クッキング(2)

 こんにちは。
 
 うちの看板は『R系BLギャグ小説』、しかもFC2お墨付きのAサイト指定なのに、(なんて穢れたブログ)
 健全な男女のラブコメ、しかも雪子さんとオリキャラなんて、コメいただいた何人かのウルトラマニアックな方々(失礼)しか読んでくれないだろーなー、と思っていたんですけど、
 なんと拍手が17も!

 どうもありがとうございます。
 みなさん、付き合い良いですねえ。(笑)

 
 
 



クッキング(2)





「いつもすみません、三好先生。でも、なんか先生に愚痴を聞いてもらうと、元気になるんですよね」
 
 竹内の好きな人には、恋人がいる。そのことも雪子は知っている。それは周りには知られてはいけない恋で、もちろん竹内はその事実を知らない。
 雪子の立場としては、友人の恋を守ってやりたい。だから、竹内が次の恋人を見つけられるように、こうして彼が振られるたびに彼を元気付ける役目を引き受けてきたのだが。

「まあ、あたしは美味しい物が食べられればいいけど。あんたのその癖は、何とかしないとね。自分が悪いのよ? デート中に目の前の彼女に集中するって、最低限の礼儀でしょう」
「分かってます。俺だって最初は気を引き締めてかかるんですよ。相手の顔を良く見て、褒められそうなところを探したりして。でも、どうしても考えちゃうんです」
 両手を組み合わせ、そこに自分の鼻先をつける。眼を閉じて、はあ、とため息を吐く。ひとつひとつのポーズが絵になる。ファッション雑誌の写真みたいだ。どうしてこんな男が刑事をやっているのだろう。本当に、職業を間違えたとしか思えない。

「例えば、彼女の口紅の色がこの冬の新色で、『きれいだね、よく似合ってるよ』って言おうと思うでしょ。そうすると、自然にあのひとのくちびるが浮かんできて。何もつけてないのに艶めいてて、蠱惑的で、でもちょっとあどけないところも残ってたりして、なんて魅力的なんだろうって考えてるうちに、彼女が怒り出すんです」
 過去の出来事を思い出している人間の多くが右上方を見るように、竹内もまた茶色の瞳を上方に動かし、すると完璧に整っていた俳優顔が僅かに崩れて、でも雪子はそんな竹内の顔をかわいいと思う。
 そう、割と可愛らしい顔もするのだ、この男は。

「彼女が赤いコートを着てくれば、あのひとには白が似合いそうだな、とか思ったり。香水を変えれば、あのひとからは百合の匂いがしたな、とか」
 いけ好かないカッコつけ野郎だとずっと思っていたが、こうして近くで見る機会があると、大多数の女性の意見は正しい、と改めて思う。砕けて話をしてみれば、性格もそう悪くない。
「とにかく、何を見ても聞いても、あのひとのことを思い出しちゃうんですよ。しかも、あのひとの方がずっと素敵だと思ってしまって」
「はあ。絶世の美女を探してくるしかないわね、こりゃ」
 今までの相手も、モデルだとか女優の卵だとかで、美人ぞろいだったはずだが。見慣れてしまって美的水準が上がってしまっているのか、竹内の中の『あのひと』が美しすぎるのか。

 たしかに、と雪子は友人の姿を思い出す。
 彼はとびきりの美人だ。そんじょそこらの女性では、彼に太刀打ちできない。
 白百合の花のような、可憐な佇まい。線が細いから一見大人しそうな印象を受けるが、中身はとんでもなく激しい。年を取って少しは穏やかになったようだが、本質は変わっていない。我儘で頑固で自分勝手。好きになったひとにはとことんやさしいが、嫌いな人間には果てしなく冷たい。
 竹内は捜査一課に在籍していることからも、後者のカテゴリに分類されている。その彼を好きになってしまったなんて、この男もたいがい面倒な男だ。

「無駄だと思います。実は、元ミスユニバースと付き合ったこともあるんですけど。やっぱりダメでした」
「もういっそ、精神科に診てもらえば? 催眠術かけてもらうとか」
 雪子の冗談に竹内は笑って、雪子と同じ皿から大根サラダを自分の箸で取った。
「造作的に彼女が負けてるわけじゃないんです。どっちに心を惹かれるか、なんですよね。容姿にだけ惹かれてるわけじゃないから、だからあのひとの方が好ましく見えてしまうんでしょうね。
 仕事してるときとか、男友達とつるんでるときは平気なんですよ。女性を見ると、連想されちゃうみたいで」
「ふうん。厄介な症状ね」
「まったく、これじゃ誰とも」
 そう言いかけて、竹内はふと気付いたように、
「あれ? そういえば、先生といるときは、あのひとのこと考えてないです」

「はあ? なに言ってんの。たった今、『あのひと』について力説してたじゃない」
「そうじゃなくて。先生とあのひとを比べてみたことはないな、って。なんでだろう?」
 その理由は、すぐにわかった。だが、口に出すのはためらわれた。屈辱的な理由だったからだ。
 しかし、目の前で考え込む人間がいて、自分がその解答を知っていれば、教えてやらずにはいられないのが雪子の性格だ。墓穴だと知りつつも、雪子は言った。

「……それって、あたしを男友達だと思ってるってことじゃないの?」
「ああ、そうか。なるほど」

 なるほどじゃねえよっ!!
 軽く手を合わせて素直に納得する竹内に、雪子はあからさまに舌打ちする。「すいません、チューハイ追加!」と大きな声で店員を呼んで、さらに堅焼きそばとエビチリと肉じゃがを追加注文した。
「相変わらず見事な胃袋ですね。俺にもイモください」
 上品に箸でつまんで、取り皿に分ける。一緒に食事をするたびに思うのだが、竹内は、箸の使い方がとてもきれいだ。親のしつけが良かったのだろう。
 じゃが芋と絹さや、人参を2切れ確保し、竹内の箸はそこで止まった。

「なに見てんのよ」
「いや。一生懸命だなあって思って」
 ふわっと笑って、竹内は雪子を見つめた。反射的に早くなる心臓の鼓動を意識して、雪子の肩が強張る。
 竹内に、一度もときめいたことがないと言えば嘘になる。ハンサムな男の人がいれば自然に目が行くのが女の本能。その男に笑い掛けられたり接近されたりすれば、ドキドキして当たり前だ。愛とか恋とか、そんな高尚なものではなくて、これはもっと原始的なものだ。

「先生みたいに一生懸命に食べる女の人、俺の周りにはいないから。めずらしくて」
「仕方ないでしょ。あたし、これ以外楽しみないんだから」
「どうしてですか? 先生は大食らいで色気はないけど、見た目はそんなに悪くないし。うまく騙せば、恋人くらいできますよ。俺の友人は紹介できませんけどね、恨まれちゃいますから」
 竹内のリップサービスは、女の子限定だ。雪子はその対象外。本音でズバズバ切り込まれる。菅井の男版、と言ったところだ。

「あたしが恋人作ったら、あんたの愚痴は聞いてあげられなくなるけど?」
「あ、それは困ります。先生はやっぱり、仕事と食事に生きてください」
「言われなくてもそうする、てか、それ以外できないわよっ、どうせ!」
 雪子が逆切れすると、竹内は机に突っ伏して笑った。よっぽど可笑しかったのか、ひーひー言っている。捜一の光源氏が聞いて呆れる、クールなプレイボーイはどこへ行ったのやら。

「ちょっと、あんた笑いすぎ」
「先生見てると、安心するんですよ。ほら、失恋すると落ち込むじゃないですか。でも、世の中にはこんなに寂しい人生送ってる人もいる、俺なんかまだまだ幸せな方だって」
「捜一の光源氏のお役に立てて光栄ですことっ! オホホホホ!!」
 竹内が本当は誰に惚れているのか、署内に怪文書で回してやろうかしら。

「でも俺、本当に先生には感謝してるんですよ」
 美味しそうに煮えたじゃが芋を箸で割って口に運びながら、竹内は急に真面目な口調になった。



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
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