ハプニング(15)

 こんにちは。
 メロディ、発売されましたね。
 ふふふ……さすが清水先生だと思いました。 本当に容赦ないデス。


 ちょっと私信です。

 Mさま。
 そうです、ご指摘のアニメの主題歌です。(笑)
 これ書いた頃から再放送してて、今、翔陽戦が終わったところかな。
 うちの話の題名って、曲名から取ってるの多いんです~。
「桜」とか「鋼のこころ」(ハガレン)とか「運命のひと」とか「消せない罪」(これもハガレン)とか「天国と地獄」とか「ジャイアントキリング」とか。(最後のはまだ公開してませんが)
 曲のイメージからお話を作ることも多いです。 何を聴いてもあおまきさん、あるいはすずまきさんに自動変換されるので。(←人として終わってる)

 それと、言い忘れましたが。
 読んだら削除してくださいねっ!!! ぜったいですよっ!!


  
 


ハプニング(15)





 鏡の虚像を打ち壊そうと大きく振り回した手が、何かに当たって痛みを覚えた。カシャン、という音に目を開けてみると、薄暗がりの中、ベッドシェルフの遥か上に伸ばされた大きな手が見えた。
 続いて見慣れない天井と照明器具が目に入り、薪は一瞬、自分の居場所に不安を覚える。ここは事件のあった家の寝室で、今にもあのドアを開けて西園冴子が姿を現すのはではないかと愚にもつかない妄想が頭を過ぎるが、続いて辺りを見回せば、目に付いた車のポスターがその惑いを消してくれる。
 ここは青木の部屋だ。
 今日は室長会の懇親会で、薪の身体は海辺のホテルにいるはずだ。酒が入るからホテルに泊まって、軽く観光を交えて、明日の夕方帰ってくる。薪の眼がないと自宅には入れないから、今日は青木の部屋で寝ることにしたのだ。

 シェルフに置いたリモコンで、薪は部屋の明かりを点けた。夢を見た後は、部屋を明るくしないと落ち着かない。闇の中には悪夢の根源が潜んでいるような気がして、身体の震えが止まらない。
 入れ替わってから一人で夜を過ごすのは初めてだ。それで不安になって、こんな夢を見たのか。相変わらず、情けない男だ。
 そう、青木の姿になっても、何も変わらない。僕は僕でしかない。
 
 いつもするように、薪はベッドの上で自分の身体をぎゅっと抱いた。膝を抱え込もうとして、その長さに戸惑う。大きすぎるのも考え物だ。
 うずくまって視線を下に落とせば、床には先ほど自分の手が払い落としたフォトスタンドがある。薪は腕を伸ばしてそれを取り上げ、苦笑混じりにひとりごちた。

「ったく、こんなもの飾って。誰かに見られたらどうするつもりだ」
 亜麻色の髪の青年が、陽だまりの中で笑っている。白いシャツを着て、細い腕を前髪の上で交差させ、蕩けるような笑みを見せている。
 青木の前でこんな表情をしたことはないし、こんな写真を撮らせた覚えもないから、これはおそらく薪の昔の写真で、雪子から青木の手に渡ったものだろう。

 自分のこの笑顔の先に必ずいたひとのことを思い出して、薪の胸がずきりと痛んだ。 
 彼がいなくなった今、自分は二度とこんなふうに笑うことはできない――――。

 落としたはずみに写真の位置がずれて、その裏に隠された二枚目の写真の角が見えている。自分もこうして、鈴木がひとりで写っている写真の裏に二人で撮った写真を入れていたから、青木も同じようにしているのかもしれない。そう思って覗いてみると、そこに現れたのは。

「……あのバカ」
 いつだったか、ふたりでベッドに入っているときに撮った写真だ。警視昇任のお祝いに何が欲しいか聞いたら、薪と一緒に写真を撮りたいと言った。天気が良かったから近くの公園に出かけて普通の写真も撮ったのだが、その夜、ベッドの写真も欲しいと言い出して。哀れっぽく土下座までして頼むから、仕方なく撮らせてやったのだ。
 写真の中で青木は、薪の後ろに座って薪の身体に左腕を回し、右手を伸ばしていた。フレームアウトした右手の先には、カメラがあるのだ。
 薪は赤い顔をして、青木の腕の中にすっぽりと納まっていた。腰から下には毛布がかかっているが、この下はもちろん裸だ。

 レンズから目をそらした自分の顔を見て、薪は意外に思う。
 笑ってる。
 嬉し恥ずかしって感じで、笑ってるじゃないか。

 あの時、僕はこんな顔をしていたのか。青木が携帯に送ってきた写真は小さかったし、恥ずかしくてロクに見ていないから気付かなかった。
 二枚の写真を見比べて、薪は少し頬を赤らめると、元通りにしまってベッドシェルフに立てた。それから床に散らばった雑誌を本棚にしまおうと、拾い上げる。ついでに何か拝借してベッドで読もう。今夜はもう眠れそうにない。
 自分がシェルフから落としてしまった本は、薪にはまったく興味の無い雑誌だ。青木が眠る前に見ているのだろう数冊の車専門誌。それを薪は本棚に戻そうとして、頁の間に挟まれた薄い冊子に気付いた。

「なんだ、これ」
 それは一冊のノートだった。表紙に、『研究書 極秘扱』と書いてある。

 極秘などと言われたら読みたくなるのが人情というものだ。それに、研究書というからにはMRI捜査に関することに違いない。室長として、部下の業務レベルを確認するのは当たり前のことだ。
 薪は勝手な理屈をつけて、本棚の前に立ったままノートを開いてみた。そこには青木のかっきりした四角い文字が並んでいて、日付順に記載されているところから日記かと思い、咄嗟に読むのを止めようとしたのだが、そこに何度も自分の名前が出てくるのを見て、好奇心が抑えられなくなった。

「こんなに細かく……」
 ざっと目を通して、薪は思わず呻いた。
 それは日記ではなかった。まさに極秘の研究書だった。


*****

 2060年6月×日。薪さんがコーヒー好きだと三好先生に教わった。珈琲問屋でキリマンジャロAAを購入。淹れてみるが店で嗅いだほどの香りは感じられない。淹れ方の問題か?

*****

 2060年9月×日。今日のコーヒーは上手くできた。薪さんは一口飲んで、ちょっと目を見開いて、再度香りを確かめるように湯気を吸い込んで、少しだけ笑ってくれた。オレのコーヒーであのひとの笑顔が見れるなんて、サイコーの気分!

*****

 2060年12月×日。とうとう、薪さんの好みにぴったりのブレンドを編み出した。BM10、M10、JR5、B40、C35。これを飲んだとき、薪さんの顔がふわっと笑ったんだ! やった!!

*****

 2061年4月×日。須崎の前で、オレのコーヒーが飲みたいと薪さんが言ってくれた。胸がスカッとした。キリマンジャロのストレート。明日からは、薪さんの好きなブレンドを用意しよう。

*****
 
 2061年5月×日。今日は記念すべき日。なんと、薪さんがオレを専属のバリスタに任命してくれた!! これは世界的な祝祭日にすべきだ!!! ヤッホー!!!

*****

 試行錯誤と結果が連綿と記され、それに対する薪の反応が事細かに書かれたその記録は、つい最近の日付まで記されていて、青木の研究は現在も続いていることを示していた。

「……バッカじゃないのか、あいつ」
 これが、東大法卒の男の研究書か。なにが極秘だ、アホらしい。

 呆れ果てた口調で吐き捨ながら、薪はそのノートを見つめる。ふと、本棚のガラスカバーに映っている自分の顔が綻んでいるのに気付いて、慌てて厳しい表情を作った。鏡面の自分を指差して、
「職務の習得に割くべき余暇をこんな無駄なことに使って。次に顔を見たらソッコーで説教だ。覚悟しとけよ、青木」
 そして本棚にノートを戻そうとして躊躇い、だれが見ているわけでもないのにコソコソとそのノートを胸に押し付けるように抱いて、ベッドに戻った。

 今夜はあんな夢を見てしまって、もう眠りは諦めていたのに、布団の中に入って青木の匂いに包まれるとまた眠気が差してきた。
 ノートを傍らに置き、その上にそれを書いたであろう手を載せて、薪は眠りに落ちた。




*****

 原作の青木さんが大変なのに、呑気なことやっててすみません。(^^;


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Wさまへ

Wさん、コメントありがとうございます(^^

ああー、あれは痛いんですよね。
わたしもなったことがあるので、わかります。 毎日同じ時間におなかが痛くなって・・・・・・・断食してるんですか。 辛そう・・・・・。
そういえば、この病気の理由は胃腸が疲れているせいだから、休ませることが肝心です、とか医者に言われて、わたしも2日くらい断食した覚えがあります。
お身体、大事にしてくださいね。


はい~、12月号も衝撃的でしたね。 
つはー、ぱねー、容赦ねー、というのが最初の感想でございました。
青木さんがお母さんに責められるシーンは、もう純粋に彼が可哀相で・・・・・・・。
すみません、お母さん、そりゃないでしょう、と子供のいないわたしは傲慢にも思ってしまいました。

その他にも、色々と感じることはありましたね。
こちらの感想に関しましては、後ほどWさまのブログにお邪魔します。

でも、一言だけ。
「エアー嫁」←めっちゃウケましたっ!!
わたしもここはそう思いました! ものっそ可哀相だよ、彼女!



ここからコメントのお返事です。


> ハプニング、面白いです!
> 青木ばでぃが快適すぎて男爵が「も、いっか♪このままでも♪」とか本気で言い出したら、どうしようかと思いましたが(@_@;)

かなり本気でしたね。
何たって、カテゴリが男爵ですからね(笑)


> だって夢にまで見たいいガタイと若さ、食欲もりもりでメシウマ、痴漢にあう心配なんてないし、見合いや合コンで深○恭○似の巨乳ぷりんちゃんゲットだぜ!!とか・・・

考えてますね、絶対に!
スケベオヤジ的なことを!!(←刺されそう)


> 青木の身体スペックに薪さんの頭脳って、何気に輝かしい未来が保証される気が・・・。

なるほど、それはちょっとしたスーパーマンですね。
公安とかからスカウトが来そう。


> でも、男爵はそんな気ないですもんね、ね!!・・・ね?

ないです! ないと思います。・・・・・・ないよね?(笑)


> 今回の冴子さんもですが、しづさんのお話では事件そのものだけでなく、関係者の心理がしっかり書かれているのが凄いです!!
> それだけでスピンオフで一本お話作れそうですもん(@_@;)
> 二次創作でここまで作り込まれる方、珍しいんやないでしょうか?

そんなことないですよ~~~、
せっかくお褒めいただいたのに恐縮ですが、きちんとした設定とか資料調べとかしてなくて、思いついたことを適当に書き散らかしてるだけなんです、すみません。 だってシロウトだもんっ(←逃げ道確保)


> 皆、ただ悪いとこだけで終わらないですし・・。
> 家庭科室のみどりちゃんもそうでしたが、女性キャラ・・それも一応悪役ポジのキャラも「嫌なオンナ」だけで終わらないですよね。

ここを読んで、
あれ、どうして次の章の展開をWさんはご存知なんだろう、と思いました。
きゃー、またもや読まれてる?!
すごいなあ、Wさんは。(てか、しづが浅いのか?)

それから、Wさんのご意見について。
わたしも同じです!
たまにありますよね。 引き立て役にしてるつもりなのかな? 
どちらにせよ、ああいう描き方では引き立てられる主人公の輝きも、たかが知れると思います。
引き立て役を魅力的に描いて、主人公はさらにその上を行く。 それがプロの仕事ですよね。
うちのは、脇役は魅力的なのに主人公はダメダメ・・・・・・・・シロウトだもんっ!(←脱兎)


ありがとうございました。
コメント、とっても嬉しかったです(^^

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Mさまへ

Mさま、いらっしゃいませ。

>それにしても・・・青木君は二人のラブラブ写真をそんなところに隠し持っていたのですね!(夜になるとこっそり出して見てるのでしょうか・・・?)

ですね、見てますね、てか、何かに使ってますね、何にって・・・・・・・すみません、ひとりツッコミの限界を悟りました。


>そういえば薪さんの携帯には見られちゃまずい写真が保存されてるんでしたよね☆このときの写真でしたか♪(消せばいいのに保存しているところが薪さんらしくていい♪)

そうそう、「運命のひと」に出てきたあの写真です。
カテゴリは男爵なんですけど、エピソードは本編と多分に被ってます。

本当に、消せばいいのにねえ。 消せないんでしょうねえ。
・・・・・・・・原作の薪さんの携帯にも、青木さんの写メ(隠し撮り)がたくさん残っていたりして(笑)


追伸。
・・・・・・・消してください。 他人に拾われたら大変なことになりますよ?
Mさまが社会的抹殺の憂き目に遭わないか、心配です・・・・・・。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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