破滅のロンド(13)

 発売日まで10日を切りまして。 
 みんな同じ気持ちだと思うのですけど、どうにも落ち着きませんね~。
 でも、この感覚を味わうのも最後かと思うと、気を紛らわしたりせずに、いっそ味わい尽くそうという心持ちになってきます。

『秘密』自体は、まだ続くのかもしれない。 第九編が終わるだけで、新しい舞台で新しい話が紡がれるのかもしれない。 その可能性があることは分かっているのですけど、わたし個人は、
 第九編が終わってあおまきさんが誌面から姿を消したら、こんな気持ちで待つことはなくなると思うの。 仮に第九の未来が描かれたとしても、こんな居たたまれない気持ちにはならない。 薪さん個人でも青木さん個人でも、この気持ちは生み出されない。
 そう思うと、日常生活すら危ういこの状況が、失い難いものに思えてきます。

 今わたしたち、貴重な体験してますよね?








破滅のロンド(13)







 その日、薪は警察庁から直帰した。
 タクシーを降りてマンションに入ると、エントランスの隅に影法師のように大男が立っていた。人目に付かないように気を配ったつもりかもしれないが、その身長では何をやっても無駄だと言うことをそろそろ学習して欲しい。
 自動ドアを開けた途端に彼に気付いて、でも知らぬ振りをしてキーパネルに向かう薪を、彼はしょんぼりと見ていた。何か聞きたいことがあって来たのだろう。でも、プライベートでは薪に取り合ってもらえないことが分かっているから言い出せなくて、懸命に信号を送っているのだ。

「何の用だ」
 タッチパネルで玄関のロックを解除しながら、薪は低い声で訊いた。
「確かめたいことがあって」
「仕事のことだろうな?」
「……違います」
「では帰れ」
 冷たく突き放すと、青木はますますしょんぼりと項垂れた。節電対策で端まで行き渡らない照明のおかげでその姿はいっそう恨めしく、薪をげんなりさせた。

「オレ、薪さんに迷惑掛けてますか」
「ああ」
 薪は本心から頷いた。こいつがいなければ、自分はもっと潔くなれた。あの頃の自分なら、とっくに勝負をかけていただろう。例えこの身が滅ぼうとも、そうせずにはいられなかったはずだ。
 それがこの体たらく。
 青木と付き合いだしてから、自分はひどく欲張りになった。何も残されていなかったはずの人生に、多くのものを望むようになった。欲して与えられて望まれて差し出して、そんなことを繰り返すうち、時が過ぎるのを待つだけの人生は、いつの間にか楽しむものへと変わっていた。

「さっさと来い。人に見られたくないんだ」
「入ってもいいんですか」
 つくづく自分の甘さが嫌になって、薪は投げやりに言った。
「おまえも岡部も、どうせ僕を放っておいてくれる気なんかないんだろう?」

 薪は振り返り、だが青木がいる場所とは全く違う方向に顔を向けた。観葉植物の陰からぬうっと出てきた一人の男に、青木が驚きの声を上げる。
「お、岡部さん!? いつから」
「青木。張り込みの極意は気配を断つことだ。岡部によく教えてもらえ」
 言い捨てて、薪は玄関を潜った。その後ろに二人の部下が付き従う。薪の背中はしゃんと伸びて、でも、絶対拒絶のオーラはそこにはなかった。



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

Aさま、こんにちは。

そうなんですよ。
どんな形にせよ、決着が着くわけですからもやもやはなくなると思うんです。 はっきり否定された時はもちろん、例え曖昧なまま終わったとしても、この先描かれることはないわけですから、妄想するのも虚しくなりそうで~。
今後の身の振り方に悩みそうです。(^^;


> こちらの薪さんは青木と出会わなかったらもっと、強い気持ちでいられた?
> 確かに何も失うものがない方が大勝負に出られるかもしれませんね。

本人はそんな風に思ってるみたいですね。
でもわたしはそんなことは思ってません。 作者とキャラの考えは違うんです~。 (ヘンかな?)
守りたいものがあってこそ人は強くなれる。 何も失うものがない人は、強いように見えるけど実は最弱だと思います。 空っぽだから。
がむしゃらに突き進んだとしても、肝心なところでポッキリ折れちゃう。 自分がいなくなっても誰も困らないと思ってるから。
よって、ここは「弱くなった」と薪さんに言わせてますが、まったく逆の意味合いを込めて書いてるんです。 ……分かんないですよね。(^^;

Mさまへ

Mさま、こんにちは。


一番最初にお返事したいこと、
すみません、わたし B型ですっ。 
それも典型的なB型らしくて、「ああ、やっぱりね。 しづはBだよね」 ってみんなに言われる~。

誕生日といい、干支といい、カブりまくってますね☆ 驚きました。

Mさまのお友だちはB型の方が多いんですか?
わたしの周りはオールA型で、嫁ぎ先は全員Aです。 義妹までA。 甥も姪も当然A。


A型の方はみんな、我慢強くて気配り上手で真面目ですよね。(^^



> この(13)前後…滝沢さん大暴れで本当に嬉しく思います。

Mさまったら。(笑) Sメンお好きだって言ってましたものね☆

> しづさんとこのタッキーは、本誌のタッキーよりもより薪さんラブなので、どこか
> 薪さんに甘いというか。

えええ~?! そう見えますか!?
原作の滝沢さんは完全に薪さんラブだと思いますが、うちの滝沢さんは、ゆかりオンリーラブ、なので~、
薪さんに恋愛感情はありませんけど、てか、お互い心底嫌いみたいですけど……(^^;


> そして中園さんのイメージ、伊武サンはキャーーーーっです!!!!!

すまん、しづが悪かった! です!
わたし、あんまり俳優さんとか詳しくなくて~。
飄々としながら腹黒そうな雰囲気というと、白い巨塔の鵜飼教授が浮かびまして。 医龍連想で、つい。
伊武さんが若いボーイと戯れ……(@@) 色々無理なんで勘弁してください。



> 欲して与えられて望まれて差し出して・・・のところは???って赤面しました。
> しづさんもぅ~、どきどきしますっ。

すまん、しづが悪かった2。
こ、これは別に大人の隠語じゃなくて、まごころを君に的な意味合いで書いたんですけど、言われてみたらそうとしか取れないかも~~。


> オカベさんはお母さんと結局のところデキちゃってるんですかね???

きゃー、そんなことはございません! 母子だもんっ。
…………………………実際のところ、どうなんでしょうね?


> けど、今書かれているという「目隠し」

男爵です。 超ギャグです。 原作読んで泣いた人に蹴られそうです。
マジモードの目隠しは、そうですね、書いたらドロッドロになると思います。 書きたくないなあ。(^^;




オフ会はですね、
本当にみなさん、博学なんですよ。 
どんな話をするかと言うと、うーんと例えばね、
以前、薪さんがバラをバックにこちらを見上げてる表紙があったんですけど、その時のバラって、トゲがなかったんですよね。 でもそれより前、青木さんと一緒に描かれた青いバラはトゲだらけだった。
この違いは何かと言うと、
薔薇の棘はキリスト教で罪を意味する。 つまり、
トゲだらけの青いバラに捉えられていた薪さんは青木さんへの恋心を抱いていたけれど、現在はその気持ちが無償の愛に昇華されている。 薔薇の棘が無くなったのはその象徴である、とかね。
その調子で絵画やクラシックにも造詣が深く、「この時の薪さんのポーズは、××(何とか言う画家)が描いた○○(有名な絵らしい)に似てる」とかね、
わたしみたいな無知な人間にも解り易く説明してくれるのですけど、教えてもらってばかりじゃなんだから、ちょっとは勉強しようかなって。
そんな具合にムズカシイ話も出ますが、基本的には原作に愛のあるツッコミを入れる会なので、とっても楽しいです。


> あと、聞き捨てならねぇーーーのがありましたね。

あの頃は、アフターに同僚数名と飲みに行って2時までカラオケ行って、家に帰って4時までゲームしてましたね☆ 
独身女性の平均的な日常だと、え? 違う?
でもって、4回と5,6回じゃ、そう変わらないと思……いえ、なんでもありません☆



Yさまのブログのお話。
あれ、可笑しかったですよねっ!(>∇<)
わたしもすっごい大笑いして~。 「なう」ってのがまた可笑しかった!!

Yさん、いい人ですよね。(^^
登場人物をやさしい眼で見てるのが伝わってきます。
でもって、真面目な方なんですよね。 記事に対する責任とかもきちんと考えてらっしゃるし。 
わたしなんか結構、これギャグだから見逃してくださいね、とか逃げ道作っちゃうんですけど、彼女はそれをしないところが偉いなあって、いつも感心させられます。


発売日まで、あと4日です。
ドキドキしますね~。
お互い体調を整えて、万全の態勢で臨みましょうね。(^^

 


プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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