破壊のワルツ(22)

 前の章が短かったので(またか)2個目です。
 よろしくお願いします。


 この章は追記にしたほうがいいのかしら? と思ったんですけど……まあ大丈夫だろ。 色気ないしね。
 あ、暴力行為が苦手な方はご注意ください。←苦手じゃない、と言い切るのも人としてどうかと。





破壊のワルツ(22)






 薄暗い仮眠室の中に薪を探して、豊村は一番奥のベッドへと辿り着いた。
 飾り気のないパイプベッドの上に眠る、深層の姫君のような気高い美貌のひと。その白磁の肌に見惚れ、豊村は自分の白昼夢を強く恥じる。

 どうしてあの少年を、薪と見間違えたのだろう。比べ物にならない、この髪も肌も、重なり合った睫毛の麗しさも。

 静かに寝息を立てる艶めいたくちびると、それに続く小さなおとがいへの曲線に、触れれば自らその身を落すような、熟した果実にも似た誘惑を感じる。無意識のうちに豊村は、彼のやわらかい頬を指でなぞっていた。

「ん……すずき?」
 感触に目を覚ました薪が、長い睫毛を震わせながら男の名前を呼んだ。
 それは、特別な意味ではなかった。薪にしてみれば、自分の頬を撫でて起こすような人間は、鈴木以外にいなかった。だから彼だと思った。それだけだ。
 しかし、先日の室長室の一件からふたりの関係に疑惑を抱いていた豊村には、まったく別の意味に聞こえた。
 眠っているときに頬に触ったら、それは鈴木になるのか。それはつまり、そんな状況が生まれ得る関係にふたりはある、ということではないのか。

「ごめん、大丈夫だよ。もう戻るから……豊村?」
 豊村の姿を認めて、薪は自分の間違いに気付いた。亜麻色の髪をかき上げて秀麗な額を出し、はあ、と物憂げなため息を吐いた。それからゆるゆると上体を起こし、ベッドの上に片膝を立てた。ネクタイを外した胸元の、2つボタンが外れた襟から覗く肌が、眩しいくらい白かった。

「悪い、間違えた。てっきり鈴木だと思っ、!?」

 そのとき自分を突き動かした力の正体を、豊村はついぞ知り得なかった。
 ただ夢中で薪の肩をつかみ、ベッドの上に押さえつけた。驚いて声も出ない様子の彼に猶予を与えず、彼の細い首筋に強くくちづけた。

「やっ」

 薪の抵抗は弱々しかった。そのことにも、豊村は激しい怒りを覚えた。
 見かけは華奢だが、薪は柔道空手共に有段者の猛者だ。なのに、豊村の身体を押しのけようとするこの手の弱さは何事だ。しかも、ロクに声も出さない。隣の部屋には同僚がいるのだ、大声を上げれば彼らが駆け込んでくる、それが分かっているはずなのに、薪は息を荒くするばかりで声は発せず。彼がした抵抗といえばせいぜい、枕元にあった自分のネクタイや腕時計、ティッシュボックスなど、当たってもさして効果のないものを豊村に投げつけるくらいだった。

 男に襲われて、形ばかりの抵抗をして見せて。まるで逆に誘っているようだ。もしかしたら鈴木だけでなく、他の男ともこんなことをしているのか? もしや、官房長との噂も真実だったのか?

 そのとき、薪が強く抵抗できなかったのは、何日も食事が喉を通らないせいで体力が落ちていたからに過ぎないのだが、そんな彼の事情を慮る余裕は豊村にはなかった。

 自分が何をしたいのかも、豊村にはよく分からなかった。
 薪を抱こうという明確な意思があったわけでも、彼に対する抑えきれない恋情があったわけでもなかった。
 ただ、薪に裏切られたように感じていた。
 薪はこんな男じゃない、男相手に色をひさぐような真似はしない、自分なんかにいいようにされて大人しくしているような、プライドのない人間ではない。

 しかし、薪は彼にされるがままになっていた。ワイシャツのボタンを全部外され、ベルトに手が掛かってようやく、
「豊村、しっかりしろ。正気に戻れ」と型で押したような台詞を発しただけだった。
 おざなりな制止の言葉などで止まれるほど、豊村を支配していた衝動は弱くなかった。
「あッ……!」
 股間を強く握られて、薪は小さな声を上げて仰け反った。その反射的な反応が、豊村には彼の淫靡な性癖の証のように思えた。

 やっぱり室長は、男のひとに抱かれるのが好きなんだ。

 先ほどモニターに映っていた貝沼に犯される少年の映像と、鈴木や他の男に抱かれる薪の姿が、豊村の頭の中で混ざり合う。どこまでが虚像でどこからが現実なのか、その境界線は限りなく不明確だった。

 薪の肌に顔を埋めながら、豊村は泣いていた。
 強く吸うと簡単に痣がつく薪の薄い皮膚も、そのたびに反応する彼の身体も、彼の呼吸が荒くなるのさえ腹立たしかった。口惜しくてたまらなかった。
 豊村はその苛立ちを薪にぶつけ、薪の身体がそれに応じた反応を返すことでますます怒りを大きくした。

 ずっと信じていたのに。薪の高潔さを、ずっとずっと信じていたのに。
 堕ちるくらいなら、いっそ壊れてしまえばいい。

 気がつくと、豊村は薪の上に馬乗りになり、薪の首を締め上げていた。苦しそうに顔を歪める薪の、その被虐的な表情がぞくぞくするくらい綺麗だった。

「か……はっ……」

 つややかなくちびるが酸素を求めてしどけなく開き、中から赤く濡れた舌が見えた。
 豊村はそのくちびるを自分の唇で塞ぎ、舌を絡め、吸い。かつてない興奮を味わい、目の前が白くなるほどの官能にさらわれ、服も脱がないままに射精していた。




テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

鍵拍手いただきました Aさまへ

Aさま、こんにちは。
暖かくなってきましたね。(^^


>薪さん、反応しちゃダメじゃん!

わはは! ですよね、ダメじゃん!
まあでも、これは感じちゃったわけじゃなくて、抵抗しようとして息が荒くなったり、呻き声が出ちゃったりしただけなんですけど、あれって異様に色っぽく聞こえますからね?(//∇//) ←ヘンタイ。


>鈴木さんが助けに来ますよね!?

来ません。 
・・・・・・どうしましょう、フォローしようがないんですけど(^^;
でも、大丈夫ですからっ!


>私は残酷な画を見ただけで狂ったり自殺するかなあ・・と前から感じてました。バラバラ事件て実際にも多いし、そういう画は以前から見ていてもいいはず。

そうですよね。 ここは疑問です。
なぜ貝沼の画だけが、皆を狂気に導いたのか。 掘り下げてみると、面白そうですよね。
腐女子的発想で行くと、みんな薪さんのことが好きだったから、で納得するんですけどね。(笑)

陵辱されるシーンは、あったと思いますよ。
貝沼は薪さんに『愛しくて憎くて、抱きたくて殺したくて』って言ってたから。 性的欲望もあったんだな、と理解してます。


>その少年達が薪さんに重なって見えたら確かに精神が混乱するでしょうね(>д<)

滝沢さんに転がされてますね★
豊村くんはこの程度(?)で済みましたが、鈴木さんに至っては、自己崩壊へとつながってしまうのですね。 
腐った見方を推し進めるとですね、薪さんに恋情を抱いている、つまり貝沼の気持ちに共感できるから、通常ではありえない多大な影響を受けて狂ってしまった、という解釈になっていくんですけど。
そうなると、薪さんへの愛情が深いひとほど、狂気は激しくなってしまう。 だから、鈴木さんのダメージは一番大きいの。

という感じで〜、これから暗黒に向かってまっしぐらなんです〜。
暗い話ですみませんーーー!

あと10章くらいなので、我慢してお付き合いください。(^^;

Mさまへ

鍵拍手いただきました Mさまへ

Mさまが叫んでるー。
がーっ、って、お気持ちわかります!<じゃあ、なぜ書く?

Tならまだしも、って、きゃー、わたしが叫びますー!
ダメダメ、薪さんのお相手は鈴木さんか青木くんだけなのー!! 他の人間は指一本触れちゃいやーー!!!

主張とSSの内容が合ってなくてすみません・・・・。
腐女子ってフクザツ★


プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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