は何も言わずに薪を抱きしめることにしている。
 そうやって薪が眠るまで、黙って頭や背中を撫でてやる。薪は礼も詫びも言わず、眠りに就く。そのことには触れないようにして、昨夜のことは忘れた振りをして、翌日から再び恋人同士に戻るために、その沈黙は必要なのだ。

「恋人、か」
 青木は自嘲気味に、小さく呟く。
 薪も自分も、嘘を吐いている。相手のことも自分のことも、騙し続けている。その嘘がなかったら、この関係はとっくに崩壊している。
 嘘で塗り固めた関係。それを恋人と、果たして呼べるものかどうか。

 青白く見える目蓋の奥に、今は隠された亜麻色の瞳。その瞳に、誰かと重ねることなく青木だけを映してくれる日が、いつか来るのだろうか。安らかな寝息を立てるつややかなくちびるが、迷うことなく自分の名前を呼んでくれる時が訪れるのだろうか。

「一度でいいから……好きだって言ってくださいよ」
 どんなに焦がれても。薪は自分を愛さない。
「オレのこと愛してるって。ウソでもいいから、言ってくださいよ」
 愛さない。

 薪が愛しているのは、自分が殺した親友だけだ。殺されることで薪に愛されるなら、いっそ殺されてみたいと思ってしまう。それで薪が狂おうが死のうが、知ったことか。こっちはとっくに狂わされているのだ。もう、何年も前から。

 青木はひっそりとため息を吐き、そっとベッドを抜け出す。そろそろここを出ないと、終電に間に合わなくなる。薪は、青木が無断で家に泊まるのを許してくれない。そんなけじめのつかないことをするなら別れる、と宣言されている。
 その冷たい言葉の裏に隠されている薪の気遣いを思うと、青木は薪のルールに従わざるを得ない。つまり、夢の中では誰のものになるのか、薪にも自信がないのだ。意識の届かない深い部分、魂の根底で薪が求めているのは……。

「あー、止めた。オレらしくない」
 青木は大きく息を吸い、自分のマイナス思考を止めた。
 ウジウジ悩んだところで、薪が自分を好きになってくれるわけではない。悩んでもしょうがないことは悩まない。これは青木のポリシーだ。今日はせっかく恋人と楽しいときを過ごしたのだから、彼の夢が見られるよう、頭の中はかわいらしい薪の笑顔で満たしておこう。

 青木一行という男は、生来の楽天家だ。恋人との関係がこんな状況にありながらも、いつかは薪も自分のことだけを見てくれる、と普段は信じている。
 が、鬱屈した想いを抱えていることも事実だ。平生は心の底に押し込めているその想いが、不意に噴出す可能性もないとは限らない。何といっても、青木はまだ27歳。年上の恋人に合わせようと背伸びをしていても、内実は年相応に未熟な部分も多い。

 そして、何度目かの偽りの夜。
 それはとうとう、形を伴ってふたりの前に姿を現した。


*****


 あ、やっぱり泣かれちゃったかな? てか、トドメ?
 これから盛り返しますから!
 ええ、多分。



 

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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