折れない翼(3)

 こんにちは~。

 今日はちょっとだけ怒ってます。
 何故かと言うとですね、
 最近の若い人は、口の利き方がなってませんねっ!(←年寄りの得意のセリフ)

 昨日の交通誘導員さんとの会話。
「代理人さん、ちっちゃいですね~、身長いくつあるんですか?」
 ぐさっ!!
「……148センチです」
「うっわ、ちっさ!」
 ぐさぐさっ!!
 そのままフォローもなく去っていく誘導員。

 ひーどーいーよー!!
 誰がミジンコドチビだよーーー!!(←言ってない)

 女性に年と体重を尋ねないように、チビには身長を尋ねてはいけません。
 ぷんぷん。


 とか言いつつ、こちらは大分に失礼なお話で。あはは、ごめんなさい~~。

 





折れない翼(3)





 捜査一課の羽佐間班に新しい人員が加わって2週間が過ぎた頃、隣の世良班と合同で歓迎会が開かれた。
 捜査一課には約350人ほどの捜査員がいるが、7月の人事異動で捜査一課に配属されたニューフェイスは合計で20人ほど。全体の1割に満たない人数だ。そのほとんどが所轄からの栄転による者で、つまり現場の猛者たちである。その中で東大出身の23歳のキャリアは、どうしようもなく異色な存在だった。
 所轄と警視庁の違いはあるものの、他の新人たちには現場の経験がある。場所が変わっても捜査は捜査、基本的にやることは同じだ。飲み会ともなれば今まで手がけた事件の話に花が咲くが、現場経験のない新人キャリアは聞き役に徹するしかない。

 歓迎会が開かれた居酒屋の座敷で、20名ほどの膳が並べられたその末席にちんまりと座って、薪はひたすら沈黙を守っていた。他の者たちは現場の苦労話で盛り上がっているようだが、正直な話、薪には彼らの言っていることが良く分からない。警察官同士の会話には隠語が多く、まだこの職業について日の浅い薪にはちんぷんかんぷんだった。分からなかったら訊けばいいのだが、それも面倒くさく。また、わざわざ問い質してまで参加する価値のある会話とも思えなかった。
 というのも、
「でもって、捕まえたホシがエライいい女で。何とか見逃してくれってんで、仕方ねえから取調室で」
 下品な笑い声の混じるそんな話に加わるほど、自分は低俗な人間ではない、と当時の薪は思っていた。現場経験はないが、志の高さはここにいる誰にも負けない。自分は将来、彼らの上に立つ人間だと自負していた。

 世良班の新人の中に、佐藤という若い刑事がいた。薪より3つ年上の、がっちりとした筋肉質の男だった。
 彼は薪とは正反対で、その話を熱心に聞きたがった。彼の熱意をからかった先輩刑事が「佐藤は童貞か」と男ばかりのこういう席では当然のように出る笑い話に持ち込もうとすると、佐藤は真顔で、「実はそうなんです」と言ったものだから、年若い連中には次々とその質問が回ってくる羽目になった。
 座がその手の話題に遷り変るのを聞いて、咄嗟に薪は嫌悪感を抱いた。猥談の類は、聞くのも話すのも苦手なのだ。
 いっそのこと中座してしまおうか、と薪は思い、サークルのコンパと違ってこれは仕事の一環なのだからそれはよくないと考え直した。ただじっと身を固くして、時間が過ぎるのを待とうと思った。

「キャリアってのは酒の席でもすまし顔なんだな」
 すっと隣に指導員の羽佐間が座った。開けたばかりのビール瓶を薪の方に差し出して、
「先輩たちに酌でもして来いよ。それが新入りの務めだろ?」
「佐藤さんがやってるから、僕はいいでしょう」
 酒を注ぎまわりながら、よろしくお願いします、と頭を下げている。あれが普通の新人の姿なのだろう。それは薪にも分かっていたが、自分はキャリアだ。普通の警察官とは違う。

 そういうもんでもあるめえよ、と羽佐間は彼独特の言い回しで薪の態度を非難し、しかしすぐに翻って、
「まあ、強制はしねえけどよ。今は仕事中じゃねえからな」と矛を収めた。
 それから手に持っていたビールを、薪のコップに注いでくれた。世話になっている指導員の羽佐間には日頃の礼に酌をすべきだと思い、羽佐間の置いたビール瓶を取り上げ、彼のコップに差そうとしたところに、例の質問が回ってきた。

「次は薪だな。こら、白状しろ」
「僕もあんまり。でも一応は」
 当たり障りの無い答えを返そうとして、しかし次に浴びせられた言葉に、薪は絶句した。
「だれがおまえのオンナ経験なんか聞くかよ。オトコだよ、オトコ! 経験あんだろ?」
 ぎゃはは、とけたたましい笑い声が部屋中に響き、薪は一瞬でピエロになった。

 それは単なる酒の席の戯言で、その質問を発した先輩は別に薪に恨みを持っていたわけでもなんでもなかった。それどころか、どことなく周囲から浮いた存在の新人を場に馴染ませようと、そんな冗談を言い出したのかもしれなかった。しかし、それは若い薪にとっては決して許すことのできない侮辱だった。
 
 大切なひととの思い出を、嘲笑われたような気がした。

 言われたとおり、僕には男性との経験があるけれど、それをこんな風に茶化される筋合いは無い。
 あれは僕の初めての恋で、端から見たら浅はかな行動であったかもしれないけれど。あの頃の僕の精一杯を鈴木はちゃんと受け止めてくれて、たくさんたくさん僕に愛を返してくれて、それを貫き通すことはできなかったけれど、だけど僕には未だに一番大切な恋で。

「オンナは少なくても、オトコは多いだろ? 何人くらい知ってんだ? このスケベ! オトコ好き!」
 10年後の薪なら。
 酒に酔った振りをして彼に近付き、「いやだなあ、××さんたら! 僕は女の子100人は斬ってますよ!」と明るく笑いながら胸倉を掴んで張り倒し、関節技のひとつも決めているだろう。しかし、このときの薪はまだ23歳。生真面目さはそのまま固さにつながって、薪は純粋な怒りを感じた。

「おまえってそういう顔してるよな。大学ではさぞモテたんだろ、オトコに」
 無神経なこの男を殴りつけたいと思った。彼との大事な思い出を踏みにじられたようで、それは薪にとっては極刑に値する蛮行だった。
「おい、佐藤。なんなら薪に筆卸ししてもらえ!」
 狂ったような笑い声が部屋に溢れかえった。我慢ならなくなって、薪は席を立った。
 後ろで羽佐間が、「悪りい、ちいと飲ませすぎちまった」とフォローを入れてくれていたが、それに感謝する余裕も無かった。

 部屋中の人間が自分と鈴木の関係を知っていて、それを笑っているような気がした。これまで一度も考えたことがなかった、同性と愛を交わすことが他人に嘲笑される理由になるなんて。
 大っぴらに、ひとに自慢することはできない関係だということは分かっていた。だけど、それが侮蔑の対象になるなんて。僕たちはあんなに真剣に愛し合っていたのに、それが笑いものにされるなんて。

 ショックだった。
 悲しみと憤慨に掻き乱された心で、それでも薪は考えた。

 鈴木の耳に、こんな流言を入れちゃいけない。あからさまな蔑みの口調で囁かれる無責任な噂話は、きっと鈴木を悲しませる。
 鈴木は何も悪いことはしていない。彼に恋をしたのは僕、身体の関係を迫ったのも僕。やさしい鈴木はそれを拒めなかっただけ、僕を傷つけたくなかっただけ。だから鈴木が悲しい思いをするのは間違ってる。

 強くなりたいと思った。
 実力があれば、誰にも何も言わせない。鈴木に迷惑を掛ける心配もなくなる。だけど今の僕の力じゃ……。

 こんなにも、自分の非力を嘆いたのは生まれて初めてだった。
 口惜しかった。

 薪はその晩、捜査一課に入って初めての涙を流した。



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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責任とってください。

苦情です。
責任とってください。



しづ薪さんしか、 見えなくなりました・・・!!!

原作8冊が、しづさまの挿し絵と化しました!!

どうしてくださるんですか。。。



ああ、もう、どうしよう。

しづさま、大好きです!!!




ほんとに、責任とってくださいね。

責任とって、ずっとずっと、創作なさってくださいませね。



今、こういうことをお話し出来る人がひとりもいないので、ひとりできゅるきゅるして

おります。しづマキさんしづマキさんしづマキさん~~っ



たかがマンガの登場人物でしょ、としか評さない人達に、何と言ってあげましょう。



ーー忘れろと?
このかわいいひとを忘れろと?





しづ薪さんのしあわせを、こころの底の底からお祈りさせて戴きます。




    平井堅さんの新曲「あいしてる」(表記わかりません。ラジオでしたので。)を、
    ぜひお聴きになってくださいませ。凄いです。


   しづ青木、(青木はどうしても呼び捨て。申し訳ないです。)

   とにかく頼む。 頼むよ。。。




                  すべてのお話を拝読し終えた夜に。


                  しづさまが存在してくださって良かった。

                  ほんとうにほんとうに良かった。

                  どうもありがとうございました・・・!

cat nap さまへ

Cat nap さま、初めまして。
コメントありがとうございます!

えっと、えっと、
身に余るお褒めの言葉をいただきまして、でもうちのお話はただのギャグ小説だと分かっているので、すっごく恐縮してます。
コメントのお返事は、いただいた文章を引用して返すのが普通だと思うのですが、いただいたコメントが光栄すぎて、引用するのも恐れ多いので、すみません、ちょっとイレギュラーなお返事で・・・・・・。


うちのオヤジ薪さんを気に入ってくださって、ありがとうございます。
原作8冊が、挿絵状態・・・・・・(@@)
きゃー、恐れ多いですっっ!!
いえ、もちろんこれはcat napさまの殺し文句で、そんなことはありえないと分かっておりますが。
もしかするとアレですか? 薪さんの警官コスプレが女装に脳内変換!?
ど、どうやって責任をとったらいいのでしょう!?


ずっと創作して欲しい――― なんて嬉しいお言葉でしょう(〃∇〃)
うちのお話はかっとんだお話が多いので、こんなん、書いちゃっていいのかな~、と思いながら公開していることが多いので、そう言っていただけると、とっても嬉しくなります!
本当に、ありがとうございます!!


秘密愛を語るお仲間がいらっしゃらないとのこと、それはすごく寂しい状況ですよね。
わたしもブログを始める前は、同じでした。 誰にも言えなくて、でも何もせずにはいられないくらい彼を愛してしまって、仕方なくPCに向かって薪さんへの愛を語ったのが創作のきっかけでした。
なので、秘密関連で叫びたいことがありましたら、遠慮なさらずコメ欄にどうぞ!! わたしもお喋り大好きですので!


> たかがマンガの登場人物でしょ、としか評さない人達に、何と言ってあげましょう。
>
> ーー忘れろと?
> このかわいいひとを忘れろと?

お気持ち、わかります!!
わたしも同じです。 薪さんは二次元のひとで、実在しないひとだと分かっているのに、彼の行く末を案じて夜も眠れず、身の細るような思いをして。 終いには日常生活に支障をきたすほどに・・・・・・わたし、薪さんに恋をしてからカクジツにダメな嫁になりました☆


> しづ薪さんのしあわせを、こころの底の底からお祈りさせて戴きます。
>
ありがとうございます!!
うちの薪さんは、二次創作のキャラのくせに『男爵』なんてあだ名がつくほど原作から遠ざかっちゃってるのに、こんなにやさしい言葉をかけていただいて・・・・・・(;▽;)


>     平井堅さんの新曲「あいしてる」(表記わかりません。ラジオでしたので。)を、
>     ぜひお聴きになってくださいませ。凄いです。

これ、『ゴースト』という映画の主題歌になるんじゃなかったですか?
SP観に行ったときに、映画館で一部分だけ聞きました。 もともと平井堅さんは好きで、CDも何枚か持っているので、はい、是非、聴いてみます!!


えっと、最後のお言葉は、
わたしなんか~、という言葉が頭の中をぐるぐると回って耳から飛び出るほどに勿体無いお言葉だったのですが、本当にそんな大層なもんじゃなくて、ただのシロウトの二次創作なので、しかも下手くそだし、下品だし、あちこち矛盾だらけだし~~(><)
・・・・・・・・・・でも、うれしかったです!!!!
人間が単純にできてるので、褒められると素直にうれしいです!


Cat napさまは、ハンドルネームから察しますに、(うたた寝、という意味でよろしいのでしょうか?)
気配り上手で、人を癒すのが上手なお方とお見受けしました。 きっと、春の陽だまりのような、やさしさと暖かさに満ち溢れた方なのではないかと・・・・・・
(はっ、そのような方にこんなものを読ませて! ざ、罪悪感が半端ないです!)

こんなに大量の文章を、たくさんの時間を割いて読んでくださって、誠にありがとうございました。 
過分なお褒めの言葉をいただいて、でもそれが決して表面上のものではなく、熱を込めて書かれたのだということが伝わってまいりまして、涙が出るほどうれしかったです。(あ、自惚れてますか?! もし不快に思われたらごめんなさい)
拙いものですが、これからも駄文は公開していきますので、どうかよろしくお願いします!!

あまりにも感激して、いつにも増して上手に言葉が出てきませんでした。
乱文、お許しください。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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『ヒカリアレ』
書いてます。
60Pを超えました(笑)
7/18 推敲やってます。
あと20ページ。
7/20 推敲の結果、70Pになりました。←バカじゃないの。
2回目の推敲に入りました。
こんにちは(^^
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