言えない理由 sideB(5)

 お礼が遅くなりましたが。
 17000拍手、ありがとうございました♪

 感謝の気持ちを込めて、今度は甘いあおまきさんを書こうと思います。
 身体中痒くなっても我慢します。(笑)





言えない理由 sideB(5)





 それから鈴木は、薪の将来のことを真剣に考え始めた。
 葛西教授の言葉が、何度も思い出される。

『わたしは口惜しくてたまらん。あれだけの才能が腐っていくのを、指を咥えて見ているなど』

 腐らせたのは、オレ? 薪を堕落させたのはオレなのか?
 誰もが羨ましがる頭脳と美貌、彼に近付きたがるものは大勢いる中で、薪が自分から求めるのは鈴木だけ。それもあんなに激しく、夢中になって、まるで鈴木がいなければ生きることの意味すらないとでも言うように。そのことがうれしく、誇らしく、さらには俗物的な優越までが加わって、自分は有頂天になっていたのだ、と鈴木は気付いた。
 客観的に、これまで自分たちがしてきたことを思えば、それの何たる低俗なことか。
 恋人として過ごす甘やかな時間が低俗だというわけではない。だが、それに日常の大半をつぎ込んでしまうような極端な偏りは、やはり問題だと言わざるを得ない。

 二人の未来の為に、本当はどうするべきなのか、その頃の鈴木にははっきりと分かっていた。それに応じたプランもあった。
 何も別れることはない。もっとバランスよく、恋愛もして、勉強もして、友だちとも遊んで。そういう生活スタイルを確立すればいい。
 鈴木はそのことについて、何度も薪と話し合おうとした。しかし薪は、聞く耳を持たなかった。

「僕は鈴木といられれば、他には何もいらない」
 そう言って鈴木の前に身を投げ出す恋人を、拒絶することはできなかった。
 こんなことを繰り返してはならないと、きっとこの関係に溺れることはお互いのためにならないと、そう分かっていながらも彼から離れられない。いじらしくてひたむきで、親を求める子供のようになりふりかまわず鈴木を独占したがる。可愛くてたまらなかった。鈴木もまた若かった。自分を抑え切れなかった。

 ベッドの中で、鈴木の下になって、薪は浮言のように繰り返した。
『鈴木が好き』
『だれよりも好き』
 気が付くと、彼を夢中で愛していた。その繰り返しだった。
 
 シングルベッドの窮屈さを、必然的な密着を心地よく感じている鈴木の胸に半身を載せるような形で脱力していた薪が、唐突に言った。
「もし鈴木が僕より先に死んじゃうことがあったら、僕はすぐに後を追うからね」
「え?」
「鈴木のいない世界なんて、意味ないもん」
 鈴木の左胸に耳をつけて、じっと鈴木の心音を聞いている薪の、少し汗ばんで乱れた亜麻色の髪とその中に存在する驚異的な頭脳。その優秀さと彼の幼いセリフのギャップに目眩を覚える。
 と、同時に。
 薪にとっては自分が世界そのものなのかもしれないと、自惚れたことを思った。

「じゃ、おまえが先に死んだら?」
「鈴木のこと迎えに行く」
「もしもし薪くん? 普通そこは、『あなたはわたしの分も生きてね』って言うとこじゃないですか?」
「やだ。死んでも一緒にいたい」
「悪霊化決定だな。おー、コワ」
「なんだよ、鈴木の薄情者。忘れるなよ、鈴木もちゃんと僕のこと迎えに来るんだぞ」
「はいはい、わかりましたよ」
 気のない返事で会話に終止符を打ちながら、鈴木は背筋が震える感覚を味わう。

 薪は、薪の恋情はあまりにも激しすぎて、彼のすべてを飲み込んでしまう。すべてを焼き尽くしてしまう。彼の存在すらも、その犠牲となってしまいそうなほどの潔さ。
 この恋が叶わぬなら自分はうたかたの泡となって消え失せてもいい、御伽噺の主人公のように、彼は彼女に負けないくらいの熱心さで自分を滅ぼそうとしている、鈴木はそんな恐怖を覚えた。

 心の中に芽生えた慄きを払拭しようと、鈴木は殊更明るい表情を取り繕った。
「じゃあさ、オレが薪と一緒に死にたいって言ったらどうする?」
「いいよ」
 迷いの欠片も無い答えに、軽い口調ながらも決して揺るがない声の響きに、鈴木は再び戦慄する。冗談だよ、と言おうとして、口の中がカラカラに乾いていることに気付いた。

 薪は顔を上げ、にっこりと鈴木に笑いかけて言った。
「いつでもオッケー」



*****


 すずまきさんなら、いくらでも甘く書けるのになあ。(←実はすずまきすと疑惑、浮上)


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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