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告(1)

 青木くん、告ります。
 応援よろしくお願いします。





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 第九の仕事にも波はある。
 MRI捜査が必要な凶悪犯罪が立て続けに起こったときなどは、睡眠時間を削ってモニターを見続けるので、みな一様に目が血走って修羅場のような状態になる。冷たいおしぼりと目薬、それとアン○ルツはこの研究室では必需品だ。
 画像を停止したり拡大したりの作業はすべてマウスで行われるため、右の肩はガチガチに固くなる。長い時間MRIの操作をしていると首の後ろがちりちりしてきて、まるで車酔いでもしたかのような感覚になる。第九の職員のほとんどが、慢性の肩こりに悩まされている。
 一転、普通の事件しか起きず、捜一の活動だけで順調に犯人が検挙されていくときもある。
 そんなときは以前の事件の報告書を整理したり、システムのテストをしたりして、わりと普通の会社のようなルーティンワークになる。定刻に帰れるし、溜まった有給休暇を消費したりして人並みの生活ができるのだ。
 ただ、それはたいてい長く続かない。短い休暇というやつだ。

「はい。はい。じゃ、6時に」
 あの囮捜査の一件以来、急に第九に協力的になった竹内警視の計らいで、MRI捜査を必要とする適正な事件以外の雑用はあまり第九に来ないようになった。

 昨年の夏に起こった不幸な事件のせいで第九の立場は非常に悪いものとなり、これまでは他の部署から様々な雑用を押し付けられることが多々あった。普通の事件の資料作成や押収品の突合せ作業など、本来の仕事以外のことも手伝わされたりしていたのだ。
 その度に薪が食ってかかっていたのだが、相手が竹内あたりならともかく、所長の田城がそれを引き受けてしまうと立場上断るわけにもいかない。田城としては第九と警視庁の関係を少しでも改善しようとしてのことなのだろうが、薪の考え方とは正反対だ。
 第九の失地回復は実績で勝負する。薪はそう心に決めている。
 しかし、実際に預かってきてしまった仕事を返すこともできない。今度は所長の立場がまずくなるからだ。
 結局、引き受ける羽目になる。
 ぎりぎりと歯噛みをしながら、室長自ら雑務を片付けているのを、第九の職員たちは何度も見ている。
 手伝います、と声を掛けても「これはおまえたちの仕事じゃない」と言って抱え込んでしまう。そんなときは腹心の部下、岡部の出番だ。半ば奪うようにして、薪の手から資料を捥ぎ取ってくる。
 エリート集団の第九のこと、普通のPCで作れる資料など、取り掛かれば他の部署の半分の時間で作り上げる。もともと難しい仕事ではないのだ。
 しかし、そんな部下たちを見て、薪は少しだけしょげた顔になる。自分の不甲斐なさのせいで部下に余計な仕事をさせている―――― そんな風に思ってしまうらしい。そういう室長の自責の強さを、職員たちはみな心配している。

「いえ、そちらまでお迎えにあがります。よろしくお願いします」
 いまの第九は短い休暇中だ。
 急ぎの案件もなく、こうしてアフターの約束もできる。
 青木は携帯電話を切り、報告書の束をデスクの上できちんと揃えた。昼休みの時間を利用して今日の提出分の作業を進め、定時退室を確実なものにする作戦だ。
 他の職員たちものんびりしている。システムの自動バックアップの具合を見ながら、今日はどこかへ飲みに行こうか、などと話している。
 
「青木、おまえもいくか?」
「すいません。オレ、先約あるんで」
「女か?」
「ええ、まあ一応。でも、そういうんじゃ」
「三好先生か?」
 相手の名前を出されて、根が正直な青木はびっくりしてしまう。この先輩たちはいつの間にかいろいろな情報を仕入れていて、青木の行動はすべてお見通しのようだ。
 
「はあ。……あの、薪さんには内緒にしてください」
「なんで。内緒にしなきゃならないようなこと、するつもりなのか?」
「まあ、ことと次第によっては」
「おまえの趣味も変わってるよな」
「いや、ですからそんなんじゃ」
 誤解を受けているようだが、本当のことを話すわけにもいかない。曖昧に言葉を濁してその場を離れる。
 雪子に会う目的は、彼女自身にあるわけではない。それは彼女もよく分かっている。青木に下心があるようなら、彼女は誘いになどのってはこない。

 雪子は、青木の気持ちを知るたった一人の人物だった。
 まだ誰も知らない、秘められた想い。

 その人の姿を目で追うようになって、どのくらいたった頃だろう。雪子は女らしい鋭さで、青木の恋情を見抜いた。
『薪くんのことが好きなんでしょう』
 ずばりと言い当てられて狼狽えたものの、雪子は誰にもそれを喋らなかった。
 女とは思えない口の固さである。そればかりか薪の大学時代からの友人でありライバルでもある彼女は、青木にさまざまな助言をしてくれたのだ。

 最近起きた事件のせいで、青木は薪に自分の気持ちを知ってもらいたいと強く思うようになった。それは青木の脳裏に焼きついて離れない、一枚の写真に起因するものだ。
 あの写真を見つけたとき、薪の意中のひととはかつての親友ではないかと直感した青木だったが、その予想は的中した。先月のおとり捜査の際、ドラックで正気を失った薪がとった行動がそれを証明した。

 薪は、未だに死んだ鈴木のことを想っている。
 だが、死んだ人間相手にどれだけ愛を語ろうと、それは無駄というものだ。鈴木を忘れろとまでは言わないが、薪には現実に生きている人間に目を向けて欲しい。現実にも薪を愛しく思っている人間が存在していることを知ってほしい。
 薪に自分の気持ちを伝えたい。今日はそのための作戦会議なのだ。協力してくれる友人のために、食事くらい奢るのは当たり前だ。

 好きだ、と言ったら、あのひとはどんな顔をするだろう。

 困った顔をするか、からかうなと怒るか、本気だと分かってもらうにはどうしたらいいのか。
 告白のシチュエーションをいくつも思い描いて、青木は自然に微笑んでいた。


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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早!!

こんばんは
早!!青木、もう告るんですか!!??って、更新ペースが大変速いだけで、お話はたくさん書かれてるんですよね(^_^;)
もっと胸焦がし、煩悶し、悶え苦しむ青木が見ていたかったですが・・・(悪魔)
こちらの最”恐”天然薪さんがどう反応するのか、楽しみです!

NoTitle

拝読致しました。

全部読ませていただきました。

ああ・・終わった・・・
(でもきっと、自分のブログでメロディレビューとかにかまけている間に、こちらではまた更新が進んで、すごいことになっているのでしょうね^^;)

青木、遂に告白ですか・・

薪さん、嬉しいだろうなあ・・
でも、薪さんのことだから、素直には受け入れられないだろうなあ・・

真っ直ぐな青木の将来を思って、同性の自分なんかと・・と、冷たくしたり。
鈴木さんと同じパターンになること=鈴木さんと同じように青木を失うこと、を恐れたり。
自分は、青木の想いを受け入れる資格なんか無い・・と思ってしまったり。
何より、自分の方が青木を求める気持ちに、自分でとまどってしまったり・・。

なんて、二人にうまくいってほしいのに、浮かぶのは障害ばかり・・何故・・(TT)
(すみません。勝手に続きを色々と妄想してしまいまして・・軽く流して下さいませm(_ _)m)

でもいつかは、うまくいくんですよね、ね!

その日を願い、待ち望み・・今後も楽しみにしております。

3時半からお読み下さったしづさま、私は2時過ぎまで読んでおりましたよ・・フフ♪

楽しませていただきました(各所で心臓が痛くもなりましたが)。
ありがとうございました。

告るんですね?

へへへ、楽しみです。
しづさんワールドの薪さんは、どうするのかなあ。
原作薪さんよりスパッとしていそうなので、面白い展開になりそうでワクワクです。

このお話からは、まとめ更新なさらないのかな…。
ああ、待つ身はツライです。

青木頑張れっ\(^ー^)/

おはようございます。しづ様♪

遂に、青木告白ですね(≧∇≦)

頑張れっ!
応援しているよ\(^ー^)/

そろそろ、青木、我慢の限界ではないでしょうか(笑)

きゃ~♪
夢の世界だけでなく、早く薪さんと○○や○○○をやっちゃえ!!!←お好きな言葉をお入れ下さい♪

やっちゃえば女なんて・・・が持論(?)の薪さんは、きっとやっちゃえば、身も心も蕩けて、青木のものになってしまうのでは?

・・・下品な暴言を吐いてすみませんm(_ _)m

しづ様の薪さん、青木に惹かれつつあるみたいですので・・・雪崩れ込んだら早いのでは?といけない妄想を抱いてしまいます(≧∇≦)

でも・・・しづ様ったら、青木の事を楽しく苛めていらっしゃるようにお見受けしますから・・・成就するまでには、暫くいたぶられそうですね(≧∇≦)

・・・それは、とても楽しそうな光景ですね(^▽^)v←青木ごめんね♪

続き、楽しみにお待ちしております\(^▽^)/

Re: 早!!

こんばんは、わんすけさん。
こりずに来てくださって、うれしいです。

> 早!!青木、もう告るんですか!!??

はい。告ります。

> もっと胸焦がし、煩悶し、悶え苦しむ青木が見ていたかったですが・・・(悪魔)

ふっふっふ。
これからですよー、青木の地獄は。
切実な男の事情とか、絡んできますからね。原作で薪さんを泣かせた罰だー!
(すいません、これ書いたのが5巻のあたりなので)

> こちらの最”恐”天然薪さんがどう反応するのか、楽しみです!

このネーミング、爆笑しました。
前のコメにも書いていただいたんですけど、『暴走・空回り青木』『最恐天然薪さん』
わたし、ネーミングのセンスがないんですよ。だからブログの名前もそのまま「第九」です。
こんなんで小説書こうってんだから、世の中ナメきってますね(腐笑)

おつかれさまでした!(かのんさんへ)

こんばんは、かのんさん。

> 全部読ませていただきました。
> ああ・・終わった・・・

疲労困憊してるカンジが行間に滲み出てます・・すいません、異常に長くって・・・。

> 青木、遂に告白ですか・・
> 薪さん、嬉しいだろうなあ・・
> でも、薪さんのことだから、素直には受け入れられないだろうなあ・・
>
> 真っ直ぐな青木の将来を思って、同性の自分なんかと・・と、冷たくしたり。
> 鈴木さんと同じパターンになること=鈴木さんと同じように青木を失うこと、を恐れたり。
> 自分は、青木の想いを受け入れる資格なんか無い・・と思ってしまったり。
> 何より、自分の方が青木を求める気持ちに、自分でとまどってしまったり・・。

・・・・・。
かのんさん、どーしてこれからの展開を知ってるんですか?
どんだけうちの薪とシンクロしてるんですか?

これから話に詰まったら、かのんさんに聞きに行こうっと。

> 3時半からお読み下さったしづさま、私は2時過ぎまで読んでおりましたよ・・フフ♪

そんな時間まで?
うれしいやら申し訳ないやら。
こんな駄文に時間を浪費できるのも、かのんさんが薪さんを愛していらっしゃるから。
かのんさんの根性と、薪さんへの愛に、乾杯!

> 楽しませていただきました(各所で心臓が痛くもなりましたが)。

はっ・・・。
この心臓の痛みは、アレですね?
「女なんかやっちゃえば」と「××の穴」ですね?

次はその心臓を貫いて差し上げましょう!(←だから僕になにをさせる気なんだ!?BY脳内薪)

告ります(めぐみさんへ)

いらっしゃいませ、めぐみさん!
SLIPのつづき、ありがとう・・ござい・・ました(だんだん声が低くなる)・・・・めぐみさんのドS。(ぼそっ)

> へへへ、楽しみです。
> しづさんワールドの薪さんは、どうするのかなあ。
> 原作薪さんよりスパッとしていそうなので、面白い展開になりそうでワクワクです。

さすがめぐみさん。
うまくいくとは毛頭考えてないんですね?
うふふ。
すぱっといきます。

> このお話からは、まとめ更新なさらないのかな…。
> ああ、待つ身はツライです。

光栄です。
でも、そんなことないです。もったいぶるほどの話じゃないんで。

わたしはブログができる時間に制約がありまして。
11時になると、だんなが部屋に迎えにくるんですよ。単なる時間切れです。
他のみなさまのブログめぐりもしたいし!
時間はいくらあっても足りませんね。

待つ身はツライ・・?
そのままそっくり、いえ、10倍にして返します。
めぐみさん、つづきつづきつづき・・。

Re: 青木頑張れっ\(^ー^)/

おはようございます。たつままさん!

> 遂に、青木告白ですね(≧∇≦)
> 頑張れっ!
> 応援しているよ\(^ー^)/

まっすぐな応援、ありがとうございます。
たつままさんて、やさしい方。(^^

> そろそろ、青木、我慢の限界ではないでしょうか(笑)

・・・・なんの、ガマン?
『泣くほどハラ減ったのか?』BY脳内薪

> きゃ~♪
> 夢の世界だけでなく、早く薪さんと○○や○○○をやっちゃえ!!!←お好きな言葉をお入れ下さい♪

M 『青木。○○や○○○って、なんだ?』
A 『それはその・・薪さんとオレのふたりでするもので、楽しいものですよ』
M 『おまえと僕で?楽しい?』
A 『はい。、時間が経つのも忘れるほど、興奮して夢中になって・・・』
M 『ああ、あれか。たしかに、気がつくと夜が明けてることあるな』
A 『え!夜明けまで?』(すごいんだ、薪さんて・・)
M 『なんなら今からやるか?』
A 『いいんですか!?』(わくわくわく・・)
M 『ウノとオセロ。どっちからやる?』
A 『・・・どっちでもいいです・・・』


あっ。
たつままさんの翼がしぼんでいく・・・。
(ふたりでウノは厳しいですかね。(笑))

> やっちゃえば女なんて・・・が持論(?)の薪さんは、きっとやっちゃえば、身も心も蕩けて、青木のものになってしまうのでは?

持論!持論って!!
でも雪子さんには内緒にしてください。(怖)

> しづ様の薪さん、青木に惹かれつつあるみたいですので・・・雪崩れ込んだら早いのでは?といけない妄想を抱いてしまいます(≧∇≦)

わたしも早くそうなって欲しいと思うのですが、なかなか動いてくれなくて。
もどかしいふたりです。

> でも・・・しづ様ったら、青木の事を楽しく苛めていらっしゃるようにお見受けしますから・・・成就するまでには、暫くいたぶられそうですね(≧∇≦)
> ・・・それは、とても楽しそうな光景ですね(^▽^)v←青木ごめんね♪

なんか、イジメられる青木、好評みたいなので、書き溜めておいたものをそのままUPします。
腐腐腐、てかSSS?

> 続き、楽しみにお待ちしております\(^▽^)/

ありがとうございます!

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Mさまへ

鍵コメくださった、Mさまへ。

もう、わたしのMさまの世界への愛を止めることは、不可能です。
なにを言われても読ませていただきますし、キライになんかなれないです。愛してるので。(笑)

それに、現在わたしが書いてるファイヤーウォール以上に腐った話は、「秘密」の世界には存在しないと思います・・・・・あんなヘンタイキャラを生んでしまって、申し訳ございません・・・・。
ていうか、薪さん自体が壊れすぎ・・・・ううん。なんとかラストカット(最終話)まで、追放されないようにしなきゃ・・・・。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
10万拍手ありがとうございます!
いつの間にか9歳になってました。( ゚Д゚)
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