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ハプニング(1)

 1万拍手のお礼です。
 あおまきさん入れ替わりという突拍子もないお話なのと、本編の薪さんなら絶対にしないことをしちゃうので、カテゴリは男爵でお願いします。 でも、カンチガイはそれほどひどくは、あ、やっぱりするかも(笑)

 拍手のお礼なので、Rはありません。
 笑えるお話に仕上げたつもりです。
 楽しんでいただけたら幸いです。





ハプニング(1)




「青木、知ってるか?」
 ぴん、と長い指を一本立てて、彼は得意げに言った。
 
「心霊現象の多くは、磁気の乱れによって側頭葉のニューロンが活性化し、過去の記憶が無作為に呼び起こされ、その結果脳内に幻覚を生じることが原因なんだ」
 行儀悪くデスクに腰掛け、長い足を組み、椅子に座った華奢な青年を見下ろす。彼の言葉を受けた青年は、きちんと揃えた膝の上に小さな手を載せ、大きな亜麻色の瞳で彼を見上げた。

「はい、聞いたことがあります。でも薪さん、あの」
「断層地帯とか、あと鉄橋にも多いんだ。落雷で鉄橋が磁力を帯びるんだ」
「ええ、知ってます。それで薪さん、あの」
 澄んだアルトの声を幾度も遮って、彼は心霊現象と磁力の関係について滔滔と自分の意見を述べる。彼のバステノールの声は自信に満ちて、気弱そうなアルトの声とは対照的に力強い響きを持っていた。

「MRIシステムは、強い磁力を発生させる。ほら、何年か前にも二人で一緒に同じ幻覚を見たことがあっただろう? 僕の言いたいことはわかるな」
「ええ、解ります。でも薪さん、あの後MRIシステムはリニューアルされて、第一電源入ってなかったし、だから今のこの状況は幻覚ではないと」
「それ以上言うなあああ!!!」

 突然テノールの声が裏返り、悲痛な叫びに変わった。
 乱れた黒髪に両の手が差し入れられ、長い指が頭部を押さえる。その様子を見て青年は、形の良い眉を困惑に寄せ、つややかなくちびるでため息を吐いた。

「どうしてこんなことになっちゃったんですかね、オレたち」
「知るか、僕だってパニクってんだ!」
 さっきまでの落ち着いた態度は何処へやら、黒髪の大男は立ち上がって部屋の中をうろうろと歩き始めた。
 
「きっと神聖な職場であんなことしたから、MRIの神さまが怒って……青木、おまえのせいだぞ!!」
「薪さんがあんまり激しく動くから、椅子のコマが壊れて引っくり返ったんじゃないですか。そのせいですよ、きっと」
「僕のせいじゃないっ、おまえがあんなに突き上げるから、つい……だ、だって今夜のおまえ、すごかったんだもん」
「すみません、薪さんからそういうセリフが聞けるのはすごく美味しいシチュエーションなんですけど、視覚的に自分がその台詞を言って真っ赤になるのは見るに耐えません」
「僕だってまっぴらだ! 妙に下から目線の自分と会話するなんて!!」

 本当に、どうしてこんなことになってしまったのだろう、と青木はいつものクセで眼鏡に手をやろうとし、何もないことに気付く。裸眼でこんなにクッキリと周りのものが見えたのはいつのことだったろう、と懐かしい思いに駆られるが、今はそんなことを思い出している場合ではない。

 今日は久しぶりのデートで、いつもみたいに食事の後薪のマンションへ行こうとしたら、薪が第九に忘れ物をしたと言いだして、仕方なくここに戻ってきた。忘れ物はすぐに見つかったのだが、ここから薪のマンションまでは1時間も掛かる。薪のセオリーで平日のデートは10時までと決められていて、マンションに着いた時点でタイムアウトだ。数週間のお預けは若い青木の身には非常に厳しく、殴られるのを覚悟で薪を抱きしめた。
 意外なことに、薪は抵抗しなかった。
 黙って青木の腕に抱かれて、するがままに任せた。くちびるを合わせ、舌を絡めあい、息を弾ませてもう一度しっかり抱き合った。ネクタイを外したのは薪の方が先だった。恥ずかしそうにうつむいて、それでも大胆に肩を出し、青木を扇情的な瞳で見上げた。

 それからは自然の成り行きというか、薪に誘い込まれたというか、まあ行くとこまで行ってしまったわけだが。
 職場で、椅子の上で愛し合うなんて初めてのことだったから、ふたりとも異様に興奮していたかもしれない。薪の乱れ方もすごかった。激しく揺さぶるうちに動きが大きくなり、負荷が掛かって椅子のコマが壊れた。バランスを崩してふたりは倒れ、抱き合ったまま床に転がった。
 倒れる瞬間、薪の方が下になる、何とかしないと怪我をさせてしまう、と思ったのを覚えている。しかし、咄嗟のことでどうしようもなかった。
 どうしようもなかったはずなのに、倒れたときには青木は薪の下敷きになっていた。自分の背中が床について、上に誰かの重みがあるとわかったときは、薪に痛い思いをさせずに済んだとホッとしかけたが、すぐに押しつぶされそうな重みに悲鳴を上げた。

「ま、薪さん、重いですっ、退いてくださ……?!」
 おかしい、薪がそんなに重いはずがない。それに、自分のこの声は? 喋ったのは自分なのに、何故薪の声が聞こえるのだ?
「痛つ……今、どこかから女の声が」
 薪の声は張り上げると中高音のアルトで、男にしてはかなり高いほうだ。女の声に聞こえないこともない。しかし、いま喋ったのは青木だが。
「えっ!?」
 驚愕の響きを含ませた低音に目を開けると、そこにいたのは―――。

「……青木。この鏡、何処から持ってきたんだ」
「鏡なんかないですよ。まさか・・・・」
「青木。そのマスク、すごく精巧にできてるな。いつの間に作ったんだ?」
「マスクなんかつけてません。薪さん、これは」
「落ち着け、とにかく服を着よう」
「薪さん。パンツは頭に被るものじゃなくて穿くものです」

 うつろな目で腰にネクタイを巻き始める自分の姿を見て、青木は頭を抱えた。現実主義者の薪は、こういう科学で説明のつかない状況にはひどく弱いのだ。秘密だが、同じ理由でお化けの類も苦手だ。
 青木とて、どうしてこんなことが起きたのかは理解できないが、薪と自分の身体が入れ替わってしまったことは事実だ。若くて発想も柔軟な青木は、薪のようにこの現象に姑息な説明を付けようとはせず、冷静に理由を究明しようと努めた。

「入れ替わりは事実みたいですね。どうやったら元に戻れるか、考えないと」
「入れ替わりだと!? そんなこと、あるわけないだろ!」
「いや、だって現実に」
「これは夢だ!! 一晩寝て明日になったら元に戻ってる、絶対にそうだ!」
「そんな。それじゃ何の解決にもならな……ちょっと薪さん、どこ行くんですか」
「10時だ、帰る。また明日な!」
「待ってくださいよ、帰ったって家の鍵が開きませんよ。薪さんのところ、瞳孔センサーでしょう」
 自動ドアへ向かった青木、いや薪が、がっくりと肩を落として帰ってくる。大きな背中を丸めて、しょぼくれると自分はこんなに情けない顔になるのか、薪が自分を苛めたがるわけが分かった、と青木はまた妙なことを考えた。

 その夜は、第九の仮眠室で休むことにした。
 翌朝になれば元に戻るのではないかという、薪の根拠のない希望はもちろん叶わなかった。こんな状況でも深い眠りに就いた青木は、朝練の時間にすっきりと目を覚まし、窓から差し込む爽やかな朝日の中で、昨夜は徹夜だったに違いない真っ赤な眼をして憔悴しきった自分の姿を見たのだった。






テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Mさまへ

Mさま、こんにちは!
コメントありがとうございます(^^


>きゃ~!薪さんがパンツを頭に穿いちゃうなんてっ!(あ、でも絵的には青木君なのか・・・じゃあいいや・・・)←!?☆

わはは、素のまんまやらせてみたいです。(←ファン失格)
絵的には青木くんでも、中身は薪さん(男爵)ですからね~、可能性はありますね!(追放されそうだ)


>始まりましたね~♪「ハプニング」続きがとっても楽しみです♪

ありがとうございます~~!
記念すべき1万拍手のお礼なので、リキ入れて書きました。
とにかく、みなさんに楽しんでいただきたいと思いまして。
いつも通り、空回りの独りよがりには目をつぶっていただいて、よろしくお付き合いください(^^


>せっかくだから入れ替わった状態で一度くらい試してみればいいのに~~~(ん?何を?)

だからムリですってば(笑)

>あ、でもこういうシチュは入れ替わったときの状態を再現することでよく戻るんですよ!←(『転校生』か?)

そうなんですよね。
二人も当然、試してはみるんですけど・・・・・・・・そんなに簡単に戻っちゃったら面白くないので☆(←鬼)


>それにしても・・・椅子が壊れちゃうなんて・・・(どんだけ激しかったんでしょう?)

あはは、だからこれ、男爵なんですよ~。
本編の薪さんは、職場でこんなこと絶対にしないし、てか、椅子の上なんかでできるほど、この時期にはまだ熟練してないので~~(^^;

えっ、この椅子になりたいですか?!(爆)
じゃあ、わたしは二人が倒れた床で・・・・・・・・って、なんてヘンタイちっくな会話でしょう(笑)
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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