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クッキング(6)

 この章が山場ですね。
 だって、題名が『クッキング』ですからね。(^^




クッキング(6)




 日曜日、雪子は6時に目を覚ました。
 休日に6時起きなんて、何年ぶりだろう。鈴木と休日を過ごしていたころは早起きして出かけることもあったが、彼を失ってから、休日の朝を雪子と一緒に過ごしてくれる人はいなくなってしまった。
 
 洗顔を済ませてから台所へ向かう。いつもはゴミ屋敷のような台所も、今日はきれいに片付いている。季節外れの大掃除は、土曜日の朝から晩まで掛かった。
 昨日のうちに揃えておいた食材をテーブルの上に並べて、友人の到着を待つ。久しぶりに過熱面を現したクッキングヒーターに、お湯を沸かすという本来の役目を割り振ると、自分が物置ではないことを主張するかのように、ヒーターは勇んで過熱を始めた。

 薪が来る前に下準備をしておこうと思い立ち、雪子は食材を見渡した。
 今日、これを食べるであろう人物は、和食好きと見た。それに合わせてメニューを考えた。寒い季節に美味しくなるブリ、唐揚げ用の鶏肉、筑前煮に使う根菜ときのこ。調味料も一揃い買い求めた。家にあったものはコチコチに固まって、使い物にならなくなっていたからだ。
 まずは材料を洗おうと、シンクに水を溜めた。水を流しっぱなしにして洗い続けること10分。チャイムの音が鳴って、頼りになる友人が姿を現した。

「リクエストは和風のお弁当でしたよね。さあ、ちゃっちゃと作っちゃいましょう」
「ありがとう。材料は洗い上げておいたから」
 水気を切るためにザルに上げておいた食材を見て、腕まくりをする薪の手が止まった。彼のきれいな笑顔が、引きつったように見えたのは気のせいだろうか。

「あの、雪子さん。魚の切り身を洗うときは、タワシでゴシゴシ擦るんじゃなくて、手でやさしく洗ったほうが、より美味しくなるかと」
「やだ、そんなことするわけないじゃない。ちゃんと手で洗ったわよ」
「えっ。じゃあ、どうしてこんなに身がグズグズに? あっ、野菜も……葉物は全滅か。根菜類は何とか。えっと、あと無事な食材は」
 台風が直撃した畑を見舞うような深刻な表情で、食材を手にとって考えを巡らせる薪を見て、雪子は少しだけ不安になる。生の食材はみんなやわらかくて壊れやすくて、だから洗うと砕けてしまうのは当たり前だと思っていたけど、もしかしたら違ったのかも。

 雪子が心配そうに薪の様子を伺っていると、それに気付いた薪はニコッと笑って、
「いいんですよ、雪子さん! どうせ食べるときは一口サイズに切るんですから。初めから切ってあったほうが親切ですよね、小さめの方がお弁当箱には詰めやすいしっ」
 早口で、不自然に力の入った口振りで、薪は雪子の不安を払拭する。マイ包丁を片手に握り、素早く材料を刻み始めた友人に、雪子は頼もしさとありがたさを覚える。料理上手の友だちがいて助かった。

 薪の手は魔法のように動いて、次々と美味しそうな料理が仕上がっていく。そのままでは食べることのできない食材が見事な料理に生まれ変わる様子は、魔術か錬金術か。
 むかし、鈴木のために料理を覚えようと頑張ったこともあったが、何故か料理教室のほうから、月謝は返すからもう来ないで欲しいと頼まれた。それ以来、包丁を握ったことはない。
 若い頃は、包丁なんかなくてもメスがあるわ、と茶化すこともできたが、この年になるとそうもいかない。この機会に簡単な料理くらい、作れるようになっておかなくては。

「薪くん、あたしにも何か仕事ちょうだい」
「はい。じゃあ、ブリの水気をキッチンペーパーで拭き取ってもらえます? 照り焼きのたれは僕が」
『グシャッ』(雪子の手の中で魚が潰れる音)
「やっぱり僕がやります。牛蒡と人参を千切りにしておいてもらえますか?」
『どかん! ばこん!』(雪子の包丁の音)
「雪子さん、まな板は割らないで、あっ、それじゃ千切りじゃなくて乱切り……いいや、根菜の煮物にしよう。あとは僕がやりますねっ。唐揚げ用の鶏肉に塩を振っておいてください」
『ザザーッ』
「袋から直接!? ……脂の多いもも肉はやめて、サラダ用のささみ肉を使いましょう。健康が一番ですからねっ」
 雪子が手伝えば手伝うほど、薪の仕事が増えていくのは気のせいだろうか。

「かぼちゃは煮物にしましょうね。まずは半分に切ってください。硬いですから、レンジで2分くらい温めると包丁が入りやす」
『バゴッ』
「・…………素手で割れるんだ……」
 雪子の20年来の友人は、もともと白い顔を紙のように白くして、彼女を畏怖の眼差しで見つめた。


*****


 ああ、楽しかった♪
 料理はバトルですよね(笑)





テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Cさまへ

Cさま、こんにちは~!

>、、、この不器用さで良く、監察医が、、、って突っ込みは、してはいけないんですよね(笑)

いいんですよ~、ギャグですから。
どんどん突っ込んでください。 
突っ込みの入らないギャグなんて、つまんないもん♪

でも、本当によくこれで監察医が(^^;
あ、だけどそんなこと言ったら、うちの薪さん、あんなに思い込み激しくて、よくそれで捜査が・・・・・・・きゃー、ドツボです~~~!


>ところで作中の、『生の食材は~違ったのかも』のくだり

まあ、そんな教育番組が。 今度見てみます。
頭の良いおさるさん。
好奇心いっぱいで、すぐに手を出すところも似てるかもしれませんね(^^

ありがとうございました。

Kさまへ

Kさま、ご無沙汰してます~!

まあ、PCが・・・・・
それはさぞご不便でしょう。
ブログ巡りもそうですけど、今はPCがないと色んなことに支障がでますものね。
わたしなんか雷で事務所中のPCがダウンしたひにゃ、入札書一枚作れず、FAXも送れず(PC連動)仕事になりませんでした★
早くPCのご機嫌が直るといいですね。


>小野田さんも元気そうでなによりです^^

この一言が(喜)
そうでした、Kさま、小野田さん気に入ってくださってるんですよね(^^
ありがとうございます。


>こちらはこちらで笑っちゃいます!いいです!
>ホントに私はしづ様の雪子は好きです。

きゃー、うれしいですー!!
うちの雪子さんて、勇ましくてガサツで怖いもの知らずで、でも面倒見がよくて姐御肌なので、同性からは人気のあるタイプだと思われます。 
異性は・・・・・・逃げます(笑)
柔道4段は強すぎましたかね(^^;


>そして、クッキング4の冒頭にありましたしづ様の考えに深く頷いておりました。

ねーっ、いいですよねー!
二次創作の世界くらい、薪さんに都合の良い設定にしたって、バチあたりませんよねっ! 
原作は可哀想すぎるっ(><)
だけど、そこがいいんですよね。 薪さんの泣き顔、萌える。(←鬼畜MAX)


>今年も楽しみにしています(^^)/寒さ厳しい折、ご自愛下さい。

ありがとうございます!
Kさまに楽しんでいただけるよう、がんばってすったもんだのあおまきさんを!(←自重しろ)


Kさまも、お身体に気をつけてくださいね!
お風邪など召しませんように。


ありがとうございました(^^
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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10万拍手ありがとうございます!
いつの間にか9歳になってました。( ゚Д゚)
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