ハプニング(5)

 最近、キーボードを変えたのですよ。

『FILCO』 というメーカーのキーボードなんですけど、これがすっごく打ちやすい!!
 わたしはもともとメカニカルキーボードの感触が好きで、今まではサンワの製品を使っていました。 
 前のキーボードは壊れたわけではないのですが、キーの文字が掠れて見えなくなってしまって。 その消えた文字というのが、
『A、M、O、K、I、U、N』
……わはははは!!! (掠れた理由に心当たりがありすぎて、笑うしかない)

 別に文字は見えなくてもタイピングに差し支えはないのですが、オットに勧められて事務所のキーボードを FILCO に替えてみましたら。
 これがしっくりと指に馴染むようで~~、今もキーを叩きながら恍惚としております♪
 好みもあると思いますけど、値段的にも千円くらいの差だったら、わたしは絶対にこっちですね。

「すっごくいい!」と褒めまくったら、気を良くしたのか、オットが自宅のPCの分も買ってくれました。 というわけで、現在わたしはキーボードを叩くのがとても楽しいのでした~~♪
 と言っても、現場に出なきゃなので、なかなか事務所にいられないんですけどね☆
 でも、今日と明日は現場がお休みなので、更新したいと思います。 よろしくお願いします(^^








ハプニング(5)





 青木の提案で、ふたりはモニタールームで実験を試みることにした。青木はどこからか大判のマットを用意してきて、昨夜自分たちが倒れこんだ辺りに置いた。元に戻れても大怪我をしたら何にもならない。椅子から転がり落ちるだけとはいえ、打ち所によっては脳障害も起こりうる、その危険性は二人とも承知していた。
 あの時と同じように青木の席で、向かい合わせに抱き合って青木の膝に薪が腰を降ろす。それで準備は完了だ。

 自分の腿に座った身体に、薪は納得できない気持ちになる。
 自分はこんなに小さかっただろうか。手も足も情けないほど細くて弱々しくて、青木の立派な体躯に比べたら寸足らずの人形のようだ。青木はいったい、こんな身体のどこが良くてあんなに僕を欲しがるのだろう?

「昨夜と同じ体勢になったほうが、成功率が高いと思われます。薪さんが足で床を蹴って、イチニイサンでマットの上に倒れましょう。いいですか? 1、2」
「ちょっ、ちょっと待て。僕、そんなに足開いてたか?」
 薪の足は身長に比例してそれほど長くはないから、青木の体型に合わせると大きく広がる形になってしまう。自分の姿は自分には見えないし、その最中は夢中だから自分がどんな格好をしているか気にする余裕はなかったが、頭が冷静な状態で相手の目から改めて見ると、その姿はひどくはしたない。服を着ていてこれだから、これが裸になった暁には……ダメだ、脳内映像にモザイクがかかった。

「いえ、実際はこんな具合にオレの腰に絡んで、薪さん自身はこんな風に上下に動いて」
「うそだ! そんなことしてないぞ!!」
「してましたよ。昨夜の薪さん、すごかったんですから」
「僕が動いたんじゃない! おまえがこんな感じでガンガン突き上げてきたから、だから自然に」
 はた、と薪の顔、いや青木の顔が固まった。おずおずと自分の足の間に目を落とす。

「あれ? なんか……反応しちゃったんだけど……」
「雰囲気なんか何にもなくたって、物理刺激で反応しますからね。木の枝に擦り付けたってイケますものね。男って悲しい生き物ですよね」
「木の枝ってなんだ、どーゆープレイだ!」
 若い頃から淡白だった薪には、思春期の頃にも劣情を持て余した覚えはない。すべての能力を頭脳と美貌に使い果たして、こちらの方面には残り滓しかない、薪は正にその典型だった。
 昔からそういう気分が盛り上がらないと身体も反応しない、例え反応しても自己処理をすればそれで満足で、特に相手を必要としなかった。だから本当は女性経験も5本の指に余るのだが、それは青木には秘密だ。12歳も年上の自分の方が経験が少ないなんて、男の沽券に関わるからだ。

「どんだけ溜まってんだ、エロガキが」
「だって、薪さんなかなかOKしてくれないし、昨夜だって途中で……1ヶ月に2回じゃ足りないんですよ」
 薪にしてみればそれだって多いくらいなのに。若いってのは面倒だ。

「まあ、昨日のオレもその状態だったわけだから、いいんじゃないですか。じゃ、行きますよ」
 数を3つ数えて、薪は思い切り床を蹴った。鍛え上げられた脚力は薪の想像を遥かに超えて、思ったより軽々と二人の身体は宙に浮いた。と思うと、自然の法則で下方に落下し、青木が用意したマットの上に右肩から突っ込んだ。

 どすん。

 マットのおかげで大した痛みはない。しかし、彼らが期待した奇跡も起きなかった。
「……もう一度、試してみますか?」
「そうだな」
 何度か繰り返してみるが、一向に奇跡は訪れない。二人とも柔道を習得しているから、きちんと受身は取れているのだが、逆にそれが失敗の原因かとも思い、敢えて受身を取らずに試してみるが、やっぱりうまく行かない。
 大した期待はしていなかったが、所詮青木の考えることなんかこの程度だ。

「どうしましょう。これからオレたち」
 失意にうなだれる小さな人影。心なしか、声も震えている。
 マットの上に正座して呆然と視線を浮遊させる、自分の丸まった背中をぱしんと叩き、薪はすっくと立ち上がった。
「大丈夫だ、僕に任せとけ。必ず元に戻れる方法を探し出す」
 昨夜のパニックが嘘のように、薪は毅然とした口調で言い切った。勝算があるわけではないが、部下の不安を取除くのは上司の役目だ。
 一日過ごして、これが夢でも幻でもないことが分かった。現実なら受け入れるしかない。その覚悟ができれば、薪は強い。

「それまで、僕はおまえの務めを果たすから。おまえは僕になりきれ」
「そんな、無茶ですよ。オレに室長の仕事なんて!」
 甲高く裏返った情けない声で、青木は叫んだ。無理もない、自分だって入れ替わった相手が小野田あたりの高官で、明日からその仕事をこなせと言われたらパニックになってしまうだろう。
 青木がオタオタする様子はいつもなら笑えるのだが、それが自分の姿をしているとなると笑うどころかしっかりしろと怒鳴りつけたくなる。しかし、これの中身は若干25歳の青木一行で、その年の自分がまだ一課の一職員で大した責任も担っていなかったことを考え合わせると、充分に同情の余地はある。
 そこで薪は青木の目線に合わせて長身を折り、細い膝に置いた小さな手をじっと見つめている青木を安心させるよう、しっかりした声音で言った。
 
「安心しろ、僕がフォローしてやる。上手い具合に、てのは語弊があるけど、おまえの次の仕事、特捜(すでに刑が執行された死刑囚の脳を起訴内容と照合する捜査)だろ?」
「ああ、昨日刑が執行されたんでしたね」
 猟奇事件の死刑囚の脳は、処刑当日に第九に回される。それはすでに慣例になっており、職員のシフトの都合上、事前に担当者を決めることにしている。特捜は通常の捜査に比べて精神的な負担が大きいから、ひとりに集中しないよう、なるべく公平に当たるようにしている。今回は青木の番なのだ。
「昨日の夕方に脳が届いてたから、明日にでも捜査にかかれる。そのサポートに僕が入ることにすれば、職務時間中は二人きりでいても不自然じゃない。休日も休み時間も、なるべく一緒に」
 薪が、ふたりが一緒にいるのが自然に見える方法をあれこれ考えていると、青木はそれまで不安そうに揺らしていた亜麻色の瞳に暖かいものを湛え、薪の顔を見てふわっと笑った。自分の顔だが、それはなかなかにかわいいと不覚にも薪は思い、青木が自分を可愛いと言うたびに殴り倒していたことを思い出して、軽いジレンマに陥った。

「なんで笑ってんだ、おまえ」
「薪さんと一緒にいられる時間が増えるのはうれしいです」
「呑気なこと言ってる場合か!」
 青木のKYを嗜めるが、彼の気持ちが上向きになってくれたのは嬉しい。ここからは、ふたりのチームプレイが鍵になる。

 薪は右手の拳を握って青木の前に出した。気付いて、青木が自分の拳を合わせてくる。
 亜麻色の瞳を見つめて、薪は削げた頬に好戦的な笑みを浮かべた。


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
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