秘密の森のアリス(3)

 こんにちは。

 久しぶりに、昨日はお出かけしてきました。
 行き先は、国営の海浜公園。
 こちら、年間を通して美しい花が咲いているので、わたしたちの定番お散歩コースなんです。 今時期は水仙とチューリップ、それからネモフィラが真っ盛りでした。

 中でもネモフィラは、みはらしの丘という場所に無数に群生してまして、これが真に見事だったんですけど、なんだろう、職業病? というのも、遊歩道がいつの間にか舗装道になってて、
 以下、オットとの会話です。


「これ、密粒13?」(←アスファルトの種別)
「うん、透水性舗装してるね」

 道はいいから花を見ようよ。(←みはらしの丘の呟き)

「この丘って、建設残土で作ったんだよね?」
「そうだね。第2種発生土と、第3種も混じってるのかな」
 
 ねえ、向こうに海も見えるよ? きれいだよ、とっても。  

「急勾配でもクラック(ひび割れ)入ってないね。上手だね」
「この急なカーブ、ASフィニッシャーのオペレーター、苦労しただろうなあ」

 ……おまえら、何しに来たんだ。 

「うわ、見て。あの道、地震で亀裂入ってる」
「本当だ、補修掛けてある。グースアスファルト使ったのかな」

 ……………………………………帰れ。


 何をしに行ったのやら。(笑)


 



秘密の森のアリス(3)






 部屋から三郎がいなくなると、薪は直ぐに行動を開始した。
 携帯電話は取り上げられていなかったが、思ったとおり圏外で使い物にならなかった。岡部たちに連絡を取りたかったが、それは諦めるしかないようだ。外部からの助けは期待できない。何とか自力で脱出しないと。

 青木が寝かされていた部屋に戻ろうと、薪は入り口に垂れ下がっている大葉を掻き分け、洞窟内の通路に出た。似たような土壁ばかりが連続しているが、そこは天才の強みで、先刻通ってきた道をあやまたず戻っていく。
 途中の横道にもチェックを入れ、外界につながっていそうなルートを探る。特に冷たい風が吹いてきた通路に寄り道をすると、薪の胸の高さにぽっかりと穴が開いており、寝室の入口と同じ大葉でふさがれていた。
 葉の隙間から覗けば、外は森の中らしく、太い樹木の幹だらけだ。雪はそれほど積もっていない。上空を覆う葉が重なり合って、地面まで落ちてこないのだろう。これなら、かなりの速度で走れる。密集する樹木は、彼らから自分たちの身を隠してくれるはず。右も左もわからないが、ここから遠ざかることだけはできそうだ。

 あと2つほど角を曲がれば、目的の部屋に着く、というところまで来て、薪は何かにぶつかった。
 しまった、三郎が帰ってきたのか、それとも残りの2人のどちらかが、と身構えるが、相手は何も言わなかった。気のせいか、とも思ったが、ひとの気配を感じる。

「あのう」
 おずおずとした声が下から聞こえ、見ると、女の子が床に座り込んでいた。中学生になりたてくらいの小柄な女の子で、くせっ毛のショートヘアに眼鏡を掛けている。
 なんと、自分たちの他にもやつらに囚われた人間がいたのか。それも、こんな少女を。
「きみもあいつらに捕まったんだね?」

 彼女は洋風の、ひどく古臭い服を着ていた。
『不思議の国のアリス』というロリコ……いや、夢一杯のファンタジー小説があったが、あれの主人公が纏っているような提灯袖のエプロンドレス。頭には猫耳をつけて――――― そうだ、これってあれだ、秋葉原を闊歩しているコスプレイヤーとかいうやつだ。都心のコスプレイヤーが、どうしてこんなところに?

 彼女が立とうとするのに手を貸し、薪は彼女を安心させようと力強く言った。
「怖かっただろうね。もう大丈夫だよ、僕は警官だ」
「……けいかん?」
「そうだよ。仲間もいる」
 気絶したままでは青木の巨体はお荷物以外の何ものでもないが、覚醒すればそれなりに使える。青木は剣道2段、射撃3段。柔道以外の種目なら、薪より強い。
 
 薪は少女の手を取って一旦来た道を戻り、さっき見つけた横道に入った。
「いいかい、きみはここに隠れているんだ。この道の突き当りから外に出られる、でも1人じゃ危険だ。僕が仲間を連れてくるから、それまでここで待ってて」
「うしろ! 伏せて!!」

 薪は咄嗟に屈んだ。
 次の瞬間、ボゴッという鈍い音と共に、向かいの土壁が何かに抉られたように砕けた。高さはちょうど薪の身長くらい。屈むのが一瞬でも遅れていたら、壁に叩きつけられていた。

『部屋さ待ってろと言っただに……おらの言いつけを破っただな。言うことを聞かんなら、こうしてくれる!』
「右よ! 後ろへ避けて!」
 慌てて身体を反らすと、ごおっと音をたてて目の前を何かが過ぎていった。巻き起こった風で薪の前髪が持ち上がり、きれいな額が顕になる。見えない敵の攻撃は、かなり強力だ。

「下、跳んで!」
 少女に言われるがままに身体を動かしつつ、薪は叫んだ。
「やつはどこだ!?」
「右!」
 言われた方向に拳を突き出すが、そこには何もなかった。ならばもっと右かもしれないと、得意の回し蹴りを繰り出すが、それもまた空を切るばかり。

「もっと奥です! 3歩先で○ボタン!」
「格闘ゲームじゃないからねっ!」
『ぐっ!』
 確かな手応えがあって、薪の拳に痛みが走った。普通の人間より、固い身体をしているらしい。これは足技を多用したほうがいい。

「左、下、斜め右上!」
「もっと細かく指示してくれ!さっきみたいに何歩先とか」
「了解! R2△○、R1×□L1!」
 ゲーム語で指示するのやめてっ!!

「日本語で頼むよ!」
「はいっ、左に2歩、胸の高さに蹴りです!」
 少女のアドバイスは正確で、薪の攻撃は確実に敵を捕らえていった。
 どうして自分に見えない妖怪の姿が、この少女には見えるのだろう。不思議に思ったが、今はそれどころじゃない。ここでこいつを仕留めないと、もしかしなくても殺される。

「真向かいにいます!」
 薪は軽く跳んで足を高く上げ、思い切り降り下げた。踵に強い衝撃が加わり、ドサッという音がした。
「いって! 固いアタマしやがって……きみ、ヤツはどうなった?」
 踵を持ってピョンピョン飛び跳ねたいのを我慢して、薪は少女に尋ねる。しかし彼女はそれに答えず、何を思ったかぱちぱちと拍手をした。

「すごーい、やっつけちゃった!」
「そうか。でも、喜ぶのは後だ。こいつらの仲間は、あと2人いる。早く青木を連れてここから逃げないと」
 薪は床を手探りで触って、気絶した敵の体を見つけた。彼の腕らしき部分をつかんで、ずるずると引き摺ると、
「こいつは縛って、どこかに隠す」
 気絶した妖怪を隠すなら、脱出口として使おうとしている横道からは離れた方がいい。薪は横道のひとつに彼を隠すと、少女の協力を得て、自分のネクタイで彼の足首を、少女の襟元を飾っていたリボンで手首を縛り上げた。

 これは間違いなく、三郎だ。残りの2人は、こいつを待つと言っていた。それから、一方の妖怪には、食事の前に仕事があるとか何とか。あれはどういう意味だったのだろう。

 再び先刻の横道に戻ってきて、薪は少女の目の高さに屈み、彼女を勇気付けるように言った。
「僕は仲間を助けてくる。1人で怖いだろうけど、きみはここで」
「あなたの仲間って、彼らに捕まってるのね?」
 少女の質問に、薪は自分の失言に気付く。彼女を不安にさせまいと、青木が敵の手中にあることは隠しておく心算だったのに。

「黒髪の、身体の大きな男のひとね」
「彼を見たのかい?」
「まだだけど。……すごく彼の事が心配なのね」
 自分は、そんなにも情けない顔をしていただろうか。一般人の前だと思って、できるだけ平静を装っていたはずなのに、こんな年端も行かない少女に見透かされて。

 ポーカーフェイスの厚みを1センチほど嵩上げしようと試みて、薪はその困難を悟る。
 本当に心配で、いてもたってもいられない。だって、あの連中は青木を食べるつもりなのだ。彼らは三郎を待つと言っていたが、妖怪にとって同胞との約束がどれくらいの重きを成すものかわからないし、三郎が来るのを待ちきれずに食べ始めてしまうことだって充分に考えられる。

「彼を助けるなら、わたしを連れて行ったほうがいいわ。だって、あなたは彼らの姿が見えないんでしょう?」
 少女の言うことは尤もだった。しかし、彼女は一般人、自分たちは警察官だ。自分達が守るべき相手を、危険と解っている場所に連れて行くわけには……。
「こんな非常時に、警官も一般人もないわ」
 彼女の助けがあれば、さっきのように妖怪を倒せるかもしれない。自分たちが死んでしまっては、この子を助けることもできない。迷った末、薪は彼女に「頼みます」と頭を下げた。

 彼女はニコッと無邪気に微笑んで、
「今のうちだったら、まだお仲間は無事なはずよ。子種を搾り尽くしてからじゃないと食べないから」
「そうか、子……こっっ!!??」
 あどけない少女の口からとんでもない言葉が飛び出して、薪は床につんのめりそうになる。
 彼女はどう見ても中学生、下手をしたら小学校高学年くらいの年齢だ。興味を持つ年頃ではあるかもしれないが、こんな言葉を使うとは思えない。自分はいったい何を聞き間違えたのだろう。

 自分のミスに赤くなって、薪が右手で口元を隠していると、少女は何を焦っているのかわからない、と言った表情で、
「そうよ。彼らが仲間を増やすには、人間の男と交わるしかないの」と、恥ずかしがる様子もなく答えた。聞き間違いではなかったらしい。
「どうして? さっきのヤツとの間に子供を作れば、あ、そうか。姉弟なのか」
「そう。血が近すぎて、異形になってしまう確率が高いから」
「不思議だな。最初彼らは僕を女性だと思っていたはずなのに、僕に子供を産ませようという話は出なかった。食いでがないから森の奥に捨てて来いって。何故だろう」
「無理よ。彼らと交わったら、人間の女なんか即死。あいつらの精液は猛毒だから」
 あ、危なかった……。

「きみは、どうしてそんなに彼らのことに詳しいの?」



*****

 さて、彼女は何者でしょう?
 正解者には、法十の秘蔵未公開Rをご進呈!←ないない。


テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

4/18 13時 に鍵拍手コメいただきました Aさまへ


Aさま、こんにちは~。

はい、ずばりAさまご指摘の公園です。
すっかり職業病になってしまって・・・・・・土木の知識がなかったあの頃に戻りたいです。(笑)


>忘れてたけど薪さんて強いんでしたね(^^)
>原作でも千堂大臣の拳を左手で受け止めてましたものね。

はいっ、うちの薪さんは多分、二次創作界では最強だと思いますっ!
強い薪さん、大好き~~♪

あ、でもですね、以前にもお話した通り、わたしは原作の薪さんとは敢えて反対の薪さん像を創っておりまして、
原作の薪さんは身体的にはか弱くていらっしゃると思っていたので、(だってしょっちゅう倒れてるし、お姫さま抱っこだし) 千堂大臣の時には驚きました。
あと、車の中で青木さんに「この場でおまえをのしていくこともできた」と言ったときも。 薪さん、そんなに強かったの!? って。
薪さんはキャリアだから、柔道or剣道初段の習得は必須ではないはずですよね? うちの薪さんは捜一にいた設定だから自分で鍛錬したようにしましたけど、原作の薪さんも自主練したのかなあ??


>妖怪×青木!?ゲゲ、想像できない(>д<)
>少女も妖怪!?わからん・・

この辺は後々~。
お楽しみにっ! ←逃れつつも、ちょっとドキドキしてます。(^^;



Aさまへ

4/18 18時に鍵拍手コメいただきました Aさまへ

Aさま、ご連絡ありがとうございました!
Aさまのユーモア感覚から、もしかしたらそちらの方かも、と思っておりました(^^

西日本ゆえに、16年前は大変だったのでしょうね・・・・・・今更ながら、お見舞い申し上げます。 ご無事でよかったです。


>話はかわりますが、夜はこなかったですね。

来ませんでしたね。(笑)

>青木は今

そんなことはわたしが許しませんっっ!!! (←なにさま? てか、ネタバレ)
薪さんを泣かすようなことは、絶対にさせませんからご安心を! 
・・・・・・・なんか信用されてない?(^^;
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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