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室長の災難(12)

室長の災難(12)






 捜一の5名が発信機の信号に従って踏み込んだのは、郊外の農家であった。
 収穫したキャベツに埋もれて、薪の付けていた片方のイヤリングと髪飾りが発見された。まんまと敵に裏をかかれた竹内は、怒り、青ざめながらも田城に連絡を取った。

「それ投げ込んだの、あの人じゃないのかしら」
 小太りの農家の妻が、思い出したように言った。
「滅多なことを言うもんじゃないよ」
「だって、荷台にはちゃんとシートが掛かってたのよ。中に入れようとしたら、シートの隙間からこうやって入れないと。あの人、なんかやってたんだってば」
「どんな人でした? 顔を見ましたか? この男では?」
 竹内は慌てて田崎の写真を取り出した。しかし、違うと言う。

「顔は良く見えなかったけど、こんなにいい男じゃなかったわね」
「良く見えなかったって……ああ、夜ですもんね」
「コンビニの駐車場だから明るかったんだけど、帽子かぶってたから」
 そこに夫が割って入った。
「いや、刑事さん。こいつの話はいいです。その人がうちの車に何かしていたって、それは悪いことのはずがありません。わしも見ました。
 でも、おまわりさんなんですよ、それ。おまわりさんが悪いことするはずないでしょう」

 農家を辞して、車の中から竹内は大友に指示を出した。
「岬町のコンビニだ。店員から話を聞け。立ち寄りの当番になっている巡査の名前を聞き出すんだ。それから、その巡査の警備担当区域も!」
 間に合ってくれよ―――― 竹内は心の中で、薪の生意気な美貌を思い浮かべていた。



*****



「もう、ほんとやばいです。岡部さん、早く来てくださいよ!」
『いま向かってる!それまで何とかしろ、曽我!』
 捜一の尾行が撒かれた後、しかし曽我はきっちりと後を尾行(つけ)ていた。

 確かにあの角で、曽我も薪を見失った。捜一の2人が発信機の後を追うために早々にその場を離れたのち、しばらく曽我はその場にいたのだ。
 人間が急に消えるわけはない。しかも警官も一緒だったのだ。何者かに襲撃されたとしても警笛くらい鳴らすはずだ。警官ならそれくらいの訓練は受けている。
 近くに潜んでいるのではないか……そう思って周辺をうろうろしていたのである。
 曽我の読みは当たった。二人は確かにいた。しかし、潜んでいたのではなく堂々と民家の中から出てきたのだ。

 警官が犯人――。

「道端にこの人が倒れていたが、お宅の娘さんではないですか?」と、警察官が入ってきたので「違います」と答えると「少し休ませてあげてくれませんか」と言われたので、しばらく部屋を貸した――人の良さそうな老夫婦はそう教えてくれた。
 急いで後を追い、ミニパトの後を車で尾行てここまで来たのだ。
 岬町5-2-5、黒咲ビル。橋口三郎巡査の警備担当の廃ビルだ。一連の凶行は、ここで行われていたらしい。

「さっき、また2人入っていったんですよ。全部で8人ですよ! 捜一の応援はまだなんですか!? 薪さん、殺されちゃいますよ!」
『なんとかしろ!』
「なんとかったって」
 曽我も薪のことは怖いが、好きだ。怖いが、尊敬している。傷ついて欲しくはない。
「頭脳労働専門なのにな」
 ぼやきながらも周辺に人がいないことを確かめ、曽我はビルの中に入っていった。




テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
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2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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