タイムリミット(6)

 高校生の甥っ子に、トモコレのソフトを借りてたんですけど。

 ゲームを完全にクリアしたので(目的のカップルを全員結婚させた)甥っ子にソフトを返そうとしましたらね、なんと受け取りを拒否されたのですよ。
 その理由が、
「そんな腐食したゲーム、いらねぇ」
 …………腐食ってどういう意味よーー!!! 薪さん2人と青木さんと鈴木さんを作って結婚させたのがそんなに気に入らないのかーー!? 

「お姉ちゃん、遊び方間違ってる」って小6の姪にも言われましたが。 
 最近の子供って生意気ですよね?(笑)

 




タイムリミット(6)





 最後にどうしても寄りたい、と薪が言い出したのは、青木のアパートの正面にある公園だった。
 時刻は20時半を回ったところ。閉園時間まで、あと15分ほどだ。

 何か目的があるらしく、薪は真っ直ぐに歩いていく。桜並木の通路を抜けて、見事な枝振りの巨木の前で、ぴたりと止まった。
 この桜の樹には、特別な思い入れがある。
 青木が薪に恋をしたのもこの場所だし、付き合い始めるときに想いを告げたのも此処だ。この桜は、もしかしたら自分たちのことを覚えているかもしれない。

「まだ咲いてないのか」
 がっかりしたように言うが、今は3月だ。今年の冬は寒かったから桜前線も遅れ気味で、東京の開花は4月半ばと予想されていた。
「最後に、見たかったな……」
「あと3週間もすれば見られますよ」
「今日、見たかったんだ」
 また、無茶を言う。
 薪はこうして絶対に実現不可能なことを言っては、青木が困るのを見て楽しむ悪いクセがある。旅行中はずっと素直でいい子だったのに、帰ってきたら途端に意地悪になるなんて、いかにも薪らしいというか。

「どうしても、見たかったんだ」
「ここの桜が咲いたら、真っ先に薪さんに知らせますから」
 執拗に繰り返す薪を、子供をあやすような口調で青木が宥める。いつもの言葉遊び。
「そしたら、一緒に見に来ましょう」
「…………そうだな」
 薪が引き下がった。
 珍しい。いつもなら、もう二言三言、絡んでくるのに。

 薪は、きゅ、と口元を引き締めて、蕾すら見えない桜を見上げた。その横顔は何だかとても寂しそうで、青木は少し切なくなる。これは、祭りの後の寂しさというやつだ。

「青木。あのな」
「はい?」
 つややかなくちびるが開こうとしたとき、突然、辺りは闇に包まれた。
 薪の瞳がうっすらと曇ったような気がしたが、瞬時に降りた闇に遮られて、何も見えない。あいにく、新月の晩で他に明かりはなく、目が慣れるまで動くこともできない。
「時間みたいですね。帰りましょうか」
 9時になると、この公園の明かりは落とされる。エコロジーが叫ばれる時代、今は殆どの公共施設でこのシステムが取られている。転倒防止のために、申し訳程度にフットランプが付いているが、その程度の光源では互いの顔は見えない。
「えっと、なんでしたっけ? 何か言いかけてましたよね」

 暗闇の中で、何かやわらかいものが青木の唇に押し当てられた。
 それを薪のくちびるだと認識するより早く、薪は青木から離れてしまい、抱きしめようとした青木の手は行き場を失う。

「帰る」

 出口に向かって歩き出す。暗さに目が慣れてきて、先刻よりは周りの風景が見えるようになった。
 目の悪い青木には少し早すぎるスピードで、薪は前を歩いていく。薪の背中は厚手のコートを着ていてさえ、細くて頼りなくて、闇の中に消えてしまいそうな錯覚を覚える。

「送らなくていい」

 公園の出口で、薪はそう言った。
 いつだって仕事が一番の薪は、翌日仕事があれば必ずそうする。特別な日でもなければ青木が薪の家に泊ることを許可しないし、平日のデートは10時が門限だ。青木は1分でも長く薪と一緒にいたいから、家まで送りたいし、送り狼にもなりたいのだが、薪がそれを許してくれたことはない。

「僕は、大丈夫だから」

 暗がりで、薪の表情はよく見えない。声の調子もいつもと変わらない。

「じゃあ気をつけて。おやすみなさい」
「……………さよなら」

 遠くに見える街灯がぼんやりと照らす歩道を、早足で遠ざかっていく後姿を見送りつつ、青木は何となく違和感を感じていた。それは重大なものではなく、捜査中に脳内で鳴り響くアラームに比べたらとても小さいものだったので、さして気にも留めなかった。何よりも、夢のように楽しかった3日間の終焉にケチをつけたくない、という気持ちが働いて、青木にそれを追及させることを阻んだ。
 それでも、捜査官の本能が青木に警鐘を鳴らしたのだろう。アパートのドアに手を掛けたとき、青木は突然違和感の正体に思い当たった。
 薪の口から、ありふれた別れの挨拶を聞いたのは、それが初めてだった。




*****


 このお話とはぜんぜん関係ないんですけど、新しいお話を書き上げました。
 かねてから何人かの方に、「新しい話が書けたら報告します」とお約束してましたので、お知らせします。
 独り言にお付き合いいただける方は、追記からお願いします。






 『2066.10 パンデミック・パニック』 12章。 55P。

 意識的に妄想した話って、多分、これが初めてです。
 ここ何年か、わたしにとって薪さんの妄想は日常になっていて、仕事をしていても掃除をしていても料理をしていても、休日に公園に出かけても映画に行っても動物園に行っても、すべてこれが薪さんだったら、と誰に強制されることもなく、自然に空想しておりました。 わたしの話はその空想を文章にしただけなので、ネタにつまるとか続きが書けない、という経験はしたことがありませんでした。

 妄想は、あくまでも自然現象でした。
 それを今回初めて、意識的に妄想してみました。
 
 あおまきさんの妄想自体、3ヶ月ぶりだったせいか、最初はとっても話の運びが鈍くて~。 
 連中、マトモに動かないわ進まないわ、わたしの言うことは聞かないわ。(あ、これは以前からそうでした)  仕方ないのでムリクリ動かして、結果、かなり残念な仕上がりになってしまった気もするのですけど、今はこれが限界みたいです。 
 それを差し引いてもこの話、だいぶ無理がある話になってるので、公開の際にはどうか広いお心で、1年くらい休職してて昨日職場に復帰したばかりで浦島太郎状態の同僚を導くくらいのお気持ちで、とにかく、見逃してくださいねっ。 

 以上、ご報告でした。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

Aさま、こんにちは。
先日はお会いできて、嬉しかったです。
お会いする前は、いつも励ましていただいてるお礼をきちんと申し上げようと思っていたのですけど、いざ場に行ったら舞い上がってしまって、失念してしまいました。 ごめんなさい。(^^;


そう、プライベートのこともお知らせいただいていたのに、お話しできる機会を持てなかったことが悔やまれます。 
あと、Aさんとはすずまき語りをしたかった。 (Aさん、すずまきさんお好きでしたよね。(^^)
次の機会がありましたら、必ず!


先生のインタビューの記事とか、たくさん見せていただいてありがとうございました! (あ、このお礼もあの場では不十分だった気が・・・・・・・) 
お荷物だったでしょうに、でも、すごく興味深いものを見せていただきました。 
特に、「長編になると短編より完成度が下がる自覚がある」「キャラで推していく話もアリだと気付かされた」と言うインタビューの内容には、深く納得させられるところがありました。 だからこんなに矛盾だらけなんだー、って、いえあのその・・・・・・。


とにかく、ありがとうございました!
おかげさまで、とても有意義なオフ会になりました!
オフ会前にいただいたコメントのお返事が、お礼になってしまったこと、お許しください。

Mさまへ

Mさま、こんにちは~。


> 薪さん、まさかこんなんで別れ話をしたつもりですか??(◎-◎;)

はいー、別れ話になってないです。
言おうと思って言えなかったんですね~。


> ありえないっ

そ、それは残念・・・・
9月って言ったら、もう2ヶ月も前じゃないですか。
本当に、人間として最低限の休暇も取れないのですね。(><) こうして聞くと、改めて大変な職業なんだと思い知らされます。


グーチョキパン店のおそのさん。
きゃー、あれ、カッコいい役じゃありませんか~。 光栄です。(//∇//)

ご想像を裏切って申し訳ないのですけど、現実のしづはですね、
ちょっと鈍くさい田舎のおばさんです。(^^;


> 青木君、がんばれ~っ!
> 薪さんの自滅への独走に敗けるな~っ
> (てか、青木君的には『また、薪さん勝手に別れた気になってるよ。何回目だ?』では?)

応援、ありがとうございます!
そうですね、青木くん、ここが踏ん張りどころですね!

青木さんには、どんな状況にあっても薪さんを愛し続けて欲しい、と言う原作への願いを込めて書きました。
決してS心を満たすために書いているわけではないと、(わざわざ言い訳するところがアヤシイ)
そんな疑り深い眼で見ちゃいやん☆

Yさまへ

Yさま、こんにちは!

オフ会、ご参加いただきありがとうございました!
はい、わたしもお会いできてうれしかったです!


> タイムリミット、しづさんがハッピーエンドといわれているので、この展開でも安心して読み進められています(←大人になりました(笑))

ありがとうございます。
大人になった、というか、Sに慣らされたというか。(^^;
はい、ハピエン至上主義のわたしが書いてるんですから、どうかご安心ください!
ちゃんとあおまき的ハピエンに持っていきますので♪♪♪

戦ってみる。

こんにちは。えぐえぐです。
すみません。お邪魔致します。

ーーーいっいけないわっっ
しづさまの大事な甥御さんと姪御さんに、こんなに凶悪な感情を抱いたりしちゃいけないわっっ。
膝カックンしちゃお、とか思ったりしちゃいけないわっっ。

でも。でもでも・・・そうだ、学校の先生に言いつけよっと。


・・・・・・・・・・・・何をどう、言いつけるというのだ・・・・・・・・・。

えぐえぐさんへ

えぐえぐさん、こんにちは。

そうなんですよ、うちの甥っ子も姪っ子も、すっかり生意気になってしまいまして。 昔は可愛かったんですけどねえ。 特に甥っ子は、色が白くて眼がパッチリとして睫毛も長く、マジで女の子にしか見えない幼少期を過ごしていたのですけど。(リボンつけたりスカート穿かせたり、楽しかった)
歳月って残酷ですわね。 今じゃ170センチオーバーのゲームオタクになってしまいました。 どんな美少年に育つことかと期待していたのに・・・・・。


学校の先生に?
あははは、言われた方も困るだろうなwww。
ではまずは先生に、薪さんの魅力を説くことから始めないと! 先生が薪さんに魅了されたらこっちのもの、わたしの遊び方が正しいって、きっと分かってくださるわ!!

元日からこんなアホなレス返してすみません。(^^;
今年もよろしくお願いします。m(_ _)m
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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おかげさまで8歳になりました(^^♪
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