スキャンダル(11)

 あ、この章も異様に短い。
 ということで、もう1個上げます。




スキャンダル(11)





 清潔に整えた寝具に包まれて、パジャマ姿の恋人は健やかな寝息を立てている。
 薪を眠らせるにはこの手に限る。どうせまた何日も寝てないのだろう。疲れた顔をして、先月見たときよりさらに痩せて。

 膝に乗せて揺すった薪の軽さを思い出して、青木の胸が苦しくなる。
 あんなに激しく青木を求めてきた直後の電話だったから、何かあったのだろうとは思っていたが。尊敬する小野田のところへあんな写真が送られてきて、このひとはどれだけ悩んだのだろう。
 ひと目見てわかった、薪の憔悴と絶望。あの電話は苦渋の決断だったのだ、と確信した。
 これから自分がどうすべきか、青木は一瞬で心を決めた。あのカードを発動するときがきたのだ。

「心配しなくても大丈夫ですよ。あなたのことは、オレが守りますからね」
 秀麗な額にキスをし、寝室を出る。リビングに戻って、床に落とされた情事の名残を片付ける。
 床についた染みからは、薪の匂いがする。汚れをふき取った布を記念に持っていこうかとバカなことを思いつくが、気が付けば部屋中が彼のにおいに満たされていて、この空気の中には薪が溶け込んでいる、と思えばそんな必要も無い。

 薪は、自分の中にいる。
 それだけで充分だ。

 青木は清々しい顔になると、ソファにかけてあったジャケットのポケットから、携帯電話を取り出した。
「青木です」
 用心のために声は極力抑えて、青木は穏やかに言った。
「薪さんから事情は聞きました。はい、すべてお任せします。決して手遅れになりませんよう」
 これは、薪には絶対に聞かれてはいけない会話だ。この事実を薪が知ったら、とんでもない暴挙に出かねない。自分も電話の相手も、それだけは防ぎたいと思っている。

「遠慮はいらないです。オレの気持ちは変わりません。スパッとやっちゃってください。では」
 自分より遥かに階級の高い相手に、少し馴れ馴れしい物言いだったかと反省したが、この上下関係もあとわずかだと思えば気にもならない。

 緊急の事件に備えて携帯を持ったまま、青木は寝室へ戻った。
 ベッドヘッドに携帯を置き、薪の隣に潜り込む。すやすやと幼子のように眠る恋人の手を握って、青木は満足そうに目を閉じた。




テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
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2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
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