室長の災難(14)

室長の災難(14)







 階下の3人が加わって、8人全員が揃った。
 男たちは薪の身体を4階まで運び、その目的の部屋に運び入れた。中央にちゃんとベッドが用意してある。
 薪は、男たちが滑稽でならなかった。
 こいつらはまだ、自分が女だと信じているのだ。

「さっきも言ったが、僕は男だ。こんなところに連れてきたって、なにもできないぞ」
「男だっていいよ。そんだけきれいなら。全然、大丈夫」
「俺も、どっちでもOK」
「オレも挑戦する。こんだけ色っぽけりゃ、イケそうな気がするし」
 ……最近の若いものの言うことは理解できない。というより、頭が理解することを拒否している。

 田崎が懐から小さなナイフを取り出し、キャミソールの真ん中を縦に切り裂いた。パット入りのブラをナイフではじく。伸縮性のある布地の下から現れたのは、平らな、しかし象牙のように美しい胸だった。
「ほんとだ、男だよ」
「うわ―、いるんだ、こういうひと」
「性別間違って生まれてきちゃったんだろうな」
 勝手なことを言っている。股間に蹴りを入れてやりたいところだが、クスリのせいで体が言うことをきかない。
「すっげー。肌、きれー。こないだの女よりきれいじゃね?」
「すっべすべー」
「ウエスト細いなあ。60センチくらい?」
 胸に首筋に太腿に、何人もの手が伸びてくる。嫌悪感に吐きそうだ。

「触るな、気色悪い! おまえら変態か!」
「もしかして、刑事さん、バックバージン?」
「えー? はじめてー? この顔でー?」
「どーゆー意味だ!」
「刑事さん、本当にクスリの効きが悪いね。体質かな」
 クスリなら嫌というほど効いている。そのせいで動けないのだ。でなければ、あと2、3人は殴り倒している。

 首筋を指で撫でられる。止めろ、と叫ぼうとしたが、声にならない。
 なんだか、おかしい。からだがヘンに熱い。クスリの作用って確か……。
 
「んっ……ふっ!」
 わき腹を撫で上げられて、勝手に背中が反り返る。
 自分の声にありえない響きを感じ取って、体の奥底から羞恥心が湧き上がった。
「ちょっ、やめ、ひゃっ!?」
「おっ、効いてきた? これから4時間は天国へ行けるよ、刑事さん。その後で本当の天国に送ってあげるけどね」
 殺されるのは仕方がないか、とも思う。どうせ自分はロクな死に方はできない。頭を潰してくれるらしいから、それはOKだ。しかし、この状況は。
 断固、NGだ。
 
「やめろ、はなせっ!」
 動かない手足を気力で動かす。目前に迫っていた男の顔面に、長い付け爪がヒットした。
「いて!」
「やっぱ、縛っとこうか」
「そうだな、押さえつけてないとできなそうだな。一回やっちゃえば平気だと思うんだけど。うーん、クスリが足りなかったのかな。追加するか」
 2人の男に右手と左手を封じ込められ、抵抗する術を奪われた。男の舌が首筋から胸元に這い下りて、小ぶりな乳首にしゃぶりついた。
 何とか声は殺すが、体の反応は止められない。びくびくっと震えた下半身から、背筋を伝って電流が遡ってくる。

「じゃ、連れてきたやつの特権てことで。オレが一番でいいかな」
 田崎がのしかかってくる。射殺さんばかりの眼で、薪は若い美男子を睨みつけた。
「大丈夫、やさしくするからさ」
 スカートの中に手が入ってくる。うち腿を撫で上げられて、理性が切れた。
「い、いやだああっっ!!」
 もう、なりふりかまっている余裕はなかった。女のような悲鳴でも何でも、叫ばずにはいられない。
「ん~、いい声。もっと鳴かせてあげるよ」
「や、やめっ……あっ、んっ、んふっ……っ!」
 嫌悪感でいっぱいの心を裏切る、自分の身体が信じられない。
 普段ならありえない色香を含んだ吐息は追い詰められたように性急で、合間に混じる声は途切れ途切れに愉悦をにじませる。

 舌噛んで死んだほうがましだ、と思った瞬間。
 ボン! と大きな音がして、もくもくと煙が上がった。視界がふいに真っ暗になる。
 上に載っていた男の重みがなくなり、誰かに抱き上げられた。突然のことで、なにがどうしたのか理解できない。
 そのまま部屋の外へ連れ出された。階段を下り、煙のないところまで運ばれて床に降ろされる。吸い込んでしまった煙のせいで激しく咳き込む。
 流れている涙は煙のせいなのか、その前からのものなのか、判断がつかない。

「大丈夫ですか? 薪さん」
 大きな手が、薪のむき出しの肩に置かれた。それはあの悪鬼のような連中とは違う、やさしいぬくもりを薪に伝えてきた。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
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2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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