破壊のワルツ(10)

 こんにちは~。

 この章は短いので、次の章も一緒に上げます。
 てか、ひとつの章にすればいいのかな? でも、場面が変わったら、やっぱり章は変えるよね? あ、でも、そうすると読むの面倒?
 てか、この話自体読むのタルイかも、ううーん。

 広いお心でお願いしますっ!(←結局これ)
 




破壊のワルツ(10)





『3日前から続いておりますこの暑さは、東シナ海上に発生した熱帯性低気圧の影響で……』
 カーラジオがニュースを伝えている。昨夜も熱帯夜だったが、今日も暑くなりそうだ。

「手こずっているようだな。彼らの結束は固いと見える」
 運転席に座ったまま、滝沢は後部座席の人物の話を聞いていた。後部座席には黒いフィルムが張ってあり、外部から彼の姿は見えない。
 滝沢が車を停めているTホテルの駐車場には、日曜日ということもあってか、高級車がずらりと停まっていた。その中で国産中級の自分の車は、悪目立ちするような気がした。

「もうちょっとで成果に結びつきそうだったんですけどね。邪魔が入りまして」
「何も大事件を起こせと言ってるわけじゃない。小さな事件でいいんだ。大きいのは逆に困る。こっちまで飛び火しかねない」
「№2の座を守るのも、楽じゃありませんな」
 冷房の効いた車内で、互いの顔を見ないまま、滝沢とその人物は会話を続けた。これは誰にも聞かれてはいけない会話だからだ。

「人権侵害に対する訴訟、職員同士の暴力事件。室長の職務違反なんか特にいいな。あの男が室長を指名したんだからな。直接の打撃になるはずだ」
 №2のクセに、考える事がセコイ。保身を念頭に置くから、思い切った真似ができないのだ。そういう点では、彼の言う『あの男』の方がずっと革新的だ。

 後部座席の男は、本来なら一介の警視である滝沢など、直接口を利くことも許されないほどの上級官僚だ。そんな彼にも悩みはあって、追われるものの苦しみと言うか、つまり、№3の小野田官房長にその地位を脅かされている。2つの権勢の差は徐々に狭まり、来年あたり、2人の上下関係は入れ替わるのではないか、との下馬評まで立っている。

 この噂の根拠には、滝沢の勤める法医第九研究室が深く関わっている。
 第九の設立が計画されたとき、警察庁は画期的な捜査法を支持する設立推進派と、人権問題からの糾弾を恐れた反対派の真っ二つに分かれた。保守派の次長は勿論反対派に回ったが、革新派の小野田は推進派だった。
 小野田派による様々な裏工作や政治的な圧力も加わり、結果的に反対派は押さえ込まれた。新しい施設の建築にIT設備の導入など、巨大な金が動くプロジェクトに大手ゼネコンと代議士が加わったら、その勢いは流れ落ちる滝の如しだ。小野田は自分の妻が大物政治家の娘であるというあからさまな人脈をフルに使って、第九の青写真を描いたのだ。軽蔑すべき男だ、と言うのが次長の理屈だった。

 その第九は発足してから3年足らずで多大な功績を挙げ、何度も長官賞や局長賞を受賞した。自然と小野田官房長の評判は上がる。長官賞授与式の折、「他の誰がやってもここまでの成果は望めなかっただろう」とまで警察庁長官に言わしめた現在の第九室長、その役職に薪を抜擢したのも彼だし、準備室設立の指揮を執ったのも彼だ。
 つまり、第九の手柄は官房長の手柄。第九の評判が上がれば、小野田の地位も上がるというわけだ。

「とにかく、第九がこのまま手柄を上げ続けることは避けなければならない。これ以上、あの男をのさばらすわけには」
 次長側の言い分を聞くと、小野田は政治的裏工作と金にまみれた悪徳官僚のようだが、滝沢の目から見るに、なかなかの人物だと思う。少なくとも、この次長よりは器が大きい。
 やり方はきれいとは言い難いが、きれいごとだけでは大事は為せないのが警察というところだ。きっと、彼には彼なりの正義があって、それを貫くためなら手段は選ばない。そういう人間だけが、此処で生き残っていけるのだ。

 そして。
 自分にも、正義はある。

「お任せください。必ずや次長の期待に応えてみせます。ですから次長も、どうか私との約束をお忘れなきよう」
「ああ。約束は守る。しかし、君も変わった男だな。あんなものに興味があるなんて」
「隠されると知りたくなる。刑事根性ってやつですよ」
「特殊任務に対する報酬が欲しいと言われたときには、機密費からいくら持ち出そうか思案したんだが」
「そちらは十分いただいてます。それに、派手に金を使ったら直ぐに目を付けられてしまうでしょう。使えない金なんて、あっても仕方ないですよ」
 全神経は後部座席の人物との会話に集中しながら、表向きはホテルから出てくる友人を車で待っている男を装って、運転席の窓から人待ち顔で外を眺めていた滝沢は、ホテルの正面玄関から出てきた客の中に、見知った長身を見つけて眉をしかめた。
 黒髪の短髪がよく似合う目鼻立ちのくっきりした美女と、彼女に良く似た年配の女性、それから立派な髭をたくわえた少し頑固そうな男性と4人で出てきた彼は、滝沢が務める研究室の副室長だった。

 彼の婚約者は青森の出身で、結納式のために上京してくると聞いていたが、このホテルに泊まったのか。なぜ娘の家に泊まらなかったのだろう、彼女は自宅マンションを所有していたはずだが、とゴシップ好きの中年女性のような好奇心を覚えて直ぐに、自分には関係のないことだとそれを諌める。

 彼女のことはどうでもいい、それよりも副室長だ。
 新しく家族になる予定の彼女とその両親に囲まれて、幸せいっぱいの彼。今が人生の最高期とばかりに、天真爛漫に笑って。
 大事な親友が、何処でどうなっているか知りもせず。

 知らず知らずのうちに頬に浮かべていた酷薄な笑いを、そうと気付いても消すことができず、滝沢はいっそ楽しげに言った。
「安心してください。次の手は打ってあります」
 
 熱せられたアスファルトから立ち上る暖気が陽炎になって、滝沢の視界を僅かに歪ませている。そのせいか、ホテルの玄関からタクシーに乗り込む4人の姿は、彼らが幸福な未来への準備を着々と進めているにも関わらず、儚い夢のように霞んで見えた。



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
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