ロジックゲーム(11)

 メリークリスマス!
 みなさま、素敵なクリスマスを過ごされますよう(^^

 とか言いながら、こんな内容だよ。(笑)






ロジックゲーム(11)





 薪がその少年の襲来を受けたのは、10月も終わりに近付いた、木枯らしの吹く夜のことだった。

 帰り道、明らかに自分を待ち伏せていた様子で薪の進路を塞いだ彼は、青木さんのことで大事な話があります、と挑戦的に言った。
 他人のいないところじゃないと話せない、という彼の言葉に頷き、道端の小さな喫茶店に入った。
 少年はココアを、薪は紅茶を注文する。第九のバリスタに敵うコーヒー職人はどこにもいない、とようやく分かったので、外では紅茶党に鞍替えすることにした。

 小テーブルの反対側に座った少年の様子を、薪は冷静に観察する。
 高校生くらいか。とても綺麗な子だ。最近の若者らしく、髪を金髪に染めて緑色のカラーコンタクトをして、耳にはリングピアス。それがよく似合っている。
 少年は、上条ハル、と名乗った。

「上条君ね。青木は僕の部下だけど。彼が君に何か?」
「部下だなんて。隠さなくていいです」
 薪が口火を切ると、ハルは淡い緑色の瞳で薪を睨みつけるように見た。その瞳に明らかな敵意を感じて、薪はガードを固める。
「青木さんから聞きました。恋人なんでしょう?」
 ふっと笑って、薪はポーカーフェイスの厚みを1センチほど嵩上げする。これくらいでボロを出していたら、第九の室長は務まらない。

「あなたには悪いと思ったけど、ぼく、青木さんと寝ました」
「君が? 青木と?」
「失礼ですけど、あなたはここしばらく、彼の相手をしてあげてないんでしょう? 初めての夜、彼、すごかったんです。何度もぼくを求めてきて……ぼく、あんなの初めてでした」
 それから彼は、青木と自分がどうやって知り合ったか、今はどれだけ互いを必要としているかを話した。最初は一度だけのつもりだったが、何度も逢瀬を重ねるうちに、離れられなくなってしまったと言った。

「今では毎晩のように青木さんはぼくの部屋に来て、ぼくたちは夜を一緒に過ごしてます。彼はすごくやさしくて。ぼくは……ぼくたちはとても幸せです。
 でも、彼はあなたのことで苦しんでいる。彼はやさしいから、あなたを傷つけたくないから、だからあなたには本当のことを言えなくて」
 薪が冷静な表情を崩さずにいると、ハルは急に弱気な表情になった。長い睫毛を伏せて、眼の縁に涙まで溜めて、その声に必死さを滲ませる。

「お願いです。青木さんと別れてください。初めはあなたの代わりでいいと思ったけど、今では……ぼく、彼がいなきゃ、もう」
 涙ながらに訴える少年の願いを聞き流しつつ、薪はゆっくり紅茶を味わう。レディグレイは雪子のお気に入りの銘柄だと聞いたが、この独特の甘みは苦手だ。やっぱり紅茶はダージリンに限る。
 
 それからしばらくの間、薪は無言で彼の訴えを聞いてやった。どんな言葉をぶつけても感情を表さない薪に、相手がついに口を閉ざしたのを確認して、薪は応えを返した。
「君の好きにしたらいい」
 千円札を置いて、薪は席を立った。
「君がどう思っていようと、青木は僕の部下だ。それもかなり優秀な部類に入る。部下には仕事さえきちんとしてもらえればかまわない。個人の性癖まで、とやかく言う気はない」

 立ち去ろうとした薪の背中に、ハルの裏返った声がかかる。
「ま、待ってください! いいんですか? ぼくが青木さんの恋人になっても」
「それは青木が決めることだ。僕には関係ない」

 ぽかん、と口を開いたままの少年を残して、薪は夜の街に出た。
 細い顎を反らして、つい、と見上げる夜空に、半分に欠けた月。

 薪は手探りで携帯を探し、月を見ながらメールを打つ。
『今夜も月がきれいだぞ』
 フラップを閉じないうちに返信が届いて、薪は思わず頬を緩ませる。あいつ、どんだけヒマなんだ。

『そうですね』

 簡潔な文章の向こう側に、溢れんばかりの彼の愛情を感じる。
 確信できる、僕は彼に愛されてる。

 わずか4×5センチの液晶画面に浮き出た、たった5文字の何処にそんな威力があったのか、薪はそのことを疑いもしなかった。それを不思議とも思わなかった。
 月が欠けては満ちるように、それは当然のことだと思った。




テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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パンパン

こんにちは、いつも楽しく拝見しております。
貫禄も青木の操縦術も年季も、明らかに何もかも全てが格上の薪さんに対し、若さと勢いで果敢に挑んだ少年のチャレンジャー精神に、吹き出してしました(^o^)/。
こんなファイティングスピリットが溢れる可愛い少年は、ぜひ間宮部長に登場していただいて可愛いお尻をパンパンして叱ってもらわねばーo(≧∇≦o)。
あ、でも間宮さんは、この少年より薪さんをパンパンしたいでしょうかー(笑)。

あずきさんへ

あずきさん、こんにちは~。

って、タイトルに爆笑しちゃったんですけど! げらげら☆


> 貫禄も青木の操縦術も年季も、明らかに何もかも全てが格上の薪さんに対し、若さと勢いで果敢に挑んだ少年のチャレンジャー精神に、吹き出してしました(^o^)/。

すべてが格上、
そうですね~。
ハルくんが薪さんに勝てるものといえば、ベッドテクくらい?<おいおい。
これがね、妙齢の女性ならこんな余裕をこいてはいられなかったと思うんですけど、てか、速攻で身を引いてたりして。 いや、雪子さんが何とかって怒り出すかしら??? 
男の子なんでね。
ハルの言うことを信じなかったんでしょうね。


> こんなファイティングスピリットが溢れる可愛い少年は、ぜひ間宮部長に登場していただいて可愛いお尻をパンパンして叱ってもらわねばーo(≧∇≦o)。

間宮キター!! (そういえば、あずきさん間宮好きでしたね(^^;))
えーっと、間宮は多分、未成年には手を出さないと思います。 問題になっちゃうから。(・・・・・・愛人は?)


> あ、でも間宮さんは、この少年より薪さんをパンパンしたいでしょうかー(笑)。

もちろんですよっ!(笑)
まあ、最近はちょっと見方も変わってきてるみたいですけどね。 長く書いてると、キャラの考え方にも変化が出てきて、あちこち矛盾が・・・・・・どうか生ぬるく見守ってやってください。

Kさまへ

Kさま、こんにちは~。

ご無沙汰してます、って、いきなり悲鳴が聞こえたんですけど(笑)
大丈夫、大丈夫ですから!

えっと、
話の裏側はKさまの読みどおりです。 さすが(^^
でも、この話は原作に打ちのめされたしづが、リハビリのつもりで書いた話なので、穏やかで甘い話だと・・・・・・あ、なんかすっごく疑り深い眼で見られてる気がする(笑)
だから、薪さんが泣くようなことにはなりません。 安心してくださいね(^^


>少年というところがポイントですね。少女だったら、いくら子供と言っても女性一人の部屋に青木は上がらなかったでしょうから。

そうですね。
それくらいの警戒心はあったと思います。
相手もそこら辺のことは、計算に入れてたんでしょうね。


>これまでだったら、薪さんが青木の気持ちを疑ったであろう展開で、薪さんが青木の「愛」を信じているところに救われます・・薪さん、強くなりましたね。

そ、それが~~、
強くなったというよりは、カンチガイが~~。 (いや、本当は勘違いじゃないんですけど、まあ、この話では勘違いにしておいたほうがいいのかな)
後で種明かししますので、笑ってくださいねっ!

真面目な話、
相手が男なら、薪さんは妬いたり疑ったり、増してや身を引こうとしたりしません。 だって、男だったら条件は同じでしょう? この少年だって、青木くんに家庭も子供も与えてやれないじゃないですか。 だもん、ばっちこい!!ですよ。


年末のお忙しい中、読んでいただいてありがとうございました(^^
Kさまには、お仕事が目白押しのご様子ですが、お体に気をつけて。 どうかご無理をなさいませんよう。 

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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