緋色の月(19)

 ただいまです~。

 旅行、楽しんできました♪
 おかげさまで、心配したお天気もそれほど悪くありませんでした。 土曜日、豪雨で車の前が見えなくなったのが3回くらいだったかな☆ 日曜日は晴れ間も見えました。 

 遠浅で穏やかな銚子の海と違って、五浦の海は波が強く、断崖に砕け散る白波がとてもきれいでした。 目に鮮やかな松の緑と、眩しい空に白い波。 激しく打ち付ける波の音。 自然の力強さと美しさに、心が洗われる思いでした。
 これでネットがつながれば最高の環境なのに。 (←洗われても落ちない汚れ)


 留守中、たくさんのコメントと拍手をありがとうございました。
 土曜日かな、いっぱい拍手してくださった方、ありがとうございました。
 少しずつお返事していきますので、しばらくお待ちになってくださいね。(^^

 
 



緋色の月(19)





 石門の内側に二本の桜が、美しく咲き誇っている。
 昨夜からの風に払われた雲は空の隅っこに追いやられ、上空は見渡す限りの青一色。それを背景に、満開の桜が見事に映える。

 ひらひらと数枚の花びらが舞い落ちる中をゆっくりと歩く青年は、明るいベージュ色のコートの裾をかすかに揺らし、体重を感じさせない優雅な歩みをその道筋に刻む。
 やがて彼は、門と建物の中間地点に到達する。そこで建物から出てきた3人の人物に気付き、歩を止めた。
 真ん中に立った背の高い男が振り返り、他の二人に向かって頭を下げた。二人はその場に立ち止まり、そのまま庭へと歩いていく男の背中を見守った。

 薪は、彼が近付いてくるのを待っていた。
 彼は見違えるほどに憔悴しきった顔をしており、薪はまたひとつ、東条の吐いた嘘に気付いた。
 腫れ上がった目蓋に充血した眼。一日しか経っていないとは思えないくらい削げ落ちた頬。顔色も悪く、足取りもおぼつかない。夕方の6時で解放されたなんて、あれは嘘だ。明け方まで眠らせてもらえなかったのだろう、食事も飲み物も与えられたのかどうか。彼が体験した難事の熾烈を想像して、薪はいたたまれない気持ちになる。
 そんな状況に置かれても薪の身を案じていたなんて。こいつは本当に救いようがない。

 ふらつく足を踏みしめて、青木は懸命に薪に駆け寄り、1メートルほどの空間を挟んで彼と対峙した。青木の顔を見上げて、薪のつややかなくちびるが開く。
「バカヤロウ。手間かけさせやがって」
「……すみません」
 とんでもない災厄に見舞われた恋人に対して、この台詞はないんじゃないか。青木は思うが、仕方ない。薪に迷惑を掛けたのは事実なのだ。薪はときにその冷酷で青木を悲しませるが、本当はやさしい人だと分かっている。

 素直に謝る青木に、薪は一歩近付き、右手の人差し指で地面を指した。
「土下座して謝れ」
 …………どうしてこんなひと、好きになっちゃったんだろう、オレ。

 泣きっ面に蜂とはこのことで、だけど青木は自分でもどうしようもないくらい薪が好きだから、彼の言には絶対服従する。言われたとおり地面に屈み、片膝をついたとき。
 薪の腕が春風のようにやわらかく自分を包み、青木は彼の薄い胸に抱きこまれた。
 さらりとした髪の感触と、薪の匂い。恍惚としかけて、青木は自分を戒める。

「薪さん、人が」
「いいんだ」

 絶対に人前では青木の身体に触れない、街では離れて歩けと青木を叱る、過剰な警戒を怠らないはずの年上の恋人は、白昼堂々、しかも警察署の庭という公共の場で、玄関では二人の刑事が自分たちを見ているのを知りながら、自らの腕を青木の頭に絡め、愛おしそうに頬ずりをした。

「おまえのほうが大事だ」

 耳元で囁かれて、青木は思わず涙を零した。薪の細い背中をかき抱き、唇を噛んで嗚咽を殺した。そんな青木の弱さを薪は笑わず、彼の乱れた黒髪をやさしく撫でた。
「よく頑張った」
「薪さんが助けてくれるって、信じてました」
 青木は薪を妄信する。疑いなく迷いなく、それは青木にとって当たり前のこと。愚かとも間違いとも思わない。それを基本にして、青木の人生は作られる。

 人目も憚らずに抱き合う彼らを、二人の警官が眺めている。ツンツン頭の若い刑事が、ふうむ、と唸って腕を組み、
「想像してたより気持ち悪くないっすね。って、おれ、ヤバイすか?」
「いんや。あたしにも当たり前のことに見えるさあ」
 中年の刑事がゆるゆると首を振り、垂れ下がった眉毛をいっそう下げて、その下の小さな眼に温かいものを湛えながら、ため息混じりに呟いた。
「あそこまで思い込まれちゃねえ。男だ女だって拘ってるやつの方が、アホウに見えてくるよ」

 短い抱擁を終えて、彼らはI市警察署の建物に向き直った。それから玄関に佇む二人の刑事に一礼すると、付かず離れずの絶妙な距離感を保って石門へと歩いて行った。

「腹、決めて踏み出したんだろうよ。男だねえ」
 感慨深げに眼を細くした先輩刑事に、若い刑事が「そうっすね」と頷きを返す。
 遠ざかっていく彼らを祝福するように、舞い落ちる桜の花びらが二つの後姿を彩って、事件は幕を閉じたのだった。



*****

 
 このシーンが書きたくて、このお話を書きました。
「おまえの方が大事」って、薪さんの口から青木さんに直接言ってほしかったんです。
『トライアングル』の時もそうだったけど、たったこれだけのためにあんな目に遭わされるうちの薪さんて、ほんっとうに不憫☆



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

Aさま、こんにちは!
おかげさまで無事に戻ってまいりました。(^^


>土下座しろ」の後に「おまえの方が大事だ」って空極のツンデレですね(>▽<)

ツンデレっていうか、これ、
抱きしめて慰めてあげたくて、それには青木さんに膝を付いてもらわないと届かない、だけどそんなこと照れ臭くて言えなくて、結局「土下座しろ」。 
ツンデレというよりは、グダグダなんですよ☆


>田舎の刑事達をも納得させる二人の愛情(;;)
>薪さんはヌード写真集と共に一つの伝説を作りましたね(笑)

あはははは!!! 
ヌード写真集って! 伝説って!!
ひーこら、もう笑うしかないよ、薪さん不憫過ぎ!!


>この場合、妄信が青木を助けたのですね。お疲れさまでした(^^)

そう!
原作でね、青木さんが薪さんを盲信している、それは悪いことだ、薪さんの重荷になる、というご意見もありましょうが、
わたしは青木さんは薪さんを盲信していていい、と思っているのです。
頼ってくれる人がいるから人間頑張れるんだもん。 自分のためだと諦めちゃうことでも、大事な人のためだと頑張れちゃうでしょう?
だから青木さんは、薪さんに頼っていいんだよ。 僕が死んだら青木はどうなる、それくらいのことを薪さんが考えるくらいに。 彼が自分の命を諦めないための、一つの要因になるために。

でも、10月号でがっつり山本さんに諭されてて、やっぱりそうだよな、と思ったしづでした☆

・・・お前のほうが大事だ。

「土下座しろ。」・・・「お前のほうが大事だ・・・。」

とっても、いいシーンでしたv-308


悪女伝説と、女装をめでる会、会員500名、のページでは、爆笑させていただき

ましたが、v-411 

・・・見てみたいな~、デスクトップを飾る、色っぽい、薪さん。(笑)

写真集って、ありましたっけ?・・・探さねば・・・!(爆)

しづさまの薪さんは、夜が弱い、はずだったのに、・・・1+5・・・

これくらい、青木への愛情と、深まったのですね~ (何が?)

しづさまのところから、リンクがときどき、お勧めしてあるので、巡っていますが

(仕事しろっ!)

どちらの薪さんも素敵だったり、可愛かったり、ため息モノですv-344 

お料理をしない薪さんワールドにいくと、「めっちゃ、上手なのに~!」


どじょうなべは、お酒で酔わせるとは、聞いたことがありますが、

未経験。・・・これ、ジェネシス、薪さん風にコメントしたかったのですが、力及ばず・・


しづさまは、薪さんくらい、お料理上手な気がしますv-288

ここのところ、秘密でいっぱい、いっぱいな私の手抜き料理・・・

おいしいですよ、たぶん・・・手は抜いてますが・・・(笑)

junさんへ

junさん、
たくさんコメントいただいて、どうもありがとうございました。(^^


> とっても、いいシーンでした

わーい、褒められたー、ありがとうございますー。
人前で薪さんの方から青木さんを抱きしめる、というのをやらせてみたかったんです。 でもほら、うちの薪さん意地っ張りだし、他人に自分たちの関係を知られることを極端に怖れているので、よっぽど追い詰められないとやらないだろうなー、て考えてたら、
殺人事件が起きて青木さんが誤認逮捕されたと。 ←ドSの三段論法。


> 悪女伝説と、女装をめでる会、会員500名、のページでは、爆笑させていただきましたが、

この話、イチオシのギャグシーンでございました。
笑っていただけてうれしいです♪

 
> 写真集って、ありましたっけ?・・・探さねば・・・!(爆)

それ、わたしも欲しいです!
何処に行けば買えますかね!?



> しづさまの薪さんは、夜が弱い、はずだったのに、・・・1+5・・・
> これくらい、青木への愛情と、深まったのですね~ (何が?)

これきっと、青木さんが一方的にしてたんですよ。(笑)
薪さん、不憫www。



> どちらの薪さんも素敵だったり、可愛かったり、ため息モノです

リンク先の薪さんは、みなさん素敵ですよねえ!
うちみたいなオヤジ薪さんなんか何処にも居な、……すみません。 
エッチ下手な薪さんもあんまり居な、……本当にすみません。

料理は、上手いか下手かのどちらかに分かれる傾向があるような?
うちは上手ですけど、下手なら下手で、面白い話が作れますよね。 下手だけど人に手料理を食べさせるのが好きで、第九メンズが日々犠牲になってるとかね。 あの目つきで「僕が作ったものが食べられないのか?」とかやられたら、ダークマターでもバイオハザードでも食べるしかないですよね。(>m<)

 
> どじょうなべは、お酒で酔わせるとは、聞いたことがありますが、
> 未経験。・・・これ、ジェネシス、薪さん風にコメントしたかったのですが、力及ばず・・

東条が床にどじょうをばら撒いてしまったのは、わたしの実体験です。
嫁いだばかりの頃、水の中で泳いでいる生のドジョウを預けられまして。 「牛蒡をささがきにして、玉ねぎ薄切りにして、あとは親子丼の要領で作ればいいから」とお義母さんに言われて、ドジョウを笊にあけて鍋に移したら、
跳ねて全部飛び出した。
びっくりしましたよー。 「ぎゃー!!」とか悲鳴上げたもんだから、お義母さんが何事かとキッチンに飛び込んできてねー、そうしたら床でドジョウが泳いでたwww。 お義母さんもびっくりしただろうなー。
こんな調子なので、わたしは決して料理上手ではありません★


秘密に夢中になって手抜き料理ですか?
美味しければいいと思います! 
主婦になって思ったのは、手間隙掛けて作ったものが必ずしも家族に喜ばれるとは限らないこと。 ちなみにオットが一番喜ぶのは、ホットプレートで焼肉でございます。 料理するところ、ない。(笑)

それよりも問題は、意識が薪さんに奪われて、料理に集中できないことだと思います。 
「あれ、お醤油入れたんだっけ?」とか、煮物が焦げてるのに気付かずによそ様の二次創作を読んでるとか、昔はしょっちゅうありました。(^^;
集中しようとしてもできなくて。 今はjunさんも、そういう時期なんだと思います。
自然に任せて大丈夫ですよ。 3年くらい経つと改善されますから。 ←だから長いって。


いっぱい励ましていただいてありがとうございました!
おかげさまで、図面描き終りました!(junさんの目的と違うような……)
この工事、1月31日が工期で絶対に書類が間に合わない感じなんですけど(^^;)、引き続き頑張ります。
ではまた!

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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