春よ、来い(2)

 こんにちは。

 過去作品を読んでくださってる方、拍手をありがとうございます。
 懐かしさに駆られてちらっと目を通しただけでも、拙さと読みづらさが目に付きます。 我慢して読んでくださってるんですね、ありがたいなあ。
 この話も、3年前の作品ですからね。 読み直しのとき、ガシガシ引っ掛かって~~、
 言葉選びが~、文章のテンポが~、直してるとキリがないので、もうこのままで。 すみません。


『ニアリーイコール』にある通り、現在の薪さんはカエル嫌いではありません。 動物園に行くと熱心に見てますからね。 
 昔、嫌いだったんです。

 ↓↓↓ こちら、その理由でございます。 うちの薪さんて、ほんと不憫。(笑)




春よ、来い(2)




 ソレを見た途端、薪は室長席から立ち上がり、2mほど飛びのいた。いつも冷静な彼らしからぬ、過敏な反応である。
「なに。おまえ、こんなもんが怖いの?」
 梅雨の時期にはおなじみの、緑色のつやつやした小さな両生類。何故そんなものが第九準備室の室長室に入り込んだのかは不明だが、薪のこの反応はなかなかに面白い。
「へええ。薪の弱点、みーっけ。みんなにバラしてやろ」
 鈴木の目が子供のように輝く。普段、仕事でやり込められてばかりいる薪に仕返しができるチャンスだ、と思っているのがミエミエだ。

「怖いんじゃなくて、キライなんだ! おまえだって僕と同じ目に遭えばわかるさ!」
「同じ目ってどんな目だよ」
「……言いたくない」
「言わなきゃ分かんないだろ」
「いいよ、分からなくて。ていうか、解って欲しくない」
「なんだよ、教えろよ。オレとおまえの仲だろ」
 あの手この手で薪の口を割らせようとするが、そこは頑固な室長のこと、鈴木ごときの甘言に篭絡するほどやわではない。
 しかし、これは聞き出さねばなるまい。捜査官として真実の追究は職務である。

「じゃあさ、それ話してくれたら、オレもおまえと同じ目に遭ってやるから」
「ほんとだな?」
 鈴木の申し出に、薪の目の色が変わった。
 少し嫌な予感はしたものの、この時点の鈴木には好奇心のほうが大きい。力強く頷いてきっぱりと断言する。
「男に二言はない」
 鈴木の言葉に薪は、しぶしぶという口調で白状した。

「僕、子供の頃、身体が小さかったから近所の子供に苛められててさ」
 薪の身体が小さいのは今もだが、ここは黙っておこう。
「下着の中にコイツを入れられたことがあるんだ。それ以来、気持ち悪くって見るのもイヤだ」
 …………聞かなきゃよかった。

「鈴木、僕と同じ目に遭うって言ったよな?」
 取調室仕様の凄烈な表情と口調で、室長は冷ややかに言った。見るのも嫌なはずのカエルを白い手のひらに載せて、鈴木の目の前に突き出す。
「おまえ、カエルさわれんじゃん」
 ひとに意地悪をするためなら生理的嫌悪すら抑え込める。まったく、彼の意地悪は筋金どころか鉄骨入りだ。

「入れてもらおうか」
「いや、ちょっと待ってくれよ。だって子供の頃の話だろ、それ。今はいろいろと事情が違う、っ!」
「男に二言はないんだろ」
 この上なくきれいに微笑んだ室長を見て、鈴木は自分の愚かさを激しく後悔した……。



*****



 室長室から漏れ聞こえてくるただならぬ騒音と怒号に、第九準備室では全員がパニックに陥っていた。
『覚悟しろ、鈴木!』
『た、頼む、薪! やめてくれ!』
『往生際が悪いぞ。さっさとズボン脱げよ』
『それだけはカンベンしてくれ!』
『おとなしく入れさせろ!』
『だれか助けてー!』
 仕事どころではない。どう聞いても鈴木があぶない。
 しかし、このドアを開けて良いものかどうか。あまりのきわどいセリフの応酬に、全員が二の足を踏んでいる状態だ。まともにその場面を見てしまったら、中の二人もこちらもこれから顔を合わせづらいではないか。

「あの2人、仲がいいとは思ってたけどやっぱりそういう関係?」
「でも、室長のほうが男役だなんて意外だよな」
「あの世界は見かけとは逆だって言うからな」
「やばいぞ、鈴木。ズボン脱げとか言われてるぞ。ここで始めちゃう気かな」
「まさか」
「だって室長、入れさせろとか言ってるぞ」
「なにを」
「なにっておまえ」

「どうしたの? みんなでドアにくっついて。新しい遊び?」
 第九には珍しい女性客の声に、職員たちは一斉に蒼ざめる。
 背の高い白衣の美女。法医第一研究室の実力ナンバー1、三好雪子女史である。手にはピザの箱を4つも持っている。どうやら差し入れに来てくれたらしい。
 しかし、なんて間の悪い。雪子は鈴木の恋人なのだ。

「先生は知らないほうがいいです!」
 焦りまくる第九の職員たちに倣って、雪子は室長室のドアに耳をつけた。
 中で起こっていることに察しがついたのか、目を丸くする。が、さすがは冷静が売り物の監察医である。すぐに平静な顔に戻って、ピザの箱を静かに机の上に置いた。あまりのショックに泣き出すのでは、という職員たちの心配は杞憂に終わったようだ。

 雪子は白衣のポケットに手を入れて何やら探っていたようだが、目的のものが見つかったらしくにやりと笑った。迷うことなく室長室のドアノブに手をかける。
「み、三好センセ……今は駄目です!」
 職員の必死の制止も聞かず、雪子はドアを開けた。俊敏な動作で中に入り、ドアを閉める。

 室長室には2人の男と1人の女。1人の男を男女で取り合って、おそらく泥沼のような三角形が描かれているはずだ。
 これから起きる修羅場を予測して、第九の面々はますます顔を青くしたのだった。



*****



 パシャパシャッ、とカメラのシャッターが切られる音で薪は手を止めた。
 寝椅子に仰向けになった鈴木の上に、薪が馬乗りになっている。鈴木の状態はといえば、既にベルトを外されズボンの前を開けられて、下着のゴムに薪の華奢だが強い手がかかっていて。あと1秒で放送禁止の画面に切り替わりそうだ。

「雪子! 助けてくれ、薪に犯される!」
「なっ、ち、違います、雪子さん! これはそのっ」
 薪が慌てて鈴木から離れる。恋人の鈴木よりも、雪子への気遣いは細やかだ。薪は昔から、雪子にだけは頭が上がらないのだ。
「って、写真撮るの止めてくださいよ!」
 シャッターチャンスは逃さないのが雪子のポリシーだ。白衣には愛用のデジカメがいつも忍ばせてある。これまでもこのふたりの迷場面は、悉くカメラに収めてきた雪子である。こんな面白い場面を見逃せるはずがない。

「なんか、外がえらい騒ぎになってるわよ」
「え? どうしてですか?」
 分かっていない。いかにも薪らしい。
 今回のこれはけっこうきわどいが、このふたりのことだ。何か面白い理由があるに違いない。雪子はわくわくしながらその理由を尋ねた。

「聞いてくれよ、雪子。薪のやつ、子供のころカエルをさ」
「鈴木!」
 うっとりするほど美しい曲線を描く頬を真っ赤にして、薪が鈴木の言葉を遮る。どうやら薪の子供時代には、恥ずかしい秘密があるらしい。
 これは是非とも聞き出さねば。真実の追究は監察医の職務だ。
 ……長く付き合っていると、恋人同士の考えは似てくるものであるらしい。

「薪くん、まさか本当に鈴木くんを襲って? ひどいわ!」
「誤解です、雪子さん! 実は」
 写真まで撮っておいて今更だが、雪子は白々しく悲劇のヒロインを演じてみせる。他の女性なら放っておく薪だが、雪子だけは特別だ。雪子は薪の柔道の師匠であり、恩人であり、大学時代からの大切な友人なのだ。
 言葉に詰まりながらも、事情を説明してくれる。薪の子供時代のことには笑ってしまったが、やっぱりそんなことかと納得した雪子である。

 このふたりが昔、そういう関係だったことは知っている。しかし今、鈴木は雪子の恋人であり、薪は大切な友だちだ。二人とも雪子に対しては誠実で、とてもやさしい。
 だから雪子も余計な詮索や勘ぐりはしない。そんなものは人と人との間に必要ではない。必要なのは信頼と愛情だ。それを解っていても疑ってしまうのが女という生き物だが、雪子は違う。それを実践できる強さを雪子は持っている。その強さが彼女の魅力だ。

「じゃあ鈴木くん、頑張らなきゃ」
「へっ!?」
 薪と目を合わせて、雪子がにやーっと笑う。
「有言実行する男って、カッコイイわよね」
「そうだぞ、鈴木。男をみせろよ」
「お、おまえら……!」
 鈴木が青くなる。この二人がタッグを組んだら、鈴木にはとても太刀打ちできない。二人とも柔道は黒帯なのだ。

「もう、カエルなんかどこかへ行って」
「これでしょ」
 いつの間にか雪子の手の中に小さな両生類が握られている。薪は嬉しそうに小さな手をすり合わせ、低い姿勢を取って鈴木の背後に回った。
「たすけてくれー!!」
 薪が鈴木の背後から太い首を両腕で固め、雪子が鈴木の上に片足を乗せて押さえ込む。
 雪子の手から緑色の生き物がピョンと跳ねて、次の瞬間、すさまじい男の悲鳴が準備室に響き渡った。
「ぎやああああっ!!」

 鈴木の命があぶない――――― 決死の覚悟で飛び込んで来たであろう第九準備室の職員たちの前で、雪子は薪と一緒に腹を抱えて笑い転げていた。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

Aさま、こんにちは。


>ぎゃはは!パンツにカエルを入れられた鈴木さんを想像すると可笑しくて涙が出ます(>▽<。。)

もう、何をされるかわかりませんね。(笑)
この後、数ヶ月はこのネタで脅されたんじゃないかと。 口答えすると、「・・・・カエル入れるぞ?」みたいな。


>協力するしづさんの雪子が好きです(^^)普通、薪さんに「お願いだから許してあげて」て言うだろう。

えっ、そうですか?
わたしなら協力するけど~、そうか、恋人ですものね、とりなすのが普通ですよね。
でも、うちの雪子さんはお祭り好きなので、こちらで。(^^


Aさまの、カワイイ感覚、お言葉を聞くとかわいく感じるんですけど~、
ヌメヌメペタペタしか感じがどうにも・・・・
やっぱりわたしは毛皮系の動物のほうが、あ、でも、
イルカとかペンギンとか、そっち系だと思えばいいのか・・・・。

Aさまへ

Aさま。

過去作に拍手とコメント、ありがとうございます。

最強のドSww
ある程度S心がないとうちの話は読めないみたいです。擦り切れるって言われました☆

でも、Aさまの場合はちょっと違うかも~。
薪さんが喜んでいるのが嬉しかったんですよね? それは薪さんの幸せを願っている方ならみんなそうだと思いますよ。

モノホンのドSさんは、薪さんが苦しむ様子に萌えるものです。
原作で悪夢を見た薪さんがベッドの上で声を殺して泣くとことか(じゅる)、雪子さんと青木さんが仲睦まじくしているのを切ない目で見つめる様子とか(じゅるる)、最高萌える! というのがドSという生き物らしいですよ。←他人事のように言ってみました。

ちなみに、わたしの一番の萌えシーンは、
4巻で青木さんと雪子さんが外で話しているのを見て、青木さんの代わりに書類をみんなに配る薪さんです。たまらん。

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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おかげさまで8歳になりました(^^♪
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