天国と地獄6 (1)

 こんにちは~。

 昨日、当ブログは2周年を迎えました!
 管理人がどれだけSに走ろうと、ギャグで薪さんのイメージを壊そうと、(←自重しようね) お見限りなく訪問してくださるみなさまのおかげです。 心から御礼申し上げます。
 どうか、これからもよろしくお願いします。

 なんて、しおらしく言ってますけどこの女、
 昨日、Mさまからコメントいただかなかったら気付かなかっ……すみませんーー!
 SSにかまけるのも大概にしないと、人間としての基本を失くしてしまいます。(2周年のお礼も申し上げないなんて!)
 これから気をつけますっ!!
 

 ブログの方も、すっかり更新が空いてしまいまして、15日の時点で3個目の記事って、仕事が暇なこの時期にはあり得ない数字っすね☆
 わたしの場合、書き溜めたものを公開しているだけなので、続きが書けなくて更新が空くことはなくて、つまり、間が空くときは只の怠ky……すみません……。
 なんか今日は、謝ってばっかりだわ☆★☆


 はい、こちらで男爵シリーズ、一旦終了です。
 その7には鈴木さんが出てくるので、お盆に公開したいと思います。
 よろしくお願いします。


 

天国と地獄6 (1)




 蒸し暑い夏の夜というのは、それだけでビールの味を高めるものだ。喉越しのよさと爽快感、身体に染み渡る苦味。そのすべてが大人を魅了して止まない。
 第九研究室の飲み会が行われたのは、そんな夜だった。 
 重大事件を解決し、所長から特別報奨が出たぞ、と室長が告げた次の瞬間、曽我が居酒屋をネット検索していた。小池が袋を持って会費を徴収し始めた。第九メンズは仕事も早いが、遊びの段取りも早い。

「室長はどうされますか?」
 薪は役職柄時間外の仕事が多い。飲み会は大好きなのだが、なかなか参加できないのが実情だ。が、その日は運よくフリーだったらしい。小池が差し出した袋に報奨金と他の職員の会費の2倍の額を入れると、「僕が行かなきゃ始まらないだろ」と高慢に笑って見せた。

「曽我、薪さん来るって! フグ刺しのある店探せ!」
「やった! じゃ、ジャンルを高級海鮮に変えて」
「居酒屋じゃなくて、いっそのこと寿司屋にするか?」
「ちょっ、ちょっと待て。僕今月新しいPC買っちゃって、クレジットカードの限度枠がいっぱいで」
 盛り上がった室内が静まり、一斉に薪を見る。その期待に満ちた瞳。

「……カードはもう一枚あるから」
「さすが薪さん、太っ腹!」
「男の中の男っ」
「カッコイイ上司を持って、俺たち幸せです」
「男の中の男……カッコイイ上司……よし、今日は『一乃房』に繰り出すぞ!」
「「「「やった――――っ!!」」」」
 たった3つのセリフで、いつもの居酒屋が寿司屋になった。残高254円の警視正キャリアの通帳は、こうして作られるのだった。


*****


 宴会が始まって1時間後。
 何杯ものジョッキが空になり、宴もたけなわと言ったところ。

「曽我孝から始まるっ! 古今東西!」
「「「「イエーッ!!」」」」

 いきなり立ち上がった曽我が右手に持った箸をタクトのように振って、皆の喚起を煽る。お祭り好きのメンバーは、直ぐにそれに乗って声を張り上げた。
 こういう宴席において一番に座を盛り上げるのは、やっぱりムードメーカーの曽我だ。第九の宴会部長の名は伊達ではない。
 本来ならこれは一番年下の青木の役目なのだが、青木は曽我のように自分が騒いで場を盛り上げる性格ではない。細やかな気配りで皆が気分よく過ごせるよう、卒なく宴席をまとめるほうだ。
 
 掛け声の後に続く手拍子。リズムに合わせて曽我は、元気良くテーマを発表した。
「巷で噂になってる室長の恋人!」
「えっ!?」
 上座の席で岡部と差しで飲んでいた薪が、自分の名前に驚いてこちらを振り返る。目元がうっすらと桜色に染まっているほかは何の変化もない、いつものきれいな顔。職務中とは打って変わって穏やかに開かれた彼の眉目を見て、青木はとても幸せな気分になる。
 凪いだ春の海のように和んだ青木の気分を破って、悪ふざけ100%の題目に答える同僚の声が響いた。

「小野田官房長!」(小池の答え)
「ち、ちがう! あれは小野田さんの冗談だから!」
「中園参事官」(今井の答え)
「いや、あのひとは男の子好きだけど、ターゲットは20代前半までだって」(←既にアラフォー)
「捜一の竹内さんですとか」(山本の答え)
「なんでだ!?」
「えーっと、後はええと、間宮警務部長!」(宇野の答え)
「殺すぞ!! てか、どうして全員男なんだっ!!」
「……じゃあ、三好先生」(青木の答え)
「「「「「ダウトオッッ!!!」」」」」
「なんでっ!?」

 全員の突っ込みに声を荒げる薪を横目で見ながら、青木は敗北の証に両手を挙げた。
 まあ、そうだと思ったが。薪まで順番を回すよりは、自分が罰ゲームを受けた方がいいだろう、と考えたまでだ。こういう席での罰ゲームは決まっている。中ジョッキの一気飲みだ。薪だって飲めないことはないだろうが、あまりビールが好きでない彼には可哀想だ。

「罰ゲームは何にしようかな~~」
 え? 一気飲みじゃないの?
「そうだなあ。室長のほっぺにキスってのは?」
 !!! ナイス、宇野さんっ!
「宇野、それヤバすぎ! 命かかってる!」
 ……確かに五体満足の保証はない。

 人事だと思って次々に突拍子もないことを言い始める先輩たちに苦笑し、青木はジョッキを傾ける。身体に合わせて肝臓も大きい青木は、これぐらいの酒では素面と変わりない。

「青木! なんで雪子さんがダウトなんだ!」
「は? いや、ダウトを叫んだのはオレじゃなくて」
「あんなステキな女性、他にいないぞ?」
 畳の上を四足でさかさかと近付いてきた薪の亜麻色の瞳を見て、青木は初めて薪の今の状態を知る。
 まずい。べろんべろんに酔っ払ってる。でも、まだビールしか飲んでないはずなのに何故、と思ったらテーブルの下に吟醸酒の4号瓶が2本も! 岡部の身体に隠れて見えなかったらしい。

「薪さん、青木の罰ゲーム、キスでいいですか?」
「よし、僕が許す!」
 雪子さんにキスして来い、と青木にだけ聞こえるように耳元に顔を寄せ、小さな声で囁く。周りの皆は、てっきり薪が酒の座興に乗っかっていると思い込み、やんやと囃し立てた。
 頼みの綱の岡部を見ると、携帯に呼び出しが掛かったらしく、電話を手に持って部屋を出て行くところだった。

 困った、岡部以外に酔っ払った薪を宥められるものはいないのに、というか他の皆は面白がって薪の暴走を逆に煽るから性質が悪い。
 そして一番性質が悪いのは、やっぱりこのひとだ。
 身長差を埋めるため、薪は青木の膝の上に乗って首に腕を回し、右肩に顎を乗せている。薪は顔に酔いが出ない体質だから、真面目に青木に迫っているように見えるが実際は違う。酔っていて身体がだるいから、相手の耳元にくちびるを寄せようとすると、この体勢が一番楽なのだ。

 そのつややかなくちびるが何を言っているのかと思えば、キスに持っていくまでのムード作りや、どのタイミングで好きだと言えば女が落ちるのかとか、青木にはまるで必要のないアドバイスだったりするのだが、言葉の内容はともかく、薪とこれだけ接近して耳元で囁かれるというシチュエーションは充分に青木を興奮させる。ふたりきりでいるときだって、こんなに密着したことはない。
 折りしも季節は夏の盛り。薪は当然ワイシャツ一枚の姿で、アルコールのせいで普段より高い体温が薄い布を通して伝わってくる。耳に掛かる薪の吐息は、どんな美酒よりも甘く。場所もわきまえずに青木は、フルーティな吟醸酒の香りに酔い、彼の香りに酩酊する。

「なんだおまえ、キスくらいで真っ赤になって。男がそんなことでどうする」
「薪さん、見本見せてくださいよっ」
「よぉし! 僕に任せとけ!」
 ノリにノッた先輩と上司が、馬鹿なことを言っている。と思ったら、薪の小さな両手が青木の頬を強く挟んで。
 気付いたときには長い睫毛が目の前にあった。


*****


 携帯電話に届いたメールは、母親からのものだった。
『お帰りは何時ごろになりそうですか? できれば猫の餌を買ってきてください』
 まったく、仕方のないひとだ。今日は祝賀会で遅くなるから先に休んでくださいと連絡を入れておいたはず。それなのにこの文面を見ると、起きて待っている気マンマンだ。

「帰宅時間は未定。猫の餌は調達します。早く寝なさい、睡眠不足は美容の敵ですよ。あなたの目の下にクマができたら、俺は悲しいです」とメールを返して岡部は苦笑する。
 今の岡部の顔を同僚が見たら、きっとびっくりするだろう。東の鬼瓦と称されるコワモテ刑事の代表格、岡部靖文警部のこんな穏やかな微笑など、同僚たちには想像もつかないはずだ。

 廊下を歩いて中座した宴会場に戻り、いくらか気を引き締めて襖を開けて、しかし岡部はその直後、あんぐりと口を開けてその場に立ち尽くす羽目になった。
 
 畳の上に胡坐をかいた青木の膝に乗って、薪が青木の唇にキスしている。二人の唇はすぐに離れ、「雪子さんにキスなんかさせるか、バーカ」というわけの分からない言葉を呟いて、薪はくにゃりと青木の胸に倒れこんだ。そのまま青木の腕の中で、安らかな寝息を立て始める。
 何がどうしてこういうことになったのかさっぱり分からなかったが、とにかくこれが薪にとってマズイ状況だということは理解できた。そして、青木にとっても。

「……オレ、もー、死んでもいいデス……」
 しっかりしろっ、人生終わるぞ青木!

 二人を取り巻いた同僚たちの間には白くて微妙な空気が漂い、ぽかんと口を開けた曽我と小池、不自然な体勢のまま固まっている山本と今井の横で、何故か一人だけ平然とビールを飲んでいる宇野の姿があった。
 柱時計の秒針がカチコチと響く中、やがてポツリと宴会部長の声が。

「曽我孝から始まる古今東西……薪さんの本当の恋人……」
「「「「「…………青木?」」」」」
 ダウトだっ!!



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Ⅰさまへ

Ⅰさま、こんにちはっ!
お祝いコメントありがとうございます~。

こちらこそ、こちらこそです!!
Ⅰさまには色んなことで助けていただいてます!
ええ、きっとⅠさまには、「わたし、何かしたっけ?」と思われるかもですけど、
わたし的には本当に助かってるんです!! ていうか、いてくださらないと困る!! 理由は此処では言えないので、あとでまた。(^^;


「天国と地獄」の鈴木さんは、もう腹黒全開で・・・・・
鈴木さんをお好きな方には叱られてしまいそうな内容なんですけど、ギャグだから許して・・・・・・


コメントありがとうございました!!
お仕事頑張ってください!!
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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