破滅のロンド(27)

 こんにちは。

 観ました? 金環日食。
 綺麗でしたね~♪

 うちには仕事柄、アーク溶接作業用の防護面が倉庫に転がってて、それで見たのですけど。 (太陽を見るためのものじゃないので、みなさんは真似しないで、って、一般家庭にアレはないか。(^^;))
 本当に綺麗でした。
 黒い丸の周辺に、輪になった太陽の光が輝いて。 使ったアイテムの関係で、いくらか緑掛かって見えたのですけど、それがまた綺麗だった……!! 本当に、光の指輪が空に浮いてるみたいでした。

 みなさんはちゃんと専用の眼鏡でご覧になったと思うのですけど、あれで見ると太陽が赤く見えるんですね。 (義妹が持ってたので貸してもらった) 
 ならばこれはけっこう珍しい写真かもしれないので、載せておきます。

 
金環日食



 写真になるとバックの色がボケちゃうのでイマイチですね。 実際はもっと、背景が黒くて光とのコントラストが強くて、(いかにも目に悪そうだ(笑)) 美しかったのですけど。 輪も、もっと細くてキリッとしてました。 
 ちゃんとお伝えできなくて残念です。 


 しかし、朝、いきなりオットが防護面を付けて部屋に入ってきた時には何事かと思いました。 だって、防護面ってこんなんですよ? 

覆面強盗かと思ったよ
 

「しづー! これで見れるよ! 面白いよ!!」
 おまえが面白いわ。 

 

 以上、しづ家の朝の模様でした。
 アホな相棒のおかげで本当に退屈しないよな、うちは。




 
 で、お話の方は、こちらで最終章です。
 読んでくださったみなさま、長くてお疲れになったことと思います。 2ヶ月も掛かっちゃいましたもんね。(^^;
 お付き合いくださってありがとうございました。







破滅のロンド(27)







「滝沢に何を言われた?」
 病室を出て開口一番、薪はストレートに訊いた。
 青木は素直な男だ。信じやすく騙されやすい。疑心の無さ、それは彼の美徳でもあると同時に大きな欠点で、だけどどうしようもなく薪が彼に惹かれてしまう最大の要因は、彼のそんなところだったりする。

「『僕と寝たけりゃ局長クラスに出世して来い』って薪さんに言われたって」
 それは西野の尻尾を掴むための芝居の最中、いきなり滝沢が打ち合わせにないことを始めたから咄嗟にアドリブで返しただけのこと。無論、そこには真実の欠片もない。
「まさかと思うけど。本気にしたわけじゃないだろうな?」
「本気にはしてませんけど。でも、もしかしたらって」
「バカだな、おまえは」
 薪を信じ切れなかったことを後悔するように、青木は眼を伏せた。自分の恋人がそんなことを言ったら、誰だって動揺する。当たり前の感情を申し訳ないと思える、彼の誠実に薪の胸がきゅうっと苦しくなる。僕の青木はどこまでもかわいい。

「安心しろ。あれは西野を引っ掛けるためのアドリブで」
「オレが局長に出世するまでお預けってことなのかなって、ったいっ!! ちょ、薪さんっ、痛いです! 蹴らないでください、すねは許して、あいたぁっ!」
「病院で何してるんですか」と通りすがりの看護師に叱られたが、薪の怒りは収まらない。だから、彼女がいなくなると同時に繰り出した中段突きを軽く左手で止められたときには、髪の毛が逆立つほど腹が立った。青木は強くなった。もう、本気でやり合ったら勝てないかもしれない。もとより、力では絶対に敵わない。数え切れないほどベッドに押さえつけられた記憶が、それを証明している。

「もう一つ、聞いてもいいですか?」
「なんだ」
 パシッと音を立てて青木の手を払い、薪は彼を睨みつける。力で勝てなくても、年長者の威厳と言うものがある。上司として、彼の庇護者として、青木の前ではいつも毅然としていたい。
「さっき、滝沢さんが打ち合わせにないことを始めたって言ってましたけど。あれってどういうことですか?」
 西野にわざと聞かせた室長室での芝居の内容を、青木は知らない。盗聴器を持たない彼は、薪と滝沢が交わした会話を聞くことはできなかった。尤も、あれを青木が聞いていたら、自分に割り振られた役目も忘れて中に飛び込んできたのではなかろうか。

「部屋に入ったら薪さんが片袖脱いでて。それも説明してもらいたいんですけど」
「滝沢が襲ってきたんだ」
「えっ」
 驚きの声を上げると同時に、青木は男らしい眉根を寄せた。眼鏡の奥の瞳が、暗い熱を持つ。青木は正直な男だ。怒りも嫉妬も全部顔に出る。そういうところも可愛いと思う。
「滝沢さん、やっぱり薪さんのこと」
「ちがう。あれは西野に対する警告だ」
『警告』の意味が分からず、青木は首を捻る。ストレートな反応が好ましい。本音では頭を撫でてやりたいくらいなのだが、此処は病院の廊下、もとい、二人きりのときでもそれができないのが薪という男だ。

「滝沢は僕と同じで、ガチガチノーマルな男なんだ。同性の身体は気持ち悪くて触れない。西野もそれは知っていたはずだから、“らしくない”と思ったはずなんだ」
 昔は鈴木の恋人で今は青木と特別な関係を持っている薪が自分を“ガチガチノーマル”と評するのは可笑しい気もするが、薪は本気だ。鈴木以外の男に抱かれたいと思ったことも、青木以外の男をかわいいと感じたことも、ただの一度もない。

「いや、でも滝沢さんて、薪さんの身体によく触ってましたよね?」
「あれは純粋な嫌がらせだ」
「そうですかあ?」
「男の体なんか身震いするくらい嫌いな滝沢が男を襲う真似事をする。西野が違和感を感じて引き下がってくれればいいと、滝沢は考えたんだ」
「あの時の西野さんは完璧に喜んでたと思いますけど……」
 自称ガチガチノーマルの室長は、青木が言葉に含ませた微妙なニュアンスをきれいに無視して、執務室で見せる叡智を美しい横顔に湛え、「決定的だったのは」と続けた。
「滝沢が僕の脳を見て飛行機事故の原因を調べるって言い出したことだ」

 ほんの僅かな沈黙の後、青木は「ああ」と呟いて、薪の言わんとすることを理解したようだった。
 MRIの限界は過去5年。飛行機事故は2057年11月、8年前の出来事だ。8年も経ってしまったら、映像は再生できない。MRI捜査の基本だ。あれは滝沢が西野に出したヒントだった。これは茶番だ、何もかも分かっている、だから引いてくれ。
 しかし西野は、彼の思いに気付かなかった。

「それが分かっていれば、もしかしたら西野さんは」
「いや」と薪は首を振った。
 MRI捜査に携わる者には基本中の基本でも、部外者には知られていない事実。しかし、西野は第九に監査官としてやってきたのだ。そのくらいの基本は押さえていると滝沢は判断し、それは多分、間違いではなかった。
「それでも彼は、自分の道を進んだだろう。西野はそういう男だったんだと思う。だから滝沢は、ああするしかなかったんだ」
『自分のようなことをする人間が必要だ』と西野は青木に言った。同じ男として、その言葉には頷けないこともない。男には自分の信じる道がある。どうしても譲れないものがある。薪が黒い秘密を飲み込むのも、その信義に則ってのこと。

「滝沢さん、大丈夫でしょうか」
「大丈夫だ。あいつは殺しても死なん」
 薪が素っ気なく、でもしっかりと保証すると、青木はホッと頬を緩めた。

『死なせてくれ』と言った滝沢の気持ちは、よく分かった。

 自分の親友を、意志をもって殺すことがどれ程の苦しみを伴うものか。薪には想像もつかない。誤って殺してしまった、殺意は無かったと認識してさえ、罪の意識は消えないのに。
 一心に自分を想ってくれる恋人を得、さらには多くの人々の助けを借りることができた薪ですら、ここまで来るのに何年も掛かった。滝沢に安息の日々が訪れるのは、自分よりもずっと遠い未来のことに思える。
 それでも。

 自分がここまで来れたように、彼にもきっとその道はあると。今は信じたい。
 薪に蹴られたすねを擦りながら薪の隣を歩く、年下の恋人からもらった多くのものが、薪にその考えを抱かせる。

 それを希望と、ひとは呼ぶのだ。




―了―


(2012.2)

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Lさまへ

Lさま、こんにちは。
コメントありがとうございます。(^^


> 薪さんが自分自身の幸せ、想いを手放さずにちゃんと手に入れて、また隣にはそれを共有する恋人の青木がいて二人で前を向いて歩いてゆく。これが本当のhappy end。

はい~、実はとっても前向きで幸せなお話でございました。 (親友を撃ち殺す話のどこがじゃ。(^^;))
幸せの形は違いますが、原作も確かにハッピーエンドなんですよね。 未来を見つめる薪さんの眼が明るい、というところは共通していると思います。


> “僕の青木はどこまでもかわいい”という薪さんが私は愛しくてたまらない。

ありがとうございます♪
可愛い薪さんが自分より大きな青木さんを可愛いと思う、わたしの萌えどころでございます。(^^


Lさまの夢のお話。
わー、羨ましい。 いい夢見ましたね~。
その夢がエピローグで現実になったら、最高ですね。


> 薪さんの心に間違いなく存在する希望と青木への愛情。それが薪さんと青木の絆をより強くしているんだと27話を読んで再び思う事が出来ました。

両方あって、初めて人は幸せを感じられるのだと思います。 
いくら愛し合っていても、破滅に向かう愛はやっぱり辛いですよね。 デカダンスとか、芸術性は認めますが、わたしはあまり好みではないです。

原作薪さんも、未来への希望を持って、青木さんへの愛情を持って、旅立ったのですよね。
二人の絆は強い、それも確かな事実。
何があってもその絆は揺るがないと、それだけを心の支えに、エピローグを待ちたいと思います。

Aさまへ

Aさま、こんにちは。
金環日食、ご覧になりましたか。 良かったです~。(^^

写真のリングが太いのは、単なるピンボケです☆
防護面を通して撮影したので、ピントが合わなかったんですね、きっと。


> 原作で薪さんは青木をのすことができると言ってたけど、

強いんでしょうね。
一度、見てみたかったですね。


> 原作の滝沢のセクハラは貝沼の影響だったのかしら!?

単なるシュミだと思います。(・∀・)
もしくは日本に潜入する際、「日本のサラリーマンはスキンシップが基本」と間違った教育をされてきたとか。(笑)


> 原作の薪さんは鈴木さんに対する罪悪感は消えない気がするなあ・・(´`)

一生背負っていくでしょうね。 
だからこそ、青木さんに傍にいてほしかったのに……やっぱり別れ別れになるのは残念です……。

No title

しづさま

こんにちは
『法十版 END GAME』の連載、お疲れさまでした。

飛行機事故に事件性はなく、小野田派を失脚させるための駒、滝沢を焚き付けるための作り話だったとはね。
私も西野にすっかり騙されましたよ。
たっきー…(T_T)
滝沢が死に瀕する予告をされていましたし、以降のお話に滝沢が出てきていないので、しづさんの滝沢も薪さんを庇うなりして死んでしまうのかなあ、と思っていました。
塀の中でしたか。情状酌量されても長いだろうなあ。
まあ、滝沢のことですから、他の受刑者たちに恐れられる存在にはなっても、なぶり者にされることはないでしょうが。

 ***

しづさんが押し入れに籠ってみえるころ、私は最後の「いそがなくていい」「待っているから」の解釈に頭を悩ませていました。10日間くらい。
お互い、たかが漫画に何を悶々としているのでしょうね。(笑)

私は、第九の室長でなくなり、何年か後に日本に戻れたとしてもどんな形になるかわからない状況で、薪さんがあのように言うだろうかと違和感を感じたんですよ。
それで、私が二次創作するなら、薪さんに何て言わせるだろうかと、指導的立場に立ったことも、転勤したこともない人間なのに延々と考えまして、
『「よろしくご指導の程」したからな』
に落ち着きました。
青木は、薪さんが車を去った後、意味に気づき、第九での2年余が脳裏をよぎり、「いそがなくていい」「待っているから」と育ててくれていた薪さんの声を心に聞いた。そして、次はお前がするんだというメッセージが込められていることを感じたのではないか。
と、私は解釈することにして、ようやく他のことも考えられるようになりました。
薪さんが「迷惑メール」を削除しちゃったことのその後の妄想とか、現在の科学警察研究所の所長さんは約120名の所員のトップでいらっしゃるんだ、薪さんもそんなふうになるんだなあとかね。

しづさんも、押し入れから出られて何よりです。
「じゃ、約束どおり、彼は第九に配属させるよ」とありましたから、新メンバーの加わった第九とか、左遷されても(されると思うのですが)セクハラオヤジだろう間宮とか、原作は原作、二次創作は二次創作として、しづさんのSSをまだまだ読ませていだきたいです。
これからも楽しみにしていますね。


サンショウウオさんへ

サンショウウオさん、いらっしゃいませ!
来てくださってうれしいですっ。(^^

この話、サンショウウオさん以外だれも喜ばないだろうと思って公開しましたからね~、
でも、多くの方に閲覧いただいて、改めて滝沢さんの底力を教えられました。 彼はとっても深みのあるキャラでしたものね。 見方によっては青木さんよりも深い人間だと思う、って、これはアンチかな?(^^;



> 『法十版 END GAME』の連載、お疲れさまでした。

原作とは大分違った顛末になってしまいましたが。 (顛末もなにも、発端から……だって飛行機事故が~~)
西野の裏の顔は『破壊のワルツ』を書いていた頃から考えていて、最後、滝沢さんが次長の部屋から出てきた時に、入れ替わりで登場させるつもりだったんです。 でも、それでは滝沢さんが可哀想すぎると思って止めました。
しかし、「あの話で一番可哀想なのは滝沢さんだ。 彼は最後まで自分の間違いに気付かず、あれだけのことをしたのに救われてもいない」 というコメを貰って、
このままじゃ滝沢さんも薪さんも癒されぬ傷を抱えたままになる、と気付いたんです。 で、これを書きました。
ですのでこれは、滝沢さんと薪さんの、再生のお話なんです。


> まあ、滝沢のことですから、他の受刑者たちに恐れられる存在にはなっても、なぶり者にされることはないでしょうが。

そうそう!
滝沢さんは実力で牢名主になるんです。 (2065年の刑務所にその地位が存在するのか?)
囚人たちを完全に掌握し、自分がスパイとして受けた訓練を基礎に、ビシビシ更生させちゃうんです。(笑)



> しづさんが押し入れに籠ってみえるころ、私は最後の「いそがなくていい」「待っているから」の解釈に頭を悩ませていました。10日間くらい。

サンショウウオさんもですか~。
本当に、漫画でこんなことになるとはね~。(^^;



> 私は、第九の室長でなくなり、何年か後に日本に戻れたとしてもどんな形になるかわからない状況で、薪さんがあのように言うだろうかと違和感を感じたんですよ。

そうなんですよね。
わたしもずい分、唐突だなあと思いました。 果たせる当てもないことを薪さんが言うのも、彼らしくない気がしました。


> 『「よろしくご指導の程」したからな』

これは、青木さんのMRIに現れていない言葉を薪さんが発した、ということですね?


> 青木は、薪さんが車を去った後、意味に気づき、第九での2年余が脳裏をよぎり、「いそがなくていい」「待っているから」と育ててくれていた薪さんの声を心に聞いた。

「薪さんの声を心に聞いた」
有りだと思いました!
薪さんが何事かを青木さんに耳打ちした時、青木さんは薪さんの顔を見てないんですよね。 
鍵カッコで括られた「急がなくていい」があったからそう言ったのだと思いがちですけど、あれは青木さんの心のモノローグで、もしかしたら薪さんは別のことを言ったのかもしれない、とわたしも妄想しておりました!!


> そして、次はお前がするんだというメッセージが込められていることを感じたのではないか。

近い将来、第九が全国展開した暁には、青木さんが室長に就任することは決まってますからね。
うんうん、納得のいく言葉です。


> しづさんも、押し入れから出られて何よりです。

わははー、振り返ってみると子供みたいで恥ずかしいですー。(><)
いい大人が何をしているのやら。 漫画のことで、こんな大騒ぎして。 ホント、薪さんてスゴイですよね! (←自分の未熟さを薪さんのせいに!!)


> 「じゃ、約束どおり、彼は第九に配属させるよ」とありましたから、新メンバーの加わった第九とか、左遷されても(されると思うのですが)セクハラオヤジだろう間宮とか、

第九の新メンバーは、もちろんあの人です。
第九メンズで残ってるの、あの人しかいないし~。 あとがき代わりの後日談に書いておきましたので、広いお心でお願いします。(^^

間宮は、
あ、そうか、次長の権力が弱まったわけだから、跡継ぎの彼は真っ先に左遷されますね。(すみません、いつものごとく考えてませんでした)
うーん、薪さんどうするだろう……間宮は職員たちの個人情報を握ってて、それを薪さんに裏で横流ししてくれてるんですよね。 (うちの薪さんは必要とあらば敵でも外道でも利用する) 
3ヵ月前のこともあるし、もしかすると庇っちゃうかも、そうなるとまた中園と対立するのか。 でも結局は中園の方が強いから間宮は左遷でしょうねえ。
残念だなあ、いた方が面白いのになあ。


これからも楽しみに、とのお言葉、とってもありがたいです。
新しいお話はとんと浮かばないのですけど(^^;)、まだ公開してない話も少しあるので、いましばらくお付き合い下さると嬉しいです。
今後もよろしくお願いします。



プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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