言えない理由 sideB(2)

 こんにちは。

 お正月も早8日。 みなさん、七草粥は食べましたか?
 わたしは忘れました。 ←今年もダメ嫁。

 なんか今年は忙しくって~~、
 1日に工事したでしょ?
 2日は寝正月して、3日は実家に挨拶に行って、4日は漏水当番で、5日は成田にお参りに行って、そのまま千葉のホテルに1泊して6日に帰ってきたら、
 入札の指名とお葬式の連絡が2件。(・∀・) しかも、うち1つは当日がお通夜だったという。 
 そして、
 昨日から仕事です。
 お正月なんて、毎年こんなもんなんですけどね。 今年は特に盛りだくさんだった気がします。 春からお盛んてことで☆
 

 そんなわけで色々あって、新年のご挨拶いただいた方々、お返事が遅くなってしまってすみません。 これからお返ししますねっ。
  





言えない理由 sideB(2)





 そんな会話をこの部屋で交わしたのは2ヶ月くらい前だった、と鈴木は思い、そこで回想を止めた。
 ふと横を向いて、死んだように眠っている親友の青白い顔を見る。いや、親友と呼ぶのはおかしいかもしれない。たった今、自分たちは特別な関係を結んだばかりだ。
 自分でも信じられない。酔った勢いとはいえ、男とセックスするなんて。
 鈴木は今まで男の身体に反応したことは一度もないし、そんな趣味もない。興味もなかったし、自分の未来に関係するとも思えなかった、というか、あんまりお近付きになりたくなかった。迫害する気はないが、自分とは縁のない世界だと思っていたのだ。

 どうしてこんなバカな真似を、と鈴木の中の良識が顔を歪める。今までもこいつは、薪の我が儘に振り回されるたび、なぜ彼に怒りを覚えないのかと口うるさく鈴木を嗜めてきたのだ。
「だって。薪があんまり一生懸命だったから」
 汗ばんで冷たい薪の頬に、そっと手を載せる。目の縁に残った涙を拭いてやって、長い睫毛が指先に当たる感触を楽しんだ。

 ―――― なんだ、その理由は。おまえは一生懸命に迫られれば、誰とでもセックスするのか。
「うん。相手に恥をかかせたら可哀相だろ。女の子の泣き顔は見たくないよ」
 ―――― こいつは男だぞ?
「下らないこと言うなよ。付き合いの浅い女の子を泣かすのもイヤなのに、薪を泣かせるなんて、冗談じゃないよ」
 ―――――。
 黙り込んだな。オレの勝ち。

 考えるまでもないことだ。ホモフォビオでもない自分が、僅かばかりの生理的嫌悪感と今や心の殆どを占めている薪と、どちらを優先するかなんて分かりきってる。
 見慣れているはずのきれいな顔に、鈴木は胸が詰まるような疼きを覚える。それにしても、薪が自分のことをそんな風に思っていたなんて、全然気付かなかった……。

 街を歩けば10人のうち3人が同性愛者だと囁かされるこの時代、鈴木の数多い友だちの中にはゲイもいたりするが、薪と彼らの間に共通点はなかった。彼らが鈴木を見る湿気を含んだ目線と、薪の涼やかな瞳は比べようもなかった。
 自分は、薪のあの目に弱いのだ。
 琥珀のように透明度の高い瞳。時にそれは夜空に浮かぶ月のように神秘を湛え、またある時にはイタズラ好きの子猫のように眩めく。鈴木の女の趣味は悪いと、氷のように冷ややかになったかと思えば、警察官僚になって警察機構を上から改革してやると、夢を語るときは熱っぽく輝く。
 でも、あんなに情の籠もった薪の瞳を見たのは昨夜が初めてだった。

 先刻まで自分たちがしていたことを思い出して、その行為が薪を手酷く傷つけたことを知って鈴木は、そっとベッドから抜け出す。傷口の血は拭っておいたけど、ちゃんと手当てをしておかないと、後で困るだろう。
 血止めと化膿止めの塗り薬を買うために、鈴木は夜中の街に出た。




*****




 自分たちの新しい関係は、人に知られてはいけないものだということを理解していた彼らは、友人たちの前では今までどおり振舞っていた。しかし、愛される喜びを知った薪の内面から滲み出す自信に満ち溢れた美しさは、どうにも隠しようがなかった。
 今までも薪と付き合いたがる人間は後を絶たなかったが、この時期の彼の周りには、ひっきりなしに彼と親しくなりたがる男女が押し寄せた。しかし薪は彼らを悉く、それもかなり辛辣に跳ね除けた。

 鈴木と付き合うようになって丸くなったと評されていた薪の性格は、昔に戻ってしまったようだった。どちらかと言えば内向的だった彼は、鈴木と友情を築くことで、鈴木を介して他の友人とも交流を深めるようになっていたのだが、それをぱたりと止めてしまった。他の者を交えず、鈴木とふたりきりでいることを好んだ。
 それは、付き合い始めたばかりの恋人同士が誰にも邪魔されずに甘い蜜月を過ごしたい、そんな当たり前の感情から起こされた行動だったのかもしれない。が、人間的な成長を考えれば、交友関係を至極限られたものにすることは明らかなマイナスだった。
 そのことに気付いてはいたものの、鈴木はそれを放置した。何故なら、鈴木自身が薪に溺れかけていたからだ。

 恋人という関係になってから、薪は変わった。
 意地っ張りの皮肉屋だったのが嘘のように、素直に鈴木に甘えてくるようになった。部屋でふたりきりになると、すぐに傍に寄ってきて、鈴木の腕や肩に額を預け、
「鈴木。僕のこと好き?」
 はにかんだ口調で照れたように、でも幾度となく聞いてきた。
「薪。そのセリフ、今日何度目だ?」
 心にもなく鈴木がからかうと、薪は頬を膨らませて、
「いいだろ。何回だって聞きたいんだ」
 そう言って鈴木の身体に両腕を回してくる。細いからだが愛おしかった。
 鈴木は薪を抱き返し、その場に組み敷き、彼の肌を貪った。相手を愛しいと思う気持ちがそのまま欲望につながる、そんな年齢だった。

「夢みたいだ」
 欲望が去った後も離れがたく、力を失った鈴木を自分の中に収めたまま、薪は窮屈に身体を折り曲げながら、すっかり平静に戻った声で呟いた。
「鈴木と、こんなふうになれるなんて。夢みたい」
 薪は言って、綿菓子みたいにふんわりと笑った。
 鈴木は、薪のそんな笑顔がうれしくてたまらなかった。ずっとこんな風に笑っていて欲しいと思った。そして、今のこの関係を壊したくないと痛切に願った。

 誰にも、特に自分の親には絶対に知られてはいけない。鈴木の親は薪のことをとても気に入っていて、彼の訪問を心待ちにするくらいだったが、それはあくまで息子の親友として歓迎していたのであって、こんな関係を結んだと知ったら間違いなく反対される。親のいない薪は、鈴木の両親を自分の親のように慕っていた。彼らの白眼視は、確実に薪を傷つけるだろう。
 薪を守りたい、と思う気持ちと、おそらくは保身のため。鈴木は、薪との関係を完璧に隠蔽しようと努めた。

 薪が鈴木との蜜月を満喫しようと自分の殻に閉じこもるようになっても、鈴木はこれまでと変わらずに友人たちとの付き合いを続けた。講義も、ゼミも、サークルも。以前と同じ生活スタイルを崩さないこと。それが鈴木が取った作戦だった。
 3ヶ月くらい過ぎた頃、友人のひとりが女の子を紹介してくれた。断ろうとしたが、「おまえ、恋人でもできたの?」と聞かれて断れなくなった。結局、一晩付き合って別れた。
 彼女に特別な感情は抱かなかったが、男女が一夜を過ごせばそこには当然、そういう関係が生まれた。逆に何もしないことによって、余計な詮索をされることを危惧した。彼女の方もさばけた性格だった。鈴木に、それ以上のものは何も求めてこなかった。薪と恋人同士になったものの、彼の身体を気遣って欲望を抑えていた鈴木には、格好の相手だった。

 翌日、友人のお喋りから薪にそれがバレて、ものすごいケンカになった。
「僕がいるのに」と責め立てられて、その剣幕に鈴木は何も言えなくなった。「カモフラージュのつもりだった」と説明しても納得してもらえなかった。事情は承知しているはずだと思っていたのに、真っ向から否定されてしまった。
 薪がこれほど嫉妬深いとは思わなかった。外見から推察するに、クールな部類に属すると想像していた彼の恋愛スタイルは、実は火のように激しかった。

「ごめん。もう二度としない」
 鈴木が謝っても、薪はなかなか泣きやまなかった。床に座って泣き続ける薪を見て、鈴木は思った。
 薪がそんなに嫌なら、もうこんなことはするまい。だけど、女の切れたことのない鈴木が突然女と付き合わなくなったら、周囲の人間は不思議に思うだろう。
 薪が落ち着いたら、その辺のことをよく諭してやろう。薪自身も、もっと友だちや女性と付き合うようにしないと、自分たちの仲は発覚してしまう。そうしたらきっと、一緒にはいられなくなる。

「嫌いに、ならないで」
 治まりきらない慟哭の中で、薪は途切れ途切れに鈴木の名前を呼んだ。鈴木が彼の顔を覗き込むと、薪の丸い頬に、乾くことを知らない涙がまた新たな水途を作った。
「初めはね、こんなつもりじゃなかったんだ。僕が鈴木を好きになったんだし、鈴木が女の子の方が好きなことも知ってるし、だから鈴木のことを束縛しようなんて、これっぽっちも思ってなかった。
 今日だって、我慢しなきゃ、って思ったんだよ。だけど」
 薪は懸命に言葉を継いだ。不規則な息継ぎが彼の言葉を聞きにくいものにしたが、それは鈴木に伝わる何ものをも阻害しなかった。
「カッコワルイよね、僕。みっともないって自分でも解ってるけど、でも……僕のこと、嫌いにならないで」
 
 臆面もなく、駄々をこねる子供のように。薪の愛情のベクトルは、真っ直ぐに鈴木を指していた。
 鈴木は彼の身体を抱き寄せた。首筋に、薪の涙が伝うのを感じた。

「好き、鈴木が好き。誰にもさわらせたくない」
 自分の感情を制御できないことを恥じる薪を、愛しいと思った。彼を放したくないと思った。
「鈴木にさわるやつ、みんな殺してやりたい」
 物騒な発言は、しかし鈴木の心を怯ませなかった。
 これまで付き合った女性の中に、ここまで独占欲の強い女性はいなかった。浮気がバレてケンカ別れした彼女は何人かいたが、縁りを戻すことはしなかった。世の中に女は星の数ほどいる。ポジティブな鈴木らしい考え方だったが、裏を返せば自分も相手もそれくらいの思い入れしかなかったということだ。

「そんなこと考えちゃいけないって、いつも自分に」
 薪の言葉を遮るように、鈴木は薪にくちづけた。ただでさえ不自由だった薪の呼吸はしばし止まり、鈴木が彼を解放したときには言葉を発する余裕もなかった。
「こりゃ大変だ。これからは隣で子供が転んでも、助け起こさないようにしなきゃ」
「……おばあさんを背負って横断歩道を渡るのもダメだよ」
 鈴木がおどけると、薪は泣き笑いの顔になって冗談を返してきた。頬は涙で汚れて鼻は真っ赤になって、髪もめちゃくちゃだったけど、すごくかわいかった。
 亜麻色の前髪に隠れた額に自分の額をつけて、鈴木はクスリと笑った。



*****


 あおまきさんでこれを書いたら、身体中痒くてたまらなくなると思うんですけど。 すずまきさんだと照れくさいだけで平気なのはどうしてかしら??



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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分かります!

鈴薪ならオッケーですよね、こういうシチュも。
鈴木さんになら、薪さんも甘えられたろうな~って。
青木は…やっぱり年下だし、部下だし…。


>そうですよねっ、そんな考えのあおまきすと、アリでいいですよねっ!! 邪道じゃないですよねっ!

全然、邪道じゃないですよーっ!
って、世界に私達2人だけだったら、どうしよう(笑)

>鈴薪さんは自然にデキちゃうんですけど、青薪さんはないな、って。(^^;

同感です…だって鈴木さんとは親友だったけど、青木は鈴木さんがいなかったら、気にしてないでしょう?
きっかけがありません。
 
>どんなシチュでも二人の恋物語が描けてこそ真のあおまきすとじゃないのか、と考えてしまったのですけど。

なるほど…じゃあ、私達はあおまきすと(すずき付き)なのかしら(笑)

>思い起こせば、めぐみさんのSLIPでも、鈴木さんが生きてる世界の薪さんは、青木さんと恋仲にはならず、普通に結婚されていましたよね。

そうでした。もうね、私の中で全然無いってことですね(笑)
薪さんがゲイなのかどうかで変わってくる問題かも知れませんが…、私は薪さんは基本、異性愛者だと思っているから。
青木は特別、青木だけが特別♪

>本当に、めぐみさんはいつでもわたしの救世主ですっ!

しづさんこそっ^^
私達は永遠の同志ですね!

めぐみさんへ

めぐみさん、こんにちは。 いらさりませ♪


> 鈴薪ならオッケーですよね、こういうシチュも。
> 鈴木さんになら、薪さんも甘えられたろうな~って。
> 青木は…やっぱり年下だし、部下だし…。

そうなんですよ~!
恋人に甘える薪さんを見たかったら、やっぱり相手は鈴木さんなんですよ。 青木さんに甘えてる薪さんて、ちょっと想像つかないです。(^^; 


設定ありきの青薪ラブに、賛同してくださって、ありがとうございます。 とっても嬉しかったです。(^^
て、世界にわたしたち2人ですか?! 
いいや、それでも。 めぐみさんと一緒なら。(笑)


> >鈴薪さんは自然にデキちゃうんですけど、青薪さんはないな、って。(^^;
>
> 同感です…だって鈴木さんとは親友だったけど、青木は鈴木さんがいなかったら、気にしてないでしょう?
> きっかけがありません。

そう、要はきっかけなんですよね。
滝沢さんが「聞くほど似ていない」と言うくらいなので。 薪さんがその相違に気付かなかったとは、わたしも思っていません。
薪さんが惹かれた青木さんの魅力は、鈴木さんとは違う冷静さを欠いた行動だったり、若さゆえの情熱だったりしたと思います。 天地さんのときとか、バイオテロの囮捜査とか、ヘリで少女を救出に行ったときとか、薪さんが青木さんを思うとき、逐一鈴木さんを重ねてはいませんでしたよね。 
青木さんは、自分の本来の魅力で薪さんを落としたと、これは間違いないと思います。

でも、きっかけが無ければ、絶対に生まれなかった感情だとも思うのです。 
仕事熱心ないい部下だ、で終わっていたのではないでしょうか・・・。


> 薪さんがゲイなのかどうかで変わってくる問題かも知れませんが…、私は薪さんは基本、異性愛者だと思っているから。
> 青木は特別、青木だけが特別♪

そうなんですよ!
異性愛者なのに、少なくとも自分はノーマルだと思っているのに、彼だけが特別、という状況に萌えます。(〃∇〃)
でも、薪さんが好きになる人って、鈴木さん、青木さん、とずっと男の人なんですよね。
なのでもしかすると薪さんは、同性異性を問わず、人間的な美しさを持っている人間に惹かれるのかなあ、とも思います。 精神的な意味合いで、バイセクシャルなのではないでしょうか?
鈴木さん然り、青木さん然り、自分が捻じ曲がった性格をしているから、素直で真っ直ぐな人に惹かれるんでしょうね。


> 私達は永遠の同志ですね!

きゃー、うれしいです、ありがとうございますっ!
これからもよろしくお願いしますっ!!

Aさまへ

Aさま、こんにちは。


>鈴木さんはモテたと思うんです。さわやかイケメンですから(笑)
>友人も多かったと思うし、急に薪さん以外との付き合いをしなくなったら「あいつら、デキテルんじゃないか」と言われますよね。

滝沢さんが言ってましたね☆ 僻み入ってましたね。(笑)

わたしもAさまと同意見です。 男女問わず、人気があったと思います。
反対に、薪さんは友人が少ないイメージが強いですよね。 でもって、鈴木さんは薪さんを特別に思っているのに、薪さんは自分を鈴木さんにとってはワンオブゼムだと思い込んでいた気がします。


>薪さんは鈴木さんの両親から可愛がられていた気がします。だから、葬儀で追い出された時の場面を思い出すと辛いです(;;)

ええ、これはねー、本当はどうだったのか分かりませんが、
いっそ付き合いが無かった方が楽だったかもしれませんね。 自分に好意を向けてくれていた人から辛く当たられるのが、一番効きますからね。(--;


>青木の前で同じように振舞ったら、新しい嫌がらせだと勘違いしそうですね(笑)

有り得ない!(爆)
そういう薪さんを妄想して書いた話があるんですけど、いえ、甘えはしませんでしたが。 ある目的があって、薪さんが青木さんに対して、超優雅にロマンチックに振る舞うんですけど、青木さん、生きた心地がしなかったみたいです☆☆☆
そのうち、お目汚しする時があるかもしれません。 その時はいつものように、生ぬるい眼で見てやってください。(^^


プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

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おかげさまで8歳になりました(^^♪
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