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室長の災難(18)

室長の災難(18)







「もしもしっ! 先生、三好先生!?」
 ツー、ツー、と無機質な音が耳に残る。
「切ったよ、あのひと……」

 雪子の無責任は今に始まったことではないが、いまそれを非難しているヒマはない。
 電話の間も俄か仕立てのインフォマニアはこまごまと仕事をしていて、青木が身に着けているものは既に下着だけだ。
「電話、終わった?」
 青木の腹の上にまたがり、無邪気な様子で尋ねる。舌ったらずの甘い声。めったに聞けるものではないけれど、ドラックのせいとあってはうれしくもない。

 すでに、薪はそのからだに何もつけていない。
 これまでも薪の裸は何度か目にしている青木だったが、そのときとは状況がまるで違う。こんな雰囲気でソファに横たわった自分の上になって……これで我慢しろと?
 それでもここは堪えなければ。でないと、確実に室長権限で異動させられる。薪の顔を見ることもできなくなってしまうかもしれない。それは困る。

 なんとか状況を打破しようと、青木は起き上がった。
「薪さん、ちょっと落ち着きましょう。ね?」
「ん~、ふっふっふ」
 抱きついてくる細いからだ。
 その肌はやはり女のものではない。沈み込むような、どこまでもやわらかい女の肌とは違うしっかりした筋肉の感触。しかし、明らかに自分のものとは異質のすべらかさ。
 雪子の指示どおり引き剥がしてベッドに縛り付ける、なんてことはとてもできない。抱きしめ返さないように自分を抑えるので精一杯なのだ。

「僕のこと、好き?」
 耳元で囁かれて、目の前が真っ赤になる。
「薪さん……」
「好き?」
 かわいらしい顔。無邪気で色っぽくて、凄まじい引力で自分を惹きつける。
 ……だめだ。逆らえない。

「はい。大好きです」
 にっこり笑って、もう一度激しいキス。
 歯茎の裏側から舌の下部まで、ベルベットのような舌がまさぐっていく。小さな手は忙しく動いて、胸元から腹、下腹部へと移動し下着の中に滑り込んだ。
「薪さん!」
 華奢な身体を抱きしめて、ソファの上に押し倒す。こうなったらもう止まらない。
「オレ、ずっとずっと好きでしたっ! いいんですよね?」

 目の前にさらけ出された美貌に、青木は眩暈すら覚える。
 信じられない。同性のからだが、こんなにも自分の欲望を掻き立てるなんて。

 たしかに自分と同じ身体なのだが、でもやっぱりまるで違う。細くて白くていい匂いがして、どこもかしこも透き通るようにきれいで。
 夢でいるうちはきれいだったものが、現実になったら幻滅してしまうかもしれないと密かに危惧していた青木だったが、それは杞憂に過ぎなかったようだ。夢より現実のほうが遥かにきれいだ。
 前から食べてみたかった耳たぶは、柔らかくて甘かった。白さが眩しい首筋に舌を這わせ、強く吸う。先のことなど考えられない。
 きれいな鎖骨。小ぶりな乳頭は混じりけのないピンク色で、経験の少なさを感じさせる。
 口に含み、舌先で転がすように愛撫する。クスリのせいで敏感になったからだは、甘い声を上げてよがり―――
―。
「薪さん、薪さんっ……あれ? 薪さん?」
 ……返事がない。
「え? あれ?」

 薪は目を閉じていた。
 長い睫が重なり合って眼下に濃い影を落とす。口唇はかすかに開き、その間からは「く――」という音が。
「えええええ―――!?」
 解毒剤の副作用は、頭痛に眠気。
 
「ちょっと、薪さん? ひどいですよ、ここで眠るって……ええ―――っ?」
 たしかにムゴイ。雪子が見ていたら腹を抱えて転げまわりそうだ。
「いくらオレがヘタレだって、さすがに止まりませんよ! もう意識がなくたって、やっちゃいますよ!? 誘ったの、そっちなんですからね!」
 誘ったわけではなくラリってただけなのだが、そこは目をつぶって欲しい。
 我慢に我慢を重ねて、その挙句に懲戒免職まで考えて、殺されるときにはきっと脳を潰されるんだろうな、とそこまで覚悟して押し倒したのだ。いまさら後に退けない。というか男の事情でそれは無理だ。すっかり戦闘態勢に入っているのだ。

 意識のない身体を自由にすることに後ろめたさを感じてはいたが、もうまともな思考ができる状態ではない。すんなり伸びた足を開かせて、太腿に手を這わせる。小さい尻を揉みしだき、目的の場所を探り当てる。
 痛い思いをさせるのは嫌だな、とわずかな理性の隅で考える。が、指の動きを止めることはできない。
 力を入れているはずはないのに、そこは狭く固い。
 とても行為に慣れたからだとは思えない。その証拠に、深い眠りの中にいる美貌が不機嫌そうに顔をしかめた。
 細く目を開けて、ぼんやりと青木を見る。自分の愛撫に目覚めてくれたのなら、それにこしたことはない。やはり眠っている相手をどうこうというのは、男として最低だ。

「薪さん、好きです。大好きです」
 青木がそう告げると、優しい微笑が返ってくる。青木の首に両腕をまわし、すべらかな頬をすりつけてくる。
「僕も、だいすきだ」
 耳元に甘い吐息がかかる。愛おしさが募る。堪らずに、渾身の力で抱きしめてしまう。
 やさしい声が、いとしい相手の名を呼ぶ。

「鈴木……だいすきだ……すずき……」


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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