ロジックゲーム(13)

 メロディ、読みました。
 心やさしい真っ当な薪さんファンなら、きっと冒頭のシーンで涙したと思うんですけど。
 すみません、激萌えしました。(〃∇〃)

 イタイ薪さん、大好き~♪(←オニ)
 それを隠して平気な顔してお仕事する薪さんはもっと好き~♪(←アクマ) 

 心やさしくない捻じ曲がったファンで申し訳ないです。(^^;






ロジックゲーム(13)




「かんぱーいっ!!」
 勢い良くぶつけられる中ジョッキがガシャガシャと勇ましい音を立てて、黄金の液体が左右に振られる。真っ白な泡がジョッキの縁から零れて落ちてテーブルの上を汚すが、誰も気に留めるものはいない。

「選抜試験合格おめでとう、青木」
「良かったな」
「ありがとうございます。みなさんのおかげです」
 ぺこっと頭を下げた今夜の主役は、長身を折り曲げるようにして同じテーブルの人々に礼を言った。

「今井さんにいただいたデータ、とても参考になりました。宇野さんが作ってくれた予測質問も、何問か当たってました。それと、二次試験のときには捜査の采配について、岡部さんに教わったことが役に立って」
 ひとりひとりに丁寧に礼を述べる殊勝な後輩を、先輩たちは温かい目で見つめる。幹部候補生ともなれば、生え抜きのエリートの仲間入りを果たしたと言っても過言ではないのに、こいつは全然驕らない。そんな彼だからこそ、何とか力になってやりたいと、色々と骨を折ったのだが。

「おい、青木。薪さんには礼を言わなくていいのか」
 ひとりだけ名前の挙がらない人物に気を使った曽我が、青木にこっそりと耳打ちする。よく場の雰囲気に合わないことを言って周囲を焦らせる曽我だが、彼は空気が読めないわけではなく、固い空気を解そうとしてズレた発言をしているのだと、それが彼なりの気の使い方なのだと、青木は知っている。
「何かしらアドバイスしてもらったんだろ?」
「いえ。今回は室長は何も……あ、そうだ。二次試験が終わったときに解答内容を報告をしたら、自分が試験官なら絶対に不合格にするって言われましたけど、お礼を言うべきですか?」
「それはアドバイスじゃなくて、ただの意地悪だろ。礼を言ったら殴られるぞ」
「ですよね」
 たしかに。試験が終わってからアレコレ言われても。

 岡部の隣で静かに冷酒を飲んでいる冷たい美貌を上目遣いに見やり、青木はこそっと呟いた。
「警視試験のときには、予測問題作ってくれたんですけど」
「幹部候補生選抜は、試験内容が発表されるわけじゃないから。受けた経験がないと、予測のしようがなかったんじゃないかな」
 曽我との間に小池が顔を突っ込んできて、ナイショ話に加わる。小池はいつも薪のことを冷たいとか意地が悪いとか言うくせに、他の人間が薪の悪口を言うのを許さない傾向がある。

「考えてみると、薪さんほどのエリートが幹部候補生にならなかったって、不思議な気もするな」
「幹部候補生になれるのは、警視になってから1年以上の職員だろ。あのひと、警視になって半年後には特別承認の話が来てたから」
 内緒話を聞きつけた今井の明確な説明に、全員が押し黙る。
 薪には一般論が通用しない。規格外と言うか常識外れと言うか、それは今に始まったことではないが、この虚脱感はどうしたらいいのだろう。

 それから1時間後、薪は岡部に耳打ちして、そっと席を立った。
 青木の合格祝いはとっくに大義名分と成り果てて、宴席の主役は各人に移っている。いつものように卒なく先輩たちの酒の世話やつまみの手配を行う青木に、ほんの少しの間視線を固定し、誰にも気付かれないように店を出た。

 夜の外気の冷たさに、薪は肩を竦める。秋も終わりに近付いて、もうすぐ薪の39回目の誕生日がくる。いくらかでも暖を取ろうとコートのポケットに手を入れて歩くこと5分、左胸の上で携帯電話が振動した。
 せっかく温まった手をポケットから出すことに不満を表した亜麻色の瞳が、画面を確認した途端、寒い屋外から暖房の効いた部屋に入ったときのように、ほっと緩む。

『お月さまがきれいです』

コツコツと、後ろから革靴の音が近付いてくる。薪は素早く親指を動かした。

『そうだな』
『三日月だから、他の星もよく見えますね』

歩きながら、薪は返信を続ける。後ろから付いてくる男が送ってくる、他愛もない文章が、薪の足取りを軽くする。

『これからお邪魔してもいいですか?』
『別にいいけど』
『じゃあ、途中で歯磨きセットを買って行きますね。ついでに朝のパンを調達しましょうか?』
『ちょっと待て。まさか泊まる気じゃないだろうな?』
『いいでしょう? 明日は土曜日ですよ』
『ダメだ』

 速攻で返して、薪は細い肩を怒らせる。
 2ヶ月ぶりの最初が泊まりなんて。地獄を見るに決まってる。

『なんでですか?』
『明日はヨーゼフに会いに行く予定だから、今夜はダメ』
『わかりました、何もしません。一緒に眠るだけ』
『嘘つけ!』
『本当ですよ。オレの自制心の強さは、この2ヶ月で証明済みかと』
『いいや、ぜったいに』

「ぜったい」を変換する寸前、薪の携帯は大きな手に包まれ、その仕事を為せなくなった。自分の右手を包む温かい手が、すぐに左肩に回される。続いて右肩も拘束されて、薪はその場から動けなくなった。

「放せ、バカ! 誰かに見られたらどうするんだ」
「もう監査は終わりました」

 青木は本当にバカだ。問題は監査だけじゃない。自分たちの秘密は、誰にも知られてはいけないのに。この事実が露見したら、青木も僕もすべてを失う。それが分かっているのに。

 霜月の夜はとても冷たくて、凍えるほどに冷たくて、だから薪は青木の腕を払うことができない。後ろから自分を抱きしめている男の体温がなかったら、この場で凍死してしまいそうなほど。今宵の冷気は耐え難い。
 でも本当に耐えがたかったのは、今、この身を取り巻く寒気ではなく。
 触れ合うことができなかった2ヶ月間の冷たさが、積もり積もって自分を凍りつかせたのだと、心の中では分かっている。
 今、彼の体温で暖められ、溶けだした薪の身体は流動物のようにひどく不安定で、真っ直ぐに立つこともおぼつかない。膝が崩れて、その場にへたり込んでしまいそうだ。

 躊躇いつつも、薪の左手が自分を抱く腕に添えられる。
 それは単なる重力への抵抗か、寒さの緩和か。
 その両方ともが自分の中にある彼への気持ちの表れであることを知っている薪は、そんな自分をどうしようもなく愚かだと思う。

 薪は右手に持ったままの携帯を手探りで操り、簡単な操作で送信ボタンを押した。薪を戒めた両腕はそのままに、左手に届いた着信を、青木は眼だけで確認する。

『そうだな』

 亜麻色の髪に鼻先を埋めて、青木はクスクスと笑った。




テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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素敵ですね

こんばんは。
寒い季節にこういうお互いの愛情が伝わってくる暖かい内容を拝見して、なんだかほんわか嬉しい気持ちになりました。
波乱万丈なお話も楽しいですが、こんな暖かいお話も素敵ですね。
青木、ヨーゼフの代わりに自分が犬になって、一晩中薪さんにご奉仕しちゃえー(笑)。
ところでメロディを読みましたが、薪さんの今後にハラハラしつつ、でも彼がベッドの中で泣いているコマとか、四つん這いに近い姿勢で後ろからのバックショットのコマとかに、私も思わず萌えてしまいました。萌えーo(≧∇≦o)。

あずきさんへ

あずきさん、いらっしゃいませ~。


> 寒い季節にこういうお互いの愛情が伝わってくる暖かい内容を拝見して、なんだかほんわか嬉しい気持ちになりました。
> 波乱万丈なお話も楽しいですが、こんな暖かいお話も素敵ですね。

ありがとうございます。
わたしもね、本当はこういうお話が書きたいんですよ。 でも、気がつくと何故かああいうバイオレンスなギャグに(笑) なんでかなあ?


> 青木、ヨーゼフの代わりに自分が犬になって、一晩中薪さんにご奉仕しちゃえー(笑)。

さすがあずきさん、先の展開を読んでますね★
薪さん、カワイソウ(笑)


> ところでメロディを読みましたが、薪さんの今後にハラハラしつつ、でも彼がベッドの中で泣いているコマとか、四つん這いに近い姿勢で後ろからのバックショットのコマとかに、私も思わず萌えてしまいました。萌えーo(≧∇≦o)。

ああっ、ここにもヒトデナシがっ!!(すみません)
お互いドSを通り越しましたね~。 こんなことでいいんでしょうか、わたしたち(汗)

だって、泣いてる薪さん、かわいいんだもん。
人知れず流した涙は数知れず、でも平気な顔をして仕事をこなす薪さんが好きーv-238
強がってるけど本当は弱くって、弱いんだけどやっぱり強い、そういう薪さんが好きなんです。

ありがとうございました(^^

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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おかげさまで8歳になりました(^^♪
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