破壊のワルツ(26)

 こんにちは。

 昨日は身内の記事 (R355バトル) に拍手をいただいて、ありがとうございました。
 そうですね、嫁いで15年になりますけど、こういうことは初めてでございました。 貴重な体験でした。 もう二度とごめんですけどね☆ 

 会社にも、何回かに分けて、延べ10人くらい警察の方が来たんですけど。 
 ホンモノの警察手帳、初めて見ました~。 厚みがあって、重そうでした。 (さすがに触らせてくださいとは言えなくて。後悔)

 警備を強化しようと、昨日、早速センサーライトを増設し、資材置き場に置いていたトラック類を家の庭に移しました。 
 それでもオットはやっぱり不安で、眠れない日々が続いているみたいです。←びびり。 
 わたしは眠ってますけどね。(笑)


 お話の方も佳境です~。
 きっと薪さんたちも眠れない……。






破壊のワルツ(26)






 室長室のロッカーからジャケットの上着を出して、薪はボタンの取れたワイシャツの上に羽織った。シャツの替えは一枚しかなかったので、今日はこのまま帰宅するしかない。

「それじゃ電車に乗れないだろ。タクシー使うか」
「うん」
 ロッカーの前に立ったまま、鈴木の言葉に素直に頷いて、薪は力なくうなだれた。
 そんな彼が、鈴木は可哀想でならなかった。
 部下に殺人の容疑を掛けられた、それも、被害者は可愛がっていた部下だというのに。自殺の道具に自分の持ち物を使われて、一番傷ついているのは薪なのに。

「薪、元気出せ。あいつらだって本気で言ったわけじゃない」
 口ではそう言いながら、鈴木の中では彼らに対する激しい怒りが渦を巻いていた。薪を傷つけた彼らを、絶対に許せないと思った。
「分かってる。あいつらだってバカじゃない。ただ、僕は第九が」

 長い睫毛が瞬いたかと思うと、ほろっと丸い雫が亜麻色の瞳から零れ落ちた。
 他人には見せないが、昔から薪は、けっこうな泣き虫だ。豊村の自殺、検視の立会い、上への報告、遺族への対応、それらの仕事をこなしながら、ずっと我慢していたに違いない。
「この研究室は、僕と鈴木で立ち上げて、ふたりでここまで大きくしてきた。その第九が……このままじゃ、ボロボロになっちゃう」
 子供のように口元を歪めて、ロッカーの扉に向かって訴える彼の細い肩が不規則に震えていて、鈴木はいたたまれなくなる。薪がこんな哀しい思いをするなんて、あってはならない、間違っている、この世界は間違っている、と強く思った。

「局長は、自殺者が出た以上はMRI捜査そのものを見直す必要があるって。捜査員たちの精神的苦痛は前々から問題になってたけど、それを放っておいた室長と所長の責任を追及するって。
 それだけだって打撃なのに、みんなもうバラバラで……豊村はあんな死に方して、上野も滝沢も、ここを辞めたいって言い出すかもしれない。そうしたら」
 前置きもなく、鈴木は後ろから彼を抱きしめた。薪は驚いて身を固くし、息を呑んだが、鈴木の腕を振り払うことはしなかった。彼はそっと身体を回し、鈴木の胸に顔を伏せると、細い腕を回して大きなシャツの背中をぎゅっとつかんだ。
 小さな亜麻色の頭を撫でながら、鈴木はもう一方の手で彼の華奢な背中を抱く。薪はこうしてやると落ち着くのだ。

「辞めたいやつは辞めればいい」
 薪の呼吸が落ち着くのを待って、鈴木は強い口調で言った。
「心配するな、第九は潰れない。オレと薪がいれば、第九は再生できる。新しい職員はオレが引き抜いてきてやる。あいつらの100倍優秀なのをな」
 ぽんぽんと背中を叩いて、鈴木は腕を緩める。大きな背中を丸くして、自分より大分背の低い親友の顔を、間近から覗きこんだ。

「ふたりで創った研究室だろ。ふたりでやり直せばいいじゃないか」
 ニッコリ笑ってそう言うと、薪は泣き笑いの、何ともかわいらしい顔になって微笑んだ。

「鈴木。こないだ僕に、『辞めたいやつは辞めろなんて、室長が言っていい言葉じゃない』って言わなかったっけ」
「そうだな、室長は言っちゃダメだな。でもオレ、副室長だから」
「ええ~、なんかズルイ」
 ぷうと膨れた薪の頬を突き、鈴木は携帯で馴染みのタクシー会社に電話を入れた。直ぐに伺います、との返答を受け、科警研の正門で待つこと2分。タクシーの後部座席に並んで乗り込み、上野、横浜とそれぞれの自宅を告げた。夜は自宅で休む事が捜査を続ける条件だ。それを室長が破るわけには行かない。

 薪の自宅は職場のすぐ傍だ。車で5分も掛からない。引き換え、鈴木のほうは少々遠い。横浜の実家から毎朝40分、だから夜が遅いときにはしょっちゅう薪の家に泊めてもらっている。
「鈴木。泊まってけば?」
「いや、今日はいい。また今度な」
 薪の誘いは嬉しかったが、鈴木にはやる事があった。

「鈴木」
 自宅が近付いてきて、薪は小さな声で、でも力強く鈴木に話しかけた。
「絶対に守っていこうな。僕たちが立ち上げた研究室を」
「ああ。オレたちの第九だもんな」
 鈴木の言葉に力を得て、薪は生き生きと瞳を輝かせる。強気な表情でくちびるを吊り上げ、いっそ不遜ともとれる挑戦的な笑顔で、
「何があっても守ってみせる。僕は第九の室長だ」
 
 そうだ、薪はこうして高慢に笑っていないとダメなんだ。オレが守ってやる、この笑顔をオレが絶対に守ってやると、鈴木は繰り返し心に誓う。

 何でもする。
 薪を守るためなら、オレは何でもする。他人に何と罵られようと、どれ程の人間を苦しませようと、オレにとって一番大事なのは―――――。

 その考えが。
 すでに闇に囚われた狂人の妄執であったと、どうしてその時の鈴木に気付くことができただろう。

 鈴木はただ純粋に、彼の幸せを願い、彼の喜ぶものでこの世を満たそうと思った。彼の憂いを払い、彼の苦痛を消し去り、その頬に二度と涙が落つることのないように。自分の持てるすべての力を傾けて、彼の安息を守ろうと思った。

 薪の背中を見送り、彼の部屋の明かりが点くのを確認してから、鈴木は運転席に向かって言った。
「すみません、行き先変更で。科警研へ引き返してください」


テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

鍵拍手いただきました Aさまへ


そうなんですよね。
結果的に見ると、鈴木さんが薪さんの人生に影を落とした張本人とも言えますが、彼の行動の根底には常に薪さんへの愛があったんです。 これが悪意から出たものなら、こんなに切なくないんですよね・・・・。
好き過ぎたんだと思います。 だからこそ、悲しいです。


>鈴木さんは何故、自殺しようとしたのか?
>生きていれば脳を見られることはないのに。
>第九に復職できるかはわかりませんが・・正常な精神で薪さんと生きていく自信がなかったのかなあ(´`)


Aさま仰るとおりですよね。
生きていて、口を閉ざし続ける自信がなかったのかな? でも、その前に彼はカニバリズム事件を見ているはずですから、そっちのほうがより重大な秘密だったと思うんですけど。 命まで狙われるくらいですもの。

そこで、わたしの個人的な意見は、鈴木さんに自殺の意志はなかったというものです。
「誰にもこの画を見せてはいけない」 それしか考えてなかったんじゃないのかな。 MRIを壊して貝沼の脳を破壊して、あと画が残っているのは、と考えて、あ、オレの頭、これも消さなきゃ、ってそれだけしか考えられない状態にまで追い詰められてたんじゃないのかな。
いや、頭撃てば死ぬの当たり前なんですけど、それが理解できなかった、っていうか。 その当たり前の判断すらできない精神状態だったのではないでしょうか。
そうでなきゃ、薪さんに「撃ってくれ」なんて言わないと思うんですよ。 あれだけ愛した薪さんに、人殺しを強要するなんて、あの鈴木さんがするかしら。
だから鈴木さんは、データを破壊したかっただけで、死にたかったわけではなかった。 薪さんに人の命を奪わせるつもりではなかった。 十字架を背負わせるつもりなんか無かった。
まあ、結果的には同じことなんですけどね(^^;


R355バトルにもコメいただいて、ありがとうございます。
はい、無事でほっとしました~。

エンジン音で車種が分かるのはね、青木くんの特技にして、
そのおかげで事件解決に結びつく話を書こうかな~、と考えたこともあるんですけど。 まとまりませんでした(^^;

Mさまへ

拍手コメントいただきました Mさま

いいえ、迷惑なんかじゃ、ていうか、
わたしも以前、Mさまの拍手コメに同じようなことをした気が・・・・・
(TT)マークだけ書いた気がする! 言葉が出てこなくて!!

シンクロしてる・・・・?
さあ来い、イスラフェル!! ←許して。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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