折れない翼(13)

折れない翼(13)





「逢いたい」

 電話に出た相手を確かめもせず、自分の名前を名乗りもせず、唐突にそれだけ言って、薪は黙り込んだ。
 こんなことをしては駄目だ、と薪の中で警鐘を鳴らすのは、1年かけて培ってきた自立心。
 鈴木の親友に相応しい男になるために、ずっと努力してきたんじゃないのか。厳しい環境に身を置くことで強い精神力を養おうと思ったのは、彼に依存するのを止めて、一人の人間として対等に彼と付き合いたいと望んだからじゃないのか。

『いいよ。どこに行けばいい?』

 鈴木の声が聞こえて、薪の決心は脆くも崩れ去る。
 誰かに泣き言を言って慰めてもらおうなんて、男の考えることじゃない。かすかに聞こえた内なる声は、鈴木のやさしい声にかき消された。

 警視庁の裏庭で鈴木を待つ間、薪の中は相反する感情がせめぎ合っていた。
 鈴木に会いたい。彼にすべてを話して、慰めてもらいたい。だけど、それをしてしまったら、僕はまた鈴木に依存する駄目な男に戻ってしまう。
 後戻りしちゃいけない。ここが正念場だぞ、薪剛。
 呼び出した後で悪いけれど、鈴木には会わないで1課に戻ろう。捜査中の事件もあるし、気になっている未解決事件も―― そう思いながらも、薪の足は動かなかった。見えない楔で縫いとめられたように、約束の場所から離れることができなかった。

 執務時間中に職務を放棄しているという罪悪感からか、薪はふと、誰かに見られているような感覚に陥った。周りを見回すが、誰もいない。
 少し気になったが、鈴木が現れると同時に感覚は忘れ去られた。

 顔を見てしまったら、我慢できなかった。
 ここまで全速力で走ってきたらしい鈴木の紅潮した頬と弾んだ呼吸を感じれば、彼の胸に耳を当ててその事実を確かめずにはいられなかった。鈴木の顔を見た瞬間に亜麻色の瞳から溢れ出した感情の発露を隠すためにも、その行動は必要なことのように思えた。

 薪の両手は迷いもなく鈴木の背中を抱き、鈴木の大きな手は薪の背中と髪を撫でてくれた。
 鈴木の胸の温かさを肌で感じるのは、3年ぶりだった。

 あの頃とちっとも変わらない、広くて温かくて、僕を癒してくれる胸。限りなく甘えさせてくれて、我が儘を許してくれて、僕をどんどん弱くする。
 何があってもここへ逃げ込んでくればいい、ここにくれば僕は何度でも生まれ変わることができる、だけどそれは他の誰かのもの。
 でも思い切ることなんかできない、この気持ちを消すことはできない。

 彼とただの友だちに戻って一年、さらに一年。加えてこの一年は顔も見ないで過ごしたのに。想いは少しも変わらず、逢えなかった分だけ切なさを増して。
 放したくない、彼を放したくない。
 このままあの頃みたいに、僕を愛して欲しい。

 迸る涙と感情の渦に流されて、乱れた心がそれを求めたのは一瞬のことだったけれど。この一年の苦労は無駄だったと、薪に悟らせるのには充分だった。

 身体だけ離れても、何の効果もない。僕は今でも鈴木が好き。
 多分、永遠に彼が好き。




*****


 すずまき、さいこー。(あおまきすと??)


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Yさまへ

Yさま、いらっしゃいませ!
コメントありがとうございます(^^


>やっぱりすずまきサイコーですね!

ああ、ここにもエセあおまきすとが!(←失礼)

原作の青木さんがあんまり、というお言葉に、思わず「うんうん!」とPCに向かって頷いてしまいました。 青木さんの行動もそうですけど、置かれた立場もまた・・・・(TT)


>でも鈴木さんのほうがいい男だし、薪さんのこと思ってますもん!雪子さん好きになったのも薪さんに似てたから(当時の髪型そっくりですよね)と思ったりして、鈴木さんマンセー状態でございます。

そうなんですよ、明らかにそうなんですよっ!
鈴木さんは雪子さんのことを、結婚を考えるくらい真剣に愛してたと思うんですよ。 それって今の青木さんの状況と同じですよね。
でも、やってることは全然違う。
これは年齢とか薪さんとの付き合いの長さとか関係なくて、人間性の違いかな、とかアンチ青木さんみたいな考えも浮かんでしまって。 だから鈴木さんの方が薪さんに相応しいとか思えてしまうのかな。


>8月号見ても鈴木さんの限りない愛に若造の青木では太刀打ちできないと感じたりして・・・

そうそうそう!
ずっと薪さんの身を案じて、陰でこっそりと彼を守るべく行動し・・・・・・これが本当に支えるってことですよね。 その鈴木さんの脳を見た青木さんなら、それが解ると思うんですけど。
だから昔は、もっとしっかりしてよ、青木さんっ、と叫んでたんですけど、今の状態ではそれも憚られ・・・・・ううーん・・・・・・。


>薪さんが鈴木さん好きなのしょうがないよ!薪さんが可愛いのもしょうがないよ!と心の中で叫んでしまいました。

ですよねっ!!
わたしの中でもこのふたりは理想のカップリングで~~。 ネックは鈴木さんが死んじゃってることですね。(ネックなんて生易しいもんじゃない)
だけど、鈴木さんが生きていたら、青木さんの出番はなかっただろうなあ。 『秘密』始まりませんね(笑)


>この作品の薪さんは青くて可愛くて努力家で、誰もが好きになっちゃいますよね~、捜1で愛される存在になって姫になって本当に嬉しいです。現実があまりに。。。あまりなので(泣)

天才の薪さんも、若い頃はこんな苦労を味わったんでしょうか? それとも、初めから天才で挫折知らずだったのかな?
わたしは苦悩する薪さんが好きなので、ついついこの路線を選んでしまいましたが。(結局はSか)

誰もが好きになっちゃう、とのお言葉、うれしいです。 (若さを強調するために、生意気さを強く出したので少し心配でした)
薪さんですもの、みんなに愛されるようにならなきゃ嘘ですよね。 原作でも、なんのかんのと言いながら、第九のみんなに愛されてますよね(^^


毎日読んでいただいているとのこと、とてもうれしいです♪
一日の活力だなんて、きゃー、おこがましくも狂喜してしまいます。 オダテないでくださいね、しづはすぐ調子に乗るから(^^;

携帯から拍手が送れないとのお話ですが、携帯の機種の関係なのでしょうか?
わたしが試してみた携帯はドコモなのですが、他の携帯だとダメなのかな??
でも、お気持ちだけで充分ですっ。 
本当に、ありがとうございました!!
今後もよろしくお願いします。

Sさまへ

Sさま、こんにちは~(^^
おどろおどろしいコメント(笑)ありがとうございます。


って、ええーー!!??
そうでしたっけ!? 
いえ、Sさまが生粋のあおまきすとなのは知ってますけど。
ああ、だからかー。 
青木さん以外の相手はいやん、なんですね。 なるほど。


てか、それでよくうちの話にお付き合いくださってると・・・・・・
だってうちの薪さん、鈴木さんのこと大好きだし。 だから青木くんとくっつくまでに、あんなに時間が掛かったんですよね(^^;


みなさんがすずまきさんが好きなのは、ズバリ、
原作の青木さんが不甲斐ないからっ!!
薪さんを愛して、守り抜かないからっ!!
だからすずまきさんに走っちゃうんですよ!(すみません~、言っちゃいました)


>羽佐間さんは大好きです。結婚するならこういうひとがいいですね。

そうですか?
べらんめえ口調のスケベオヤジですよ。 奥さんは怖いみたいですけど(笑)

薪さんの上司としてのあり方を鑑みるに、自分が最初に警察のイロハを教えてもらった先輩の影響はきっとあると思ったんです。
だから、言葉は乱暴でも根はやさしく、包容力があって面倒見のいいひと、というイメージが浮かびました。


で、Sさまったら、旦那さまとは違うタイプって(笑)
それはありますよね!(いや、こういう場合そんなことないでしょうと言うのが普通じゃ?)
わたしも、オットはぜんっぜん好みじゃなくて~。
わたしはクールで理知的なメガネ男子が好みだったんですよ。 インテリって雰囲気に弱かったんです。
それが何故か土方の女房に(笑) 知性のかけらもない男と結婚するとは、夢にも思いませんでした。
ひとの縁って不思議ですね。 意外と、理想どおりの相手と結婚してるひとの方が少なかったりして。
だけど、幻滅することもないから、これはこれでいいのかも。
とにかく、毎日楽しいのが一番ですよ(^^)←のんき。


このお話もあと3話くらいです。
最後までお付き合いくださると嬉しいです(^^
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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おかげさまで8歳になりました(^^♪
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