破壊のワルツ(7)

 こんにちは。
 今日はちょっとだけ、身内のバカ話をしてもいいですか? (興味のない方はスルーでお願いします)

 うちのオットって、本当にバカなんですよ。
 昨日の夜、わたしが4月号の表紙を見てニヤついておりましたら、
「さっきからずーっと見てるけど、そんなにその人がいいの?」
 と訊かれましたので、
「顔も身体もポーズも最高。 目の前にいたら襲う」
 と、正直に答えましたら。

 彼はおもむろにベッドに横たわり、
 薪さんと同じポーズを……  眩暈がしました。


 でもですね、
 オットは薪さんほど足が長くないので、 膝頭が二の腕に届かない のですよ。
 で、一生懸命に左膝を右腕に近付けようと足を上げて、そうすると自然に下の方が引っ張られて、結果、ズボンのお尻がぱっつんぱっつんに。
 大爆笑でございました。
 

 笑い転げるわたしに、オットいわく、
「その人だって、見えないところではこうなってるよ」
 …………。

 やっぱりあれは、薪さんご自身の左膝じゃなくて、ジャケットもしくは青木さんの(←限定) 足だったのでしょうか?
 みなさん、どう思われます?





破壊のワルツ(7)






『おかしいんだ、滝沢』

 受話器から流れる友人の声を聞いたとき、彼は友人が執務時間に電話してきたことに、まず驚いた。
 彼は自分が現在、MRIシステム習得のための研修中であることを知っている。だから、電話は必ず昼休みか定時過ぎ、どうしても話したいときにはメールに『電話をくれ』とメッセージを残していたのに。
 余程のことがあったのだと思った。自分が研修機関に缶詰になっていることを忘れるくらい衝撃的な何かがあって、それで矢も盾もたまらず電話をしてきた。
 彼は大きな事件を予感し、研修室から廊下に出て、そのまま歩いて庁舎の外に出た。

『出張で茨城に来たから、ついでだと思って木梨の実家に寄ったんだ』
「おう。木梨、元気だったか?」
 予想と違う答えに、彼は少々肩透かしを食いながらも応えを返した。
 てっきり大きなヤマをつかんだのだと思ったのに、さほど付き合いも無かった旧友に会いに行っていただけとは。しかも、それを仕事中にわざわざ電話で知らせてくるなんて。

『木梨はいなかった』
 せっかく会いに行ったのに、顔を見られなかったのが不満だったのか。それでわざわざ電話?
「そうか、残念だったな。また機会があるだろう」
 まあいいか、と彼は肩の力を抜き、中庭のベンチに腰を下ろした。

 2月に第九に異動になって半年、彼に義務付けられた研修のうちの講義部門はとっくに終了した。あとはMRI捜査の模擬訓練だけなのだが、これがどうにも憂鬱だ。システムの操作はやたらと難しいし、もともと部屋に閉じこもって作業するのは不得手なのだ。
 それに、この訓練で及第点を取ったら、第九に行かなくてはいけない。いつまでも引き伸ばせるとは思わないが、なるべく遅いほうがいい。研修室を抜けられるなら、どんなつまらない用事でも大歓迎だ。
 昔のように、職務に身を投じる気持ちは彼にはない。彼女を失った痛手は、彼の人生のすべてを虚しい色に塗り替えた。眼に映るものすべてが薄い灰色に見える、そんな日常を彼は送っていたのだ。

『ご両親は、木梨はまだ警察に勤めてるって思ってる。でも、木梨は確かに退職している。おまえも見ただろ?』
 友人に言われて、彼は友人と2人で人事課のデータベースで木梨のことを調べたことを思い出した。木梨の名前は退職者リストに載っていて、データはすでに抹消済みだった。仕方なく、実家の住所は大学の同期生名簿で調べたのだ。
「警察辞めたことを言い辛くて、実家に帰ってないとか」
『でも、ヘンなんだ。ご両親のところに、木梨から毎月手紙が届いてるんだ。警察で元気に仕事をしてるって』
「だからそれは、木梨が書いて」
『消印が、警視庁内の郵便局なんだ』
 その言葉に、彼の頭脳の一部分がピクリと反応した。刑事という生き物は、嘘に敏感だ。それは捜査官の本能であり、友人の言葉を借りれば刑事の血というやつだ。

『おかしいだろ。百歩譲って木梨が毎月警視庁に手紙を持ってきてるとしても、退職してから7,8通は届いてる。だったら噂になってもいいはずだ。あの有名人に、誰も気付かないなんて不自然だ』
「誰かに頼んでるとか」
『あいつにそんな友人がいたか? てか、そこまでして隠すか、普通』
 木梨の行動の不自然さは、彼も認めていた。しかし、ひとには事情と言うものがある。どうしてそこまでして自分の両親に退職の事実を隠さなければいけないのかは分からないが、木梨にも考えがあってのことだろうと彼は思った。

『それと、手紙を見せてもらったんだけど。ワープロ打ちなんだ』
 またもや彼の中の血が、ぴくぴくとざわめく。
 両親宛の手紙をワープロ打ちで?業務連絡ではあるまいし、親しい人への手紙をワープロで打つなんて、どちらかというと右翼的な考えを持つ彼が、そんな真似をするだろうか。
『そうなんだ、以前の手紙は全部手書きだった。それが、退職を境に活字に変わった。文面も何だか素っ気無くなったし』
 彼は直ぐに手紙の変化を説明できる理由を2,3考えて、(例えば利き手に怪我をしているとか)しかしどれもしっくりせず、友人の言葉を待った。
『実は、ご両親もおかしいって薄々思ってて、それで俺に手紙を見せてくれたんだ。それでさ』
 友人は言葉を切り、しばしの間沈黙した。彼が辛抱強く待っていると、やがて友人のためらうような声が聞こえてきた。

『息子は本当に生きてるんですか、って聞かれた』

 彼はハッと息を呑んだ。
 図らずもそれは、彼が一番に思いつき、飛躍しすぎだと即座に打ち消した疑惑だった。

 肉親の勘というのはバカにできない。長い間刑事をやっていると、いくら探しても見つからなかった死体の在り処を被害者の母親が夢に見て、などとオカルトのような事件にも遭遇したりする。それは極端な例だが、行方不明になった子供がいたとして、その親、特に母親たちが、自分の子供の生死をかなりの確率で予見することも事実だ。
『なあ、滝沢。もしかしてさ、木梨って本当は死んでて、それを何らかの理由で公安が隠してるんじゃ』
「まさか。死んだ理由を隠すのはよくあることだけど、死んだこと自体を隠すことは無いだろう」
 公安の中でもスパイ活動を行なっている職員が殉職した場合は、家族にも本当の死因は教えない。彼らの本当の職務は家族にも秘密だからだ。だから、銃で撃たれたとしてもその銃創を隠し、偽の死亡診断書を付け、交通事故で死んだことにする。それでも、遺族に遺体を返さないなんてことはしない。
 だいたい、木梨はスパイではない。本当のスパイは、毎日公安に出勤してこない。殆どが一般の企業に勤めて、偽りの名前と履歴書の下で職務を遂行しているのだ。

『だから余計に気になってさ。俺、ちょっと調べてみようと思うんだ』
「まあ聞けよ、西野。俺の推理はこうだ。木梨は何か、とてつもない失敗をやらかして、警察を免職になったんだ。それで両親に顔向けできなくて、実家にも戻れず、手紙で嘘を吐き続けている。手紙が機械打ちになったのは、大失敗のときに右手に怪我をしてだな」
 彼はこの、事件と呼ぶにはまだあまりにも些細な出来事の裏側にきな臭い匂いを感じ取って、友人の勇み足を止めるべく、思いつきの推理を喋った。その饒舌さは、普段口数が少ない彼が、どれ程の不安に駆られていたのかを物語るものだった。

『失敗って、例えばどんな』
「そうだなあ。組対5課の課長補佐の奥さんに手を出したとか」
『で、小指どころか手首ごと詰められたってか?』
 組対5課の課長補佐は脇田といって、コワモテの刑事が多い5課の中でも特に怖い顔をしている。何処からどう見てもヤの付く職業にしか見えない。

『とにかく、あいつがどうして警察を辞めたのか、調べてみるよ。あんなヤツでも一応は同期だろ。万が一、ご両親が心配してるようなことになってたら、骨だけでも届けてやりたいじゃないか』
 やさしくて面倒見の良い友人らしい言葉に、彼は苦笑した。
 ああ見えて、彼は頑固だ。自分が止めておけと忠告したくらいで、考え直すとも思えない。何よりも、彼は生まれたときからの刑事。真実の追究は、血の為せる業だ。

「慎重にやれよ。公安は秘密主義だからな。つつかれて良い顔はしないぞ」
『分かってる。まあ、おまえの言うとおり、何処かに女とシケ込んでるっていうオチかもしれない。そしたら二人で冷やかしに行ってやろうぜ』
 ああ、と笑って、彼は電話を切った。

 彼の友人が死体で発見されたのは、それから2週間後のことだった。




テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Cさまへ

鍵拍手いただきました Cさまへ


>私もあれは,脚の長さではなく,体の柔らかさで決まるような気がします。

あ、やっぱりそうですかね。
薪さんは男の人だけど、柔軟性はありそうですよね。 てか、いつもあの格好でなさってるのかしら。(何をって訊かないで)


いえ、うらやむようなものじゃありません。<うちのオット。
とにかく、びっくりするくらいバカな男で・・・・・でも、退屈はしませんね(笑)

それと、
襲ってません(笑)
襲って欲しかったんですかね? 彼は(笑笑)


>こちらのタッキーは原作より繊細そうですねえ。薄幸というか、、。

飛行機事故に絡めて、悲しい過去を作ってみました。 
悪いことさせるにしても、何か理由がないと不自然ですからね。
と思ったら、飛行機事故が消されてた~~!(笑)

原作の滝沢さんも、なんか不穏な感じになってきて・・・・・・悪い人だったらどうしましょう。 てっきり薪さんの味方になってくれると思ってたのにな~。

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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