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破壊のワルツ(1)

 こんにちは~。

 数日後には4月号のメロディが発売されようという、秘密ファンなら誰もがナーバスになるこの時期に、こういうものを公開していいのかどうか、悩むところですが書いちゃったし。 KYなブロガーですみません。

 えっと、滝沢さんの過去のお話です。
 暗いです、重いです、長いです。(←つまんない小説ベスト3の条件をすべて満たしている)
 筆者お勧めの見どころは、滝沢さんが鈴木さんをイジメルところ、です。(何を書いているのやら)


 最初にしっかり申し上げておきたいのですが、
 わたし、原作の滝沢さんは間違いなく薪さんの味方だと思っているのですよ。 しかも、かなりいいやつ。
 よって、この話に出てくる彼はあくまで二次創作で、話の進行上こういう役割を果たしていると思ってください。


 それと、この話、救いがないです。
 旧第九が壊滅するときのお話なので、救いの入れようがなかったんですけど。
 だから、後味もすっごく悪くて、なので、

 明るくて楽しいお話がお好きな方は、読んでも楽しくないと思います。
 それと、旧第九の話なので、あおまきすとさんにはつまらないと思います。
 すずまきさんは多少出てきますが、貝沼事件が絡むので、ラブラブしません。
 滝沢さんはメインですけど黒い役なので、彼を好きな人は読まないほうが、
 って、いったい誰が読んでくれるの、この話っ!?


 てな調子で、公開するのも気が引けるのですが。
 よろしかったらどうぞ~~。






破壊のワルツ(1)






 記憶の中の彼女は、いつも笑顔で手を振っている。

 それが最後に見た彼女の姿だからか、彼女を思い出すと一番最初にその映像が浮かぶのだ。それから遡って、彼女と過ごした最後の時間。半日にも満たない、ほんの僅かな時間。
 あれは、秋も終わりに近づいた日曜日。自分の車で彼女を空港まで送り、4泊5日の旅行にしては多すぎると感じられた荷物を運んでやった。搭乗手続きに付き添い、搭乗時刻までの時間つぶしに空港内のコーヒーショップで30分。やがてアナウンスが、彼女が乗る飛行機の目的地と便名を告げた。
 
 セキュリティチェックの入口に向かう彼女の背中を見送って男は、彼女の前では我慢していたため息を吐く。
 急な仕事さえ入らなければ、彼女の隣を歩いているはずだったのに。まったく刑事って職業は。

 何列にも並んだカウンターの向こうの通路で、彼女は大きく手を振り、彼の名を呼んだ。彼は周りの目を気にして、胸の前にこっそりと手を上げただけだった。

 自分も叫べばよかった。
 彼女の名を呼んで、愛していると言えばよかった。
 いつでも言えると思っていた、言えなくなる日が来るなんて思わなかった。

 彼女は、今日も男の記憶の中で手を振る。
 ひたすらに振り続ける。



*****



 執務机の上に左手で頬杖をついて、忌々しそうに薪は舌打ちした。
 不機嫌に眇められた亜麻色の瞳に映っているのは、赤マジックで大きくペケが付けられた勤務表。所長に提出する休日出勤の予定表の期限は今日中だが、それを書き直す気にもなれないでいる。
 
 GWから3週間後、週末のメンテナンス当番について、部下からクレームが来た。当番表では副室長の鈴木と滝沢だったのだが、鈴木はこの週末、大事な用事がある。だから代役に豊村を指名したら、用事なら自分にもある、と断られた。ムカついたが仕方ない、もう一人の若手の上野に話を持ちかけたら、親戚の法事だと言われた。
「何が『人間として最低限の休暇を取らせてください』だ、豊村のヤツ。親の死に目に会えないのが刑事って職業だろうが」
「いつの時代の話してんの、おまえ」
 苦々しく悪態をつく薪の耳に、親友の声が届いた。言葉面は嗜める意味合いだが、その口調は明らかに面白がっている。
 毎朝のミーティングの記録をファイルに整理している鈴木に向かって、薪は声を張り上げた。

「豊村はまだいい、正直だからな。上野の叔父さんに到っては10人目だぞ。何人兄妹なんだよ、あいつの親は」
「ウソと決め付けるのはよくない。地方じゃ7人兄妹とか、珍しくないって聞くぞ」
「おまえこそ、いつの時代だよ」
 少子化が進む昨今、7人も子供がいたら政府から報奨金が出そうだ。
 薪がそう憤慨すると、鈴木は苦笑して、
「今年はGWから捜査が入っちゃって、休みが全然取れなかったからな。誰だって1ヶ月ぶりの週末は逃したくないよ」
「そんなこと言ったって、ハードディスクの残量は待ってくれない。今週末にバックアップ取らなかったら、容量オーバーでデータが消える危険性がある。あいつらには危機感ってもんが無いんだ」
 最近の若い者には、仕事に対する飢餓感がない。根性も足りないし、やる気も今ひとつだし。そのくせ、文句だけは一人前だ。

 いや、文句は最近だ。
 この頃、急に増えたような気がする。それに、何となく意思の疎通がしにくくなったような。

 勿論、室長とその部下という関係なのだから、友人のようには行かない。時には厳しい指導も必要だし、自分でも冷酷だと意識してなお、その判断を下さなければならないときもある。それでも、同じ研究室の仲間として、以前はもっと彼らの存在を近しいものに感じていたはずだ。
 それが、いつの間にか―――――。

 薪は左手の頬杖を解き、右手の拳を口元に当てた。軽く握った親指にくちびるを付け、じっと考えを巡らせる。

 ―――――― あいつが第九に来てからだ。

「あのさ、薪。何だったら、雪子に言って延期しても」
「だめだよ、そんなの!」
 申し訳なさを含んだ鈴木の申し出に、薪はびっくりして思考を中断する。大きく首を振り、彼の提案を激しく拒んだ。
「雪子さんのご両親、青森から上京してくるんだろ? もうホテルも取っちゃっただろうし、飛行機の切符だって。第一、式の予約もしてあるのに」
「ご両親が来るのは土曜日だから、ホテルと飛行機はキャンセルしてもらってさ。式って言っても結納だから。来週に延ばしてもらえば済む話だ」
「そんな簡単に言うな。一生に一度のことなんだから」
 今週末、鈴木は雪子と正式に婚約する。結婚式の予約をしてある式場の一室で、結納の儀を交わすのだ。

「それに、こんなことで予定が延びたら、僕が雪子さんに殺される」
「雪子は大丈夫だよ。仕事だって言えば」
 何を呑気なことを、と薪は思う。男はこういうことを面倒だと思いがちだが、女性にとっては一生に一度の、それも最大のイベントだ。それを『仕事』で延ばせると思っているなんて、危機感の無さは部下たちといい勝負だ。
「おまえは雪子さんに投げ飛ばされたことがないから、そんな無謀なことが言えるんだよ。一度組み合ってみろ、この人には一生逆らうまいって思うぞ」
「雪子、柔道の試合のとき、めっちゃ怖いもんな」
「うん。羽佐間さんも自分の奥さんとどっちが怖いか、真剣に悩んでた」
 冗談に紛れさせて、薪は鈴木の不誠実を詰る。

 鈴木には、ちゃんとしてもらわないと困る。今だけは仕事よりも雪子のほうが大事だと、はっきり態度で示してもらいたい。でないと……。

 薪は机の上で両手を組み合わせ、真面目に言った。
「例え緊急の捜査が入っても、その時間は開ける。結婚式も。新婚旅行はどうなるか保証できないけど、なるべく協力するから」
 大切な友人たちの大切な儀式を、心から祝いたい。自分自身にけじめをつけるためにも、何らかの形で協力させて欲しい。
 鈴木はいつものように薪にやさしく笑いかけて、軽い口調でそれに応じた。
「ラッキィ、室長が親友だと心強いな。ていうか、ちょっとズルイかな、オレ」
「そんなことはない。結婚による1週間の慶弔休暇、親の葬儀の3日間の忌引休暇は職務規定に明記されているんだ。堂々と取得すればいい」
「規定に明記されてる一年に20日の有給休暇は、毎年繰り越しになってるけどな」
「それを言うなって。こないだも田城さんに叱られたばかりなんだから」

 九つある研究室の中で、年次有給休暇を一番消化しきれていないのが第九研究室だ。第九ではMRIのメンテナンス等による休日出勤も多いから、その代休も加算されて、平均取得日数マイナス15日という笑えない結果になっている。実際、職員にとっては笑い事ではない。豊村の言にも一理あるのだ。
 薪はワーカホリックを絵に描いたような人間だ。人生の最優先は仕事、そのスタイルに何の疑問も抱いていない。実にシンプルで、ある意味幸せな男だ。
 が、それを周りの人間にも求める傾向が強いのは問題だ。第九の室長から休暇を捥ぎ取ろうと思ったら、1ヶ月ごとに結婚式と葬式を繰り返すしかない、などという笑い話まであるくらいだ。
 その冗談の通り、去年までは薪が言い渡す残業や休日出勤に職員たちは唯々諾々と従ってきたのだが。今年になってから、徐々にそのシステムが崩れてきている。残業も3日続くと4日目には渋られるし、休日出勤もこの有様だ。

「とにかく、鈴木はきちんと自分の役割を果たして。相手のご両親を安心させてやれよ。大事な一人娘を貰うんだから」
「そうだなあ。親もそうだけど、オレ、義弟ができるんだな。妹しかいなかったから、楽しみだ」
「そうだね。……いいな。羨ましい」
 薪には家族がいない。幼い頃に両親を亡くして、兄弟もいない。近しい親類も無く、親代わりになって育ててくれた叔母夫婦は、今はアメリカのロサンゼルスに住んでいる。
 たったひとりの親友も結婚して、自分から離れていく。自分では隠していたつもりの寂しさが滲み出てしまったのか、鈴木の瞳が心配そうに薪を見た。

「薪だって、結婚したら両親も兄弟もできるさ」
「それもそうだな。官房長の末娘と結婚したら、両親と義姉が2人もできる。義弟よりも義姉の方が、数段魅力的な響きだ」
 昔の冗談を蒸し返して、薪は鈴木の心配顔を笑い飛ばした。薪の笑顔に釣られたように、鈴木がホッと目尻を下げる。
「おまえ、言い方がイヤラシイ」
「鈴木こそ。口元が緩んでるぞ」
 にこやかに笑いながら、羨ましいのは鈴木じゃないよ、と薪は心の中で呟く。

 羨ましいのは義弟の方だ。鈴木の弟になれる、一生涯鈴木とつながる絆ができる。それが羨ましい。
 でも、本当に羨ましいのは……。

 その先を言葉にはしたくなくて、薪は慌てて意識を書類に向けた。休日出勤の予定表を作らなければ。
「週末は僕と滝沢が出る」
「悪いな。後で何か奢るから」
「もう貰った。山水亭のクリスマスディナー。美味かった」
「そんな、半年も前のこと」
 鈴木が言いかけたとき、彼の携帯が震えて、ふたりの会話は中断された。相手は多分、彼の婚約者だ。

「ああ、大丈夫。薪が上手くやってくれた」
 鈴木は雪子に薪の尽力を伝えると、嬉しそうに笑った。薪はシッシッと片手で追い払う仕草で、彼を自分の部屋から追い出した。定時は過ぎている。婚約前の大事な時期、早く彼女の処へ行ってやったほうがいい。
「薪。次の薪のメンテ当番、オレが代わるから」
「いいよ、気にしなくて。早く帰れよ。雪子さん待ってるぞ」
 ドア口で振り向いた親友に、薪は苦笑する。
 パタンとドアが閉まって、途端にひっそりと静かになった室長室に、薪が叩くキーボードの音だけが響いた。

 本当に、鈴木は気にしなくていい。逆に、仕事をしていたほうが気が紛れていい。自宅に独りでいたら、色々と余計なことを考えてしまう。考えても仕方のないことばかり、繰り返し繰り返し。
 とうに終わりを告げた夢を。過ぎ去った昔を。
 鮮明に、生々しく、何度も何度も思い出す。最後は決まって涙が止まらなくなる、それが解っているのにメモリーは消去できない。

 予定表をメールで所長に送って、再び頬杖をつく。
 両手でやわらかい頬を包んで、薪は物憂げにため息を吐いた。



*****


 原作の鈴木さんと雪子さんは、婚約してません。
 これはうちのお話の勝手な設定なので、(てか、コピーキャットが本誌に載る前にすでに書いちゃってて。だって~、雪子さん、4巻のお葬式で親族席にいたじゃん! だからてっきり婚約者だったんだとばかり。 あれはたまたまお母さんに慰められてただけだったんですね)
 いろいろ原作と違っててすみません~。
 まあ、一番違うのは、薪さんの性格ですけど(笑)


テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Mさまへ

和みました?
おかしいな、プロローグは不穏に、薪さんは切なく書いてるつもりなのにな・・・・・
あ、わかった、あれだ。

ご安心ください! この話にY嬢は出てきません!!(笑)
最後までごゆっくりどうぞ(^^


Aさまへ

鍵拍手いただきました Aさまへ

そうなんですよ、うちのおばあちゃんなんか、7人兄妹ですよ。 おじいちゃんは5人兄弟。 それが夫婦になるから24人、子供が2人ずつとしても48人、計72人ですよ。 冠婚葬祭、多いわけですよ(^^;


>そうですね、薪さんも結婚すれば家族ができる。それで幸せになれるなら願うべきなのですが・・女とくっつくなんて嫌だし(><)

わたしも正直に言うと、薪さんは独身でいて欲しいです~。
だからほら、こないだAさまに教えていただいた、薪さんの最初の設定は妻子持ちだったって、ものすごくショックだったんですよーー!!!
もっとも、その設定だったら、ここまではまらなかったと思いますが。


>自分でメモリーを消去できないという言葉に、くっ(;;)

うちの薪さんはねえ、鈴木さん相手になると、ものすごいオトメになっちゃうんですよねえ。 なんでそんなに好きなのかしら。(笑)


>薪さんは仕事以外、趣味無さそうですよね。スカッとする趣味があればいいのに(^^)あ、そんな時間ないか・・

だからほら、歌舞伎町のお風呂屋さ・・・・・・・いえ、何でもないです、失礼しました。 (←コメントの恩を仇で返した)


そうですね、うちの薪さんは動物好きなので、動物園とかサファリパークとかサル山公園とか、動物系のテーマパークに遊びに行くのが趣味です。
でもAさまのおっしゃる通り、時間が取れないんですよね。
そうなるとやっぱり、鈴木さんとお酒飲むのが一番楽しいのかな。 あ、でも、結婚しちゃうと・・・・・・ううん・・・・・・すみません、フォローしきれません。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

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おかげさまで8歳になりました(^^♪
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