恋人のセオリー その4

 こんにちは。
 先日はヘンなお話を上げてしまって、すみませんでした~~。


 前回のSSの焦点となったイリュージョンについて、知りませんでした、とおっしゃる方がけっこういらして、でも知ってよかったのか、となると、かなり微妙でございます。 
 本当に、世の中には知らない方が幸せなことって、たくさんありますね。
 
 これも知りたくなかった……。 
 あんまりショックだったんで、SSに書いちゃいました。(←もはや、色んな感情を整理するツールと化している)
 でも、みんなは知ってるのかな、どうなのかな。


 と言うことで、
 BL界に追放されても文句は言えないSS 第2弾 でございます。 ←反省の色が見えない。


 これ、本っ当に汚い話なので、
 冒頭のごあいさつにもあります通り、BLを美しいと感じ、そこに夢を抱いてらっしゃる方は読まないでくださいねっっ! 責任、持てませんからねっ!


 内容的には、うちのふたりの決め事のひとつなので、カテゴリは『恋人のセオリー』で。
 よろしくお願いします。





恋人のセオリー その4







「薪さん、大好きです」
 
 青木はいつものように、強い抱擁と薪への愛の言葉で行為の終わりを締めくくった。
 愛する人との情熱的なセレモニーにご満悦の青木とは対照的に、薪は疲れ果てた様子で青木の腕をうざったそうに退け、バスローブをまとってベッドを抜け出した。
 そんな恋人に、青木は少々不満を覚える。
 だって、先刻までは腕も折れよとばかりに強く青木を抱きしめて、与えられる刺激と自分で生み出した快感に、溺れるように身悶えていたくせに。

 変わり身が早いのは薪の特性、それは心得ているけれど、少しくらい情熱の余韻を楽しみたい。だから青木は、薪のバスローブの裾を捉え、彼を再び自分の腕の中に抱き寄せる。
 ほんの10分、いや5分でもいい。愛してるなんて言ってくれなくていい、こうしてただ抱き合っていたい。なのに薪は、
「放せ。甘えるのは後始末の後にしろ」

 アトシマツ?
 恋人たちの熱情の結果をそんなふうに言われて、青木はますます不満を高める。薪が臭気に敏感なのは知っているけれど、そんな汚れ物みたいに言わなくたって。

「そんなに急がなくてもいいでしょう。薪さんて、本当に冷たいんだから」
「僕が冷たいだと?」
「普通恋人同士って、こういうことの後はぎゅっと抱き合って、しみじみ幸せを感じあうものじゃないんですか?」
 いつも素っ気無い薪の態度に積もらされた青木の中の悲しみが、ついつい不満の言葉となって現れた。しまった、と思うが時すでに遅し。薪は見る見る機嫌を悪くすると、細い眉を吊り上げて言い返してきた。
「おまえのせいだろうが!」
 ……オレだけのせいなんですか?

 薪の言い分は要するに、僕はしたくなかったのに、おまえがムリヤリ、そういう意味だ。それは自分勝手で都合の悪いことはすべて青木のせいにする、薪特有の甘え方なのだと分かっていて、だけど時にはその屈折した彼の愛情表現を肯定できないこともある。
 否定の言葉を紡ぐ代わりに、青木は薪の身体を戒めたまま、姪を遊ばせるときのように彼を膝の上に乗せ、後ろから両腕で抱きしめた。
 決して力では敵わないと知りつつ、往生際の悪い薪は肩を揺すって青木の腕から逃げ出そうとする。身体に力が入っているせいか、明らかにケンカ腰の口調で彼は叫んだ。

「僕だってかったるいんだ! 本当はそのまま眠りたい。だけどおまえ、いくら頼んでもゴム使ってくれないから! しかも必ず中で出すし。どうしてだ?」
 突然生々しいことを言われて、驚いた青木の腕が緩む。その隙を逃さず、薪は青木の膝から立ち上がった。キッと自分を睨みつける薪に、青木はおずおずと返事をする。
「それはBLの基本ですから」
「基本てなんだ! どこの世界のベーシックだ!」
「いや、だって、BLってロマンチックで幻想的なものだし。作中にゴムだの体外射精だの、現実的なものを持ち出すのはどうかと」
「ロマンチック? 幻想的?」

 青木が一般論を振りかざすと、薪はせいぜい陰険に笑って、
「いい機会だ。僕が全国1千万人の腐女子の夢、打ち砕いてやる」
 と、とんでもないことをのたまった。

「何がロマンチックだ、少しは現実を見たらどうなんだ。男の×××なんか見るに耐えないくらい汚らしいし、そんなものを×××に入れるって、どう考えても美しさとは対極のものだと」
「やめてくださいよっ、ただでさえ追放ギリギリなのに、てか、アウトって噂もあるのに! これ以上やったら、作者は完全にこの世界から締め出されちゃいますよ」
「青木。これは僕たちのためでもあるんだぞ」
 薪は細い指を1本ぴんと立てて、青木の唇を押さえた。きれいな顔がすっと近づいてきて、それでもう青木には動くこともできない。

「いいか? このブログの管理人は僕たちの日常をあることないこと、好き放題に書き散らしている。それは許しがたい行為だし、僕たちのプライバシーも守れない」
「まあ、それはそうですけど。でも、オレは読者の方々に励ましの言葉をいただいたりして、とっても勇気付けられてますんで。悪いことばかりではないと」
「もちろん、僕が許せないのは管理人だけだ。訪問してくださる方には何の罪もない、てか、いつもありがとうございます」
「あの……結局、追放賛成なんですか、反対なんですか?」
「そりゃあもちろん、…………あれ?」
 なんだか自分でも良くわからなくなってしまったらしい。

「とにかく、僕が言いたいことはだな。こんなに身体がしんどいのに、後始末のために動かなきゃいけない僕の苦労を、少しは考えて欲しいって」
「しんどかったら、そのまま眠ればいいじゃないですか」
「何ノンキなこと言ってんだ。そんなことしたら、真夜中に大変なことになるだろ」
 薪の言う大変なこととはつまり、人間の身体は睡眠中は弛緩するから、体内に深く収めたはずのものが眠っているうちに局部から染み出してきて、ベッドを汚してしまう、ということだろう。しかし、と青木は自分たちが乱したシーツを見て、
「眠ってるうちに染みのひとつくらい増えても、変わらないと思いますけど」
 ふたり分の汗と愛液でしっとりと濡れたシーツを撫でながら、その湿気が薪の愛情の証のような気がして、青木は頬を緩ませる。

「おまえ、まさかと思うけど、知らないのか?」
 低い呟きに青木が顔を上げると、薪は呆れた表情をしていた。
「なにがですか?」
「だから、ナマでして、中で出したときの悲劇っていうか」
「悲劇?」
「なんだ、本当に知らないのか。まあ、経験したことがなければ分からなくても無理はないかもしれないな。僕だって体験するまでは知らなかったし」
 薪が何を言おうとしているのか、予測がつかない様子の青木に、薪はぶつぶつとごちり、それからハッキリした声で宣言した。

「下痢になる」

「はっ!??」
「そのままにしておくと、下痢するんだ。うっかり眠ってしまうと、夜中に大変なことになる」
「な、なんでですか?」
「精液ってのは強いアルカリ性なんだ。ゴムを使わないってことはつまり、直腸に石鹸水を入れたのと同じ状況になるわけだ」
「あー、なるほど。わかりました」
「本当に分かってるのか?より危険なのはおまえの方なんだぞ。僕はそれくらいで済むけど、おまえの場合は尿道口から細菌が入って感染症になる可能性が」
 それは聞いたことがあるけど、いざその場になるとそんなことは頭から吹き飛んでしまって。薪とひとつになること以上に大事なことなんかこの世にない気がして、だからいつも青木はその準備を省いてしまっていた。
 だけど、後で薪がそんな目に遭うと知ってしまったら、自分の都合で押し切るわけには行かない。

「そういうわけだから。これからは必ず使うように」
 言い置いて、薪はバスルームに向かった。残された青木は、薪に言われたことを考えてみる。
 思い起こしてみれば、薪は何度かお腹を壊していた。てっきり裸で寝ていたせいで身体が冷えたんだと思っていたけれど、あれって全部オレのせい……。

「もっと早く教えてくれればいいのに」
「僕は言ったぞ」
 いつの間にか戻ってきていた薪の声に驚いて、青木は声のした方角、つまり自分の右隣に首を回した。薪はタオルで髪についた水滴を拭いながら、ベッドに深く腰掛けて、足をぶらぶらと遊ばせていた。
「感染症の危険については、最初に話しただろ?」
「それは聞きました。でも、薪さんの被害のことは知りませんでした」
「そっちはおまえに関係ないだろ。僕がこうして、ちゃんと始末をすれば済む話だから」
 またそんなことを。
 今回のことに限らない、薪はいつでも何でも、全部抱え込んでしまう。自分ひとりで何とかできることは、洩れなく自分で何とかしてしまう。

「そういう問題じゃないと思います。これはオレたちふたりのことです。ふたりで協力し合って、お互い満足の行くようにするべきです」
「そんなにイヤなのか? 確かに締め付けられて窮屈だし、快感も薄れるけど、でも」
「そうじゃなくて。オレは薪さんが痛かったり辛かったりするのは我慢できないから」
「だったら何もしないでくれ」
 …………ですよね……。

 それは文句の付けようのない解決方法で、やり込められた青木はぐうの音も出ない。薪の身体の負担もないし、傷をつける心配もないし、薪はもともと男同士のセックスは好きじゃないし。
 でも無理。薪に手を出さないなんて、絶対に無理。あの愉悦を、彼の肌の甘さを知らなかった昔なら我慢できたかもしれないけれど、現在の青木の自制心はその頃の十分の一もない。

 薪の言葉の正当性を認めて、だけどそれに従うことはできないと分かってジレンマに陥る青木の隣で、薪はクスクスと肩を震わせる。
「安心しろ。おまえの自制心には期待してないから」
 それから薪はベッドの上に足を上げて両膝を抱えると、青木の肩に背中をもたせ掛けてきた。薪が完全に向こうを向いてしまったので、彼の顔は見えない。つやつやと光る、湿った亜麻色の短髪が見えるだけだ。

「すみません。その場になると、つい……でも、これからはちゃんとしますから」
 少し意地悪な言い方だけど、これは薪の恩赦だ。だったら、こちらからも誠意を見せないと。
「イヤなわけじゃないんだ」
 ポツリと零した薪の言葉に、青木は首を傾げる。こんな風に、プライベート時の薪の会話は、主語も目的語も省いてしまうことが多くて、非常にわかりにくい。でも、背中とはいえ薪が自分から接触してくるということは、青木にとって悲観的な話ではないはずだ。
「嫌じゃないから……だからさっきも……」

 本当は僕だって。
 じかに、おまえを感じるのがうれしいから。僕の中に注がれる、おまえの愛情が愛しいから。だから止められない。危険を伴う営みをやめることができない。

 切れ切れの言葉から薪の健気な気持ちを読み取って、青木は胸を温かくする。腕を伸ばして彼を抱きしめると、鼻孔をつくグリーンシトラスの馨。
 先刻は諦めた抱擁の中に薪を閉じ込めて、青木は彼の香を胸いっぱいに吸い込んだ。



(おしまい&神速で雲隠れ)


(2010.9)



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

きゃー、Aさま、こんな話に絡んではいけません。
Aさまのお人柄が疑われちゃう・・・・あ、わたしが悪いのか、すみません。


ええ、
薪さんには事前の準備も色々と大変みたいで、でも、
そんな思いをしてまでも君と愛し合いたい、って言いたいの。 本当は。 


あ、あとね、
便意が無ければ下剤とかしなくても大丈夫です。 シャワーで直腸を洗うだけでOK。 お湯を中に入れすぎるとお腹痛くなるから、湯量は少なめに、って何の話だーー!!
・・・・・・・・・・・・・・・・だって・・・・・調べないと書けないから・・・・わたしおばさんだから、ドリーマーにはなれないし・・・・・・・
ううっ、Aさまの視線が痛い・・・・・・これが原因で、もう二度とご訪問下さらなかったらどうしよう・・・・・。

言えた義理じゃないんですけど、見限らないでくださるとうれしいです。
失礼しました。

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プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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