破壊のワルツ(20)

 本日2個目の記事です。
 よろしくお願いします。



破壊のワルツ(20)





 右耳のイヤホンから聞こえてくる上司たちの会話に、滝沢は少なからぬ興奮を覚えていた。
 室長室に盗聴器を仕掛けたのは1ヶ月ほど前からだが、やっと役に立った。盗聴の目的は、感情の抑えが利かなくなった鈴木が薪に迫る場面でも抑えられたら、と期待してのことだったが、こんな重要な情報が得られるとは。

 これを上手く利用すれば、薪を失脚させる事ができるかもしれない。出世コースを外れれば自棄になって、本当のことを喋る気になるかも。

 貝沼の脳の見る前の彼は、そう考えていた。
 滝沢とて、警官だ。どんな目的のためでも、人の命を奪うことは許されないという倫理観はあった。
 しかし。
 貝沼清孝の脳は、完全なるフリークスだった。

 彼が留置所で自殺を図り、その経緯と28人殺しの事件解明のために、彼の脳が第九に回ってきたとき。そして、彼が行った残虐な犯行を目の当たりにしたとき。
 滝沢の中で、自分の大切な人々を奪ったもの達への憎しみが、思いがけない強さで甦った。

 何をしてもいいような気がした。
 どうして何の罪もない彼女と友人が殺されて、事件の秘匿に関わった薄汚れた人間がのうのうと生きている。その理不尽を正さなければと、滝沢の中の何かが彼を突き動かした。

 それは、貝沼清孝という稀代の殺人鬼の狂気だったのか、深淵の闇に見果てぬ夢を見続けた滝沢自身の妄執だったのか。

 薪の口から真実を語らせる。そんな生ぬるいことでいいのか。
 俺の恋人は死んだ、死んだんだ。子供の頃からの友人も。もう、二度と会えないのだ。
 だったら、彼にも同等の制裁を。単純に死を与えるだけでは気が済まない、その上に自分の苦しみを加重して、彼がもっとも耐え難いと感じる死に方を。

 そう考えたとき、あるシナリオが浮かんだ。
 鈴木に薪を殺させよう。この世で一番信頼している友、恋愛感情まで抱いている相手に裏切られ、殺される。それがあの薄汚い生き物に相応しい死に方だ。

 貝沼の狂気は、間違いなく滝沢に影響を与えていた。しかし、滝沢が感じていたのは怯えではなく、みなぎるようなパワーだった。
 最高の武器が、天から降ってきた。すべては俺の手の中に。



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

Mさまへ

鍵拍手いただきました Mさまへ

さすがMさま、嬉しそうっすね!(爆笑)
やっぱり貝沼ですよね~。 どんなフリークスを創作しても、原作に勝るものはないですからね~。
貝沼の狂気がどのように彼らを蝕んでいくのか、楽しんでいただけたら嬉しいです、って、なに、このアクマのような会話。(笑)
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
文字サイズをお選びください
最新記事
最新コメント
拍手のお返事
いつもありがとうございます!

最新拍手コメのお返事はこちらです。

過去の拍手レスの確認は、該当記事の拍手欄を押してください。
鍵拍手コメのレスは、記事のコメント欄にお返しします。
月別アーカイブ
カテゴリ
詩 (1)
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
QRコード
QRコード
FC2カウンター
次のお話の予定
『ヒカリアレ』
書いてます。
60Pを超えました(笑)
7/18 推敲やってます。
あと20ページ。
7/20 推敲の結果、70Pになりました。←バカじゃないの。
2回目の推敲に入りました。
こんにちは(^^
現在の閲覧者数: