破壊のワルツ(5)

 メロディ4月号、読みました。
 青木さんが、とっても可哀想だと思いました。 
 お姉さん夫婦も、とっても可哀想だと思いました。
 青木さんのお母さんも、雪子さんも薪さんも、なんだかみんな可哀想になっていく。 
 ……秘密って、こんな話だっけ。

 とか言いながら、こんな話を書いてるわたし。(笑)


 それから9巻。
 …………あれっ!!?? 
 まさか、そんなところに修正が掛かるとは~~!!
 
 えー、でもそうしたらこの話、原作とのリンクが無くなっちゃうんですけど。 無謀に事件をでっち上げたみたいになっちゃうんですけど。(@@)
 だって~、9巻が発売される前に書いちゃったから……どうしよう、途中まで公開しちゃったし。
 すみません、二次創作ですのでね、気になさらないくださいねっ。(無敵の免罪符)
(コミックス派の方には、何が何だか分からない話ですね。 スルーしてくださいっ)


 広いお心でお願いしますっ!!
 


破壊のワルツ(5)





 記憶の中の彼女は、泣きながら手を振っている。
 笑っていたはずの彼女の顔が泣き顔になったのは、彼が古くからの友人に、2つの噂を聞いたのがきっかけだった。

「事故じゃなかった?」
 彼女の命を奪った飛行機事故の原因は、機体疲労によるエンジントラブルの可能性が高いと発表された。発見が遅れたのは、レーダーから機体が消失した地点と発見された場所に、常識では考えられないほどの隔たりがあったためと説明が付けられていた。

 そのときまで彼は、国交省の発表を疑いもしなかった。
 事故の原因など、どうでもよかった。
 もう彼女はこの世にいない。いくら詳しく事故の原因を知ったところで、彼女は戻らない。ならば、その行為に何の意味があるのか。
 自分が生きている意味すら分からなくなりそうだった彼には、事故の原因について聞くことも考えることも無意味に思えた。

「俺のダチが航空会社の社員でさ。航空会社には航空会社のネットワークがあって、問題の飛行機がどこの会社のものだか分かってたんだって。で、そいつが言うにはさ、確かにあの機体、疲労寿命は過ぎてたみたいだけど、そんなに簡単に壊れるものじゃないって」
 黙って強い酒を傾ける彼の横で、彼の恋人が死んだ飛行機事故について語る友人を、無神経だと責めることはできない。彼女との関係は、誰にも話していなかった。この記憶に新しい飛行機事故は、彼にしてみれば単なる酒の席の話題に過ぎなかった。

「機体の強度ってのは、疲労寿命の2倍の設定にするんだと。だから寿命は超えても機体はまだまだ元気で、実際バンバン飛ばしてるって。テレビで言ってる『機体疲労により隔壁が割れて作業油洩れを起こし、エンジントラブルにつながった』なんてことを起こす機体は寿命を2倍近く超えて飛んでる機体で、あの飛行機は、まだ寿命を100時間も超えてなかった。だから絶対におかしいって、会社の連中はみんな言ってるって」
 航空会社の友人から聞いた知識をひけらかすように、彼は喋り続けた。
「発見があんなに遅れたのも、普通はありえないって。いくらレーダーの消失地点と発見された島が100キロ以上も離れてたって言っても、この情報化時代に飛行機墜落の噂が伝わらないわけがない。だからさ」
 友人は、勿体つけるように言葉を区切り、彼の顔をじっと見て、機密事項でも話すようにこっそりと彼に耳打ちした。
「政府ぐるみで、事故を隠蔽したんじゃないかって」

 馬鹿馬鹿しいと思った。
 確かに、これだけ世間を騒がせた事故の詳細について、政府から発表された事項は不自然なくらい少なかった。たった一人の生存者の身元から辿って判明したはずの墜落機の便名やルート、航空会社の名前もすべて伏せられていた。
 だからと言って、隠蔽などと考えるほうがおかしい。百人以上もの人間が死んでいるのだ。隠しきれるわけがない。第一、事故を隠蔽することに何のメリットがある?

「なんで政府がそんなことをしなきゃならないんだ」
 彼が当たり前の疑問を口にすると、友人は身を乗り出し、「実は」とまたもや声を潜めて、
「あの飛行機には、テログループのリーダーが乗ってたんだ。そいつを抹殺するために、政府が乗客ごと飛行機を落としたんだよ」
「どこのスパイ映画だよ」
 突拍子もないオチに、彼は思わず失笑した。
 呆れた彼が、バーカウンターの椅子に背中をもたれさせると、友人は安心したように微笑んだ。
「お、ようやく笑ったな?」
 水割りのグラスを持って、自分も背もたれに寄りかかり、彼の顔を見ることなくぼそっとこぼした。
「おまえ、この頃元気なかったからさ。けっこう心配してたんだぜ」
 友人の少ない彼にとって、隣の男は大切な存在だった。多分、相手も同じだ。彼女と知り合う前、自分の一番大事な他人はこの友人だったことを、彼は思い出した。

「仕事のことでちょっとな。こないだから上司に、あんまり気の進まない部署への異動を打診されてるんだ」
 彼は、尤もらしい、でもたしかに彼の心を塞ぐ要因のひとつになっていた異動話を口にして、友人をミスリードする。彼女のことは、結婚が決まったら話そうと思っていたのだ。彼女が死んだ今になって打ち明け話をしても、友人を困らせるだけだ。
「仕事の選り好みなんておまえらしくないな。異動先はどこだ?」
「科警研」
「なるほどな。現場主義のおまえには物足りないってわけか。で、科警研の何処?」
「覗き部屋」
「げっ。第九かよ」
 第九の名前が出た途端、友人は盛大に顔をしかめた。2人とも、第九には反感を持っている。あれは真っ当な捜査ではない。死人の脳を見るなんて、正気の沙汰じゃないと言うか反則と言うか。少なくとも良識のある警察官なら、好き好んで就きたがる職務ではなかった。
「っちゃー。それは何て言ったらいいか……ご愁傷さま」
「拝むな、バカ」
 彼は笑いながら、グラスを空にした。たん、とカウンターに置いて、左手で頬杖をつく。

 彼にはもうひとつ、どうしても異動を拒みたい理由があった。
 この異動話を持ってきたのは彼の上司だったが、発生元はもっと上、それも警察庁№2という大物だった。
 何でも次長は、政敵である官房長が青写真を引いた第九の中に、自分の手駒を投入したいと思っているらしく、自分の忠実な僕である刑事局3課の課長、その部下である彼に白羽の矢が立ったというわけだ。
 仕事内容もさることながら、第九に行けば研究室の様子を逐一報告させられる。おそらく次長は、第九が官房長の名誉を上げることを快く思っていないから、妨害工作まがいのことも強要されるかもしれない。
 そんな、刑事の仕事から逸脱した真似はしたくない。

「行きたくねえなあ。警察辞めて、田舎に帰ろうかな」
「またまた、思ってもないくせに。物ごころ付いたころから俺たち、警官になろうって決めてただろ。俺たちの中には警官の血が流れてるんだよ。俺もおまえも、生まれたときから刑事で、死ぬまで刑事だ」
「どっかのドラマで言ってたな、そのセリフ」
 現職の警察官のクセに、嘘っぱちばかりの刑事ドラマが大好きな友人は、彼の突っ込みに憤慨してムッと唇を尖らせた。
「可愛くないね、おまえは。素直に感動しとけよ」
 彼は肩を揺すってくすくす笑い、心の中で友人に感謝した。彼女を亡くしてからの3ヶ月、こんな風に笑えたことなどなかった。まだ笑い方を覚えていたのだ、教えてくれてありがとう、と礼を言いたかった。

「そうだ。田舎に帰るって言えばさ」
 友人はポンと手を叩き、思い出したように話題を変えた。
「うちの部署が公安の下請みたいなことしてるの、知ってるだろ? でさ、公安に木梨って言う同期のやつがいたじゃん。ちょっと時代錯誤なヤツ」
「『命捨てます』の木梨か」
 そうそう、と友人が頷くのを見ながら、木梨という男の顔を思い出す。
 角刈りのいかつい、職務に人生のすべてを捧げている男だった。日本の平和を守るためなら命を投げ出す覚悟があると、公言して憚らない男だった。要するに、変わり者だ。

「あいつ、退職して田舎に帰ったんだって。で、いまは実家の八百屋手伝ってるんだって」
「……客は引くだろうな」
「うん。30m以内に、だーれも近寄ってこないってさ」
 友人のきつい冗談にニヤリと笑って、彼はバーテンに酒のお代わりを注文した。3杯目はストレートは止めて水割りにした。明日の仕事に差し支えては、と思った彼は、そんな自分に少し驚く。
 明日の仕事のことなど、考えたのは久しぶりだ。彼女がいなくなってから、朝が来なければいいと思いながら眠りについていたのだ。

「意外だよなあ。あいつ、絶対に公安に骨埋めると思ってたのに。よっぽど嫌なことあったのかな」
「第九への異動命令とか?」
「それだ、間違いない」
 友人のおかげで軽くなっていく心を、どこか後ろめたく感じながら、彼は最後の水割りを飲み干した。

「今度、からかいに行ってみるか。あいつの実家、どこだっけ?」
「茨城の田舎だって言ってたな。霞ヶ浦の近く」






テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Mさまへ

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そうなんですよ~、滝沢さんにはこんな過去があったんですよ~。
って話で盛り上がろうとしたんですけど、飛行機事故そのものがマボロシに(笑)
もう、笑うしかないです☆


滝沢さんが、どうして薪さんをイジメルのかというと、
① 同じ小学校でイジメられていた。
② 彼女の浮気相手だった。
③ 1度迫って拒否されて、憎さ百倍。
さあ、正解はどれ?(笑)

Bさまへ

鍵拍手いただきました Bさまへ


>ダークな滝沢さん、イメージがぴったりで、何が起きるのだろうと楽しみに読ませていただいています!

ありがとうございます!
滝沢さんはね~、いいひとだと思っていたのですけど、4月号のメロディで、なんだか自信が持てなくなってきました(^_^;
宇野さん、大丈夫かなあ・・・・・・ちょっと個人的な理由もあって、トイレでの緊迫シーンはどきどきしてしまうのですよ。

わたしにしては珍しく、ダークシリアスストーリーなので、いつもと勝手が違うのですが。 楽しみにしてくださっているとのお言葉、とても励まされます。
ちょーっと長いんですけどね、どうか最後までお付き合いください。

9巻の修正はですね、
ホント、驚きました。
あの事件そのものが鍵を握っていると思っていたものですから、まさかこう来るとは(^^;
事件のキーは、あちらの秘密だったんですね。 あれも政治家絡みですからね、大きな組織が動いているのでしょうね。
Bさまの鋭いレビュー、楽しみにしております!

Mさまへ

鍵拍手いただきました Mさまへ

まったくです。
9巻の修正は、予想もしませんでした(^^;

ああ、本当にその通りですよね!
コミックス買ってない読者だって、中にはいるでしょう。 この後、本誌にあの事件の話が出てきたら、あれ!?ってなりますよね。
てことは、もう2度と出てこないんですかね。
・・・・・・その事故を、こんなに膨らませちゃったわたしって(笑)

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Mさまへ

Mさま、こんにちは。
4月号、すごかったですよね。


> 一般的に言えば、雪子さんも哀れ、でも、青木や薪さんは、言葉がないですね

青木さんがね、とっても可哀想で・・・・・・
雪子さんの身の安全を考えて、ああ言ったんですよね。 彼女が好きなのに、彼女のためを思って自分から身を引こうとしている・・・・・ わたし、こういうの弱いんですよ。 あおまきすと失格なんですけど、可哀想になっちゃう。

薪さんはね、もしかしたらと思っていたことが、現実になってしまって・・・・・・
貝沼事件のときにも、「もしかしたら貝沼の凶行の原因は自分にあったのでは?」という疑念が、鈴木さんの脳を見て現実になってしまって、またこんな・・・・・・・
それが現実になったら、きっと薪さん狂っちゃう、と思ってましたが、岡部さんに事情を説明しているところを見ると、大丈夫みたいですね。 やっぱり強いわ。


> いっそ狂っていたほうが……
> 薪さんの、全身から絞りだされるような叫びは、青木に対してだけでなく、愛する人の命を、幸せを犠牲にしつつ、狂うこともなく一人のうのうと生き続ける自分に対しての怨念か。

そうですよね。
薪さんだって、いっそ狂ってしまいたい、狂った方が楽だ、と思っていたんですよね。(TT)

青木さんも、自分のせいで姉夫婦が死んだと思い込んで、薪さんと同じ苦悩を抱えるようになるのでしょうか・・・・・・。


> 宇野は「よそ者は黙ら」されてしまうのでしょうし、その時に薪さんがどんなに苦しむかと思うと。
> 苦しい、です。

あ、やっぱり?
そうなんかなー、イヤーな予感はしてるんですけどね、ううーん、考えたくないなあ・・・・・・(^^;


> しづさんとこも今回は暗いけど、しづさんは薪さんを殺したり廃人にしたりはされないでしょうから、それだけが、救いです~

しませんよ~。
かわいいかわいい薪さんを、酷い目に遭わせたりするわけないじゃないですか~。 ←過去は振り返らない。
まあ、ちょっとくらいは泣かせちゃいますけどね(^^;


> 9巻、なぜ設定変えたんでしょうね
> 何か、世間的にまずいものがあった?
> 本筋に関わるところで変更ってのは、ストーリー構想するうえでありえないのでしょうが?

ですよね!
だって、「薪さんが命を狙われるようになった」のは、「カニバリズム事件を見てから」なんでしょう?
それなのに、その事件の内容を変えるって・・・・・・北海道の病院にいた少年は、外務大臣事件には関係ないだろうし、このままだとカニバリズム事件そのものが今回の事件とは関係のないことになってしまうんじゃ? 
あれだけ振っておいて、それはおかしいですよね。 でも、今の段階では3つの事件の関連が見えません。
この修正がこれからどのように今回の事件に絡んでくるのか、楽しみですね~。(^^


> 豊村も、上野も、どこの職場にも居そうなヤツですね~。でも、私たちは彼らの背後に忍び寄る死の影を知っている。
> ドキドキしながら、読んでます。こんな暗い話でも、原作読んでるより、気が楽ってのが、苦しいですね。

いまや、原作以上のドS話は存在しませんね(^^;
さすが清水先生です~、天上の存在です~。

まあこの話、旧第九が壊滅するまでのお話なので、オチは動かせないんですけどね。
ラストが解っているというのは興醒めかとも思いますが、それでもドキドキしてくださって、うれしいです~。
今後もよろしくお付き合いください♪
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

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おかげさまで8歳になりました(^^♪
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