破壊のワルツ(21)

 最近、こちらのほうはぐんと暖かくなってきて、日中は部屋の中でジャンバー着なくてもよくなってきたんですけど。 東北は、まだ寒いのでしょうね。
 早く暖かくなりますように。





破壊のワルツ(21)




「この子も、薪に似ているな」
 豊村の耳元で囁くと、豊村はしかめていた顔をさらに歪めた。

 貝沼事件の捜査も3日目に入り、捜査官たちには疲労の色が現れていた。こんなにきつい映像は初めてだった。人体を丁寧に解体していく映像を何時間も続けて見ることは、彼らの精神に計り知れない打撃を与えていた。
 加えて、今回に限って、いつも彼らを叱咤し導く室長が奮わないのと、彼らを励ましてくれるはずの副室長が、他人に構う余裕はないとばかりに血眼になって画像を見ているのが、彼らの精神的負担を重くした。

「ほら。この眼の辺りなんか、そっくりじゃないか。身体つきも」
 画面には、肩口から血を流し、貝沼に陵辱されている少年の姿が映っていた。貝沼は全裸にした彼に後ろから覆いかぶさる形で、時々彼の背中や肩にナイフを突き立て、彼の可愛らしい尻に噛み傷を残した。
「肩のラインとか、尻の形とか。よく似ていると思わないか」
 部屋の壁に立てかけられた姿見に、殺人者と被害者の顔が映っている。
 血と悲鳴に興奮しているのか、貝沼の小さな目は爛々と光っていた。苦痛から逃れようともがく少年を押さえつけて、その小さな尻に容赦なく自分の怒張を突き刺した。
 泣き叫ぶ少年の表情に、絶望が加わった。少年の長い睫毛が伏せられ、涙が筋になって丸い頬を伝わり落ちた。

 豊村は突然、席を立った。
「どうした、豊村」
 口元を押さえた彼の、頬が赤い。
「気分が悪いなら、少し休んでくるといい」
 豊村がどうして映像から目を背けたのか充分承知の上で、滝沢は豊村に仮眠室に行くよう勧めた。

 豊村に、薪と貝沼の秘密の接点をこっそり教えたときのことを思い出して、滝沢は心の中で悦に入る。
 薪と貝沼は、過去に会っている。そのとき、貝沼は薪に邪な感情を抱いた。だからこうして、彼に似た少年を殺したのではないか、と自分の推理を話してやった。豊村は一笑に付したが、薪に似た少年ばかりがターゲットになった理由について、きちんとした説明はつけられないことは認めた。
 その上で、何度も何度も繰り返し、画面の少年が薪に似ていると吹き込んでやった。豊村には、薪が貝沼に犯されているように見えたことだろう。狂気に満ちた殺人鬼の映像を見続けて弱った精神に暗示をかけるのは、容易い。

「仮眠室には薪がいるから。ついでに様子を見てきてくれ」
 薪は先刻、画を見ていて貧血を起こした。今は仮眠室で眠っている。彼も相当追い詰められている。

 独りになった滝沢は、そっともう一人の標的を盗み見る。

 鈴木は、人には向けない鋭い目つきで画面を睨みつけていた。被害者の少年が悪夢のように残酷に殺されていく様子を、強い瞳で凝視していた。
 彼の瞳には、決意が宿っていた。それはおそらく、さっき彼が手ずからベッドへ運んだ大切な友人を、この映像の主の悪意から、否、彼を脅かすすべてのものから守ろうという強い意志。

 しかし、そうして彼が懸命になればなるほどに。
 貝沼の狂気はその流量を増して、彼の中に注ぎ込まれていく。鈴木はまだ、その危険性に気付いていなかった。



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
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60Pを超えました(笑)
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7/20 推敲の結果、70Pになりました。←バカじゃないの。
2回目の推敲に入りました。
こんにちは(^^
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