パンデミック・パニック(10)

 こんにちは。

 お彼岸の日曜日、みなさまいかがお過ごしでしたか? うちは当たり前のように仕事です。(←4週連続日曜日仕事)
 もうね、3月だけは60日あっても多くない。 土木業者はみんなそう思ってる、少なくとも友だちの業者はみんなそう言ってる。
 だって雨が~、埋設管の競合が~、仮設給水が~、公共桝位置の変更が~~。 その他もろもろ、えーい、
 期越えが怖くて工事ができるかー! ←役所に聞かれたら大目玉。

 せめて雨だけはカンベンして欲しいです。



 ところで、
 こちらの薪さんの病気についてですけど、
 なんかすっかりバレてるみたいで~(笑) 鍵でコメントくださった方、全員正解です☆
 
  



パンデミック・パニック(10)







 太陽が高くなるにつれて体温も上昇していくようで、朝はいくらか楽になったと思っていた薪の身体は、再び昨夜の高熱に痛めつけられていた。
 点滴に解熱剤が入っていると思われるのに、ちっとも効かない気がする。普通の病気ではないのだから当たり前かもしれないが、それにしてもこの熱と発疹は異常過ぎる。自分で見ても気持ちが悪くなるくらいだ。
 岡部を呼んで仕事の話をしたいのに、この調子ではまともな会話ができそうにない。身体はふわふわと宙に浮いているようだし、視界はときどきブラックアウトする。

「薪くん。具合どう?」
「雪子さん」
 スライド式のドアを開けて顔を覗かせた白衣の女性を認めて、薪はうっすらと微笑んだ。どうやら雪子もワクチンを投与されたらしい。開発中の細菌のワクチンのストックが、それほど多くあったとは考え難いが、犯人の遺体が司法解剖されたであろう第一の職員には優先的に投与されたのかもしれない。なんにせよ、彼女の安全が確保されていることは喜ばしい限りだ。

「今まで、本当にありがとうございました。僕がここまでこれたのは、みんな雪子さんのおかげだと」
 最後になるのだからきちんと礼を言っておこうと、薪が感謝の言葉を述べようとすると、雪子はそれを遮って、
「どうしたの、急に。薪くんらしくない」
 さすがに雪子は医者だ。患者に死期を悟らせないように、その演技は完璧だ。だが、その必要はない。
 今朝方、薪の恋人が座っていたパイプ椅子に、どすんと音をさせて腰を下ろした雪子に、薪は微笑を向けたまま、できるだけ穏やかに言った。

「いいんですよ、雪子さん。僕は知ってるんです。青木が本当のことを話してくれましたから」
「そう。ふふ、竹内ったらね、薪くんが本当のことを知ったら、あまりの衝撃に暴れだすんじゃないかって言ってたのよ」
「そんなみっともない真似はしませんよ。僕は男ですから」
 竹内の暴言も、聞けるのは最後だと思うと、寛大に許せる気持ちになれた。人間死ぬ前は仏様みたいにやさしくなれるって言うけど、あれは本当なんだ。

「警官になった時から、覚悟はしていました。これは謂わば、僕の最後の事件です。犠牲者が僕一人で済んだなら、満足の行く結果です」
「最後の事件? 薪くん、警察辞めるの?」
「自動的に辞めることになるかと」
「どうして?」
「どうしてって」
 薪は訝しそうに雪子を見て、口を結んだ。
 自分はもうすぐ死ぬ、それを薪は知っている。そう伝えたのに、雪子がいつまでも白々しい演技を続けることが、薪には意外だった。必要のない嘘を重ねるなんて、聡明な雪子らしくない。それともこれは雪子が医者である以上、避けられない欺瞞なのだろうか。

「僕、助からないんでしょう?」
 ズバリと訊くと、雪子は眼を真ん丸にして、はあ? と間の抜けた声を出した。本気で驚いているように見える。雪子は嘘が苦手な方だとばかり思っていたが、なかなかどうして、大した演技力だ。
「薪くん。青木くんから本当のことを聞いたのよね?」
「はい。引継ぎをしなければいけないことが幾つか残っていますから、教えてもらってありがたかったです」
 口紅が擦れるのも構わず、雪子は右手の拳を唇に強く当てた。女性にしてはキッカリした眉を寄せて、黒い瞳を細くする。
「もしかして青木くん、伝える病名を間違ったんじゃ」
「病名? この症状に、病名があるんですか?」
 なんだかヘンだ。開発中の細菌による感染症、それにもう病名が付いたのだろうか? 昨日の今日で? あれってある程度研究が進んで、学術発表とかされて決まるもんじゃないのかな。

「うん。麻疹」
「そうですか、ハシカ ―――― はああ!!?」

 薪は思わずベッドから起き上がり、するとぐらぐらと世界が揺れる。エアポケット級の失墜感。耐え切れず、ベッドに戻った薪の身体が描いた軌跡は、横たわるというよりは落ちるという表現が正しい。
 ハシカって子供が罹るあれか? いや、そんなわけがあるか。だって、あの男は死んだのだから。

「何を言ってるんですか? 犯人は血を吐いて死んだんですよ、僕の目の前で」
「遺体の解剖はわたしが担当しました。死因はアルカロイド系毒物による中毒死」
「アルカロイド? まさか。だって、犯人は吐血して死んだんですよ?」
 アルカロイド系毒物は嘔吐や呼吸困難を引き起こすが、吐血はしない。それに、彼の毒物は即効性があるが、犯人は何も口にしていなかった。
「食道に、焼け爛れたような痕がありました。吐血はそこからのものと考えられます」
 では、あの白煙は? 彼が持ち込んだケースの中身は、いったい何だったのか。
「第五の調べでは、空気中にも毒性のある物質は発見されなかったそうです。清掃と消毒は彼らが行ってくれたから、本日の第九の業務に支障はありません」
「ちょ、ちょっと待ってください」

 熱のせいで動きの悪い脳を回転させて、脳内シナプスを根性でつなげる。
 犯人は服毒によって死亡。彼が持ち込んだケースから出てきた気体は無害。自分の症状は、細菌とは関係ないただの病気。

「つまり、あれは狂言だったと? 僕は犯人に騙されて第五と警備部を動かした挙句、子供が罹るような病気で倒れてここに運び込まれたわけですか?」
「ご名答です、薪警視長殿」
「~~~~!!!」
 新人の時以来の大失態に、薪は反射的にうつ伏せて枕を抱え込んだ。強く引っ張られた点滴スタンドが倒れそうになって、それを雪子が咄嗟に足で押さえたが、そんなものは勿論薪の眼に入ろうはずもない。

 どうするんだ、この不始末!! 
 カンチガイで夜中に警備部と第五を動かして、てか僕、中園さんにも連絡入れちゃったから多分指揮は中園さんが取ってたはず、仕事の早い中園さんのことだから厚生省に連絡入れちゃってたりして、それが間違いだと分かったら中園さんの責任問題に……!

「ちょっと薪くん、起きちゃダメよ」
「悠長に寝てられません! もしも厚生省へ謝罪に行くなら、それまでに僕の処分を確定させてもらわないと中園さんに迷惑が」
 四足で起き上がった薪をベッドの上に留めようと、雪子は両手で薪を毛布ごと押さえる。薪が暴れるものだから点滴スタンドは益々揺れて、とうとう倒れ掛かってきたスタンドを受け止めるために雪子が左手を離すと、その隙を逃さずに起き上がった聞き訳のない患者を止めるため、ついには足が出た。
 雪子の長い脚がモロに背中に乗って、今の薪の体力では動かせない。観念して、薪が参ったと言おうとした時、スライドドアの滑る音がした。

「安心してください。中園さんは慎重でした。厚生省へは、今回の事件は伝わっていません」
 岡部の声がして、背中に掛かっていた重力が消える。素早く脚を下したものの、雪子はとんでもない場面を目撃されてしまった。
「三好先生……この拘束の仕方は医者としてと言うよりは女性としてどうかと」
「だって薪くんが暴れるから。つい」
「やっぱり暴れたんですか? 竹内の言った通りになりましたね」
 宿敵の暴言を思い出し、薪は反射的に沸き起こった憤りに胸を焼く。先刻の寛大さはどこへやら、脳裏に浮かんだいけ好かない女たらしの顔に、心の中で唾を吐いた。

「竹内もお見舞いに来たがってたんだけど、麻疹を発症した記憶が定かじゃないから我慢するって」
「薪さん、後で竹内にはちゃんと礼を言ってくださいよ。山岡氏の携帯からGPSを辿って彼を見つけたのは、あいつなんですから」
「どうして竹内が?」
 青木に連絡を受けた雪子が竹内と共に夜の研究室を訪れたことを知って、薪は驚く。竹内にはまるで係わりのない事件だったはずなのに、夜中に労を惜しまず動き回ってくれたのだ、と岡部に言われては、頑固な薪も彼に感謝せざるを得ない。山岡が無事に保護されたのは、竹内の迅速な行動のおかげなのだ。

「岡部さん、お願い。脚で薪くんを押さえてたことは、竹内にはナイショにして」
 雪子が苦笑いしながら頼むのに、はい、と岡部は頷いて、薪の耳元に顔を寄せてこっそりと、
「女心ですかね。先生もカワイイとこありますね」
 前言撤回。誰が礼なんか言うか。




テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Rさまへ

Rさま、こんにちは。

「男爵だぁ」って。(笑)
はい、男爵ですね!(爆)


> 麻疹だと言わなかった青木に薪さんがどんな鉄槌をくだすのか見ものです。
> さすがの岡部さんも青木が悪いと助け船は出してくれそうもないし。青木、がんばれ。

今回は、青木さんのお仕置きはないです。
薪さんも最初は怒ってたんですけどね、そのうち怒るに怒れなくなっちゃったって言いますか。 雪子さんも岡部さんも、青木くんの味方に付いちゃって、どうも旗色悪いみたいです。


> 秘密のアニメは何回見てもストーリーではなく作画に突っ込みを(゜゜;)\(--;)いれたくなります。

わかりますっ!!!
薪さんに何してくれてんだ、って感じですよね!? ←これは個人攻撃、或いは営業妨害では?
いや、ストーリーもヒドイですよ、あれ。 
一番許せないのは薪さんの目隠しの扱いです。 事件隠蔽の伏線なしにそのシーンになだれ込むという暴挙、あれじゃ薪さん、 ただのヘンタ ←自主規制。

とか言いつつ、DVDは全巻持ってますし、
うちの薪さんはアニメの薪さんがモデルになってるんですけどね☆


> 今度は清水先生の原作に添った作画で再度アニメ化してくれないかなと思います。美しい薪さんが動くのを見たいです。

見たい!!!!!!
それは見たいです。 でもって、声優は別の方で。 (薪さんの声はもうちょっと高いほうが好み) 少なくとも一人称は「僕」で!! (そこは変えちゃダメ! ですよね!)
ストーリーは下手なオリジナルなら作らないで、原作に沿った内容にして欲しいですね。 笑いはもうちょっとあってもいいかな。 第九メンズで掛け合いできそうだし。 女の子のオリキャラは欲しいですね。 女の子が何人出てきても、薪さんが一番きれいなの♪
あー、本当に、何処かのアニメ制作会社で作ってくれませんかね? 
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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