FC2ブログ

破壊のワルツ(3)

 こんにちは~。

 突然ですけど、薪さんのスーツの色って、基本は青なんですかね?
 コミックスの表紙もそうだし、以前のメロディの表紙も青でしたよね。 ベージュの事もありましたが、あれを画で表すとしたらあのスクリーントーンは貼らないだろうし。
 そっかー、青かー。 ちょっと残念ー。
 うちはチャコールグレイです。 黒に近いグレー。 春夏は薄いベージュ、もしくは薄いグレー。 控えめなストライプ可。 そしてネクタイは必需品。 おしゃれさんだから(笑)





破壊のワルツ(3)





「室長。昨日はすみませんでした」
 室長室に薪を訪ね、豊村は神妙に頭を下げた。薪は室長席に座ったまま、豊村が透明人間でもあるかのように黙って報告書のファイルに目を通している。
 
 重苦しい沈黙に、豊村は自分の早計さを悔やむ。室長にひとりで謝罪に来るなんて、無謀だった。やっぱり副室長の鈴木に相談すべきだった。
 それでも、切り出してしまったからには仕方ない。豊村は恐る恐る口を開いた。

「やっぱり、週末のメンテはおれが」
「けっこうだ」
 彼女と喧嘩する覚悟まで決めて、やっとの思いで申し出た譲歩を退けられて、豊村は口を噤む。薪の態度はあまりにも素っ気無くて、豊村の不安はますます大きくなる。
「僕が出るからいい。もう所長に予定表を上げてしまったし」
「すみません。おれ、鈴木さんが週末に結納するなんて知らなくて。そんな大事なことだと解ってたら、断ったりは」
「鈴木の私事は関係ない」
 事情を説明しようとした豊村の言を遮って、室長の冷徹な声が響く。ファイルから眼を上げようともせず、温かさの欠片も無い口調で、彼は豊村を詰った。

「問題なのは、おまえの仕事に対する姿勢のほうだ。ここに来て何年になるんだ。MRIシステムがハードディスクの容量を振り切ったらどうなるか、分かっているはずだろう。
 鈴木のプライベイトを知らなかったことより、自分の仕事に対する不徳を恥じるべきだ」
 誠心誠意の謝罪と精一杯の譲歩を素っ気無く返されて、豊村は憤る。薪が怒るのも無理はないが、それでもこんな言い方をしなくたって。
「お言葉ですけど。おれは仕事は真面目にやってるつもりですし、それなりの実績も上げてます」
 部下に言い返されたのが気に障ったのか、薪はパタンと見ていたファイルを閉じ、氷の微笑で豊村を見返した。
「あの程度でか?」
 鼻で笑う口調で言われて、豊村のプライドがささくれ立つ。
 室長の実力は分かっている、彼は確かに天才かもしれない。でも、自分だって小学生の頃から努力して一流大に入り、将来を嘱望されて第九に来たのだ。ミスをして諭されるならともかく、こんな風に馬鹿にされる筋合いはない。

「こないだの事件は、5日で報告書まで」
「新入りの滝沢に、あれこれ指摘されたおかげでな」
 ファイルを机の上に放り、腕を組んで背もたれに寄りかかる。ものすごく嫌な目つきで見られて、豊村は、以前滝沢に言われたことを思い出す。
「年は上でも、MRI捜査の経験ではおまえの方が1年以上も先輩なんだぞ。恥ずかしいと思え」
 恥ずかしい? 自分の存在が、第九の恥だと言うのか。
 捜査官としての経験は、滝沢の方が8年も上なのだ。自分の気付かないところに気付いて当然だ。それを能力不足と決め付けられたら、改善のしようがない。

「実績を上げてる、なんて言葉はな、鈴木くらいの腕になってから言え。口惜しかったら次の進行中の事件、解決して見せろ」
 鈴木の名前を出されて、豊村の心に冷たい何かが落ちた。室長が認めているのは、鈴木のことだけだ。自分と他の2人は眼中に無い。

 耐え切れず、豊村は無言で頭を下げて室長室を辞した。
 腹立ちを噛み殺すように唇を噛み、モニタールームへのドアを開けると、心配そうにこちらを見ていた上野と目が合った。
「おまえは第九の恥だって言われた」
 豊村が憎々しげに呟くと、上野は憤慨した様子で豊村に近付き、ひどいな、とストレートに室長を非難した。
「一人前の口を利くのは、副室長のレベルに達してからにしろとさ」
 室長の言葉を一字一句違わず再生したわけではないが、意味合いはこういうことだ。豊村は事実を正確に上野に伝えたつもりだった。
 上野は当然のように憤りを露わにし、同僚のプライドを守ろうとした。

「無茶苦茶だな。勤め上げてる年数が違うだろ。おれたちはたった2年、副室長は第九が準備室だった頃からここにいるんだから。3倍以上だ」
「前に滝沢が言ってた通りだ。室長は、副室長以外の部下を軽蔑してる」
 それがいつ囁かれたものか、はっきりとは覚えていない。
 カフェテリアで昼食を摂っているときだったか、3時のコーヒーブレイク中か、はたまた休日出勤が滝沢と重なったときだったかもしれない。とにかく、入ってきたばかりの滝沢に、『第九の室長』がどれほどすごい天才なのか、彼の偉業について説明していたときに言われたのだ。

「へえ。あの若さで警視総監賞を3回、長官賞を2回ですか。すごいですね」
「だろう? そんじょそこらの捜査官が束になったって、うちの室長には敵わないって」
「なるほど。それでわかりました。何故、室長が俺たちをあんな眼で見るのか。自分があまりにも優秀すぎて、周りの人間がみんな馬鹿に見えるんでしょうね」
 滝沢にしては珍しい、悪意のある言い方だった。豊村がびっくりしていると、彼はふっと哀しそうな顔になって、
「だからこの研究室には、仲間なら当然生まれるはずの友情や信頼関係が無いんですね。俺が以前いた部署は、上司と部下がもっと仲良かったんで。キャリアの集まりって言うのもあると思いますけど、ちょっと淋しいですね」
「おれたち、仲いいぜ? 精神的にきつい仕事だから長続きしないやつ多いけど、今いる4人は2年前からの仲間だ。みんなで力を合わせて頑張ってる」
「あ、そうでしたか。それは失礼しました」
 鋭い目を丸くして、滝沢は両手を胸の前に出した。言い訳をするときのように両手を小さく振って、失礼なことを言ってすみませんでした、と謝った。

「自分の目には、薪室長は鈴木副室長以外、誰も信用していないように見えたものですから」

 そのときは深く考えもせず彼の謝罪を受け入れた豊村だったが、滝沢の言葉は小さな棘のように心の隅に引っかかっていた。
 そう言われてみると、薪はプライベイトを自分たちと一緒に過ごさない。アフターの飲み会どころか、研究所全体の忘年会や暑気払いにも滅多に顔を出さない。室長会だけは付き合いをしているようだが、それは多分、
「自分より格下の人間とは、交流を持つ必要が無いと思ってるのかもしれませんね。出世のことを考えたら、上層部には顔を売っておかないといけないから」
 そうだ、これも滝沢が言ってたんだ。
「でも、副室長のことだけは信頼している。逆に言えば、彼以外は必要ないと考えている。それを副室長も、充分自覚している」
 
 室長に意見があるときは必ず自分を通すように、自分の立会いの元で意見するようにと鈴木副室長は言うでしょう? 自分がその場にいれば、薪室長は穏やかに話をするからです。でもそれは、豊村さんたちに気を使っているわけではない。鈴木さんに気を使っているのです。
 薪室長にとって、鈴木さん以外の人間はどうでもいい存在なんです。

「ちくしょう。馬鹿にしやがって」
「豊村?」
 3歳下の同僚が、常になく凶悪な目をしているのに気付いて、上野は焦燥する。豊村は、良くも悪くも単純な男だ。褒められれば有頂天になるし、叱られれば凹む。今回は絶対に後者だと思って慰めの言葉を用意していたのに、怒り心頭とは。

「おれ、第九辞める。上野も一緒に異動願い出そうぜ」



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

Aさまへ

鍵拍手いただきました Aさまへ


>モノクロだと薪さんのスーツは濃いグレーぽいですね(^^)

でしょう?
でも、コミックスの表紙は1~3まで青、6巻でベージュ(しかしこれは、背景が青色だったためかも) 7巻でチェック(これは特別ですよね) なんですよね。
だから、青と考えるのが妥当かもしれないです。
・・・・・・・ダークグレイの方が、絶対におしゃれだと思うなあ・・・・・。


>メロディの4月号表紙、ネクタイしてましたね!萌え~(>▽<)

ネクタイっ!
萌えますよねっ!!
しかもあの体勢・・・・・・たまんない。 不慮の事故で倉庫に閉じ込められる薪さんは書いたばっかりなんですけど、いやー、あれはまた別のシチュでお話が書けそうです♪


>パタンとファイルを閉じて「あの程度で?」と氷の微笑を浮かべる薪さん、エレベーターで「婚約おめでとうございます三好雪子先生」と言った時の顔が脳内に見えた(笑)
>滝沢は部下を辞めさせてどうするんだ!?

きゃ、ありがとうございます!
わたしの二次小説ごときに原作の薪さんを思い浮かべてくださって、光栄です。

こういうときの薪さんは、本当に冷酷なひとに見えます。 
美人の弊害とでも言うんでしょうかね、本人はそこまで思っていなくても、相手にはものすごく冷たく感じる。 原作の薪さんは、けっこうな数の誤解を受けてきたんじゃないでしょうか・・・・・・うちの薪さんは心底性格悪いですけどね☆

滝沢さんは、本人なりの正義や考えがあって動いてます。
徐々にわかってきますので、お楽しみに~、って、あんまり楽しい内容じゃないですけど(^^;


>ところで、前のコメで私が意外に思ったのは最初に薪さんというキャラを作って2001のストーリイができたと思っていたからほかのメンバーより後だったことに驚いたのでした。

ああ、なるほど! それは驚きますね。
わたしも薪さんが一番最初にできたと思ってました。 もしくは青木さん。


>小説でも普通、主人公をまず、考えませんか?秘密の場合は脳を捜査するアイディアが先に浮かんだそうですが・・悩ませてすいません(^^;)

あ、これは~、ひとによると思いますが、
わたしはオリジナルを書くときには、最初にジャンルを決めて、大まかなストーリーを作って(このときの人物設定は年齢と性別、簡単な性格くらい)、それからその世界観に相応しい主人公を考えます。
わたしは、お話で一番大事なのはストーリーだと思います。 それから、この話を通じて何を言いたいのか、その主題。 キャラはそれを表現する、役者さんみたいなカンジです。  
わたしの場合、そのクセがついてるものだから、薪さんの性格がとんでもはっぷんに(@@)
二次創作の意味ないよ~(笑)

Mさまへ

鍵拍手いただきました Mさまへ

悪い人、好きですか?
それは自分にないものを求めるという、アレですね。(笑)
ふふ、良家の躾が行き届いたお嬢さんは、不良少年に惹かれるものさ。(爆)
そっかー、Mさまがわたしのお話を読んでくださるのは、
品性の悪さとか底意地の悪さとか傲慢さとか、Mさまの持ち得ない諸々の粗悪なものに惹かれ・・・・・・・うえええんっ!(自爆)
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
10万拍手ありがとうございます!
いつの間にか9歳になってました。( ゚Д゚)
文字サイズをお選びください
最新記事
最新コメント
拍手のお返事
いつもありがとうございます!

最新拍手コメのお返事はこちらです。

過去の拍手レスの確認は、該当記事の拍手欄を押してください。
鍵拍手コメのレスは、記事のコメント欄にお返しします。
月別アーカイブ
カテゴリ
詩 (1)
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
QRコード
QRコード
FC2カウンター
こんにちは(^^
現在の閲覧者数: