言えない理由 sideB(10)

 新しいリンクのご紹介です。

 
№9 秘密ートップシークレットー (←クリックすると飛べます)
 maki9 さまが描かれる緻密なタッチの麗しい薪さんが満載のイラストサイトです。

 ご本人様は 「いくら描いても似ない、だれか描き方教えてくれないかな」 なんて仰ってますが、わたしに言わせれば、こんなに描けるくせに、なんて贅沢なって。(笑)
 絵が描ける人って、本当にすごいですよね!
 文は日常生活で使うものだから誰にでも書けると思うけど、絵は、生まれつきの才能もさることながら、特別に時間を作って研鑽を重ねていくものでしょう? maki9さんは、その努力を惜しまない人だと思います。 原作の絵柄に近付けようと試行錯誤を重ねるご様子に、薪さんへの愛を感じます。 本当に好きなんだなあって。 
 ぜひご訪問なさって、maki9さんの熱ーい薪さん愛を、その目でお確かめになってください。(^^


 





言えない理由 sideB(10)





「鈴木。起きろよ」
 軽く肩を揺さぶられて、鈴木は目を覚ました。青い空に、ぽっかりと浮かんだ白い雲が見える。
「警察官が他人に起こされるまで野外で爆睡って、ありえないだろ」
 亜麻色の大きな瞳を悪戯っぽく吊り上げて、親友が自分の顔を覗き込んでいた。つややかなくちびるは細く窄められ、幼い頬は芳醇に実った果実のように瑞々しく、瞳と同じ色の髪は太陽光に照らされて、いっそ金色に輝く。
 現実の太陽よりも彼に眩しさを感じて、鈴木は眼を細める。

「オレは薪と違って、現場に出たことないから」
「これだから、察庁さんは」
「おまえだって所属は警察庁だろ? キャリアなんだから」
「僕は今は警視庁の人間。鈴木は敵だ」
 警視庁と警察庁の不仲を揶揄して、薪はにやっと笑った。意地悪そうな笑い顔が、板についている。彼が充実した毎日を送っている証拠だ。

 薪は現在、警視庁捜査一課に身を置いている。今年から班長を任されて、優秀な成績を上げている。『薪警視の前に迷宮なし』と囁かれる、捜査一課の天才。その意外と子供っぽい素顔は、鈴木だけが知る彼の秘密だ。
 鈴木の腕を掴んで起き上がらせる彼の腕に、男の力強さを感じる。警察機構に入って3年、薪は見違えるように逞しくなった。見かけはそれほど変わらないが、スーツの下に隠された肉体には明らかな変化が起きている。
 彼は、先日の柔道の昇段試験に見事合格し、念願の黒帯を獲得した。鈴木に賞状を見せにきた薪はとてもうれしそうで、とっくに燃えるゴミになってしまった国学院の賞状との対比に、失笑を禁じえなかった。

「なんだよ、おかしな笑い方して」
「いや。なんでもない。それよりもさ」
 苦笑に顔を歪めた鈴木は、どうしてここで親友を待っていたのかを思い出し、彼にその話をするように促した。薪にとっては青天の霹靂、世界の一大事だったはずだ。一介の警視が、上層部、それもトップ3の人物に直々に呼び出されるなんて。

「どんなひとだった? 小野田官房長」
 緊張した面持ちで訊ねる鈴木に、薪はあっさりと、
「写真と同じ顔してた」
「いや、そうじゃなくてさ」
 やっぱり薪の感覚は、普通とズレがある。現に、興奮も萎縮もしていない。小野田官房長といえば警察機構実力者ナンバー3、自分たちのような一警察官にとっては雲の上のようなひとだ。そんな大人物と面接をしたとあれば、気分が高揚して饒舌になるか、逆に過度の緊張状態から醒めて脱力状態になるかのどちらかではないか。
 鈴木の呆れたような口調に、薪はしばらく考えてから、
「やさしそうなひとだった」
 だから、そうじゃなくて……もういいや。

「で、面接の内容はなんだったの?」
「第九の室長やってみないかって」
「室長? 第九って、新設の研究室の? って、警視のおまえに?」
 薪は手に持った封筒から3枚の申請書を取り出し、鈴木に差し出した。官房長直々の特別承認人事。書類を持った鈴木の手が震える。
「警視正の試験を受けろって。で、受かったら1年くらい海外研修に行って来いって」

 芝生の上、鈴木の隣に座って天気の話でもするように、この夢のような幸運を淡々と語る親友に、鈴木は身震いする。
 絶対に大物になると思っていたが、こんなに早くその兆しが現れるとは。薪はまだ26。通常警視正になれるのは35歳からだ。試験を受けるのは来年だろうが、こいつが試験と名のつくものに落ちるわけがないから、昇任は27歳。8年も早い上層部入りなんて、聞いたこともない。
 それなのに、薪ときたら。

「いやだなあ、海外なんて。せっかく班長任せてもらえるようになったのに」
 これだ。現場の仕事が面白いものだから、この常識外れの大きなチャンスをありがた迷惑みたいに思っている。
「なあ。やっぱり断ったらマズイかな」
「当たり前だろ! てかおまえ、こんなチャンスを断るなんて、キャリア入庁した他の同僚に聞かれたらフクロにされるぞ」
「だって研究所なんて。僕、現場の方がいいよ」
 それは、ずっと鈴木が望んでいたことだった。現場で荒くれた犯罪者と対峙する薪の身を、鈴木が毎日どれだけ案じていたことか。研究室なら、命の危険はないはずだ。それだけでも安心できる。

「何言ってんだ、第九だぞ! 最新鋭の捜査方法だぞ!」
 
 昼食の最中に携帯で呼び出されて走っていく親友の後姿を、鈴木がどんな思いで見ていたか。殺人犯に襲われたら、強盗犯に撃たれたら―― 警察官なら殉職の可能性は視野に入れていたはずだが、薪はキャリアだ。現場に出るとは思わなかった、だから止めなかったのに。何を思ったか薪は捜査一課への配属を希望して、自らを危険の中に置いて、その死と隣り合わせの毎日は鈴木の心労を否応なく煽った。
 新しい研究機関の素晴らしさを滔滔と並べ立て、鈴木はこのチャンスをものにするよう、薪に働きかけた。熱心な説得の裏に隠された鈴木の気持ちには気付かないまま、薪は感心したように息を吐く。

「鈴木がMRI捜査に賛同するとは思わなかった。たしかに、今までのやり方を根底から覆す手法だけど、僕はいやだな。だって、人間の脳を見るんだろ? 覗きみたいじゃないか」
「なに甘っちょろいこと言ってんだ。倫理的には問題が残るかもしれないけれど、通り魔殺人等で被害者同士の接点が見つからない場合には、これ以上有効な捜査方法はない。犠牲者の人数を最小限に抑えることができるんだ。冤罪だって防げるし」
 聞きかじりのMRIの知識を振りかざして、鈴木は懸命に薪を説得した。薪の言うことなら何でも聞いてやった鈴木だが、今回ばかりは譲れなかった。
「わかった、わかったよ。鈴木がそこまで言うんなら、受けてみるよ、昇格試験」
 鈴木の剣幕に押される形になって、薪が折れた。薪は我が儘だが、引くところは引く。彼らはいつもそんな調子で、押したり引いたり、凹凸の波がぴったりと重なるみたいに寄り添っていた。

「MRI捜査に興味があるなら、鈴木も一緒にやる?」
「そんな勝手が許されるのか」
「わからない。でも鈴木となら、他の誰とするよりも良いものが創れると思う」
 意地悪で皮肉屋で、常に斜めから人を見るタイプの親友は、鈴木の前では時に、びっくりするくらい素直な一面を見せる。それが彼の中核だと、鈴木だけは知っている。
「官房長に頼んでみる。まずは準備室を立ち上げるから、そこの副室長におまえのことを推薦しておくよ。そうしたら」
 自分の思いつきにワクワクして、薪は子供のような笑顔になる。最初の気乗りのなさは何処へやら、芝生の上にかいた胡坐の膝を抱え込むように身を乗り出すと、
「そしたら、一緒に仕事ができるな」

 亜麻色の大きな瞳を希望に輝かせて、薪は未来のビジョンを語った。
「僕が室長になるから、鈴木は副室長になって。どんな事件もたちどころに解決して、第九研究室を警察機構一の研究施設にするんだ」
「おお? さすが薪くん、試験を受ける前から通る気マンマンだね?」
「茶化してないで聞けよ。死人の脳を見るわけだから、世間は色々言うだろうけど、実績さえ上げれば抑え込めると思う。システムの扱いには専門的な知識が必要だから、その研修施設も創設しないとな。それには優秀な人材を集めて」
「研究所随一のエリート集団、法医第九研究室か。カッコイイな、それ」
「だろ? きっと女の子にモテモテだぞ」
「モテモテって……薪、それ100年くらい前の死語だぞ」
「うるさいよ、真面目に考えろよ」
「自分から言い出したくせに」

 それからふたりは、新しい研究室の話題に夢中になった。最新鋭のIT技術の粋を凝らした宇宙開発局クラスの設備。神の領域に挑むような高揚感が、彼らを包んでいた。
 そのときは思いもしなかった。
 自分たちの未来予想図が、悪夢に変わるなど。
 近い将来彼らを襲う悲劇の存在は、僅かな片鱗すらも覗かせてはいなかった。すべてを見通す神の眼たるMRIにも、推理の神さまとまで謳われた天才にも、まったく予測することはできなかったのだ。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Mさまへ

Mさま。
こちらにもコメントありがとうございます。



いやん、Mさん、なんかカンチガイしてる!  ただの腐れブログですよ、ここ!!
完成度とか歴史とか、ありませんからっ。(><) 
(歴史と言うと、アダルトに強制登録されたという輝かしい過去が、うええええんっ!)

そんなこと言ってると、男爵って呼ばれちゃいますよ。(笑)
ご紹介につきましても、もっとMさまのイラストの素晴らしさに相応しい言葉でご紹介したかったのですけど、いかんせん、ボキャ貧で。 申し訳ないです。(--;



> 薪さんが第九の室長になる前って何してたんだろう
> 同期の鈴木はどうして副室長なんだろう
> どういう風に抜擢されていったんだろうって
> 思ってたんです おかげですっきりしました(笑)

うちは捜査一課に入って、官房長に抜擢されて第九の室長になったことにしましたけど。

この辺、特別編とかで解明されるといいですよね。(^^
若き日の薪さんと鈴木さんとか。 警察庁に入ったばかりの頃とか、見てみたいな~。



> 鈴木にだけ見せる笑顔
> 彼の前にだけ表せる態度
> そういったものが間違いなく薪さんにはありましたよね

鈴木さんの前で、頭抱えてましたね。 あんな風に弱音を吐くのも、鈴木さんの前だけだったと想像します。 
心から頼りにしていたんでしょうね。 部下ではなく、相棒だと思っていたのでしょう。

そんな人を手ずから殺めてしまうなんて・・・・・・ 薪さんっ・・・・・・(TT)
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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