ハプニング(12)

 こんにちは~。
 えらく間が空いてしまって、すみません~~。


 ブログ開設以来、お話の間が20日も空いたのは初めてです。
 もうなんの話だったか、書いてる本人も忘れそうなお話にお付き合いくださる女神さまが、この世に何人くらいいらっしゃるのかしら。
 しかも、あおまきすとさんに叱られそうな展開になってきて……。(^^;)(←またか)

 どうか広いお心でお願いします。 




ハプニング(12)





 最近の薪の楽しみは、アフターの焼肉屋だ。
 この身体になってから、やたらと肉が食べたくなるのだ。しかも大量に。その割にすぐお腹が空くし、まったく燃費の悪い身体だ。

「すいません、カルビ3人前とビール追加!」
「よく食うなあ、おまえ」
「若いですから、オレ」
 小池に曽我、宇野の3人が呆れ顔で見守る中、薪は10皿目のオーダーを入れた。
 第九の仲間たちとワイワイやりながら、ビールを片手に肉を焼く。室長という立場になってからは、こういうコミュニケーションからすっかり遠ざかってしまっていたが、こうしていると捜一の頃に戻ったみたいで、とても楽しい。室長の重責で苦しんでいる青木に悪いという気持ちもあるが、これまで通り仲間たちとの付き合いもこなしておかないと、元に戻ったときに青木も困るだろう、と自分を納得させて、アフターの時間を思い切りエンジョイしている。

「そういえば小池。二課の課長、あれからどうした?」
「ああ。なんか、諦めたみたいだ。何も言ってこなくなった」
 曽我と小池のやり取りを聞いて、薪は密かに安堵する。間宮にもらった資料を基に、差出人不明のメールを送っておいたのだが、どうやら効いたらしい。
「薪さんが裏から手を回してくれたのかな」
「まさか。俺、薪さんには何にも言ってないし」
 直接相談を受けなくても、部下の身に何が起こっているのか把握するのは室長の役目だ。職務上のことはもちろん、プライベートにおいても最低限のことは知っておく必要がある。どんな友だちと付き合っているか、結婚を予定している相手はいるか。警察官という立場上、切らなければならない付き合いもある。監査課あたりにすっぱ抜かれるまで部下の素行不良に気付かなかったら、室長の職を辞さなければならなくなる。

「薪さんに言ったところでさ、また嫌味言われるのがオチだしな」
「そうかあ? ちゃんと相談すれば、きちんと答えてくれるだろ」
「答えはくれるんだけどさ、言い方がきついんだよ。とにかく、あのひとの言葉ってグッサリ胸に刺さるんだよな」
 酒が入ると話題に上るのが、女の子の話と自分の話、つまり室長の陰口だ。
 こういう席での上司のこき下ろしは当たり前のことだし、薪は心が広いから何を言われても平気だが、とりあえずはいつ誰が何を言ったか、すべて記憶しておくことにしている。別に100倍にして返してやろうと決意しているわけではない。一応、念のためだ。

「こないだ射撃か柔道の訓練のコースに参加してみろって言われて、今のところ業務に使わないからって断ったら、薪さんに何て言われたと思う?」
 口火を切るのは大抵小池だ。……今度の土日のメンテ当番は小池に変更するよう、青木に指示しておこう。
「『向上心を持たない生き物を、僕は人間とは認めない』。こうだぜ」
「うわ、ひっでー」
「きっついなー」
 ……そんなこと言ったっけ?

「本当にそんなことを?」
「本当だよ。まあ、青木は俺たちの目から見ても努力してるからな。言われたことないだろうけど」
 あ、思い出した。たしかその後に、おまえなんかサル以下だ、って言った覚えがある。それは敢えて省いたのか、それとも忘れたのか。
「バカとかマヌケとかは、しょっちゅうですけどね」
 だって本当にバカなんだもん、こいつ。
 
「そうそう、一日に一回は『バカ!』って言われてるよな。……あれ? でもこの頃聞かないな」
「そうなんだよ。薪さん、近頃何となく元気ないんだよ」
「こないだも貧血起こしたしな。疲れが溜まってるのかな」
 彼らが倒れた自分を心配して代わる代わる仮眠室に訪れてくれたことを知っている薪は、気恥ずかしさにうつむいた。同情されるのではなく、もちろん義理立てでもなく、純粋に気遣われるのは、照れくさいようなこそばゆいような、不思議な気分だ。

「青木とやってた特捜のときも、気分悪くなってたろ? あの人が画に酔うわきゃないから、風邪でも引いてるのかと思ったんだけど」
 青木のヤツが未熟なんだ、と真実を口にすることもできず、薪は黙って箸を動かし続けた。
「最近は仕事も落ち着いてるし、薪さんも定時で帰ってるみたいだから、特に疲弊する要因は無いはずなんだけど。以前みたいな溌溂さがなくなったっていうか」

「仕事は暇でも、アフターが忙しかったりして」
 情報通の小池が、意味ありげな口調で思わせぶりなことを言う。
「アフター? もしかして、昇格試験の勉強でもしてるのか」
「ちがうちがう。もっと色っぽい話」
 小池の言葉に、周りの3人は顔を見合わせる。どの顔も、信じられないという表情だ。
 薪と艶話の取り合わせは、ありそうでないものの代名詞だ。
 あの容姿から推し量るに、さぞ豊富な恋愛経験を積んでいるかと思いきや、いざ蓋を開けてみると薪は第九の誰よりもオクテだったりする。もともと恋愛には興味がなく、どんなときでも仕事最優先。プライベートの時間が皆無に近い室長と恋をしようと思ったら、MRIのモニター画面にでも住み着くしかない。

「薪さん最近、色んな女の子と付き合ってるみたいだぜ」

 ……だれが!?
 その場の誰もが驚きの声を発する中、誰よりも驚いている薪本人は、声も出せずにいた。

「へえ? あの唐変木が?」
 覚えとくぞ、宇野。
「相手は生きてる女の子か?」
 どういう意味だ、曽我!
「似合わないよな、あのひとに女の子なんて――― 痛って! 青木、レモン目に飛んだぞ!」
 小池の細い目にヒットするとはナイスコントロールだ、ってそれどころじゃない!

「まさか。室長がそんなことするはずがないですよ」
 おかしな噂を立てられたら、戻ったときに苦労するのはこっちだ。ここは否定しておかないと。
 薪が保身から無責任な噂話を否定すると、3人の部下は苦笑して、
「青木の室長びいきが始まったよ」
 まずい、ここで庇うとやぶへびだ。
 それ以上、否定することもできず、事情を話すことはもっとできず、薪は自分の醜聞を聞く羽目になった。

 小池の話では、薪が女性と会っている姿が何度も目撃されているそうだ。その手の噂には尾ひれが付くものだから、この情報は当てにならないが、建物の陰で抱き合っていたとか、エレベーターの中でキスをしていたとか、中庭の茂みの中でその先の行為に及んでいたとか、僕がそんなことするかっ、間宮じゃあるまいし!
 職場だぞ!? 神聖な職場でそんなこと―――― したから、こうなったんだっけ……。

「小池、それくらいにしてやれよ。青木は純情なんだから」
 曽我の言葉に薪は一瞬、何もかも暴露してやりたい誘惑に駆られる。
 青木が純情だって?
 冗談じゃない、ベッドの中ではいやらしいことばかり言ってくるし、時と場所を選ばないし、以前なんか真っ昼間から台所で……明るいところであんな格好にされて……。
 
「真っ赤になっちゃって、カワイイねえ、青木くん。でもちょっと、知り合いの艶聞は生々し過ぎるよな」
 赤面の理由を取り違えた宇野と曽我が、からかう口調で小池のお喋りを止める。よし、おまえらボーナス査定プラス1だ。小池はマイナス1。
「毎日見てる顔だからな。想像してんだろ、このスケベ」
 想像じゃなくて、思い出してるんだ。

 あれからもう半月。この若い身体は渇きを覚えていて、そういう話題には敏感になっている。
 青木の身体は薪には理解しがたい構造になっていて、聖職者の暮らしが3日ともたない。オスの機能が一番盛んな10代ですら、その現象が週に1度くらいだった薪には、毎朝のように暴れる身体の中の問題児にどう対応して良いのかわからない。仕方ないので処理はするのだが、これがけっこう時間が掛かって、自分なら清掃込みで5分で済むのに面倒なやつだと、やっかみ半分でヤケクソに手を動かしている。
 これだけ欲求が強ければ、デートの度に求めてくるのは当然かと思い当たるが、そこを納得してしまうと自分が地獄を見るので、敢えて改善策は提示しないことにした。元に戻っても今までどおり、原則1ヶ月に2回のベースライン、後は臨機応変=仕事の状況と薪の体力に合わせる、ということで。
 そこまで考えて、薪はふと不安になる。

 噂を聞いた直後は、青木本人に確かめるのも馬鹿馬鹿しいと思ったが、自分の身体に入った青木が、以前と同じ貪欲さを持っているとしたら?
 性的な欲求には精神面が強く影響するから、可能性がなくはない。そこまでバカではないと思うが、引っ叩いても蹴り倒してもしつこく求めてくる青木を思い出すと、そして最終的には9割の確率で青木が目的を遂げている事実を鑑みると、嫌でも不安が募る。

 まさか青木のヤツ、言い寄ってくるのをいいことに、片っ端から食ってるのか? 外見は40のオヤジだけど、中身は28歳の男だ、それはやりたい盛りだろう、でも僕の身体だぞ!?
 僕だっておまえの身体を手に入れて、これなら栄光の5人斬りも夢じゃないと思ったけど、必死で堪えたんだぞ!

 いつ元に戻れるチャンスがあるかわからないから、なるべくふたりきりでいる時間を作ろうと最初は思ったものの、現実はこうして薪は青木の交友関係をこなし、青木は薪の義理を果たしている。青木は今日は田城所長と一緒に市民団体の会合に参加しているはずだ。予定では、あと2時間ほどでマンションに帰ってくるはず。それまではここで時間を調整しないと。この身体では自分の家に入れないのだ。
 戻った後のこと、そして想像したくはないが戻れなかったときのことを考えると、人間関係の保持は大切だ。さらには、不自然なまでにふたりきりだと、あらぬ疑いを掛けられる。そこに真実が含まれているとなると、これはもう完全なやぶ蛇だ。
 話し合いの上、3週目に入ってからはお互いに距離を取っていたのだが、こんな噂が出てくるなんて。

 青木に限って、そんなことはないと思うけど。好きな相手とじゃないとできない、って言ってたし。
 ……でも。

 一応本人に質しておくか、と心に決めて、薪は11皿目の牛カルビを追加した。




テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
文字サイズをお選びください
最新記事
最新コメント
拍手のお返事
いつもありがとうございます!

最新拍手コメのお返事はこちらです。

過去の拍手レスの確認は、該当記事の拍手欄を押してください。
鍵拍手コメのレスは、記事のコメント欄にお返しします。
月別アーカイブ
カテゴリ
詩 (1)
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
QRコード
QRコード
FC2カウンター
こんにちは(^^
現在の閲覧者数: