破壊のワルツ(17)

 こんにちは~。

 お休みしてた10日くらいの間にも、当ブログを覗いてくださってた方々、気にかけてくださってありがとうございました。
 お知らせした後は放置状態だったんですけど、それでも毎日30人からの方に足をお運びいただいてたようで、恐縮です。
 このご厚情には、作品でお礼を、と思ったんですけど~、陰湿な話ですみません~~!! 
 どうしてこんなときにこんな話を……天然KYですみません……。


 わたしはお話を書き上げるたびに、題名とページ数と脱稿日を記録してるんですけど、3月は見事にゼロ。
 妄想しなくても人間は生きられるんだな~、と当たり前のことを思いました。(笑)

 4月に入ったことだし、気持ちを切り替えて、笑える話を書こうと思います。 
 心配しなきゃいけないことがたくさんあるからこそ、一時でもそれを忘れられるような時間をみなさんに提供できたらと、おこがましくも思ってしまうのは、わたしには他にできることが何もないからです。
 
 ということで、巻きますっ。
 この章は短いし、次の章も一緒に上げますね。
 この話、早く終わりにしたいの~~!! 暗いんだもんっ!(><)


 よろしくお願いします。
 



破壊のワルツ(17)





 室長室から出てきた豊村を見て、滝沢は彼の顔が生き生きと輝いていることに気付いた。
 薪からお褒めの言葉でももらったか、大股で自分の机に着くと、腕まくりまでして画面に顔を近づけた。
「張り切ってるな、豊村」
「へへっ、こないだの放火事件。室長が『よくやった』って」
 豊村の、若く紅潮した頬に、滝沢はある可能性を見出す。
 お節介な副室長のせいで、自分が豊村に蒔いた種は完全に枯れてしまったと思っていたが、あれは自分が間違っていたのかもしれない。蒔く種の種類を間違えたのだ。離反を阻止されたことは、返ってよかったのかもしれない。相手に向かう気持ちが強くなれば強くなるほど、それが負のベクトルに転換されたときの破壊衝動も強い。

 薪に褒められたのが余程うれしかったのか、昼休みまで時間が惜しいからモニタールームで弁当を食べるという豊村に、滝沢は付き合うことにした。売店で買ってきた握り飯をかじり、ペットボトルのお茶を飲みながら、思い出したように話題を振る。
「なあ、豊村。室長って、本当に官房長の愛人なのか?」
「あれはデマっすよ」
 ぷっと吹き出して、豊村はおかしそうに笑った。滝沢が、そんな噂を信じているということ自体がおかしかったのか、「滝沢サンともあろうひとが」と前置きしてから、
「うちの室長、見た目はあんなんだけど、中身はめちゃめちゃオトコでしょ。女の子見ると、まず胸に目が行くんすよ。ありえないっす」
 ……本当に、女の子の胸が好きなんだな。男の子だな、薪。

「そっか。じゃあ、俺の見間違いか」
 少し照れた表情をつくろって、指先で頬をぽりぽりと掻きながら、滝沢は慎重に言葉を選んだ。
「見間違いって?」
「いやその……こないだ、俺のせいで室長が入院することになっただろ。そのときに鈴木が」
 手で覆いを作り、声を潜めて、豊村に耳打ちする。
「薪とキスしてた」
「えええええ!!?? キス!?」
「しっ、豊村。声でかい」
 それでいい。給湯室で食後のコーヒーを淹れている上野にも聞かせてやりたい。

 案の定、上野は何事かと給湯室から顔を覗かせ、滝沢は彼にも聞こえるように声を張り上げて、
「いや、だから見間違いだって! 副室長が室長の様子を近くで見ていたのが、角度の関係でそんな風に見えたんだ、きっと」
「確かめてきます」
 豊村は食べかけの弁当を机に置いて席を立ち、真っ直ぐに室長室へ向かった。「待てよ」とおざなりに彼を制止しつつ、滝沢は心の中で嘲笑う。

 さすが単純さがウリの豊村だ。直球で行くか。
 普通に考えれば否定されて終わりだろうが、鈴木にはこの間、種を植えておいた。それがどんな風に成長し、彼にどんな反応を取らせるか。楽しみだ。

「なんの騒ぎだ?」
 上野がコーヒーを持ってきて、滝沢と豊村の机に置いた。自分のカップを手に持ち、立ったままそれに口をつける。
「いやまあ、なんて言ったらいいか」
 笑い話になるだろう、と滝沢は事情を話し、上野はそれに大した興味もないようだった。彼の興味は、そう、こちらだ。

「滝沢。こないだのことなんだけど……あれ、おまえの言うとおりだったかもしれない」
「え? なんでそう思うんだ?」
「思い出したんだ。課長と上手く行かなくなってから、すぐに第九への異動の話があったこと」
 上野は思い出したと言ったが、それが必ずしも真実でないことを、豊富な捜査経験を持つ滝沢は知っている。人の記憶と言うのは曖昧なものだ。その時の考え方によって、昔の経験はその意味合いを簡単に翻す。
 課長は単に上野と反りが合わなくなり、彼に第九への異動を勧めたのかもしれないし、そこに薪が関わった証拠はない。しかし、疑惑は人の目を曇らせる。疑いという眼を持って過去を振り返れば、それらしきことが見えてきて当然だ。

「課長に睨まれてる俺とは、つるんでくれる友だちもいなかったんだけど。2,3日前、前の部署の人間と話をする機会があってさ。関野課長、そいつの前でそれらしきことを言ってたって」
 それはもちろん、滝沢が仕込んだ駒のひとつだ。
 滝沢の裏のボスは、警察庁№2の実力者だ。使える手駒はどこの部署にも紛れている。
「何よりも、副室長が俺に言ったんだ。ここに来たばかりのころ、室長に怒られて凹んでたら、『室長はどうしてもおまえの読唇術が欲しくて、関野課長に頼み込んだんだ。期待してるから強く叱るんだよ』って」
 なんだ、本当に引き抜いていたのか。これは瓢箪から駒だ。
 しかし、これで真実味がさらに増した。鈴木は落ち込んだ上野を元気付けようとして裏事情を暴露したのだろうが、それがここに来て裏目に出た。自分が以前受けた陰湿な苛めの原因は室長にあるのでは、という上野の勘繰りを助長してしまう結果になった。

「上野、考えすぎだよ。もしそれが本当だとしても、あの室長にそこまで見込まれるってすごいことじゃないか? 大したもんだよ、おまえ」
 滝沢が上野を元気付けるほどに、彼は室長への疑いを濃くしていく。彼が空になったコーヒーカップを持って給湯室へ戻る頃には、彼の疑惑は完全な不信へと姿を変えていた。
 
 ひとりになって、滝沢はすっかり冷めたコーヒーを口に含む。
 これだから、人間てやつは面白い。自分で自分に糸を巻きつけ、猜疑と不安感でがんじがらめになって行く。絡み合った糸を操るも断ち切るも、自分次第。これはこれで楽しいが、滝沢の本当の目的は違う。

 薪から、あの事件の情報を引き出すこと。

 第九に不和の種を蒔き、彼を室長の座から引き摺り下ろす。役職から外れれば、彼の口も軽くなるだろうし、それでも喋らない場合は鈴木のことを盾に脅してもいい。何を犠牲にしても彼が真実を喋らなかった場合に備えて、滝沢は次長にも、第九失墜の暁には例の報告書を手に入れてくれるよう頼んである。
 どちらにせよ、条件は第九の混乱だ。

 苦く冷たい液体を飲みながら、舌よりも心でその苦さを堪能し、滝沢は薄く笑った。



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Mさまへ

そうなんですよ、みんな素直なの。 バカじゃないのよ。
・・・・・・いやあ、言い様ですねえ。(笑)
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薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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