ゲスト(3)

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「ただいま帰り薪さん会いたかったで痛いっ!!」
 ドアを開けた途端に抱きついてきた大きな身体に遠慮のない拳を入れ、薪は呆れる。挨拶も他の言葉も中途半端になって、崩壊した日本語が聞き苦しい。
 
 2日ぶりに会う恋人にさっさと背中を向けると、薪はダイニングへ向かった。いそいそと後ろを付いてくる青木の気配を感じながら、自分の心臓が高鳴っているのを自覚する。
 慣れないことをするのは緊張する。青木のお母さんに会ったときといい勝負だ。

 冷蔵庫から冷茶を取り出して、氷を入れたグラスに注ぐ。ひとつを青木に渡してやって、もうひとつに口をつけた。カテキンの渋みが舌に心地よい。
「水出し緑茶ですか? 珍しいですね」
 今日のゲストを、青木は知らない。明日になれば知ることになるかもしれないが、薪のほうからは言わないつもりだ。

「青木。出張から帰ったばかりで悪いが、話がある」
 リビングに場所を移して、恋人をソファに座らせる。2時間前までその位置に座っていた女性との約束を果たすべく、薪は口を開いた。

「おまえのことは僕が一生守るから。僕のパートナーになって欲しい」



*****



 2時間前にこのセリフを聞いた彼の母親は、嬉しそうに笑って、しかし困ったように首をかしげた。
「それはわたしじゃなくて。一行に直接聞いてもらえます?」
「えっ? 青木に聞くんですか、これ」
「……普通は、先に本人に聞くものじゃないんですか?」
 だって今更、何をどう言ったらいいのか。

 頬を赤くして俯いてしまった薪の姿に、彼女はクスクスと笑いながら、
「では、今夜一行が帰ってきたら聞いてください。結果はちゃんと報告してくださいね」
 そう言って連絡用のメールアドレスを残し、彼女は帰っていった。今日は新宿のホテルに泊まるとの事だった。明日は息子に会いに来る気でいるのだろう。

 薪は青木の顔を見つめ、彼の返答を待った。
 心臓がバクバクいっている。無理もない、答えが分かっているとはいえ、これはプロポーズだ。結婚という言葉が入らないだけで、実質的な意味は同じだ。

 僕が守るから。僕と一生を共にして。
 僕の人生の伴侶として、死ぬまで一緒にいて欲しい。

 そして返ってきた答えは。

「いやです」
 …………ありえないっ!!

「なんでっ!? おまえ、僕のこと好きだろ?!」
 めいっぱい断定的に訊いてしまった。
 だって、びっくりしたんだもん! まさか断られるなんて、毛ほども考えなかったっ!
 が、それは少し違った。青木の拒否の理由は、別にあった。

「守られるなんて嫌です。オレが薪さんを守るんです」
「はあ?」
 一気に力が抜ける。ソファにへたり込んで、薪は額を押さえた。

「なに寝ぼけたこと言ってんだ。僕の方が年上なんだぞ? 年長者が年下の者を守るのは当たり前だろうが」
「薪さんの方が身体的には弱いです。強い者が弱者を守るのは当然です」
「思いあがるな。柔道なら僕の方がまだ上だぞ」
「いいえ。本気でやれば負けませんよ」
 なんて生意気なやつだ。
 お母さんの言ったとおりだ、こいつはすぐに調子に乗る。この辺で締めておかないと。

「よし、わかった。そこまで言うならこれから決着をつけよう。道着に着替えて道場へ行くぞ」
 薪はソファから立ち上がり、上から目線の傲慢な口調で言い放った。
「覚悟しろよ。負けたほうが守られ役だからな?」
「望むところです」
「分かってんのか? 姫役ってことは、ベッドの中でも僕の下ってことだぞ」
「えっ。……あの、柔道と剣道と射撃の3本勝負で」
「却下」

 なにやら真剣に考え始める青木の青ざめた顔を横目で見て、薪は心の中でにやりと笑った。





テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Yさまへ

Yさま、いらっしゃいませ♪♪


>いやです、て断られてめいっぱい吃驚している薪さんが可愛すぎますvv こちらの薪さんは幸せで本当に嬉しいです。

あははは、まさか断られるとは夢にも思わなかったんでしょうね。
幸せ、ですね~。 
あの後ろ向きな薪さんが、青木くんの気持ちをここまで信じられるようになったんですから・・・・・感慨深いものがあります。 6年もかかりましたけど(笑)


>ところで7巻と8巻読みました。。。

読まれたんですね!
Yさんの勇気に拍手ですっ、辛いお気持ち、お察しします!!
そうでしょう、やっぱり可哀想でしたよね。
青木さんもどっちつかずだし。(はっきりできない気持ちもわかりますが・・・・・・)

>あれでは薪さん守れんわ!と思いつつあちらの薪さんも青木がいいんですものね。せつなすぎます。

そうなんですよお!
もう、どんなにわたしたちが『青木さんのあほー!』と叫んだところで、薪さんが『青木がいい』って言うんだもんっ!(言ってない) どうしようもないんですよ、好きだって言い張るんだもんっ!(一言も言葉にはしてない)
・・・・・・・腐女子目線で断定してしまいました。 失礼しました。


>もうこんなことなら竹内が幸せにしてやればいいのに、と真剣に願いました。しずさんのキャラの中では小野田さんと竹内が好きなのでvvv竹内が本編にも出てればいいのに~。(本編とこちらの二次創作をほぼ同時に読んでいるので私にとって竹内はオリキャラの感覚がないんですよね)

なぜそこで竹内?! と思いましたが、
なるほど、本編と同時に読んでらっしゃる・・・・・・・こ、こんがらかってませんか? だってうちの話って、原作無視もいいとこで・・・・・・ご、ごめんなさい(^^;

それはさておき。
何処の誰が出てきても、『僕は青木がいい』って言うんですよ、我らが薪さんは。 
そんな一途なところも好きなんですけど。 はああ、せつない・・・・・・・

小野田さん、気に入ってくださって嬉しいです~。
オリキャラの中では一番力を入れて書いてるので。 あ、でも、セカンドインパクトを読んだら嫌われちゃうかも・・・・・・
なんか色々不安要素が多くてすみません。

楽しみにしてくださるとのお言葉、とても励みになります!
Yさんのまたのお越しをお待ちしております☆☆☆
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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