天国と地獄8 (2)

 先日、とうとうやっちまいました、妻としてやってはイケナイこと。
 ごめんね、オット。 
 反省してます。 二度としないから許してね。


 何をやらかしたかというとですね、
 日曜日、映画に行った帰り道。
 けっこう暑くて喉が渇いてて、だからコンビニでアイスでも、と思いましてオットに、

「薪さん、アイス食べたい。 コンビニ寄って」

 真顔で 『薪さん』 と呼びかけてしまいました!!!

 オットを別の男性と間違えるなんて、妻としてやってはいけないことですよね(><) (←その前に、人としてどうよ?)
 まあ、いい加減、オットも呆れてましたけどね☆


 秘密ファンの方なら誰もが一度や二度はしている失敗だと思うのですけど~、
 みなさん、いかがですか? 






天国と地獄8 (2)





「結婚詐欺!?」
 薪と小池が出て行った後の研究室で、宇野と今井に目配せされて青木は、室内に曽我と彼の指導に当たる岡部を残して休憩室へ移動した。そこで二人に聞かされたのは、咄嗟に出た声を抑えることができないほどに意外な内容だった。

「いや、詐欺とは言えんな。さんざん貢いだ挙句に振られたのは事実だけど、結婚の約束をしていたわけじゃないからな」
「相手は女子大生か。大人の男性と付き合って、食事を奢ってもらったり洋服を買ってもらったり、そんなことは当たり前なんだろ」
 第九で事情を知らなかったのは、青木だけだった。毎回毎回、先輩たちの情報収集の速さには恐れ入る。

「曽我さんが若い娘と付き合ってるのは聞いてましたけど……そんなことになってたなんて、ちっとも知りませんでした」
 あれだけの仕事量をこなしながら噂話にも手を抜かない彼らに尊敬の眼差しを向ける青木の前で、今井が肩を竦めてコーヒーを啜る。
「曽我も美味しい思いしたんだろ? だったらもう、諦めたら」
「いや、それがですね、今井さん。あいつ、ヘンなところで純情でしょ? 彼女の方からほのめかしてきたのに、結婚するまでは大事にする、とか言ってドン引きされて、それが原因で別れ話になったらしいんですよ」
「バカだなー。女に縁のない男ってのはこれだから」
「まあ、曽我らしいですけど。青木、そういうわけだから。おまえもしばらくの間は、曽我の前で女の話題は避けてくれよ」
「はい、了解しました」

 第九の先輩たちは、本当にやさしいと青木は思う。
 彼らの噂好き、詮索好きは決して興味本位のものではなく、仲間に対する愛情なのだ。
 愛情の反対語は、憎しみではなく無関心だ、と聞いた事がある。攻撃するでもない陰口を言うでもない、相手に興味を持たないことが一番冷酷な仕打ちなのだと、気付いていない人間はけっこう多い。

「滝沢さんと山本が研修中でよかったですね」
「滝沢はともかく、山本に言われたら。曽我のヤツ立ち直れないだろうな」
 山本には、その外見に依らずというと失礼だが、美人の奥さんと可愛い娘がいる。去年のクリスマスイブに第九を恐慌状態に陥れた彼宛の写メールは、職員全員の忘れたくても忘れられない記憶のベスト3にランクインしている。

「相手の女性も、ちょっと非常識ですよね。結婚する気もないのにプレゼントだけもらうなんて。女性用の洋服やアクセサリなんて、返されても使い道ないし」
「返って来るわけないだろ。そんなもの、とっくに金に替えてるって。その女、同級生の彼氏がいたんだから」
「えっ!? ……すみません、状況が理解できないんですけど」
 曽我と付き合いながらも同級生の彼がいるという矛盾は、ありえないことではない。俗に言う、二股というやつだ。意志の弱い人間が陥りがちな状況で、どちらの男性も傷つけたくないと思うが故に、一番最悪のことをしてしまう。青木にも身に覚えがあって、だからその女性の気持ちは分からなくもなかったのだが、それがもらったプレゼントをお金に替えることとどう関係してくるのかは見当もつかなかった。

「本命の彼は同級生。学生だから金が無い。だから、曽我に貢がせたプレゼントを金に替えて、デート代にしてたんだよ」
「ちょ、ちょっと待ってください。さっき、彼女は曽我さんにその、身体の関係を持ってもいいようなことをほのめかしたって」
「だから、デート代のお礼ってことだろ」
「そんな!」
 青木は激昂した。それでは曽我は、完全に利用されていたのではないか。
 誰の悲しむ顔も見たくないと、やむにやまれず二人の男性と付き合ってしまう、彼女の状況はそんな優しい気持ちからではなかったと知らされて、青木の怒りは一気に燃え上がった。

「ヒドイじゃないですか!」
「いや、俺に怒られても」
 思わず宇野に詰め寄ってしまって、青木はハタと我に返る。自分が怒っても何の役にも立たないと分かって、だけど彼の憤懣は簡単には治まらない。
 曽我は大事な先輩だ。KYな言動が多いと苦笑されることもあるが、基本的にはとてもやさしくて包容力のある男だ。昔、青木が仕事でミスって室長にクソミソに貶されてトイレで泣いていたとき、何度もドア越しに慰めてくれた。その先輩を利用するだけ利用して捨てるなんて、これは立派な犯罪行為だ。

「だって口惜しいじゃないですか! 曽我さんがそんな目に遭って、何とかしてその女に思い知らせてやりたいと思わないんですか?!」
「青木。気持ちは分からなくもないけど、てか、俺達だって同じ気持ちだけど、曽我がそんなことを望むかどうかを考えると」
 今井に穏やかに諭されて、青木は口を閉ざした。

 言われてみればその通りだ。そんなことをしても、曽我は喜ばないだろう。自分を騙した女性に陰湿な仕返しを考えるなんて、曽我はそんなセコイ人間では――。

「青木! 心の友よ!!」
 休憩室のドアが勢いよく開いて、坊主頭のメタボ体型が青木に突進してきた。いきなり抱きつかれて2,3歩よろめき、その場に倒れそうになるのを根性で踏ん張る。重量級の曽我にマトモに乗られたら、大柄な青木といえど窒息は免れない。青木は身長こそ高いが、岡部のような強靭な筋肉は持っていないのだ。

「そうか、おれのためにあの女に仕返ししてくれるのか!」
「えっ」
「ありがとう、ありがとう!!」
「いやあの、ちょっ、待ってください、宇野さん、今井さん! オレをひとりにしないでくださいよ!!」
 
 要領の良い先輩たちはさっさと執務室に戻ってしまい、休憩室には青木と、涙にくれる坊主頭の先輩だけが残された。
 自分の前で臆面も無く涙を流す恋を失った哀れな男に、青木は何と答えてよいものかわからず、ひたすら狼狽えていた。




テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

拍手コメントくださった Aさまへ

ええ、もうね、わたしは隠し事が苦手なものですから、ていうか、オットはいつも無理矢理薪さんの話を聞かされてまして。(笑) だから大丈夫です。
以前、あんまりSS書きに夢中になっていたものですから、酔っぱらったオットに、
「しづ、浮気してんだろ」
「はあ?何の話?」
「知ってんだぞ、相手の男、アオキって言うんだろ!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
うん、多分ね、薪さんのモノローグを考えてるときに、無意識に口に出ちゃってたんだな☆


それから~、
あら、残念。
呼び捨てできるチャンスなのに。 鈴木さん気分を味わえるのに。(笑)
でも、本人に言えなくても、他の方と話をするときには、「うちのマキが」って言えるでしょう? いいな~~!!


>曽我さんて確か、アニメでも若い女の子に恋してましたね。

すっごい話でしたよねっ!
他にもツッコミどころ満載のアニメでしたが、あの回もツライものがありました☆ あんなとこで手術・・・・・・感染症で死ぬよ?
でも、あの回は後味は悪くなかったですよね。(^^


>まあ、山本さんに美人の奥さんが!?それは他メンバーにはショックですね。

山本さんに美人の奥さんと娘がいる話は、去年のクリスマス合わせで書いたんですけど~、間に合わなくて公開できなかったんです。
彼女たちはこの話にもちらっと登場しますので、お楽しみに♪

Aさまへ

Aさま、こんにちは~。

現実にいますか? そういう娘。
不愉快ですね~。

わたし、そういう人を見るたびに思うんですけど。
人生って、いいことも悪いことも、必ず返ってくるんだよ。 
自分に貢がせた人は他の誰かに搾取されることになるし、略奪愛したひとは浮気される。 世の中は連綿とつながっていて、自分だけがその連鎖から逃れられると思ったら大間違い。 この人は、若い頃のツケを年老いてから取り立てられて、泣くことになるんだろうなって。

反対に、為した善行も必ず返ってくると思うの。
為したのと同じ形じゃなくても、日々の幸せとか平穏とか、形にならないものかもしれないけど、きっと返ってくる。
誰も見ていないときに為した不実にも、必ず報いはくるから、すぐに成果が返ってこなくても、誠実に日々を重ねていきたいなあってわたしは思ってて、
あれっ!?
そうするとわたしは、この先オットから二次元キャラと間違われて名前を呼ばれることになるのかな!?
うう~ん・・・・・・。


> 曽我さんを騙した女の子ははたしてどんな女の子なのか、そして薪さんがどう活躍するのか、興味津々です(^o^)。

今回の薪さんの活躍(=女装)は、深窓のご令嬢バージョンです。
お楽しみに~~。(^^

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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