天国と地獄6 (3)

 こんにちは。

 コメレスも更新も、滞ってすみません。 
 でも今回は怠けていたのではなくて、ある方の二次創作でダークなお話を読んだらがっつり落ちてしまいまして……虚無感と喪失感が半端なく、食欲不振と極度の不眠症に悩まされ、それ以外のことを考える余裕がなくて、管理画面に向かえませんでした。   
 どなたの、とは申しませんが、とりあえず、みちゅうさんは天才だと思う!!! (←言ってる。 しかも個人攻撃になってる? そんなつもりは~~(^^;)

 秘密の二次創作の多くは非常に文学的水準が高くて、それは時に原作の感動を超えるときすらある。 その感動をもって原作を読むと、さらに薪さんへの愛が深くなる。 原作に描かれない陰のエピソードや心理を想像して彼の人間性を補完する、それもひとつの愛し方だと思います。
 そんな風に、原作をより深く愛せるような素晴らしいお話を創り出してくれる二次創作者さんたちの作品を自由に楽しめる現在の自分の幸福を、しみじみと感じています。


(そして我が身を振り返る) 
 ……少しはマトモな話を書こうね、しづ!!! (←結果として墓穴になった)


 で、お話の続きです。
 ………………墓穴まっしぐら。(笑) 




天国と地獄6 (3)




 昼休み、中庭のベンチでお喋りに興じる男女の姿を見つけた。
 親しげに顔を寄せる二人は、どちらも薪の友人だ。ひとりは同い年の女性、もうひとりは一回りの年下の男。女性は白衣を着た監察医で、男の方は薪の部下だ。

 個人的に、このふたりが仲良くしてくれると薪はうれしい。
 一回り年下の部下は薪が誤って殺してしまった親友にとてもよく似ていて、その親友は彼女の恋人だったりして、だから彼らのこんな姿を見ると、亡くなった親友が帰って来たような気がして、彼女が再び幸せを取り戻してくれたかのような錯覚に陥って、薪は幸せな気分になるのだ。
 立ち木の陰からこっそりとふたりの様子を伺うと、青木は頬を紅潮させて、何事か雪子に話している。雪子はそれに応じて頷き、青木に負けないくらい嬉しそうで魅力的な微笑を見せる。
 よしよし、いい感じだぞ。青木、がんばれ、と薪は心の中で日の丸の付いた扇子を振ってふたりを応援した。

 その扇子を握る手首の返しが止まったのは、風に払われて落ちてきた紅葉の葉っぱが雪子の白衣の肩に止まり、それに気付いた青木が彼女の肩を抱くようにしてそれを取ってやったときだった。
 それは一瞬のことだったが、薪の目に鮮明に焼きついた。
 青木の大きな手が雪子の左肩を覆っていた。それほど密着していたわけではないが、薪の位置からだと青木が雪子を抱いているような構図だった。普段は自分よりも大きくて、威風堂々としている雪子が、青木の腕の中にいると、とても女の子らしく華奢に見えた。すごくお似合いだと思った。

 途端、のしっと胸が重くなった。
 息ができないような苦しさに見舞われた。

 これはあれだ、3人という数の友人関係にはよくあることだ。鈴木が生きてた頃にも、何回か味わった。自分に黙って他のふたりが仲良くしているのを知ったときの、あの淋しさだ。
 鈴木と雪子が恋愛関係にあることは承知していたから、そんな時には自分も同じ大学の彼女に連絡を取って楽しくやっていたのだが。あの頃と違って、今は相手もいないし。
 だから、こんなに胸が痛いのは、あの頃と比べ物にならないくらい痛いのは、きっとそのせいだ。間に飛び込んで行ってふたりを引き剥がしたい衝動に駆られるのは、モテない男の僻みだ。幸せそうな彼らをやっかんでいるだけだ。

 街でいちゃついてるカップルを見ても何とも思わないのに、それがあのふたりになると冷静でいられなくなる。その事実には目を背けて、ついでに現実の目も背けて、薪はその場を離れた。
 モヤモヤしたものが胸の辺りにわだかまって、これはなんなんだろうと懸命に考えるが、その答えはとうとう出なかった。


*****



「薪さん、この書類に判を」
 帰り際、明後日行なわれる予定の会議の出席者の欄に捺印をもらおうと室長室を訪れて、岡部は薪がまた朝の鬱状態に戻っていることに気付いた。

「どうしたんですか? また何か心配事ですか?」
「うん……僕、やっぱりおかしいのかな」
 岡部が差し出した書類に印を押しながら、薪はぼそぼそと呟いた。
「今朝のこと、まだ気にしてるんですか?」
 プライベートに何があっても、仕事中はポーカーフェイスを崩さない。それが薪のポリシーだ。私生活のゴタゴタは捜査に持ち込まない、どんな衝撃も彼の職務を乱さない。鈴木が死んだ直後でさえ、静かな熱意で淡々と職務をこなしていた薪を岡部は知っている。

「なんか、胸が苦しいんだ。病気なのかな」
「心臓ですか?」
 薪は何度かショックで気を失ったことがある。満足な食事も摂らずに激務をこなし続けていたせいで、心拍停止に陥ったこともあった。それからは気をつけていたのだが、やはり後遺症が残っていたのだろうか。
「狭心症の痛みじゃなくて。なんかこう、重苦しくて、ときどきチクっと刺す感じで」
「それは医者に行ったほうがいいですね。ちなみに、いつ頃から痛み始めたんですか?」
「今日の午後1時15分32秒から」
「……どうしてそんなに明確なんですか?」
「昼休みに、青木が雪子さんと一緒にいるのを見て、そしたらこうなった」

 それでこの複雑そうな憂い顔か。ふたりの姿に嫉妬を覚えて、ようやく自分の気持ちに気付いたというわけだ。当然だ、それで気付かなかったらただのバカだ。

「それは多分、医者に行っても治らないと思いますよ」
 頑なに信じていた男性同士の恋愛は成立しないという黄金ルールを自ら破ることになって、ショックを受けているであろう薪を気遣って、岡部はできるだけやさしく言った。
「僕、もしかして、自分でも知らないうちに好きになってたのかな」
 恋愛なんてそんなもんです。俺だって、いつの間にかあの女性から目を離せなくなってました、と岡部は心の中で薪の独白のような呟きに答える。

「ずっと友だちだと思ってたのに」
「友情が恋愛に変わるのは、良くあることです。それに、ご自分じゃ気付かれなかったみたいですけど、俺の眼から見るに、それらしき態度は以前から表れてましたよ」
「まさか。嘘だろ。僕自身、その可能性に気付いたのは今さっきだぞ?」
「いいえ。薪さんはよく熱っぽい目で、あいつをじっと見つめてましたよ」
「え! 僕、雪子さんをそんな目で見てたのか?」
 …………そっちか――――!!!

 さすが薪だ、自分のルールを曲げないためには自分の気持ちを誤魔化すことなんか簡単にやってのけるのか。
「そっか、以前から僕は雪子さんが好きだったのか。全然知らなかった」
 俺だって知りませんよ!
 てか、もうやだ、このひと! ただのバカじゃなくて、キングオブバカだっ!!

 耐え切れず、岡部はその場に膝を折った。朝は何とか我慢できたが、今度は限界を超えたようだ。
 もうダメだ、自分の気持ちには自分で気付くのが一番いいとか、男同士の恋愛には抵抗がある薪が他人からこんなことを言われたら傷つくだろうとか、そんな悠長なことを考慮している余裕はない。お節介かもしれないが、誰かがハッキリ言ってやらないと、このひとは自分の本心に永遠に気付かないかもしれない。
「ちがいますよ、薪さん。薪さんは、青木のことが好きなんですよ」
「ぶふっ! 何言い出すんだ、岡部。青木は男だぞ?」
 男というだけで恋愛対象から外れる、それは確かに普通の男の反応だけど、だからと言って普通の男が男に恋をしないことの保証にはならない。運命のイタズラとか神さまの気まぐれとか、この世界はそんなもので満ち溢れているのだから。

 岡部は立ち上がり、大きな執務机を挟んで薪と向かい合い、職務と同じ真剣さで彼に言った。
「想像してみてください。青木が三好先生とキスしてるところ」
「うっ。胸がイタイ、すっごくイタイ」
 わざとらしく胸の中心を押さえながら、大袈裟に顔を顰めてみせる。薪は冗談のつもりなのだろうが、岡部はもう、冗談に紛らせるつもりはない。
「じゃあ、今度は三好先生が鈴木さんとキスをしているところ。痛いですか?」
「いや。それは実際見たことあるし」
「次に青木が受付の美代ちゃんとキスしてるところ」
「ううっ、イタタ。……あれ?」
 ふと、薪は真顔になった。
 自分の胸に手を当てて、その痛みが本物であることを確認すると、しばし自失茫然として、
「…………なんで?」

「それはご自分で考えてください」
 岡部はニッと笑うと、整った書類を持って室長室を出て行こうとした。その背中に、薪の声が掛かる。
「だからって」
 足を止め、岡部は身体を半分だけ捻るようにして薪を見る。捜査に行き詰ったときのように、薪はデスクに両肘をついて拳を合わせ、その上にくちびるを当ててじっと空を睨んでいた。
「だからって、僕には何もできない。だって、雪子さんは青木のこと」

 薪の後ろ向きな発言を聞き、岡部は踵を返して部屋の中に向き直った。気弱に睫毛を伏せた上司に、先刻第九で仕入れたばかりの情報を提示してやる。
「あれ、知らなかったんですか? 三好先生、法一の上司にプロポーズされたみたいですよ」
「えっ!?」
 この話を誰も薪にしなかったのは、決して仲間外れにしたのではなく、薪に対する思いやりだ。薪は彼女の親友を自負している。それなのに、彼女に関する重要な情報を部下に教えてもらうなんて、薪が傷つくと思ったからだ。

「多分結婚することになるだろうって。青木が今日の昼、本人から聞いたそうです」
 雪子が薪に直接話をせず、青木経由で知らせようとした理由も、岡部には何となく解る。薪はこれまで、青木を含む十人以上の知り合いを婿候補として雪子に紹介している。その中の誰でもなく、別の人を選ぶことになってしまって、いくら親友といえども引け目を感じたのだろう。

「大変じゃないか、青木のやつ。それでどうしたんだ?」
「どうもしませんよ。青木の思い人は他にいますから」
「……だれだ?」
 さすが薪さん。この期に及んで、それを訊きますか。

「本人に聞いてくださいよ!」
 笑いながら言って、岡部は室長室のドアを閉めた。




テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Mさまへ

Mさま、鍵拍手ありがとうございます!

そう言ってくださると、救われます~~。
わたしだってね、5巻を読まなきゃ創作なんか始めなかったんですよ。 5巻の薪さん読んだら、しんぼーたまらなくなってしまったのです。 
何とかして薪さんに幸せな世界を! 安らかな眠りを! 
原作で読めないなら妄想するしかないじゃないですかー!
それがどうしてこんな話になったのかは、永遠の謎なのでした☆

コメントありがとうございました。(^^

Nさまへ

Nさま、こんにちは!
コメントありがとうございます。


お祝い、どうもありがとうございます!
はい、おかげさまで2歳になりました。 これかもよろしくお願いしますっ。


おおお、Nさまもやっぱり落ちましたか。
ですよねー、落ちますよねー、ほんっと、どこまでもダークなんですよねー。 
でもって、異様に文章がきれいで、(プロの中にもあそこまで上手いひとはなかなかいないと思う!) さらには見せ方がまた上手いんですよねー。 
なんで彼女は作家にならないんだろう!!

そう、わたしの話は途中でどんだけ泣いても落ちても、必ず最後は薪さんが救われるように書いてます。 だって、わたしのSSの目的は薪さんを幸せにすることですもの。
ご指摘の『トライアングル』も、次の『斜塔の頂』で補完してあります。 あの2つはセットなんですよ☆


二次創作に対する身勝手な見解にご賛同くださって、ありがとうございます。
わたしはリアルの文章あんまり上手くないので~、でも表現を褒めていただいてうれしいです。
はい、
秘密は他のジャンルと比べると、レベル高いと真面目に思います。
薪さんに思い入れが過ぎるせいもあるのかもしれませんが、でも二次創作読んでこんなに泣くジャンルってあるのかな・・・・・・・?? 物が食べられなくなるほど、仕事が手に付かなくなるほど、原作以上の衝撃を受けることもしばしばあって、そのなんて幸福なことでしょう!!
で、すみません、わたしのはわざと原作から離して書いてるので、(青木さんの片思いとか、薪さんと雪子さんが親友とか、薪さんがオヤジとか) みなさんのとはちょっと違う・・・・・・・原作をより楽しむ一助にはならないと思います、ごめんなさい。(^^;


個人的に、Nさまの『昔やっていたジャンル』が気になります。
なんだろ~~??
よろしかったら、今度教えてくださいなっ!!


男爵シリーズ、楽しんでくださってよかったです~。
勘違いっぷりが可愛い、と、ええ、物は言いようで・・・・・・要するにバk・・・・・・・もごもご。
こちらのふたりは、けっこうあっさりくっつくんですよ。
本編の薪さんほど捻くれてないし、考えすぎることもないので。 男爵の方が幸せに近いんじゃないかな~。


身体のことも心配してくださってありがとうございます、てか、ごめんなさいー、余計な心配掛けました(><)
うーん、実はまだ本調子ではなくて、コメレスも滞り気味なんですけど(^^;
でも、もうすぐメロディ発売ですものね! 気合入れなおして頑張りますっ!!

Nさまも資格試験のお勉強が大変みたいですね。
どうかお体に気をつけて、ご自愛ください。 ブログの更新、楽しみにしてますので!! (←矛盾してる! というか日本語として成り立っていない)

また、Nさまのブログにお邪魔します。(読み逃げしててすみません~!! 今度こそコメント入れます!)
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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