タイムリミット(18)

 しばらくの間、ご挨拶もできずにすみませんでした~。

 実は、オットが尿管結石を患いまして。
 22日に左の背中が痛くなって、近くの内科に掛かったんですけど、理由が分からず胃腸の薬と痛み止めを貰って様子見。 翌日は祝日で、病院がお休みだったので、24日の木曜日に大きな病院へ行ってCT撮って病名が判明しました。
 内臓の病気じゃないから心配要らないよ~、膀胱のすぐ傍まで下りてるから今日か明日には治るよ~、とお医者さんに言われて、薬と痛み止めを貰って帰宅。
 でも、金曜の夜になっても痛みは止まらず……痛み止めも3時間くらいしか効かなくて、残りの18時間は「痛い」と「すごく痛い」が周期的に繰り返されるそうで、夜も熊のように寝室をウロウロと歩き回っておりました。(痛くて眠れないのと、横になっているより立っていた方が痛みが和らぐらしい)
 土曜の夜には痛みがMAXになってしまって、救急病院へ連れて行きました。 田舎に住んでるもんで、車で50分くらいかかるのですけど、四の五言ってられない状態で~~、
 これ、本当にただの結石なの? もう5日だよ、長すぎない? 他の病気なんじゃないの?
 とか考えてしまって、けっこう焦りました~。 休日だから専門医がいないし~~、祝日、土、日に病気になるのは困りますね。

 結局、石は日曜日の夕方に飛んだらしいのですが、おかげで月曜日は仕事がパンク状態!!! そりゃそうだよ、この時期に5日もサボっちゃったんだもんっ!

 うがーっっ!! と心の中で叫びながら仕事を片付けていたのですが、友人に言われて気付きました。 
 もしもお勤めに出ていたら、日中、何度も病院に連れて行ったり、オットの世話を焼いてあげることもできなかったのだろうなって。 今の社会では、それは贅沢とも言えることなんだなって。
 大事なひとが苦しいときに傍にいてあげられる自由があるのは、幸せなことなんですね。

 そういう気持ちで溜まった書類を見れば。
 やっぱり「うがーーーっっ!!」ってなる★ ←ダメ人間。



 さーてっと。
 お話の方は、残り1章ですね。 次のエピローグでおしまいです。
 まきまきさん、サクサク終わっちゃってすみません~。 お詫びに、次は『言えない理由 sideB』を公開しますので。(^^) (←イタイすずまき話。 死者に鞭打つとか言われそうだ)
 
 
 





タイムリミット(18)




 夕食の話題は、一通の葉書だった。
『男の子が生まれました』とホップな文字で飾られた写真付の吉報に、薪はその夜、とても機嫌が良かった。

「賢そうな子ですね」
「美和子さんの子だからな。我が儘に育つんだろうな」
「祐二さんに似れば、やさしい子になると思いますけど」
 にっこりと笑った仲の良さそうな夫婦の間に、白い産着に包まれて母親の腕に抱かれる赤子の姿がある。丸々と太った赤子の後ろには、命名『祐輝』と書かれた掛け軸。

 子供の名前は、実は薪がつけた。
 生まれてくる子供に薪の名前を付けたいという夫婦の申し出を、薪は固辞した。それは彼らの感謝の証であったけれど、薪は美和子と婚約していた事実がある。期間は3ヶ月足らずだったし、世間的に見て薪はただのアテ馬だったわけだが、それでも誤解を受ける恐れがあるからと丁寧に断ったのだ。
 薪に相談されて、青木も一緒に子供の名前を考えた。青木がいなかったら、この子は古典的な名前になっていたかもしれない。
 というのも、子供の名前を考えるのは存外大変な作業で。名前の響きだけでなく、漢字の意味やら画数やら果ては運勢まで、考えすぎて煮詰まってしまい、「もう太郎でいいだろ」と言い出した薪のテンションを何とか上げて、この名前に落ち着かせたのだ。

 美和子の結婚式から4ヶ月が過ぎて、季節は晩秋を迎えていた。
 来月、1年の終わりの月に、薪は43歳の誕生日を迎える。その美貌は相変わらずで、年齢を聞くと我が目を疑いたくなる。ひいき目に見ても20代前半、下手をしたら高校生だ。このひとの成長ホルモンは、一体どうなっているのだろう。
 肌理細やかな肌。薔薇色のくちびる。長い睫毛と大きな瞳。この顔で43というのは、ある意味犯罪だ、と青木は思う。
 見れば見るほど惹きつけられて、魅せられて。年月と共に色褪せるどころか益々あでやかに、咲き誇る花のような魅惑を発するようになってきた。静謐な白百合を思わせる佇まいは変わらずとも、時おり見せる真っ赤な薔薇のような妖艶さ。誘惑に満ちた色濃いフェロモンを、今もその身体に漂わせていることを、本人は気付いているのかいないのか。

 さりげなく外された胸のボタンに、前髪をかきあげる細い肘の角度に、知らず知らず煽られて。下くちびるをぺろりと舐めた小さな舌の赤さとその動きに、我慢ができなくなった。
 青木の向かいで葉書を持っていた薪の手を、そっと握る。
 若い恋人の欲情のタイミングを計りかねている薪が、訝しそうに青木を見た。
「今夜、いいですか?」
「今日は約束の日じゃないだろ」
「お願いします。1度だけでいいですから」
「嫌だ、面倒くさい。セックスなんて、1年に1回もすれば充分だろ」
 ……間隔が延びてる。そのうちオリンピックみたいに、4年にいっぺんとか言い出すんじゃないだろうか。

 生まれつきこちらの方面には興味が薄い薪は、大昔のおかま帽を被った探偵が出てくるDVDを見たり、ネットで次のデートプランを練ったり、夜はそんな風にして過ごすのが好きなのだ。薪に合わせられるのは、70歳くらいの煩悩から解き放たれた世代の人間だろう。青木がそこに到達するまでには、あと40年くらい掛かりそうだ。
 仕方ない。いつもの手でいくか。

「じゃ、キスだけ」
 薪はキスが大好きで、どんなに機嫌が悪いときでもこれだけは許してくれる。
 仕方ないな、という表情でこちらを向き、光線の関係で青みがかったようにも見える目蓋を閉じてくれる。
 頬に手を添えて上向かせ、艶めいた花びらのようなくちびるにくちづける。自然に開く花弁を押し分けて中の実を舌先で剥き、その甘さに酔いしれる。
 のけぞった顎下から首筋にかけて舌先を滑らせ、可愛らしい耳を甘噛みする。ぴくん、と薪の両肩が上がって、困惑したように眉根が寄せられた。

「あ、青木。キスだけって」
「キスですよ? 誰もくちびる限定なんて言ってないでしょ」
「それはサギじゃ、んんっ」
 詐欺じゃない。
 だって、薪も青木の行動を予想しているはずだから。
 本当にしたくないときは、薪はくちびるを開いてくれない。青木の舌に応えてくれたら、それはOKのサインなのだ。
 誘っても拝み倒しても、素直に頷いてくれない恋人をベッドに連れ込もうと思ったら、こんな回りくどい手を使うしかない。なんて面倒くさい、と他人は思うだろうが、本人たちにしてみれば、これはこれで楽しい。

「おまえってば、ズル……あ、あんっ」
 早くも乱れ始める薪の様子に、青木は自分の行動が正解だったことを知り、密かに安堵する。薪も今日は、その気でいてくれたらしい。このひとは本当に勝手なひとで、これを読み取ってやらないと、あとで機嫌を悪くするのだ。
「ベッドに」
「いつかみたいに、ここでしたいんですけど」
 狭い椅子の上での不自由な愛撫に焦れて、薪が場所の変更を求めてくる。常ならばそれに応じるが、今日はぜひ、以前の感度を取り戻した薪をキッチンで味わいたい。青木は何週間か前から、この機会を狙っていたのだ。
「ね、いいでしょう?」
「イヤだ! 放せ、このヘンタイ!!」
 ドカッと腹に蹴りが入った。後頭部を殴られて、目から火花が出た。
 青木は不承不承、薪を抱えて寝室に移動する。させてもらえないよりはマシだ。

 せめて灯りは点けたままで、ベッドの上で白い肌を味わう。薄く脂肪ののった腰周りや太ももは滑らかで柔らかく、手のひらで擦ると微かな震えが伝わってくる。
 薪の身体は、元の麗しさを取り戻しつつある。まだ完全ではないけれど、ヒップも丸みを帯びてきたし、あばら骨も目立たなくなってきた。
 以前のような手触りを楽しむには、あと3キロくらいかな、などと計算しながら恋人の腰を撫でていると、横向きに寝そべって青木の背中に片腕を回していた薪が、上目遣いのコケティッシュな表情で剣呑な言葉を吐いた。
「おまえ、この頃やたらと僕のケツに触ってくるけど。チカンの練習でもしてるのか」
 恋人を使って痴漢の練習って、何の意味があるんだろう。
「薪さんのお尻ってかわいいから。つい触りたくなるんです」
 青木がそう言うと、薪は思いっきりイヤそうな顔をした。
「ヘンタイ」
 ベッドの中で恋人の身体に触って、変態呼ばわりされるなんて。相変わらず理不尽だ。
 
 そう思っても口に出しては言えないから、青木は行動で不満をぶつける。薪の腰を持ち上げて割れ目に顔を埋め、肉の感触を頬で確かめる。
「止めろ。普通はしないんだぞ、こんなこと」
「オレ、ヘンタイですから」
「あ、や、いやだ。中はダメっ……!」
 指先と舌で薪の秘密をつつけば、たちまち追い詰められた薪が切ない声で啼き始める。足を開かせて裏返し、膝を立てさせて彼のすべてを露呈させれば、もう嫌だとは言わず青木の舌に悶えて腰を捩るばかり。
「キス以外のことも、してもいいですか?」
 耳元で囁くと、今度は素直に頷いて、それは薪が青木を欲しがってくれている状況証拠。押し当てるだけでほどけていく秘部の潤いは、確かな物的証拠だ。

 薪の上半身を後ろから抱きしめて、覆いかぶさるようにひとつになる。急に攻めてはつらいかと恋人の身体を気遣えば、誘い込むような薪の動きが青木を先導する。請われるままに、引き出し押し込み。きゅんきゅんと締め付けて腰を使う薪の中を、右へ左へ掻き回すように打ち込む。
「ひゃんんっ! い、いあああ!!!」
「……鼓膜が破れそうです」
 快楽の虜になった薪の、びっくりするような声。この声を聞くと、薪が本当に感じてくれているのが分かって、前後のことも考えずに夢中で攻め立ててしまう。
「も、ダメ! もうっ!!」
「ちょっ、待ってください。オレ、まだ……!」
「あっ、あっ、あ―――ッ!!」
 しまった、激しくしすぎた。薪はあんまり長持ちしないから、快感を長引かせる工夫が必要なのに。

 くにゃりと薪の身体がベッドに沈んで、顔が枕に埋まった。
 青木を受け入れたままの状態で、薪は間もなく寝息を立て始める。その間、なんと30秒。墜落睡眠も神業の域だ。
「すいません。コレ、どうしてくれるんですか?」
「くか――――」
「ムゴイ……」

 薪はカンペキに元に戻ってしまった。
 我儘も自己中も、皮肉も嫌味も意地悪も。自分勝手なセックスまで、すっかり元通りだ。

 薪本人は何も変わらないのだが、青木には嬉しい変化があった。しばらく前から、青木は自分の自由意思で、薪の家に泊まっても良いことになったのだ。
 美和子との破談が決定的になった、あの日。
「離れたくないです」と普段は言わない我儘をこぼした青木に、薪は説教を始めた。
「泊まりたけりゃ、泊まればいいだろ」
「だって薪さん。前に、そんな半同棲みたいなだらしない真似はダメだって」
「おまえがいつまでもそんなだから、小池に『室長っ子』なんてからかわれるんだ」
 おそらくそれは、自分たちの関係に勘付いている彼の、軽い嫉妬を含めた皮肉だったのだろう。恥ずかしがり屋の薪には、とても教えられないが。
「おまえ、もう30だろ。自分の行動は自分の責任において決めろ。おまえが決めたことについて、僕は何も言わない」
 ベッドの中でそれだけ言うと、薪はいつものように寝入ってしまった。眠る薪を抱きしめたまま、その日青木はとても幸せな朝を迎えたのだ。

 温かい蒸しタオルで薪の身体を清めながら、青木は頬が緩むのを抑えられない。
 自分から誘って奉仕をしてくれた薪よりも、今の薪の方がずっといい。やっぱり薪はこうでないと。
 5年という月日の間に、青木の奴隷根性も骨の髄まで沁みたようで、そんな考えが一般的でないことなど、気にもならない。
 
 チェストからパジャマを出し、海月のようにふにゃふにゃした恋人に着せてやり、布団に包んで床に寝せる。シーツを新しいものに取り替えて、再びベッドに横たえ、首まで包むように布団を掛けてやる。
 明日の朝、薪が爽快な目覚めを迎えられるように。清潔な寝床は夜のうちに設えておく。薪が起きる前には風呂を沸かし、コーヒーの準備をして。ベッドで一緒にコーヒーを飲んでから、薪を風呂に入れて身体を洗ってやって。
 ドレイの仕事は山程あって、薪といる限り青木にはゆっくり休む暇もないのだが、その奉仕のひとつひとつがこの上なく楽しみだ。
 
 つんと澄ました恋人の清廉な寝顔にしばし見惚れ、軽くくちびるにキスを落とすと、青木は薪の雫を含んだシーツを持って寝室を出た。




テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

Aさま、こんにちは。


お見舞いのお言葉、ありがとうございます。 大変な思いをしたのはオットなんですけどね。
背中の筋肉痛は痛いんですよね。
わたしもキーボードの打ち過ぎで背中が痛くなったことがあります。 椅子から立ち上がれないほど痛くて~、これが筋肉痛?! とお医者さんを疑っちゃいました☆


>薪さんてしたがらないけど感じやすいですよね!
>でも、年のせいで益々、もたなくなった!?

薪さんは照れ屋なので、そんな気分のときでも口には出さないのです。 でも、そういう時はフェロモン出まくりで(笑) 青木さんはそれを敏感に察知して誘いを掛けると。
最初の頃はそれを察知できなくて、その度に薪さんがご機嫌を損ねていたのですけど、5年経ってやっと以心伝心できるようになりました。(^^


>もう、小野田さんに気にせず、同棲してもいいと思うのですが・・・

おお、Aさん、鋭い!
エピローグは正にそれです。


>次回は鈴薪(>▽<)一瞬、喜びましたがイタイって・・死者に鞭打つ(@@)!?

Aさん、すずまき話お好きでしたね。
『言えない理由 sideB』は、『言えない理由 sideA』の裏面の話になってまして、要は、「薪さんが鈴木さんにフラれる話」の鈴木さんバージョンなんです。 だから当然、痛さMAXでございます。
『タイムリミット』もヒドイ話でしたから、激痛話が続くな~、死者に鞭打つとはこのこと? みたいな。(^^;

緩衝材に、間に何か笑える話を入れますね。
その後で公開しますので、よろしくお願いします。(^^
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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