天国と地獄4 (4)

 こんにちはっ!!

 数日前から過去作品に拍手くださってる方々、ありがとうございますっ。
 毎日たくさんポチポチしてくださって、とってもうれしいです!

 お礼と同時に申し上げたいのは、
 こんなものを一気読みされてしまってご気分を悪くされてないかと……。
 大丈夫ですかー! 精神崩壊してないですかー! 貝沼脳になってませんかー!? (←読んでくださった方の精神的苦痛を慮らなきゃいけないようなものを、どうして書くかな)



 さてさて、お話の方は、
 この章でおしまいです。 
(えっ、こんな半端で? って声が聞こえる)

 ここまでお読みくださって……すみませんでしたっ。(>_<;)






天国と地獄4 (4)




 薪が携帯電話の画面に向かって微笑する、それはとても珍しい光景だった。
 仕上がった報告書を提出するために室長室を訪れた青木は、その様子を見た瞬間、薪のメールの相手を悟って暗鬱な気持ちになった。薪の笑みは、先週の日曜日、昔の恋人と運命的な再会を果たした彼が、彼女と楽しげに話をしていたときと酷似していた。

 青木が報告書を薪の机に置いて、黙って出て行こうとすると、澄んだアルトの声が青木を呼び止めた。早くも訂正箇所が、と冷や汗混じりに振り返ると、薪は携帯電話を持ったまま、
「日曜日、ネズミーシーに行くから6時に起きろ」
 え、と頓狂な声を発して固まって、青木は眼を瞠る。
「ちょっと早いけど、7時くらいの電車に乗って行った方がいいって岡部が」
 薪が何事か言っていたけれど、疑問符が渦を巻いている青木の頭には入ってこなくて、さもあらん、青木のキャパシティは自分の疑問を解決することだけでとっくに振り切れている。
 幸せそうに微笑んでメールを確認して、それは彼女と連絡が取れたからではないのか。なのに、どうして自分を誘ってくるのだろう。

「どうして?」
「車で行ったら、ビールが飲めないだろ?」
 いや、交通手段じゃなくて。
「どうしてオレなんですか?」
 携帯電話の画面を見つめていた薪の眼は、デート前の男の眼だ。青木にはわかる、薪に会う前夜、鏡の中の自分はいつもそんな表情をしている。傍から見たら危ない人に思われると分かっていても、抑え切れない口角の緩み。相手に会うのが楽しみで楽しみで、自然に頬が緩んでしまう。
 そんな表情をしておいて、どうしてオレ?

 もしかしたら、と青木は何百回目かの期待を胸に抱く。
 運命のように再会した彼女よりも、薪は自分を選んでくれた? 彼女と過ごした美しい日々よりも、今現在自分の心を占めているのは目の前にいるおまえだと、そう言ってくれるのだろうか?

「1ヶ月に数日しかない貴重な休日に暇を持て余している人間の心当たりが、おまえ以外なかった」
 ……期待したオレがバカでした。
「オレだって別に、暇を持て余してるわけじゃ」
「見栄を張るな。ヒマなんだろ? だから休みのたび、僕を誘って来るんだろ?」
「ヒマだから誘ってるんじゃありませんよっ!」
 青木が滅多に出さない大声を出したものだから、薪はとても驚いたようだったが、それをフォローする余裕は青木にはなかった。

 だって、と青木は心の中で我が侭な子供にように主張する。
 同期の飲み会どころか同窓会までキャンセルして、薪に休暇を合わせているのに。薪と同じ日に休暇を取るために、これまで青木が何回曽我と小池の残業を肩代わりしたか、数え切れないくらいなのに。
 そんな影の努力を知って欲しいなんて思わないけれど、でもだからって『ヒマ』の一言で片付けられるのは我慢できない。

 大きな声で全力否定する青木を、薪は不思議そうに見た。それから右手を口元に持っていき、長い睫毛を伏せる。それは薪が考え事をするときのポーズ。
 薪にとって、青木の言動は不可解なのだろう。一言言えば尻尾を振って付いてきたはずの部下が突然それを渋ったりしたら、面食らって当然だ。

「なんでオレなんですか?」
 彼女と行けばいいじゃないですか、と言いたいのをぐっと堪えて、青木は静かに訊いた。彼女の都合がつかなかったとか、どうせそういうことだろうと思った。薪がそう言ったら、身代わりはごめんです、と言い返してやろうと思っていた。
 でも。
 さらりと左に流れる前髪の下、寄せられた眉の更に下、青木の大好きな亜麻色の瞳に宿った微かな翳りを見て、青木は自分のとんでもない思い上がりに気付いた。
 
 薪の憂いを、今、正に自分が作っている。それは許されないことだ。

 ここはひとつ、薪の気持ちになって考えよう。薪は青木の気持ちを知らないのだ。正確には、何度告っても理解してもらえない、というのが正しい状況だが、それは置いといて。
 仲が良いと思っていた友人に誘いを掛けたら、手ひどく断られた。どうしてだろう、何か彼を怒らせるようなことを自分はしたかな、などとしなくてもいい自省を薪にさせている。その原因が自分にあるなんて、青木的に、ありえないことベスト3に入る失態だ。

 結論を出すより早く、青木は執務机に駆け寄っていた。きちんと積み上げられたレターファイルの左脇に手を付いて、
「すみません、薪さん。よろこんでお供しま」
「おまえと一緒にいると楽しい」

 せっかくの改心を遮られて、でも青木とってそれは福音。
 福音の発信者をまじまじと凝視すれば、彼はひとさし指を唇に当てたまま、軽く首を振った。
「て、それじゃおまえの休日を奪う正当な理由にならないよな。待ってろ、今ちゃんとした理由を考えるから」
 今度は腕を組んで背もたれにもたれ、苦手な牛乳を前にしたときのように唇を尖らせ、でも結局、さっきと同じように首を振った。
「ダメだ、思いつかない。明日まで待ってくれれば、きちんとした事由書を800字以内にまとめて」
「あのっ!」
 相手の言葉を遮ったのは、今度は青木の方だった。

「オレ、薪さんが好きです。すごくすごく、好きなんです」
 それは何十回目かの告白で、あらかじめ用意されたものではないから花束も豪華なディナーもなくて、第一、室長室なんかで告ったってこのひとには絶対に伝わらないという確信があったけれど、青木は言わずにいられなかった。
 そして薪は青木の予想通り、ホッとしたように微笑んで、
「じゃあ、これ頼む」
 さらさらとペンを走らせて、メモ用紙をピッと切り取る。細い指に挟まれた紙片には、食材の名称がずらりと並んでいた。

「そこにあるもの、買ってきてくれ」
「尾頭付きの鯛? 何かお祝いですか?」
「岡部からメールで、今日の定例会は鯛めしが食べたいって。酒は、岡部が出張先で地酒を調達したそうだ。僕は先に帰って、土鍋を探さなきゃならないから」
「土鍋?」
「鯛めしは、土鍋で炊いたほうが美味いんだ。でも土鍋なんか滅多に使わないから、クローゼットの中をひっくり返さないと」

 さっきのメールは岡部からだったのか。
 薪が上機嫌だったのは、岡部の出張が思ったより早く引けて、薪の好きな日本酒を土産に買ってきてくれることが分かったから。そんなことだったのか。
 それを、デートを楽しみにしている男の表情だ、なんて。自分の眼も当てにならない。

「福引きのお礼だからな。雛子さんの分も作って、土産に持たせてやらないと」
「雛子さんて、誰ですか? 福引きって?」
「おまえには関係ない。さっさと買い物してこい」
 しっしっ、と犬でも払うような調子で追い出された青木の、大きな背中がドアの向こうに消えてから、薪はもう一度携帯電話を開く。そこには岡部から、副室長としての連絡事項と、友人としての短い手紙が記されている。

『チケットが届きましたので、今日の定例会でお渡しします』

 くふっと笑って携帯を閉じ、薪は執務机を片付け始めた。



(おしまい)



(2011.4)



 きゃー、お見苦しいものをすみませんでしたー!
 もう、どんだけつっかえながら書いたんだ、てカンジですね。(^^;
 あまりにも書けないものだから、強制終了させたなってのがありありと分かって。 
 次の話は去年の7月に書いたものなので、もうちょっとマシだと……あ、あれ? あんまり変わらないかも? 
 それもなんだかなあ。(笑)



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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ハッピーエンド

ラブラブほっこりなラストで、幸せな気持ちになりました。私も薪さんの鯛めしをたべたいですー(`∇´ゞ。
薪さんの態度や言葉に一喜一憂する青木がコミカルで可愛くて、凄く微笑ましいですね。
ところで岡部がもし雛子さんとうまくいって、もしも…、もしも…子供が生まれたら、戸籍上はどういう扱いになるのでしょう…?と、先日からアホなことを考えています。認知できないから、戸籍上は私生児??
しづ様は岡部の恋は成就しない設定でお書きになってらっしゃるのだと思いますが、あまりにも面白いカップルなので、くっついて子供とかできたら良いなぁと、つい思ってしまいまして…(笑)。

あずきさんへ

あずきさん、こんにちは~。


> ラブラブほっこりなラストで、幸せな気持ちになりました。私も薪さんの鯛めしをたべたいですー(`∇´ゞ。

ありがとうございます。
なんか、お話を広げることができなくて、やっつけ仕事みたいになっちゃったんですけど~~、(だって原作があんなんだったから。 ←責任逃れ)
あずきさんに幸せな気持ちになっていただいて、救われました。


> 薪さんの態度や言葉に一喜一憂する青木がコミカルで可愛くて、凄く微笑ましいですね。

原作でも、青木さんは薪さんに褒められると舞い上がり、見放されたと思うと30分もトイレで落ち込んでたり、微笑ましい限りですよね。(^^
青木さんは、ああでなきゃ。


> ところで岡部がもし雛子さんとうまくいって、もしも…、もしも…子供が生まれたら、戸籍上はどういう扱いになるのでしょう…?と、先日からアホなことを考えています。認知できないから、戸籍上は私生児??

そうですね、二人に子供ができたら、
きゃー、岡部さん、警察クビになっちゃうーー!! 

そっちの心配は置いといて、
やっぱり私生児になるのかしら・・・・・
きゃー、また雛子さん、岡部さんの親戚のおばさんにイヤミ言われちゃうーー!! (岡部さんのお父さんと年の差がありすぎて、財産目当てだとかさんざん言われた過去あり)

でも、このままってのもやっぱり切ないですかね。 思い合ってはいるんですけどね。
ううーん、ここはひとつ、小野田さんのご親戚の代議士先生に頼んで法律の改正を!! ←もう『秘密』じゃない。

失礼しました。

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Aさまへ

Aさま、こんにちは!
コメントありがとうございます。


>えっ、強制終了ですか!?シーで遊ぶ二人も見たかったですが

はい、強制終了で・・・・・すみませんー! 今回は見逃してくださいー! 
書けなかったのー、4月号が悪いのー! (←婚約解消のフラグを読み違えた自分が悪い)
この埋め合わせは必ず!
6月号を読んだ今ならラブラブあおまきさんを書けるような気がします!!


>薪さん、元カノとは会わないんですよね?

すみませんー!
フラグ立てておいて回収無しって、本当にすみませんー!
薪さんの中では完全に終わってて、メアド交換はしたものの、その夜には「その他」のフォルダに振り分けられ、次の朝には誰のメアドだったかも忘れ去っていたと言うオチでお願いします。 (←ひでえ)


>青木といる方が楽しいって立派に恋心なのに!ねえ。 

もう、早く気付きなさいよ、子供じゃあるまいし。
原作の青木さんも早く気付けー、
でもこの距離感も捨てがたい~、今の二人の関係って絶妙にすれ違ってて、だけど無意識の部分ではがっちり繋がってて、自分たちには自覚がないのに他人には分かってしまったりして、こういうの大好きなんです~。


>もう一度、携帯を開いて見る薪さんが乙女チックで可愛いです(>▽<)

こういうとこ、オトメですね。 オヤジのクセに。(笑)


>ところで、薪さんが作った鯛めしを雛子さんが美味しいと認識できるか心配(笑)

あはは! 
普通の人とは味覚が違うってことですね!
コクが足りませんわね、とか言って、「ぜひ薪さんにわたくしの作った鯛めしを」とか始まっちゃったらどうしましょう。
薪さん、逃げて。(笑)

Mさまへ

Mさま、こんにちは!
コメントありがとうございます! うれしいです!


「岡部家の事情」読んでくださってありがとうございました。(^^

> 雛子さんスゴイお方です!確かにこの人は簡単には手出し出来ないですね(>_<) 岡部さんって青木と違って暴走とかしなさそうだからな~…ずっとこのままなんでしょうか?

雛子さんの天然ボケに勝てるキャラは、そうそういないですね。 料理で人が殺せるし。(笑)
二人の関係は、
そうですね、ずーっとこのままですね。
思い合っているけど永久に結ばれないまま、でもお互い、今の関係にとっても満足しているんですよ。
それを一つの愛の形と取るか不幸と取るかは受け取るほうの問題で、本人たちは決して自分を不幸だとは思っていない、という感じで書いてみました。(^^


> 鯛飯思わず食べたくなりました~(^o^)

ありがとうございます!
しづは食べること大好きです! 食べることは生きることだと思ってます。
でも、身体が小さいのであんまりたくさん食べられなくて~、(←さっちゃん?) バイキングとか、絶対に元が取れない。 
こないだもね、地元のしゃぶしゃぶ屋さんで国産牛お代わり自由コースを頼んで、でも一皿目でお腹一杯になっちゃって、食べ放題の意味ない・・・・・・(TT) たくさん食べられる人が羨ましいです!!! 


薪さんは、
食べることに興味なさそうですよね。 というか、あのひとって、他の欲も薄い気がします。
食欲、物欲、性欲、出世欲、どれひとつとして持っていないような、とてもイノセントな感じを受けるのですけど、そこが魅力ではあるのですけど、
それは決してひととしての幸せとは結びつかないような気がして、心配になります。 だって、それって人生に未練が何もない、ってことでしょう?

これは生まれつきのものではなく、(そんなひとは警察官僚にならないと思う、大学院とかで研究者になってると思う) 鈴木さんを殺めてしまったことによる後天的なものだとわたしは理解しています。 ぶっちゃけて言うと、いつ死んでもいいと思ってるんだろうな、って。
現在は、青木さんの存在、それだけが薪さんをこの世に留めている。
そう思うと、やはり青木さんの気持ちに気付いて、自分が彼にとって唯一無二の存在であることを知って、自分と言う人間がこの世に存在する価値のある生き物だとしっかり自覚して、その上で生きる喜びを噛み締めて欲しい・・・・・・
そんな風に思います。


・・・・・・あら?
何を真面目に語りだしてるのかしら、しづ。

失礼しました、
ありがとうございました。(^^
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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