シングルズ(1)

 今週は忙しかったです~~。
 眼精疲労による肩凝りで、吐き気がするくらい。(@@) 
 
 きっとみなさんも、師走だからお忙しいのでしょうね。
 そんな中、今日もこのヘタレブログにお出でくださいまして、誠にありがとうございます。


 気が付いたら、来週はもうクリスマスですよ!
 と言っても、例年通り、うちの会社は仕事なんですけどね。(^^;
 気分だけでも味わおうと思って、25日までの期間限定ですが、テンプレをクリスマス仕様に変えてみました。

 お話の方も、クリスマス特別企画でございます。 
 なんつって、今年書いたんじゃないんですけど。

 実は昨年、クリスマスに合わせて公開しようと書いた話がまんまと間に合わなくて、そのままになっていたんですね。 ちょうど軽いお話でもあることだし、すずまき話の前にこちらを公開します。
 よかった、思い出して。 また1年、寝かすところだった。(笑)


 クリスマスのお題で書いたもので、ストーリーはありません。
 よって、カテゴリは雑文 (=ぐだぐだ) です。

 大した話ではないのでね、お暇な方だけ覗いて行ってください。(^^



 

シングルズ(1)





 きれいに片付けられた自分のデスクの上に一片の仕事も残っていないことを確認し、今井は席を立った。引き出しの施錠を点検し、モニタールームの同僚たちに声をかける。

「すいません、お先に」
「ちょっと待ってくださいよ、今井さん。まだ報告書のまとめが残ってますよ。このヤマ、俺と今井さんの担当でしょう」
「いや、悪いけど今日は」
 自分を引き止めた仕事熱心な糸目の同僚に、今井はこっそりと鞄の蓋を開けて、中に入っているリボンのついた箱を見せる。長さ20センチほどの長方形のその箱は、光沢のあるピンク色の包装紙に包まれており、結ばれた赤いリボンの尻尾は『Xmas』という文字が型押しされた金色のハート型のシールで止められていた。

「……彼女へですか?」
「まあな。わかるだろ? 今日、約束の時間に遅れたりしたらどうなるか」
「ええ、そりゃあもう」
 今井がコソコソしている理由が解ったらしく、小池は声を潜めて頷いた。二人してちらりと奥のドアを見やり、彼らは微笑とも苦笑ともつかぬ形に唇を歪める。
 
 ふたりが勤務する法医第九研究室は研究所の中で最も仕事に対してストイックな部署として、その名を科警研内だけでなく、隣接する警察庁及び警視庁にまで知らしめている。と言うのも、この研究室に君臨する室長はとても厳格な人物で、仕事の鬼どころか魔王とまで噂されるほど職務には厳しいからだ。
 『報告書を上げるまでが捜査』が持論の室長に、手付かずの書類を残して退室しようとしていることを知られたら、間違いなく今井の今日の予定は握りつぶされる。

 今井は仲の良い同僚の顔を見て、「悪いな」と笑いかけた。ニコッと笑いを返してくれる、小池の細い目に確かな友情を感じる。
 男の友情というのは、本当にいいものだ。何故引き止めなかったと、後で自分が鬼上司に叱られるかもしれないのに、こうして今井の私事を優先してくれようとしている。
 篤い友情に感激する今井の前で、小池はおもむろに立ち上がり、両手を自分の口の横に置くと、
「大変です、室長! 今井さんが仕事よりプライベイトを優先しようとしていますっ!!」
 ……信じた俺がバカだった! 男の友情なんか幻想だよ!!

「なに叫んでくれてんだ、裏切り者!」
「裏切り者はどっちですか!! 第九に彼女持ちなんて、あっちゃいけないことなんですよっ!!」
「自分がクリスマス直前に彼女に振られたからって、俺まで巻き込むなよ!」
「ちょっと今井さん」
 言い過ぎた、と思った瞬間、謝るより前に曽我が口を挟んできた。曽我は小池の親友だ。親友の生傷に無遠慮に踏み込んだ今井を許せなかったのだろう。非難される立場でありながら、彼らの間に確かな友情を感じて、今井は頬を緩ませた。
 
 曽我は同情心いっぱいの顔で、
「小池はまだ失恋の傷が癒えてないんですよ。それなのに、そんなにハッキリ『振られた』とか言ったら、小池が可哀相ですよ。そりゃー、クリスマスの3日前になって彼女に振られる小池の方がしょっぱすぎるってことは解ってますけど、それでも振られたことは事実なんですから、そこはそっとしといてやるべきだと。まあ、彼女の方も、クリスマスのデートも危ない小池より、公務員の彼のほうへ流れるのは当たり前かも知れませんけど……あ、知ってます? 今井さん。小池の元カノの新しい彼氏って、市役所に勤めてて、顔も小池よりカッコよくて」
「曽我、その辺でカンベンしてやれよ。小池、泣いちゃったぞ」
 慰めるつもりが逆に傷に塩を塗ってしまっている。曽我のKYは何とかしないと、そのうち刺されるかもしれない。

「ふっ。俺を出し抜いて彼女作ったりするからですよ。当然の報いです」
 わざとかよ!? なんて醜いんだ、男の友情!!
「曽我、おまえなんか彼女を作ることもできないから、振られるまで行き着かないくせに! だったら俺のほうがマシだ!」
「ああっ、言ってはならないことを! この糸目!」
「何を! このメタボ体型が!」
 みにくい。醜過ぎる。

「おまえら、いい加減にしろよ? 身体的特徴を攻撃対象にするなんて、小学生以下だぞ」
 地の底から響くような凄みのある低い声が聞こえて、二人はパッとお互いの口を手で塞ぎ合う。何をやっても息の合う二人だ。
「室長に聞かれたら、全員ここに泊まりになるぞ」
 副室長の岡部が、ボキボキと指の骨を鳴らしながらこちらを見ている。細い眉を吊り上げた三白眼にぎろりと睨まれて、思わず身を寄せ合う小池と曽我のコンビが、震えながらコクコクと頷いた。

「まあ、俺はそれでもいいですけどね」
 カタカタとキィを叩きながら、眼鏡の奥の眼はモニターに据えたまま、第九随一のシステムエンジニアはシニカルに言い放つ。
「俺の恋人はコイツですから」
 コンピューターオタクの宇野は、MRIシステムをこよなく愛している。犯罪捜査よりもプログラム開発が好きな宇野は、心の底ではシステム開発室へ行きたがっているのではないかと思うのだが、現場にも一人システムメンテナンスのプロを置いておきたい室長の意向を汲んで第九に留まっているものと、今井は見ている。

「俺たち、宇野に比べればまだマシかもな」
「そうだな。少なくとも、現実の女の子と話をして楽しいと思えるもんな。画面の美女じゃなくて」
「ちょっと待て、人をアキバのオタクと一緒にするな」
 こそっと呟いた小池と曽我の会話を耳ざとく聞きつけて、宇野はモニターから目を離した。執務椅子をくるりと回して、椅子ごとこちらに向き直る。

「俺はな、その辺の女じゃ満足できないんだよ。室長が女装したときくらいの美女じゃないと、食指が動かないの」
「はあ!? どんだけメンクイだよ」
「鏡見たことあるのか、おまえ」
「仕方ないだろ? 毎日あの顔見てんだから。あのクラスじゃないと、ときめかないんだよ」
「あ、それ分かります。オレも、薪さん以外のひとには何にも感じなくなって、痛い!」
 会話に入ってきた瞬間にいらんことを言って岡部にどつかれたのは、第九最年少の青木だ。突かれた衝撃で持っていたコピーの束を床にばら撒いてしまい、慌てて拾い集めている。

 コピー紙を拾うのを手伝ってやろうと床に屈んだ今井の前に、ふと人影が差した。
 ダークグレイの細身のスラックスに包まれた二本の足。磨き上げられたカルツォレリア・トスカーナの黒い革靴。このブランドが気に入りの上司が、自分の部下たちの中で唯一、鞄を持ってコートを着込んで帰り支度を整えている自分に向けているであろう氷の視線を予想して、今井は固まる。

「すみません、今日は帰らせてください!」
 謝るが勝ちだ。幸い、土下座に近い格好をしていることだし、誠意も伝わり易いかも。
「お願いします、室長。今日だけは見逃してください。西葛西の報告書は、明日の午前中に必ず提出しますから」
 必死になって頭を下げる今井の傍に、室長はひょいと屈んだ。みんなと一緒になって床に落ちているコピー紙に手を伸ばしながら、穏やかな口調で、
「構わんぞ。西葛西の事件は急ぎの案件ではないし。みんなも、キリの良いところで帰っていい」
「「「えええ! そんな!!」」」

 嬉しそうな今井の笑顔のその向こうに、いくつかの悲壮な声音が重なり、薪は目を丸くする。クリスマスイブに定時で帰っていいと部下に申し渡して、ブーイングを食らうとは思わなかったのだろう。
「帰りたくないのか? おまえらにだって、イブの予定くらいあるだろう」






テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Mさまへ

Mさま、こんにちは。

更新を喜んでもらえるの、幸せです。 仕事の不平ばっかり言ってないで、がんばろう、しづ。


そしてMさまの悲しいクリスマス事情。(;;
そうなんですか、強化期間に当たってしまうのですね。 その理由がまた、なるほど! 本当に美しいな、日本人!!


しかし、コメの中のMさまの呪詛が、
すみません、ものすごく次の章にマッチしてて・・・・・ごめんなさい、爆笑してしまいました。
Mさまが、第九のさびしんぼ三人組と同じになってる~~~。(笑・笑)


イブの夜にケンカですか?
いかにもやりそうですねえ、うちの二人なら。
残念ながら(?)この話ではケンカはしません。 それなら甘いのかというと、甘くもないんですよね。 要はグダグダということで・・・・・・あんまり意味のない話で、ホントすみません。
厳密にいうとクリスマスの話でもなくて、実は薪さんの誕生日がメインだったりして。 合っているのは日にちだけと言う、なんとも残念なクリスマス企画に。(@@)
・・・・・・やっちまったな、しづ。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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