天国と地獄8 (1)

 こんにちは。

 前回、前々回と、とんでもはっぷんな記事で本当に申し訳ありませんでした。
 踏みつけにされても文句の言えない内容だったのに、それでもコメント下さったり拍手してくださったり、ううっ、秘密コミュのみなさんは本当にやさしい!!!
 
 わたし、心を入れ替えようと思いました。
 ご厚情に報いるためには、みなさんの期待を裏切らない、甘い甘いあおまきストーリーを紡ぐのがSS書きとしての正しい道ですよねっ。


 ということで、男爵シリーズの8つ目です。 (←絶大な裏切り行為)

 いやー、このくだらない話が、まさか8つも続くとは。 
 しかも前作ではRまで。
 人間て、自分でも予想すらしなかったことを易々とやってのける生き物なのですね。(←大げさ)


 このお話、カップリングは曽我×薪で、
 男爵では初の女装ものです。(いったい何を書いているのやら)
 カップリングと内容に、お腹立ちの方もいらっしゃるとは思いますが、みなさま、そこはそれ、本来のお優しさを遠慮なく発揮されて、しづを許してくださってもよろしくてよ? 


 ……あまりにも話の内容に自信がなくて、まともなご挨拶もできなくなってきたような気がするので、お話へどうぞっ。
 苦笑いでも失笑でも、笑っていただけるとうれしいですっ!!






天国と地獄8 (1)




 紙を破る音が聞こえた。

 それは激しいものではなかった。しかし、何度も何度も繰り返し、一定の速度で静かに周囲の空気を振動させた。
 職務室に居た人間すべてが音を立てる人物に注目するまでの間、その音は続いた。
 彼を見た職員たちは、一人残らず瞠目した。その人物が丹念に破っている紙の束が、挙句はゴミ箱に放り込まれた紙片の元が、彼らの仲間が書き上げて彼に提出した報告書だとわかったからだ。

 何もそこまでしなくても。

 室長から非人道的な扱いを受けた職員は曽我と言って、少々、慌て者の部類に入る。普段から誤字脱字等のケアレスミスが多く、しょっちゅう室長に叱られている。今回もその口だろうと思われるが、可哀想に、今日はたまたま室長の虫の居所が悪かったらしい。口頭で叱責を受けるだけでは済まなくて、実力行使をされてしまったというわけだ。しかもあんな陰湿な形で。

「警察庁に行ってくる。戻りは夕方だ。それまでに、人間が読める報告書を作成しておくように」
 書いた本人の目の前で報告書をゴミ箱に捨てるという仕打ちだけでは飽き足らず、薪は亜麻色の瞳を冷たく光らせて、皮肉と共に曽我に投げつけた。言葉の暴力というやつだ。
「岡部、留守を頼む」
「はい。おい、青木、薪さんについて」
「小池」

 室長の警察庁までのお供に、一番未熟で、抜けても現在の捜査に支障の出ない職員をつけようと岡部が指示を出すのを遮って、薪は曽我の右隣の席に座った職員を指名した。自分の名を呼ばれてびっくりした小池が、細い目を驚きに見開くのを見もせずに、「行くぞ」と彼を促したときには、薪はもう自動ドアの前。
「あ、は、はいっ!」
 慌てて立ち上がって薪に駆け寄り、彼から書類の入ったキャリーケースを受け取って、小池は細い背中に付き従う。同僚の視線を後ろ首で感じつつ、小池は薪の後に続いて自動ドアを潜った。

 エントランスまでの長い廊下を、誰ともすれ違うことなく歩いていく間中、小池はどうして薪が自分を呼んだのだろうと懸命に考えていた。
 もしかしたら、先週の金曜日、居酒屋でかました室長の悪口、あれが耳に入ったんじゃないだろうな?
 たしかに言ったのは小池だ。あんな捻じ曲がった性格になるくらいだから小さい頃は苛められっ子で女装もさせられていたに違いないとか、瞬時にスパイシーな皮肉が飛び出すのはきっと「皮肉ノート」を作成していて、ネタを思いついたらそれに書き留めているのだろうとか、でもあれは酒の席のことで、それを室長に密告るような輩は第九にはいないはずだ。
 しかし、薪は冷たく尖った口調で、
「小池。どうして僕がおまえを指名したか、分かってるだろうな」

 ぎくぎくっと頬を引き攣らせて、小池はたじろいだ。青くなる部下の前に回り込むようにして彼の歩を止め、薪は刃物のような瞳で小池を見上げる。
「週末のこと、よく思い出してみろ」
「えっ、やっぱり室長にはお見通しで……すみません、酒の勢いでつい。でも本気で思ってたわけじゃないんです。室長、女装すっごく似合いますけど中身は男らしいし」
「女装? 何の話だ」
 しまった、皮肉ネタのほうか。
「いえそのっ、室長ほどの頭脳があれば皮肉のネタ帳などなくても言葉につまることはありませんよねっ!」
「皮肉のネタ帳ってなんだ?」
 まずい、これも違ったみたいだぞ。あと何を話したっけ、酒の席ではいつも薪の悪口で盛り上がっているから、心当たりがありすぎて一つに絞れない。

「じゃあなんだろう。『あのひと、常識知らずと言うよりはバカなんじゃないか』発言かな? それとも、『職務時間以外の薪さんはどこまでもダメ人間に違いない』のほうかな? あ、もしかして『彼女いない歴37年の薪さんがあんなに女装が上手いのは、毎日自宅では女物の衣装を身につけているに違いない、男物だとサイズがないから……』」
「小池。心の中で呟いているつもりだろうが、ぜんぶ声に出てるぞ」
 小池のわざとらしいミスを故意的なものと解釈しないのは、薪が多分にお人好しな証拠だと小池は思う。本音では薪の人間性を好ましく思っているから、それを知っているのは科警研中探しても自分たち第九の職員だけだと自負しているから、酒の肴の上司の話題はどんどんエスカレートするのだ。

「もういい。どうせおまえら、僕の悪口を肴に飲んでるんだろ。それは後でゆっくり聞くとして、問題は曽我だ」
 苦虫を潰したような顔から管理者の厳しい表情になって、薪は小池の顔を見上げた。
「金曜日までは普通だった。でも、今日になったらめちゃめちゃだ。あんなもの提出しやがって」
「そんなにひどかったんですか? 曽我の報告書」
「捜査員としての能力を疑われる内容だった」
 その口調が、部下の失態に憤ると言うよりはむしろ憂色の響きを宿しているような気がして、小池はついつい働かせる必要のない想像の羽根を広げる。

 もしかして、それであんなに細かく破ったのか? 曽我の立場を考えて、他の職員たちに読まれないように?
 まさかな。薪はそんなに甘い上司じゃない。皮肉屋で意地悪で、人の弱みを見つければ嬉々としてそこを衝いてくる、そういう男だ。でないと、これから新しい酒の肴を他に探さなくてはいけなくなる。それは面倒だ。

「何があったんだ? 曽我のことは、おまえが一番よく知ってるだろう」
 これは友人のプライベートに関することだ。言おうかどうしようか迷ったが、いずれは薪の耳にも入るだろう、と小池は判断した。噂というのは空気のようなもので、その侵入を防ぐことは極めて困難だ。
「実は、曽我のやつ……」

 小池が語る曽我の身を訪れた出来事に、薪の亜麻色の瞳が大きく開いた。




テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Sさまへ

Sさま、こんにちは。

女装ネタ、お好きですか?
楽しいですよねっ!
原作の薪さんは絶対にやって欲しくないですけど☆
わたしの中では警官のコスプレもギリギリ許容範囲で・・・・・わははは。 

今回の女装は、いつもと違って犯罪絡みじゃないからアクションが無いんですけど~、
それなりに笑える展開にしたつもりなので、笑っていただけると嬉しいです。(^^
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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