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 定刻、15分前。
 岡部が段ボール箱を抱えて、青木のデスクにやってくる。
「青木、これやっといてくれ」
 中を開けてみると、ぎっしりと書類やらCDやらが詰まっている。すべて過去の事件の捜査資料だ。
 実は第九のスパコンは、2年前にシステム移行している。その為それより前に起きた事件の資料は、こういう時間に余裕のあるときに新しいシステムに入力して、データベース化しておく必要があるのだ。
 「これ、今日じゃなきゃ駄目ですか?」
「べつにかまわんが」
 岡部が少し不思議そうに青木を見る。
「めずらしいな。なにか予定でもあるのか?」

 春ぐらいから、青木はいつも遅くまで残って、自主訓練をしているのが当たり前のようになっていた。
 自己研鑽の方法は限りなくあるが、MRI操作の練習をしたり専門書を読んだり過去の事件資料に目を通したりと、研究室にいなければできないことが多いため、居残りのような形になっている。
 早く一人前になりたいという気持ちが青木にその努力を続けさせている、と先輩たちは思っていたが、青木にはもっと大きな理由があった。
 例え急ぎの案件がなくても8時頃まではここにいる仕事熱心な誰かと、ふたりきりになれるチャンスだからだ。
 ふたりきりと言っても、青木はモニタールームで、薪は室長室。間には薄いが、堅固な壁がある。
 しかしそこにはドアというものがあって、薪のところへ顔を出すことも時には可能だ。美味いコーヒーを飲みたくなった薪が、青木のほうに来ることもある。そんなときには青木の学習の進み具合を見てくれたりもする。青木としてはこのささやかな幸せを心の支えにして、難解なMRIシステムの専門書に取り組んでいるのだ。

「ええ、ちょっと」
「青木の奴、三好先生とデートなんですよ」
 曽我が、人懐こい笑顔でさらりと暴露する。
 たしかに、室長には内緒にしてくれと言ったが岡部にまで喋るなとは言ってない。
 だが。
 岡部の目が青木を見た。むっつりと黙り込む。
「今日中にやっとけ」
 ……ひどいです、岡部さん。

 作戦会議の日時変更を雪子に伝えるため、青木は携帯電話を取り出した。


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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